こだわり抜いた藍で染める紺屋としての誇り 紺喜染織
色鮮やかな生命力を感じる藍を見ていると、まるで「生きてるよ」と声が聞こえてきそう。この藍ツボのスクモ藍(藍の葉を発酵・熟成させた染料)の濃く、深い色味は思わず息を呑むほどの美しさです。
そんな色鮮やかな藍染めを学ぶべくしゃかいか!編集部は、約200年の歴史ある滋賀県湖南市の紺喜染織さんにやってきました。
看板の代わりに、「藍」、「紺喜」と文字の入った暖簾が風に吹かれて気持ちよさそうにお出迎えしてくれます。
紺喜染織の植西恒夫さん、本日はよろしくお願いします!
今回は、自然に寄り添いながら生活することを愉しむ集まり「ノラノコ」の亥川さんとの出会いから紺喜染織さんへお伺いすることができました。
「ノラノコ」とは、2014年に滋賀の亥川さんご夫婦と亥川さんのご友人夫婦ら4人が、自分たちの手で一から自然農の米を育て始めたことが切っ掛けとなり、愉しむ農作業というスタイルに賛同した仲間たちの集まりで、多くの活動を仲間と一緒に展開しています。活動の1つに、農作業のための藍染め服「ノラふく」があります。
「ノラふく」の名前のノラは、自由に愉しむという意味での野良からも付けられています。しゃかいか!編集部も「ノラふく」を着用させてもらいました!
自分たちの手で農作業用の服を作れたら…という「ノラノコ」の想いに賛同した淡路島で服作りをしているChar*デザイナー、あまづつみまなみさん。あまづつみさんは、農作業の虫除けになり、冷え性や肌荒れにも効果的で汚れにくい藍を使った野良着を作りたいと藍染めに協力してくださる工房を探し回ります。そして、紺喜染織の植西さんとの出会いがあり、藍染めの方法を学ぶため何度も淡路島から植西さんのもとへ通われたそうです。
あまづつみさんのデザインと植西さんの教えを請い藍染めされて完成した「ノラふく」。今では、つなぎからスモック、ワンピース、パンツ、シャツまで全部で6種類を展開しています。
「藍染めは糸を強くするため農作業用の服には最適」とあまづつみさん。今日は、グラデーションの「ノラふく」を特別に藍染めする現場に立ち会えました。
藍から生まれる多彩な青色、どの青も素敵です。
あまづつみさんの藍への愛にじーんとしながら藍染め体験へ!
紺喜染織4代目の植西さん。藍のおかげでしょうか、今年で81歳とは思えないほどの明朗闊達っぷりです。
紺喜染織さんは、江戸中期、京都で染色技術を学んだ初代が創業。当時、一般家庭で綿を作り、糸を操り、その糸を紺屋で染めてもらって機を織ることが当たり前でした。
正藍染を行う数少ない染織屋
昔は、鍛冶屋や醤油・味噌屋、提灯屋、桶屋などと同じく紺屋も生活のために必要な産業として生計を立てていましたが、市販品が出回るようになると段々と需要が減少し、生業として続けていくことが難しくなりました。今では、紺喜染織さんが正藍染を行う数少ない紺屋さんなのです。
染色へのこだわり
紺喜染織さんは、江戸当時から他の紺屋とは違うこだわりの藍(タデ科の植物)を作り続けてきました。初代が、たまたま四国から持ち帰った藍の種から栽培し、阿波特産の藍と混合発酵させて独特の光沢を出す深い藍色に染め上げてきました。この藍は植西さんが育てている藍です。収穫後の緑色をした藍の葉は、乾燥させると葉だけが青くなり青色の色素が出てきます。
乾燥させた藍の葉を約100日かけてムロで発酵させ、発酵の後はスクモ藍、藍玉にして保管します。その後、染料となったスクモ藍を藍ツボに入れ、石灰、灰汁、小麦の皮(ふすま)などを加え、再度発酵させて藍染め液が誕生します。
最善の愛で温度管理
藍染め液の温度管理には最も気を配るそうです。
温度によって染まり具合が左右されるため寒い時期になると藍ツボの回りに籾ガラを入れて火をつけ温めて一定の温度を保つように常に気を配っています。
植西さんが丹精込めて作り上げてきた藍でワンピースの藍染めに挑戦です。
まずは、ワンピースの糊を完全に落とし染まりやすくするために水で濡らします。
十分に繊維を浸水させることで色ムラが防止されます。
左の新しいスクモ藍の藍ツボから時計回りに浸していきます。藍ツボに浸す回数を重ねるほど藍の色は濃く変化していきます。
慌てず優しく水がめに投入
しっかりと脱水してから、植西さんの指導のもと藍ツボに1回目の投入です。空気を入れないように優しく時間をかけずに投入しなければ色ムラの原因になります。
藍ツボに沈めてから1分ほど経過、染液をよく浸み込ませ藍ツボから引き上げます。
1回の藍染めで淡い水色ワンピースになりました!
2回目の藍ツボ投入です!望む藍色になるまで藍ツボを変えて繰り返し色を重ねて染めていきます。
植西さんの「もうええよ」の掛け声を聞いて、いざ、藍ツボからワンピースを引き上げます。
スクモ藍の表面は藍色をしていますが、藍ツボの中は茶色っぽい色をしており、またたく間に藍色へと変化していきます。
ぼやぼやせずにスクモ液を絞ります。スクモ液を吸い込んだ服は、空気にふれさせることで色が落ち着き染まっていきます。
2回目の藍染めで藍色も濃くなってきました。
色ムラが起きないように服のしわをすばやく伸ばします。
スクモ液は色がつきにくくなるまで使い、藍色がつきにくくなると新たなスクモ液をつくります。
植西さんが種から直植えし収穫、乾燥させて丁寧に育ててきたスクモ藍。今年は、ノラノコさんが植西さんにわけて頂いた種で、スクモ藍づくりに挑戦しています。
藍染めの良さを多くの人に知ってほしいとの想いから、植西さんはノラノコさんの藍染め指導をされています。
3回目の藍ツボ投入です。じっと待ちます。
重なりあった藍色が冴えてとても綺麗です。
藍染のあとは水洗いをします。服に定着していない藍色が水の中に落とされていきます。
7回、8回水洗いを終えた服を乾燥させます。最後は、灰汁抜きのために水に半時間ほどつけおき、乾燥すればついに工程終了です。
後日、自分で染めた藍の服に身を纏ってみましたが、さらに藍に魅了されました。創業から今も変わらず、人を魅了する藍をつくり続ける植西さん、藍染の伝統を広めていきたいというノラノコさん、今回の貴重な体験をありがとうございました!
【詳細情報】
紺喜染織
電話番号:0748-75-0128
住所:滋賀県湖南市下田1530
ノラノコ
Facebookページ:https://www.facebook.com/ノラノコ/
ノラふく
お問い合わせ先
Mail:kiyooka-char@ray.ocn.ne.jp
URL:http://char-by-cheep-cheep.com/
(text:坂田、photo:市岡)
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