職人みんなで持ち続ける「次の世代へ受け継ぐ」という思い Hacoa

Hacoaに来た福井県鯖江市の10月31日、11月1日に開催されたオープンファクトリーとマーケットのお祭り「RENEW」で、Hacoa(ハコア)さんにやってきました。
オフィスかっこいい!
Hacoaはブランド名で会社の名前は有限会社山口工芸と言います。1962年創業の50年以上の歴史を持ち、もともと越前漆器の産地である河和田地区で漆器の漆を塗る前の器の状態「木地」作りを生業にしてきた会社です。全国漆器展「日本漆工協会会長賞」や「瑞宝単光章 叙勲授章」など、さまざまな賞を獲得しています。

Hacoa看板2001年に新たなブランド「Hacoa」を立ち上げ、木地づくりで培った技術をいかし、木をさまざまなプロダクトへと変身させている楽しい会社。
歴史ある漆器の木地職人の会社から木製雑貨メーカーへと変身した、その秘密を今日は聞いてみたいと思います。

ドアの取っ手がかっこいいお邪魔します。ドアの取っ手も木製、というか木!

青山さんプロフィールガイドしてくださるHacoa事業部 部長の青山さんです。よろしくお願いします。

木製雑貨がたくさんだよ工房に併設されていた店舗「Hacoa DIRECT STORE 」があり、木のぬくもりを感じることのできる雑貨がたくさん並んでいます。

iPhoneケースケース裏iPhoneケース!欲しいですがお買い物は後です。

カードケースカードケースも。

木製雑貨イメージ革など他の素材と組み合わせたものもありますね。きゃーかわいい、だけでは終わらないぞ!

キーボード転換点になったキーボード、その名も“Ki-Board”
木製のキーボード「Ki-Board」が生まれたのは約10年前。「木のキーボード作ったら面白いんじゃない?」と軽い気持ちで作り始めたのではなく、あるお客さまの「アレルギーで樹脂製のキーボードを操作できないから、木のキーボードを作って欲しい」というお願いから生まれたものだったんです。

キーボードかたかたかたお話を聞いているとオシャレな雑貨メーカーというよりは「おっしゃ、望まれるなら作ってやろう!」という心意気で生まれたのではないか?とイメージが湧いてきます。勝手に膨らませて申し訳ありません。
このKi-Boardも現在では3代目です。

USBメモリもその後、USBなど木とデジタルが融合したプロダクトなども生み出し、木製のスマートフォンケースなど、さまざまなものへと挑戦し続けることに。

スマホケーススマートフォンケースは難しいんだよ
家電量販店や雑貨屋さんに並ぶスマートフォンケース。最近では、木製をはじめ、革、果ては布などなどたくさんの素材がひしめき合う売り場となっていますが、木製ケースの場合は仕上がりにかなりの精度が求められます。それに加えて、水分を含み、気温や湿度などさまざまな条件で膨張・収縮するので、最初「作ろう!」と言いだした時は、ケース制作の難しさを知る職人さんからのご意見(ブーイング)もたくさんいただいたのだそうです。さらに白っぽいメープル、黒っぽいウォールナットなど樹種もたくさんあるので、硬さを始めとする木ごとのくせを掴みとり、加工方法を工夫しなければなりませんでした。

しかし、毎月新製品を作ることに決めました!逆に!
iPhoneケースでは職人さんのご苦労は大変なものだったそうですが、Hacoaでは4〜5年前から「ひと月ごとに必ず新しい製品を生み出すぞ!」ということになり、この取り組みは、途絶えることなく今も継続中。おおよそ毎月2〜3点程度、新製品が生み出されます。確かに店内を見回しても、ステーショナリー、キッチン用品、インテリアなど木のアイテムが所狭しと並んでいます。

毎月プレゼント毎月の活動はお客さんに対しても。一定価格以上購入すると毎月違う木のマグネットをプレゼント。木の種類が違うから集めたくなる。ちなみにお伺いした日(10月)は秋に因んだ栗の木マグネットでした!
作る人の意欲を高め、お客様のリピートも促すというサイクルでHacoaは絶えず新しい製品をグルグルグルと生み出しつづけています。やる気と買う気のエコサイクル!上手にできてます。

レーザー刻印の商品たち刻印をほどこした記念のアイテムも得意です。木に思い出の写真をレーザーで刻印し、時計やボードに仕上げる商品も人気。この思い出の品を作るサービス。「木だから良いんですよ」と青山さん。ガラスやアクリルの写真立ても綺麗に残りますが、木だと時間が経つにつれ色味も味わい深くなって、時間の経過を良い感じで感じさせてくれるのだとか。写真の製品は新しくきれいなままなので、想像つきませんでしたが、なるほど、変化も一緒に楽しめるのが木!

