相手を大切に思う心を丁寧に結ぶ華やかな加賀水引 津田水引折型

金封

結婚、出産などのお祝いに贈られるご祝儀袋を結ぶカラフルな紙製の紐を水引といいます。お見舞い、弔事など贈答品全般に使用されている水引は結び方や、色、本数それぞれに意味があり「相手を大切に思う心」を形にしています。

加賀水引

平面的だった水引折型をふっくらとしたまま折り目をつけず、華やかなフォルムにした立体的な結びを「加賀水引」といいます。

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本日は、「加賀水引」を考案した金沢の津田水引さんへやってきました!

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包む、結ぶ、書くの3つの基本を大切に
店内に入ると、大切な人に想いを包むご祝儀袋が紅白や白黒の色だけでなく、華やかな彩りでずらり。
水引折型は、きちんと贈る人の気持ちが贈られる人に届くように和紙で「包む」、水引で「結ぶ」、差し上げる理由・気持ち・名前を「書く」の3つの基本を大切にしています。

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店舗には加賀水引折型の立体的な水引の結び(水引細工)を生かした風鈴や、

加賀水引

芸術的な作品もたくさん飾られています。

加賀水引

水引の色や、結び方を変えるだけでなんとも麗しい折型が生まれています。結び方それぞれに意味があります。

紅白の水引を使用した「あわじ結び(写真一番右下)」は、最高位の水引の結びで水引細工の多くはこの結びを応用してつくっています。「あわじ結び(写真一番右下)」の左隣の「より返し」は、寄りを返す波に例えて、善いことが幾重にも重なるようにという意味を持ちます。

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型を破るには、型を身につけないと破れない
加賀水引の世界を五代目の津田六佑さんにご案内をしていただきます。よろしくお願いします!
実は、六佑さんがこの世界へ飛び込んだのは約2年前のこと。それまでは、家業を継ぐ気持ちを持ちながらWEBサイトの構築やデザインをするつくる業界に約10年間いました。
「型を破るには、型を身につけないと破れないですからね」と六佑さん。今は、昔から続く型の習得に四代目の技を見て励む日々です。

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水引の生産は長野や四国
「早速ですが、水引についてよく勘違いをされる方が多いのですが、水引はこの紐のことをいいます」と穏やかな口調で六佑さん、水引をほどき始めます。水引はこより状にした和紙に糊をひき、その上から糸を巻きつけたもので、長野で生産された水引をこちらの津田水引さん(以下、津田さん)では加工されているそうです。

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起源は隋からの贈り物
水引の起源は、遣隋使の時代に始まります。遣隋使が帰国する際に、隋からの贈り物に紅白に染められた麻紐が掛けてあったと言われています。水引は、宮中や上の階級の者のみ使用が許され、庶民が使用できるものではありませんでした。お辞儀の仕方や、襖の開け方などを記した礼儀作法の流派「小笠原流」という上の位の者しか使用できない流派の包み方が明治時代に解禁され、庶民の水引の使用を許されるようになります。

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水引が解禁され、1915年(大正4年)に六佑さんの高祖父にあたる初代の津田左右吉さんは、茶人であり書画を嗜む趣味人だったので小笠原流の水引折型づくりを繰り返す中で独自の結びのアイデアを思い付きます。

加賀水引左右吉書画

風景を描写した書画、左右吉さんが描かれたもので、趣味の書画を記した本が数冊にも渡り保管されています。

金沢から全国へ広まった加賀水引
初代の左右吉さんがそれまでの平面的だった結納・祝儀袋の水引細工・折型から、現代の主流となる立体的な折り方に合う立体的な結びを考案し、金沢の「加賀水引」として全国に広めました。

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津田流水引の流派は無茶苦茶流
当時、自分の流派を尋ねられると左右吉さんは「無茶苦茶流と申し候(でございます)」と紹介されていたそうです。現在に見られる加賀水引折型は100年もの左右吉さんからの伝統を継承し、作り続けられています。

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伝統引き継ぐ加賀水引図案集
無茶苦茶流から生まれる水引飾りの図柄を初代、左右吉さんの息子、太一さんが丁寧にスケッチしていたため、昔のままの加賀水引の折型が伝統継承され今に至ります。

