おかみさんたちの集まりが生んだ甘〜いトマトケチャップ 明宝レディース
明宝ハムさんの見学に続いての明宝シリーズ第二弾、明宝トマトケチャップの工場を見学にやってきました!
明宝トマトケチャップは、岐阜県郡上市明宝地区で製造されているご当地のトマトケチャップ!
添加物を使っていない健康志向とまるでジャムのような甘さが大人気で、オンラインショップでは売り切れ続出。このトマトケチャップの大人気の秘密は...
作っている人たち!
明宝トマトケチャップの製造元は「明宝レディース」といいます。名前の通り働く方はみんな女性。そのはじまりは1961年(昭和36年)までさかのぼります。
スタートはいきなり会社としてではなく、言うなれば、おかみさん方の集まり。当時、この地域の食生活や生活環境の改善や親睦を目的として「芝生グループ」として11名で発足しました。かわいい名前です。この集まりは、その後次の少し若い世代のお母さん方7名が1975年(昭和50年)頃、加わり、この地域の産物だったトマトの栽培に取り組みました。まだこの時期は「何か商品を作って村を活性化しよう!」という具体的な目的はなく、集まっておしゃべりしてるだけなのもなんなので、何か一緒にやらない?というゆるやかな集団。当時はまだ男性が稼いで女性は家庭を守る、という価値観の時代。日本各地でこういった、ご婦人のみなさんの集まりがたくさんありました。
しかし明宝地域のお母さんたちは、徐々に活動を始めます。まずは村民センターの青空市場でこんにゃくの試作と製造販売。
さらに1983年(昭和58年)に別のグループとして活動していた「若草グループ」(10名)が加わり「明宝村農業婦人クラブ」が結成。その頃から、この地域の郷土食で、それぞれのお家で製法が独自だった「おからもち」の製法の統一と販売、摘果メロンの酒粕漬け、飛騨の紅かぶ漬けの商品化、果ては漬物・ソース類・惣菜・こんにゃくの製造営業の許可も取得するなど、活動が活発になってきます。おかみさん達スゴい!
地元の名産品や、ご家庭の味を商品化するために、つくり方を標準化しよう、という試みがスタートでした。
そして、
そして、
お母さんのやさしさが詰まったトマトケチャップが誕生
明宝トマトケチャップが生まれたのはちょうどこの頃。6時間以上も丁寧に煮込んで作られる、食品添加物や防腐剤が使用されていないトマトケチャップが誕生。安全でおいしいトマトケチャップというところにお母さんがたの優しさが感じられます。
ということで、早速トマトケチャップの製造現場にいくぞ!
まずはトマトの選別。原料は岐阜県産のトマト100%が使われています。トマトケチャップを作ろう、というきっかけは、規格外の大きさのものや傷がついてしまったトマトをなんとか活かせないか?という優しさから。しかし、あくまで「余り物を使わせてもらう」スタイルを貫く明宝トマトケチャップ。トマト農家さん達はケチャップなどの加工品専用に作っているのではありませんし、台風や気温などの気象条件によって、ケチャップの生産数は変わってしまいます。
作った当時は原料の供給と、余り物の活用が上手にバランスを保っていましたが、メディアで取り上げられるなどで、大人気でも増産できない、という歯がゆい事情が最近の明宝レディースの悩み。
したがってできるだけ丁寧に使えるところを見つけながら選り分けていきます。
「食べてみる?」といただいたトマト。原料の時から甘いです。果物と野菜の境目を行き交うトマトですが、この時のトマトは間違いなくフルーツ。ごちそうさまでした!
