日本の産業や学問を支えてきた地下施設、スーパーカミオカンデに潜入!ジオ・スペース・アドベンチャー前編
年に一度だけ、一般の人たちが、世界を代表するニュートリノ(※1)の観測施設スーパーカミオカンデ(※2)の中や、神岡鉱山の坑道に入ることができるGSA(ジオ・スペース・アドベンチャー)というイベントが開催されるという話を聞きつけ、しゃかいか!は、岐阜県飛騨市の神岡町にやってきました!
鉱山の街、神岡町
神岡地方は、古くから鉱山の開発がおこなわれてきた場所で、明治時代に入って、三井組が神岡鉱山を開き、神岡町は鉱山の街として栄えてきました。現在、神岡鉱山は鉱石の採掘をおこなっていませんが、たくさん掘られた坑道の跡地には、スーパーカミオカンデがあります。
GSAの出発地は、飛騨市の神岡公民館です。ここで受付を済ませ、ツアーが始まるのを待ちます。
ツアーバスがやってきました!このバスに乗り込んで神岡鉱山まで向かいます。
バスが出発すると、ガイド役のスタッフさんから、ツアーについて説明が始まりました。
GSAは、地元住民の方々が発案されて開催しています。運営の主体は、地元住民の方々が自主的に運営する組織で、全員がボランティアで関わっています。もちろん、ガイド役の方もボランティアで案内をしてくれています。
いざ、鉱山の中へ!
そうこうしているうちに、神岡鉱山の跡津坑口の前までやってきました。ついに鉱山の中に入っていきます。
鉱山の中に入る車は、低公害車(※窒素酸化物や一酸化炭素、二酸化炭素などの排出が少なく、環境への負荷が少ない自動車)と決められているので、ここでバスの乗り換えです。
鉱山の中に入るバスに乗って、期待に胸を膨らませるこども編集員!ワクワクです。
山頂から1000m下の地点に
いよいよ、鉱山に入っていきます。私たちが入った跡津坑口は、山頂から1000m下の地点になります。そのため、水平に移動しても、地下1000mの世界に入っていくことになります。当然のことながら、鉱山の中は真っ暗です。
坑道を車で走ること5分。車を降りると、ちょっと肌寒くなりました。気温は14度ほどです。ここからはみんなで坑道を歩きます。
真っ暗闇に大興奮!
周りは真っ暗なので、手元の懐中電灯だけが頼りです。これだけでも、興奮してきます。参加者が歩いているのは、実際に鉱石を採掘するために掘られた坑道です。この道を歩くだけでも、ふだんはなかなかできない貴重な体験です。
歴史解説でタイムスリップ?
しばらく歩くと、少し広い場所にやってきました。ここでスライドを投映しながら、神岡鉱山の歴史について話を聞きます。神岡では奈良時代から鉱物の採掘が行われていたといいます。戦国時代から江戸時代にかけては神岡一帯でも金がたくさん取れたそうですが、だんだん金が取れなくなり、衰退した時期もあったそうです。
神岡鉱山が東洋一の規模に
しかし、明治に入ると三井組が鉱山経営に乗り出し、近代化によって生産量を上げていきました。そして、日清戦争や2度の世界大戦によって、弾丸の材料として利用される鉛の需要が拡大し、神岡鉱山は東洋一の規模を誇るようになったのです。
説明を聞いていると突然、背後からカンカンと採掘作業をする音が鳴り響いてきました。
赤ふん一丁でカンカンカン
振り返ると、赤ふん一丁で岩盤を掘る人たちが!
何だ?何だ?タイムスリップ?と思わせる光景は、江戸時代の採掘作業をコント風に再現した出し物でした。
もちろん、彼らもボランティアで関わっている地元の人です。現在の神岡鉱山は、大規模な採掘を行っていません。そこで、再現実演の後に、重機などを使って採掘を行っていた当時の様子を記録した映像が上映されました。
上映中に突然、緊急事態を告げるアナウンスが響きました!何だろうと思って振り返ってみると・・・。
迫る大型重機に興奮!
何ということでしょう!坑道をふさいでしまうほど大きな重機が迫ってくるではありませんか!ところが、この重機は、すぐにバックしてしまいました。スタッフに促されて、この重機が通った道を歩いて行くと・・・。
照明がつけられ、先ほど登場した重機が姿を現しました。名前はロードホールダンプやスクープトラムとよばれる重機です。坑道内で作業しやすいように車体が低くつくられています。全長10m60cm、幅2m40cm、総重量37トンととても巨大な機械です。正面に着いているバケットは12トンの岩石を運ぶことができます。
人が入るとこんな感じ。大人4人とこども1人がすっぽりと収まります。
続いて紹介されたのは、この重機。
先の部分にドリルがついていて、岩盤に穴を開けられるようになっています。
この重機は油圧ジャンボという名前で、フィンランドのタムロック社が製作したものです。この機械では、直径5cm、長さ3mの穴をわずか3分で開けてしまうそうです。そして、その穴の中にダイナマイトなどを詰めて爆破することで、固い岩盤を粉々にしていきます。
油圧ジャンボに乗り込むと、操縦席からはこんな感じで見ることができます。
現在、神岡鉱山を運営している神岡鉱業の人が機械の説明をしてくれました。
ここまで、ふだんは入れない場所を歩き、珍しい機械も目の当たりにしてと、盛りだくさんの内容でした。
この後も、坑道の中の冒険は続きます。後編では、スーパーカミオカンデの中へ潜入します!
(※1)ニュートリノ:この宇宙をつくる基本的な粒子である素粒子の1種。他の物質とほとんど反応しないことから幽霊粒子といわれている。
(※2)スーパーカミオカンデ:ニュートリノを観測するために神岡鉱山の地下につくられた施設。タンクの中に5万トンの水を蓄えていて、ニュートリノと水が反応したときに発生するかすかな光を、特殊な光センサーでとらえることで、ニュートリノを観測する。
【詳細情報】
GEO SPACE ADVENTURE
GSA実行委員会事務局
電話番号:0578-82-4020
住所:岐阜県飛騨市神岡町東町378番地
E-mail:hida-academy@sunny.ocn.ne.jp
URL:http://gsa-hida.jp/
(text:荒舩、photo:市岡)
しゃかいか!編集部から一言
加藤 洋
世界の物理学をリードする東京大学宇宙線研究所付属神岡宇宙素粒子研究施設スーパーカミオカンデに潜入できる社会科見学イベント「ジオ・スペース・アドベンチャー」は最高でした!地元岐阜県飛騨市神岡町の方々もあたたかく迎えてくださっていい思い出しかないなあ。毎年夏休みの第一土曜日、日曜日に開催するので是非チェックしてください!(倍率は高いけどがんばって応募してください!)
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