日本の農業、地元、高齢者を元気にするオシャレ野菜! ちこり村(株式会社サラダコスモ)
ものづくりの現場を見学するしゃかいか!工業製品や伝統工芸品だけではなく、もちろん農産物の現場も見学。ということで、今日は岐阜県中津川市で「ちこり」の現場です!
大きなちこりの前でポーズしてくれているのはちこり村を運営する株式会社サラダコスモの広報担当の筧(かけひ)さんです。今日はよろしくお願いします!
筧さんは、もともと青年海外協力隊の村落開発普及員としてザンビアに赴任。その時は農業のことは知らなかったけれど、現地で偉い先生や教授ではない普通の日本の農家さんが指導する姿を見て「日本の農業って実はすごい!」と知り、もやしや豆苗、かいわれ大根など安全な野菜を生産するサラダコスモに入社。
ちこり村は、株式会社サラダコスモの本社・スプラウト工場として建てられた施設を改装。2006年に西洋の高級野菜「ちこり」をテーマに教育型・観光生産施設「岐阜 中津川ちこり村」として生まれました。
ところでちこりって何なの?
僕もこちらに伺うまでは、知りませんでしたごめんなさい。ちこりはイタリアンやフレンチで高級食材として使われ、ハーブの王様とも呼ばれています。最近はテレビ番組など、たくさんのメディアで取り上げられてる話題の野菜。
ちこりは、もともとヨーロッパ原産のキク科の野菜で、フランス語ではアンディーブと呼ばれ、独特の苦味があります。日本でも国産のチコリが生産され、こちら岐阜県中津川市が主な産地で、北海道や埼玉、愛媛などでも育てられています。
株式会社サラダコスモとちこりとの出会いは、25年前の社長のヨーロッパ出張がきっかけ。市場に行くとちこりがあり、ちこりの栽培がもやしと同じ水耕栽培であることを知りました。暗室などの設備を整え、オランダのちこり農家の先生にアドバイス頂き、ちこりづくりがスタートしました。
ちこりは和名は菊苦菜(キクニガナ)といいます。日本に親しみのない野菜に親近感をもってほしいと思い、「ちこり」とひらがなで呼ぶことにしました。
ちこり村の中では、当然ちこりも販売。他にも岐阜県産の野菜や食品が売られています。
機能性表示食品「大豆イソフラボン子大豆もやし」もあります。
サラダコスモは2015年、野菜のもつ機能性を表示できる機能性表示食品として「大豆イソフラボン子大豆もやし」を発売。子大豆もやしに含まれる大豆イソフラボンには、骨の健康を維持する効果があります。機能性表示食品とは、国の認可が必要なトクホ(特定保健用食品)とは異なり、科学的な根拠(論文やデータ)を示せば、国の審査なしに、健康への効用を表示できる食品表示の制度です。
野菜に熱心な会社!
畑で芋を育てた後、工場の中で芋を発芽させたものが「ちこり」になります。ちこりはサラダやグリル、スープなどで食べられることが多いのだとか。
暗室で水耕栽培で生産されると、ちこりは写真のように白いラグビーボール形になります。形も面白い!
ちこり収穫!
ちこりを育てるためにはまず、畑で種芋を作ることから始まります。ちこり村ではこれをちこり芋と呼んでいます。ちこりの種を畑にまき、約半年ほどで収穫です。収穫時期はおおよそ11月中旬から12月の間・霜が降りるとちこりの中の糖分が増すので、3回くらい霜が降りたタイミングで芋掘りをします。ちこりの原産地ヨーロッパの場合はだいたい5〜9月の間に行われます。
サラダコスモでは、ちこり芋畑を岐阜と長野に持っていて、ちこりの生産量は日本一です。
ちこり畑での葉っぱはこんなにも立派、そして緑色をしています。しかし、葉っぱはちこり生産には不要なので切り落とします。切り落とした葉っぱはアイスやかりんとうなどに使われています。
ちこり村に戻ろう!
「おかえり」と出迎えてくれたのは、ちこり村のキャラクター、その名も「ちっこりちこ蔵」くんです。
ただいま。
ちこり村の中では、ちこりの生産現場を見学することもできます。
冷凍状態(−2℃くらい)で数週間から1年ほど。いわば冬眠です。ぐっすり眠っています(小声)。
このように暗い部屋の中で、ちこりは育ちます。
野菜は太陽の光をたくさん浴びて!というイメージがありましたが、光をさえぎることによって、白く柔らかく成長し、食用になります。この状態を「軟白」といいます。
この栽培室の温度はヨーロッパの春をイメージした温度。このお部屋の状態はいわば、冬の畑の土の下のイメージです。土の中は結構暖かいんです。
天井の管から水が与えられ、棚の上から下に行き渡っていきます。
こちらの部屋の温度は.. .あれれ、先ほどの栽培室よりも温度が低い。
温度が低いのにちこりは大きくなってる。なぜだ?