しかし、傷んでいるものは止むを得ず、この選別工程でで取り除かれます。
フィニッシャーという機械にかけ、トマトの皮やヘタなどの余分なものは取り除き、ジュース状にします。このマシンが導入されるまでは、ヘタ取りなどはすべて手作業でやっていました。働き者のフィニッシャーに感謝です。
いよいよ煮込み工程。ジュース状になったトマトを大きな鍋に入れて混ぜ混ぜ。約5時間煮込みます。この間に調味料などを何回かに分けて入れて味を整え、焦げ付かないように常に見張り、手作業でかき混ぜ、アクも丁寧に取っていきます。暑い夏は大変な現場。
煮込みはじめてから約5時間後のトマト。ペースト状になり、ケチャップと呼んでもいい状態になりました。味は凝縮され、色もトマトの濃い赤色になり、水分が飛ばされ、最初のトマトのジュース状の状態の時に比べて約3分の2の量になっています。
糖度のチェック。規定の糖度を満たしているか検査。
甘さが特徴の明宝トマトケチャップですが、その糖度は25度。オムライスやパスタ、ピザ、卵焼きといったケチャップの定番の使い方の他、パンに塗ってジャム代わりに使ったり、水やソーダで割ってジュースにできるほどの甘さ、です。
ちなみに、明宝レディースではトマトのジャムも作っています。
ラベル貼りやタグ付けも一つひとつ丁寧に手作業で進んでいきます。
トマトケチャップとハムのコラボ「明宝ハムステーキ定食」です。
明宝地区の道の駅「磨墨の里公園」でいただくことができます。
こちらに添えてあるのはスティックタイプです。
明宝トマトケチャップは添加物不使用なので、開栓後の保存期間は冷蔵庫で1週間。美味しさとの交換条件ですが、スティックタイプに包装された明宝トマトケチャップもあります。こういったところにも、実際に使う女性ならではの視点が生かされています。
ごちそうさまでした!
明宝ハムが営業マン!
明宝ハムさんとの協力は道の駅のメニューだけではなく、オンラインショップ以外の流通は、明宝ハムが営業活動を担当しています。
「明宝レディース」にしよう! by 岐阜県知事
明宝レディースが株式会社になったのは1993年(平成4年)、名付け親は当時の岐阜県知事の梶原さん。当時の会合でお箸の袋に書いたのが始まりだったのですって。レディースだからと言って、実はその昔みなさんは改造車でブイブイいわしてた、などというエピソードはありません。ブイブイいわしてたのは、愛情を込めた製品作りだけ。
その後も、温泉にうどん・おそばのお店を開店したり、加工場を改造したりで、活動が注目され、さまざまな賞を受賞しました。エネルギーすご過ぎる。
社長は一年交代にしよう!
働く人も女性なら、社長さんも当然女性。設立当初は「社長は一年交代で!」となってたのだそうです。「わたし社長なんて恥ずかしいわぁ、奥さん次の社長どうぞ」という微笑ましいやりとりが頭に思い浮かびます。
女性ばかりが働くことで困ることはないですか?
「女性ばかりの職場で困ったことないですか?揉め事とか」と社長の清水さんにちょっと意地悪な質問をさせていただきました。「普通の職場くらいにありますよ」と社長の清水さん。スパッと回答。気持ちいい。
しかし、女性ばかりの職場の悩みというよりも、勤めている人が、みんな顔見知りのご近所さんなので、運動会や行事、他にもお葬式のお手伝いなどで、一斉にお休みしないといけない状態になって工場の稼働に直撃するので、どちらかというとそちらの方がこの工場の悩みなのだそうです。
制服を脱げば、みんなご近所のお母さんたち。
そしてもう一つの悩みが、後継者問題。もともとお母さんたちの集まりとしてスタートしたので、働き方も、お母さんスタイルになっています。これまでは、お子さんが大きくなったお母さんの就職先として機能していましたが、最近の若いお母さんは、みなさん共働きで復帰していくから明宝レディースに新しく来てくれる人が減っているのが正直なところ。
しかし、スキー場におぜんざいのお店を、道の駅には「和食処おかみさん」を出店したりと、やりたい放題ではなく、どんどんその活躍の場を広げています。
和食処おかみさんの日替わり弁当です。愛情こもってておいしそうでしょ。
お母さんの「働いてもらい方」という悩みを抱えながらも、新商品の開発やお店の出店など、事業の方はまだまだ積極的に活動中の明宝レディース!
この明宝地域で女性が活躍していたのは、50年以上も前からでしたが、愛情がぎゅっと詰まったトマトケチャップをいつでも食べられるように、次のおかみさんたちが集まり「レディース」が受け継がれていくことを願わずにはいられない見学でした。
株式会社 明宝レディース
電話番号: 0575-87-2388
住所:岐阜県郡上市明宝寒水268-1
URL: http://www.meiho-ladies.co.jp/
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