日本の産業や学問を支えてきた地下施設、スーパーカミオカンデに潜入!ジオ・スペース・アドベンチャー後編
岐阜県飛騨市神岡町で開催された年に一度だけ、一般の人たちも神岡鉱山の坑道に潜入できるGSA(ジオ・スペース・アドベンチャー)前編に引き続き後編では、ノーベル物理学賞で話題のスーパーカミオカンデ潜入の模様をお届けします。
暗闇の世界を体験!
地下1000mの世界で、鉱石の採掘をするために使われる重機を見学した後は、再び坑道を歩きます。すると目の前に、ちょっと怪しげな扉が現れました。
これは防護扉で、ここは1人ずつくぐっていきます。
この扉をくぐった後、ツアー参加者が一旦、立ち止まり、もっているライトなどをすべて消して真っ暗闇の世界を体験しました。ふだんの生活の中では真っ暗闇を体験することはありません。でも、地下深くに位置する鉱山の中は、日の光がまったく入ってこないので、真っ暗闇を体験することができます。外からの音も光もない世界というのは、不思議なもので、自分の体に意識が向きますね。ふだん、私たちは外部からの刺激に絶えずさらされているのがわかります。
いよいよ、スーパーカミオカンデの中へ
坑道を歩いて行くと別の扉が見えてきました。スーパーカミオカンデの入り口です。
スーパーカミオカンデの敷地内には、見学に訪れた偉い人たちのサインがたくさんあります。
奥に進んでいくと、何やら物々しい装置が。これはスーパーカミオカンデに水を送るための装置らしいです。
そして、急に開けた場所にやってきました。
天井も高くなっています。
スーパーカミオカンデは5万トンもの水を貯めることのできる巨大なタンクです。この部屋は、そのタンクのちょうど真上にあたる部分だそうです。そういわれても、ちょっとピンと来ないですね。
わかりやすい絵で見ると「今ココ!」です!
テレビや新聞などでスーパーカミオカンデが紹介されるときは、大きな電球のようなものが一面に並んだ、巨大な壁の画像などが出てきます。だから、スーパーカミオカンデの見学でも、そういったものが見られると思ってしまいますが、実際は見られません。なぜなら、そこには、水が貯められて人が入ることはできないからです。残念ですが、仕方がありません。
捕まえにくいニュートリノを捕まえる
ここでは、ニュートリノのお話を、東京大学宇宙線研究所の中畑雅之教授がわかりやすく説明してくれました。
スーパーカミオカンデが、観測しているニュートリノは、この宇宙をつくる基本的な粒子である素粒子の一種です。ニュートリノは地球上にたくさんやってくるのですが、他の物質と反応しにくい粒子です。
存在しないように思えてたくさんある
ニュートリノは、私たちの体とはほとんど反応しません。そのため、私たちにとって、ニュートリノはほとんど存在しないように思えます。でも、実は、ニュートリノはこの宇宙の中にとてもたくさんあるものなのです。例えば、1辺が2mの立方体に30億個も存在しますし、私たちの手のひらほどの面積の場所を1秒間に1兆個以上通過しています。
スーパーカミオカンデが24時間365日観測
ニュートリノは宇宙からやってきた高エネルギー粒子である宇宙線が大気と反応したときに発生します。また、太陽でもつくられます。そして、星がその活動を終えるときに起こす超新星爆発のときにも発生します。特に超新星爆発は10年に1度くらいしか起きない、起きたとしてもニュートリノが飛んでくるのは10秒間ほどしかありません。いつ飛んでくるかわからない超新星爆発によるニュートリノを取り逃さないためにも、スーパーカミオカンデは24時間365日観測をし続けなければいけないのです。
これは大きな電球に見えますが、スーパーカミオカンデに使われている光センサーです。スーパーカミオカンデのタンクの内側には、このセンサーが1100万本も取りつけられていて、ニュートリノがやってきて、反応するのを待っているのです。
模型で見るとこんな感じです。
スーパーカミオカンデの見学が終わると、再びバスに乗って神岡公民館に戻ります。
公民館では、東北大学のニュートリノ観測施設である「カムランド」についてお話がありました。
今回の見学コースには含まれていませんでしたが、神岡鉱山にはニュートリノを観測する「カムランド」という装置もあります。そこでは、スーパーカミオカンデとは別の角度でニュートリノの研究が進められています。「カムランド」で行われている研究について、東北大学大学院で学んでいる林歩美さんがお話をしてくれました。
市民が協力してつくりあげたイベント
ジオ・スペース・アドベンチャーは、地元の飛騨市の人たちが協力してつくっているイベントです。
イベントのためだけに、商品開発もしています。写真の商品は、江戸時代の人たちは、鉱山で赤ふん一丁で採掘をしていたというところからインスピレーションを受けた赤ふんつけ麺です。麺はトマトを練り込んであって、おいしかったです。
地元の高校生たちも売り子さんとして、イベントを盛り上げていました。
発見!スーパーカミオカンデの内部を体験できる施設
このイベントでは見られなかったスーパーカミオカンデのタンクの中が見られる施設がなんと!神岡公民館から車で5分ほど行ったところにある道の駅スカイドーム神岡にありました!
ここ道の駅スカイドーム神岡の奥には、スーパーカミオカンデ展示室があります。
展示室は、スーパーカミオカンデで使われている光センサーが壁に埋め込まれていて、スーパーカミオカンデのタンクの中に入ったような感覚を味わうことができます。
しかも、モニターにはスーパーカミオカンデの観測状況がリアルタイムで映し出されているので、ちょっとした研究者気分にも浸れます。
1日とても充実した冒険時間を過ごすことができました。ありがとう神岡!飛騨市の皆さん、ありがとうございました!
【詳細情報】
GEO SPACE ADVENTURE
GSA実行委員会事務局
電話番号:0578-82-4020
住所:岐阜県飛騨市神岡町東町378番地
E-mail:hida-academy@sunny.ocn.ne.jp
URL:http://gsa-hida.jp/
(text:荒舩、photo:市岡)
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