今までの車いすとは違う!すべての人の移動が楽しくスマートに!次世代電動モビリティ「WHILL」

しゃかいか!編集部では、100メートル先の近くのコンビニへ行くにも、近くの打ち合わせ先へ行くにも、近所のカレー屋へ行くにも、「パーソナルモビリティ」WHILL(ウィル)に乗っていきます。一回でもWHILLに乗ると降りたくない!というスタッフが続出です。

車いすユーザーもそうでない人も乗る事ができる、乗ってみたいと思える全く新しいカテゴリーのWHILLは、2014年に生産を開始し、日本のみならず海外でも数々の賞を受賞しています。

しゃかいか!は、ユーザーの想いを組み込みデザインされたWHILLの可能性、カッコ良さに惹かれました。すべての人の移動を楽しくする乗り物WHILLに、会社でもぜひ乗ってみたい!とWHILLを2台レンタルしています。

WHILL1

本日は、WHILLの開発・販売をしている日本オフィスへお邪魔し、WHILL誕生のストーリーをお伺いしてきました!

台湾の工場から組み立てられたばかりのWHILLが、横浜にある日本オフィスへ運ばれてきます。

WHILL3

今日は、WHILL最高技術責任者(CTO)の福岡宗明さん、サービス企画部部長の菅野秀さん、よろしくお願いします!

「まず、WHILLの名前ですが、ホイールチェアの『wheel』と、未来の意志の意味をこめた『will』を掛け合わせた造語なんですよ」と福岡さん。パーソナルモビリティWHILLが誕生するまでには長いストーリーがありました。

WHILL4

WHILLの創業メンバーである福岡さんと内藤さん、榊原さんら3人は、名古屋大学の学生時代にものづくりについての知識交換会を週に1回のペースで行っていました。同大学を卒業し、福岡さんがオリンパス、内藤さん、榊原さんはソニーへと日本を代表する企業へ各々が就職することになり、勉強会は自然となくなってしまいます。

WHILL会社が始まったアパート

始まりはアパートの1室
3人が各々の会社でエンジニアとして働きつつ、土曜、日曜を使って自由なものづくりをアウトプットできる場所が欲しいとアパートの1室に再び集まります。NPO法人サニーサイドガレージを立ち上げ、色々なものづくりがここから始まりました。当時は、各々が好きなものを自分の給料の範囲でつくっていたそうです。

蛍1(sunnysidegarage)WHILL

ホタルをもっと綺麗に見たい
サニーサイドガレージ時代には、ホタルを綺麗に見るために調整した誘導灯を作りました。

蛍2(sunnysidegarage)WHILL

ホタルに赤い光は見えない
ホタルは光に弱く、生殖活動のために光を出しています。そのため、ホタルの周りで強い光を出すとホタルは生殖活動が行えず、減ってしまいます。そこで、調べてわかったホタルは赤い光が見えないことと、赤の色味を濃くしすぎると人に怖い印象を与えてしまうことを考慮し、足元が見える範囲で赤味がかった誘導灯を製作します。製作をつづけて3年目には、ホタルを観に来たこどもたちが「電気をつけちゃいけないんだよ」と声を掛けてくれるようになったそうです。

風の可視化1(sunnysidegarage)

アイデアをすぐに具現化
榊原さんの中学校の同級生、杉江さん(創業メンバー)との出会いが、WHILL誕生の大きな切っ掛けになります。
「世界を旅しながらものづくりをしている、元日産自動車で開発をしていた杉江という友達がいる」と榊原さんから話を聞いていた内藤さんと福岡さん。
杉江さんが「風を見えるようにしたい」と言っているという話を聞き、内藤さんと福岡さんが、何かみんなで一緒にできないのかと考えはじめました。そして、風船が風によって、ふわりと浮かぶ作品を並べたらよいのではないかと思い立ちます。

風の可視化2(sunnysidegarage)

東京デザイナーズウィーク出展のため光る風船づくり
そして、すぐにその構想を東京デザイナーズウィークへ出展することに決めました。風に揺られて乳白色に光る風船をつくるため、風船を特注して一から作業を開始し、最後には20人くらいが集まって製作していました。

WHILL

工場見学が切っ掛けに
その後、車椅子に着眼する転機となる工場見学での出会いがあります。プラスチックを成形する樹脂メーカーの工場を見学していた時にみつけた回転成形という技術、この技術で車椅子をつくったら発展途上国向けに安く、たくさんの車椅子を量産できる、と福岡さんたちは考えます。

もともと、福岡さんは医療に近い分野、内藤さんが福祉に近い分野で活躍されていたこともあり、頭の中には、自然と車椅子というワードが浮かんできたそうです。

まず、今の発展途上国では、どれくらいの価格で車椅子が作られているのかを現地で視察するところからスタートしました。
発展途上国は、車椅子の購入が補助金で成り立っており、車椅子を作っている工場こそあるものの、みんなが使えるほどの量を生産してるわけではなかったのです。低価格の車椅子ビジネスを成立させるにはハードルがありすぎると壁にぶち当たります。

WHILL

車椅子はそもそも完成されたものなの?
低価格から切り口を変えたらどうなるのだろうか?、車椅子ってそもそも完成されたものなのか?と新たに車椅子と向き合います。
日本での車椅子についてヒアリングをしていく中で、「車椅子に乗るくらいなら家にいる方が良い」と家に閉じこもるネガティブな方も多く、移動が楽しくなるような、乗りたくなるカッコイイ車椅子を作ろうと方向性が決まっていきます。その時点で数週間しか日にちがなかった東京モーターショーに出展すると決め、動き出しました。
カッコ良さを追求
これは、杉江さんの描いた昔のデザインです。カッコ良さを一番にスケッチを描き、形にしていきました。
WHILL_concept