その理由は、ちこりが土から芽を出して、ヨーロッパの春の外気にさらされている状態を再現しているため。
このように栽培室を左から右へ、成長過程に合わせて、温度や水温を調整しています。
栽培室の中でヨーロッパの季節を経験したちこりは約3週間ほどで収穫されます。
結構根が張っていて取るのにも力がいります。
栽培室から出たちこりは、芋を切り落とされ、食用になる葉の部分と分けられます。
実はこちらのちこり村やちこり工場で働いている従業員のみなさんは60〜70歳代が中心。3.7人に一人が高齢者の中津川で、60歳以上の方を積極的に雇用し「高齢者の元気」に取り組んでいます。ちこりを「サッサッ」とリズムよくマシンへセット。ちこりも働く人も元気でフレッシュ!
製品になったちこりは、パック詰めされ百貨店やスーパーへ出荷されます。
施設の中には焼酎蔵があります。
ちこりを作っていて気付いたのは、破棄する部分の多さ。畑で愛情を込めて作ったのに廃棄してしまっていた芋の部分を、資源としてなんとか再利用したい!という熱意から生まれた製品。ちこり村で「焼酎を作ろう!」とアイデアが生まれた後は、スタッフである蔵長が九州へ焼酎づくりの修行を経てこの蔵を完成。中津川の名産に育てようとチャレンジを続けています。
この加工製品への取り組みは拡大し、
岐阜県産野菜のジュースに入るなど、六次産業化したちこりとして、その可能性がどんどん広がっています。
ちこり村にはレストランもあり、バイキング形式でほんとにたくさんのお料理をいただくことができます。
でも、一番人気はやっぱりサラダ。「ほろ苦いです」ときちんと書いています。
しかし、あくまで野菜の会社です。
サラダコスモの野菜づくりはもやし栽培からスタート。しかしもっと遡ると実はここ中津川のラムネ屋さんでした。ラムネが売れなくなる冬の副業としてもやし販売を始めたのですが、当時はすぐダメになってしまうもやしは傷みを防ぐ防腐剤や、見た目を白くする漂白剤など薬がいっぱい含まれていました。社長さんは、従業員も持って帰らない白いもやしにとても心を痛めていました。
実は砂糖がたくさん含まれているラムネに心を痛めていた社長の中田さんは、もやしでは健康にいいものを作りたい、という強い想いのもと、添加物なし・無漂白のもやしづくりに挑戦。見た目がきれいで保存がきくもやしが当然だった時代に、孤軍奮闘し安全なもやし栽培の方法を開発し、安全なもやしへを全国に先駆けて開発したサラダコスモの取り組みが認められ、全国的に広がったことで、日本の台どころに安全なもやしが定着しました。
それ以来、無農薬のかいわれ大根やブロッコリーの新芽、赤ラディッシュの新芽、そしてちこりとそのバリエーションを増やし、安全・安心、そして食べて健康になる商品を作り続けています。
日本の農業を元気にしたい。
サラダコスモでは、高齢者の元気!地元の元気!日本の農業を元気に!という3つの元気を目標に、いろんなことに挑戦しています。
ちこり村やちこり工場で、高齢者のみなさんに活躍してもらうための仕事づくり、小学生を招待した野菜のワークショップの開催などご近所のみなさんへの取り組みから、国内の休耕地をちこり畑に活用して日本中にちこりを根付かせ、農業を元気にする!という大きなテーマまで、そのスケールもさまざま。
まだまだご家庭の食卓には一般的ではないちこりですが、今回見学してわかったのは、日本の農業を元気にする種はすでに蒔かれ、確実に根をはり育ち始めているということでした。
筧さん、今日は一杯お話をきかせていただき、そしてヘルメットをかぶってのガイドを有難うございました!
ちこり村(株式会社 サラダコスモ)
電話番号: 0573-62-1545
住所:岐阜県中津川市千旦林1-15
URL:http://www.chicory.jp/
(text、photo:西村 ※一部の写真はサラダコスモさん提供)
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