木材置き場に潜入木を見せてもらうため、木材置き場にお邪魔します。

木材置き場の中当然ですが「木」といってもその種類はさまざま。色や木目など見た目はもちろん、加工しやすさの点では乾き具合や、サイズもさまざまです。ここ河和田の気候になじませるため長いもので2〜3年程度、寝かせることもあります。使うのが数年先になることもあるので、ある程度使うだろうなという量や樹種を見定めながら仕入れないといけないので、木地屋さんにとっては手を動かす技術とともに、仕入れも非常に大切なお仕事。サイズの面では原料として仕入れた製材をいかに無駄なく、上手に使えるかも考えながら。

匂いを嗅いでみる嗅いでみたくなります。

青山さんの笑顔木が嫌いな人は、まずいませんからね
「人間の本能として、木の見た目、味わい、匂いや温かみというのはきっと人間が本能的に持っているものなので、素材を活かす、そしてよい製品を作る、というのが我々の仕事です。」

工房へ工房に入る工房を見学させていただきます。

カットする作業加工場イメージシャッターを開けると木の香りがふわっとしてきます。職人さんの手が入る時にまた眠りを覚ます木たち。

工房の中イメージHacoaの木材加工はおおよそ、切る、削る、磨く、組むと4つの工程で製品になります。これは漆器の木地づくりでも、デザイン雑貨でも同じ。同じ技術を使いながら、いかに面白い製品にするかというアイデアと、それのデザインを実現するのが職人さんたちの腕の見せどころ。

カットしている切る

NCマシン時には機械でカットしていきます。これはNCマシンといって、あらかじめ記録させておいた形状に加工してくれるもの。同じ品質で大量に同じものをつくるような時に使います。

シガレットケースの型しかし、もちろん最初のサンプルづくりは職人さん、そして、木の種類や乾き具合が変われば人の手で微調整。人と機械のハイブリッドです。

横だけでなく高さもカット平面だけでなく立体的んカットすることもできます。

削り、磨く削る&磨く、

道具イメージ
組む組む、

樹種が違う組まれた。

iPhoneケースを製作中スマホケースを製作中の職人さん。

若い職人さんフォトフレームを見る職人さん。

古くからの職人さんもいてるそれを磨く職人さん。
継ぎ目を整えています。

「人がモノを作り、モノが人を呼んでいる」
工房の中には、ベテランから若い職人さんまでが一緒になって働いています。
Hacoaがスタートしてから若い職人さんが増えるようになった、人がモノを作り、モノが人を呼ぶような循環が生まれた、と青山さん。

新しくできた工房Hacoaの中には工房がもう一つあります。

女性も働く女性も働く。

研磨剤こちらでもベテランの職人さんが…ではなく、山口工芸の会長でした。職人さんであることに間違いはありません!

職人さんそして会長山口さんは研磨作業の真っ最中。

ブックエンドをヤスリがけブックマークをヤスリがけしています。
ヤスリがけは、粒の粗さが異なるものを使って、粗磨き、中磨き、仕上げといくつかのステップで仕上げていきます。

ヤスリにはいろんな番手があるこちらのヤスリは「240番」、1インチ四方に粒が240あります。

いろんな種類があるぞこういった木材加工のマシンは、メーカーから購入しますが、中には注文したものもあります。
会長が直接訪問して「こんな風にして」と製造元に改造をリクエスト。

昔はこんなの作ってたよ「昔は、こんなの作ってたよ」と作品を見せてもらいました。伝統的な漆器の木地です。

接着剤としても漆が使われる水物(水が入る器)には、木の境目や継ぎ目に接着剤として漆が使われています。この漆は「麦漆(むぎうるし)」といって、生漆(きうるし)に小麦粉をまぜたもの。水に溶けない接着剤です。
しかし、使うのは、なかなか面倒。1ヶ月くらい乾かず、効率が良いとはいえず、加工の際には、粘りすぎてヘラ離れがよくありませんが、水に強いのが良いところ。

急須木の急須!