「製品化しないのは、期待させるだけさせて罪なこと」
2011年12月東京モーターショーに出展したWHILLの初期のプロトタイプです。なんと、展示がはじまってからも会場に寝泊りをして開発作業を続けていたそうです。会場には、大阪からわざわざ子供を乗せたいと来てくださった方や、他にも「こんな乗り物にのってほしい」、「いつ発売されるんですか?」と尋ねてくださる方がいて、大変な反響がありました。

手動車椅子をつくっている会社の社長さんから「本気でやれよ。コンセプトだけ見せて製品化しないというのは、期待させるだけさせて罪なことなんだよ」といろいろな声を頂いたそうです。

WHILL

会社を退職し、WHILLへ
自分たちがつくったプロトタイプを欲しいといってくださる人の想いにきちんと応えるため製品化するには、会社化しないといけない、それに専念する人が必要、じゃあ、自分がやるしかない。WHILLの開発をここで止めてはいけないとの想いで、福岡さんはオリンパス、内藤さんはソニーを退職します。

一社員の退社プレゼンが満員御礼に
オリンパスを退社する前にWHILLを紹介するプレゼンテーションを行った福岡さん。プレゼン会場は、満員御礼で、たくさんの方から応援のことばを頂いたそうです。

シリコンバレーでの挑戦
当時日本では、ものづくりベンチャーがまったくいなかったため助言をくれる人はおらず、お金を集めにいけばソフトフェアしかやっていないとあしらわれ、ちょっとした閉塞感がありました。製品に対し、細かいところまで突っ込みをいれられるのでなかなか先へ進めずにいました。

その点、シリコンバレーは、スタートアップベンチャーに慣れ親しんでいるエリアで、スタートアップ企業への対応や投資など環境が整っていました。WHILLにとってシリコンバレーとの相性は、とても良かったそうです。アメリカの方が、ユーザーが「ここはいいけど、ここはなくてもいい」と前向きなフィードバックをしてくれること、製品だけでなく、そのコンセプトに重点をおいて評価し投資してもらえることで、開発スピードを上げることができました。

カッコイイとは何かを考え続ける
カッコ良さの優先順位を下げずに、カッコイイとは何かを考える作業が続きました。アメリカで出会ったユーザーの中で、とても印象的な方がいて「車椅子のデザインには興味がない。デザインよりも高いものをとるために椅子は上下するのか、そんな機能性を求めているんだ。だから、乗らない」と言われたことがありましたが、結局は無理をいってWHILLに乗ってもらいました。

WHILL

外で試乗を終えて戻ってきたそのユーザーが、「クールだ!それはどこで買ったの?と周りの人たちに言われた。この商品にはポテンシャルを感じたよ」と、表情を変えて感想を述べてくれたそうです。周囲の人から掛けられる第一声が「クール!」に変わったという体験話が、WHILLという製品の価値なんだと腹におちたそうです。

カッコイイは誰がみても乗りたいと思える製品
誰がみても乗りたいと思える製品=カッコイイ、というコンセプトの定義が固まっていきます。

自由な動きを可能にする大小24個の独立したタイヤ
前輪が横にある3輪タイプのWHILLから、さらなる動きの自由度や安定性の向上には、実用化された例があまりなく、回転軸方向に自由な移動を可能にするため取り扱いが難しい「オムニホイール」を取り入れる必要がありました。大手自動車会社を退職後、個人でモビリティの研究していた技術者の坂東さんとの出会いから「オムニホイールタイヤ」の実現に成功します。

WHILL

大小24個の独立したタイヤで構成される「オムニホイールタイヤ」が、小回りを良くし、7.5センチの段差を超えさせ、10度の傾斜を登るパワフルさを生み出しています。そして、2014年3月までの3ヶ月で改良し、2014年の夏についに生産を開始します。

医療機器の製造の規格を求めて
日本と世界では、車椅子における製造の規格が異なるため、世界に向けた車椅子の製造・販売を考えると、医療機器の製造の規格が必要でした。日本では、医療機器の製造の規格を所持している企業が少ないため、規格を持つ台湾メーカー「Jochu」の工場で、WHILLの生産は行われています。最初の頃の50台は、日本の倉庫を借りて社員手作りで組み立てていました。

WHILL最後に一枚

WHILLに乗る一人一人の最初の反応は違います。みんながシンプルにその場で「かっこいい!ありがとう」とはならず、人の内面にまで入っていくものだからこそ、カッコイイとは何かを福岡さんは考え続けているそうです。
「オリンピックまでには、街中で何度もWHILLを見かけて、WHILLで楽しそうに移動している風景を実現したいと思っています」と福岡さんの熱い想いに感動しつづけたインタビューでした。熱き志をもったWHILLの皆さま、本日はありがとうございました!

【詳細情報】

WHILL 株式会社(WHILL, Inc.)

電話番号:045-633-1471
住所:
日本本社/神奈川県横浜市鶴見区末広町1-1-40 横浜市産学共同研究センター実験棟F区画
アメリカ本社/285 Old County Rd #6 San Carlos CA, 94070 United States
URL:http://whill.jp/
(text:坂田、photo:市岡 ※一部の写真はWHILLさんの提供)

関連するキーワード

関連記事

最新訪問ブログ

訪問ブログ一覧へもどる