分解できる分解もできます!!

鉛筆ワークショップイメージ鉛筆ワークショップイメージ今回の工場開きでは、鉛筆づくりのワークショップも開催。

鉛筆ワークショップ材料鉛筆の材料選び。並んでいるのは、チークとパープルハート、チェリー、ウォールナット。
チーク・ウォールナットは世界三大銘木と呼ばれています。
パープルハートは希少で、独特の紫色の美しい色をしており、美しい色や風合いを活かした家具などで使われる木材。
こども編集員はチークを、大人編集員はパープルハートをチョイス。

ロゴ入りでかっこいいよHacoaのロゴ入り鉛筆、かっこいい!

芯です鉛筆の中の芯をとります。
この箱、サイズがぴったりですが、実は偶然なんだそうです。

二つの部材を芯を本体の溝に置き、

合わせるもう一方の本体と合わせます。

向きも決まっている鉛筆を削るときに、木の繊維によって削りやすさが変わる場合があるので、向きを揃えます。そのための印がつけてあります。

のりをノリを混ぜまぜして、

塗っていく塗っていくたっぷり塗っていきます。ノリが足りないと、鉛筆を使っていて割れてしまうこともあるので、強力に密着するようにつけます。

ノリがはみ出す
ノリを拭くはみ出したノリは、拭けばOK!

挟む挟むその2これを挟んで15分ほど待ちます。

しばらくお待ちします待っている間におしゃべりと、

削る練習鉛筆削りの自主練。
削る練習2削れた削りやすさも木によって変わってきます。実際にやってみて比べてみて、はじめて感じることのできる体験。

止まらなくなってきたとまらなくなってきた。

くっついた時間はあっという間に経ち、くっつきました。

ヤスリで面取りしていくヤスリで表面をなめらかにしたり、面取りをします。

フゥーふぅ〜

エアーで飛ばす削りカスをエアーで吹き飛ばし、

できた!できた!完成。

ワークショップを準備してくれたお兄さんこのワークショップを企画した入社1年目の本田さん。
鉛筆づくりをワークショップの題材に選んだのは、木を加工する技術がたくさん含まれているから。普段は木工の職人さんで、木が大好きな人です。
「鼻の穴にクズが入ってくるけど、木ごとにいろんな匂いがあるのがわかります。作業をやっているうちに、だんだん音でも木の状態がわかるようになってきて、同じ木でも刃物の音が変わってくるので、木の音を聞くのも仕事なんだと思います。毎日時間が経つのを忘れるほど、黙々とやっています。」

もう削るのとまらないこちらにも時間を忘れて木に没頭する人がいます。
削るの、もうとまらなくなってきた。

ワークショップイメージ身近なお子さんに憧れてもらうような存在になりたい
Hacoaでは、今回のイベントのためだけではなく、定期的にこのようなイベントを開催し、
木のぬくもりに直接触れる機会も提供しています。このワークショップはずっと続けていく、と青山さん。かっこいいオフィスにしたのも、ワークショップのような体験の機会を提供するのも、「身近なお子さんに憧れてもらうような存在になりたい。もしかすると数年後には『あのワークショップに参加しました』とHacoaにきてくれるかもしれない。それが次のアイデアを生み出し、また人を呼んでくる」という思いから。

楽しいおしゃべりの時間は、このように過ぎていき、

すっかり夜あっという間に夜。木は時間を忘れさせてくれます。

記念ショットずっと新しいプロダクトを作り続けながら、人を呼んでくる、そしてその人がまた生み出す、という循環は河和田のモノづくりを次の世代へつなぐため。Hacoaの職人みんなが忘れずにいるその思いは、木が年輪をかさねるように着実に受け継がれています。

【詳細情報】

Hacoa(有限会社 山口工芸)

電話番号:0778-65-3303
住所:福井県鯖江市西袋町503
http://www.hacoa.com/

(text:西村、photo:市岡)

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