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太一さんは父である初代、左右吉さんと同様に書画が得意で、左右吉さんの作品を丁寧に描き残しています。

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包み方や大きさなど細かな説明書きがされています。

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こちらの荘厳な甲冑はなんと約100年前に結びつくられた水引細工です。左右吉さんのつくる素晴らしい作品は皇室献上など数々の栄誉を受けられたそうです。

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二代目の梅さんは、兄、太一さんが描き遺してくれた水引飾りの図柄を見て学び、日本全国に津田流水引、「加賀水引」を広めました。

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こちらは、梅さんが作業の合間合間に作られていたお内裏様です。お内裏様の雄蝶・雌蝶という特徴的な折り方で折られています。(出っ張っている折り方が雄蝶)今も全く色褪せずに麗しい姿で並ぶお内裏様の細やかな技に思わず舌を巻いてしまいます。

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六歌仙の水引細工も細やかな技が光ります。

加賀水引

加賀水引初代の津田左右吉さんの作品

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三代目の剛八郎さん作品

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四代目の宏さん、さゆみさんの作品

加賀水引 加賀水引

祝いのツルが舞っています。独自の結びでつくった水引細工は、結び方を忘れてしまわないように商品を1対残しておくそうです。

加賀水引の水引

紅と金の水引。津田流水引では、水引に独自に輝くような加工を加えています

当店で作った水引素材

加工を加えた水引は、紅に見える金の箇所がまだらになっています。

当店で作った水引素材2

まだらになった紅の水引は、機械では生み出せない自然な輝きを作り出します。

加賀水引の製造工程1

全国にここだけの水引製造機
「大切な想いを包むものだからこそ、一つ一つにこだわりを持って作っています」と六佑さん。
オリジナルの水引をつくるための機械があるとのことなので、水引製水引の工程を見学させていただきました。
全国にここだけの水引製造機は、六佑さんの父、四代目の宏さんがいろいろな人に相談してやっと完成した機械なんだそうです。

手作業で自然な輝きを生み出す
水引を機械に一本一本取り付け、金、銀の水引を纏うようにカラフルな色の水引を巻きつけていきます。

加賀水引の製造工程2

機械による同じ間隔の巻き方ではなく、巻く間隔をあえてランダムに変えて違いをつくり輝きを生み出しています。機械の上下に水引を10本セットして、色鮮やかな水引を巻きつけていきます。水引の巻きつけ作業の途中で水引が切れてしまうとその水引は使えないものになってしまいます。

加賀水引の製造工程3

巻きつける水引のカラーバリエーションも20種類以上と彩り豊かです。

独自につくる加賀水引

巻きつけ終わったオリジナルの水引はまだらに輝きます。

加賀水引

オリジナルの水引を使用して六佑さん、依頼された五月人形のセットの刀を製作しています。

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和紙に水引を巻きつけていきます。

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ボンドをつけて乾燥させる作業を繰り返し、

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ついに完成です。

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毎年、干支の水引細工がつくられます。今年の干支猿も自分の出来上がりに驚きの表情!

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お世話になった方へのお礼として贈られる「松の葉」は、細い松の葉にも隠れるくらいの「気持ちばかり」という謙遜の意を表しています。それでは、津田流水引折型の結び、包まれる工程を動画でご連絡ください。

達筆な字で「松の葉」を書き、

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最後に、金沢の金粉を付けて豪華なご祝儀が完成です。

加賀水引

ご祝儀の他にも水引の美しさを生かし、カラフルな水引をあわじ結びにしたバレッタや、

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イヤリング・ピアスなどのアクセサリーもあります。成人式や大学の卒業式の際の和装に使われる若い方が多いそうです!

加賀水引

自分で作れる水引素材のセットも販売されています。自分の好きな色を組み合わせてオリジナルの結びをつくることができるますね!
素敵です!

加賀水引

本日は、伝統ある加賀水引の歴史から水引細工の工房といろいろご案内ありがとうございました!工房には、穏やかな女性スタッフが4名水引作品に向き合う姿勢はとても真剣、生み出す速さには圧巻でした。

加賀水引 津田水引折型

住所:石川県金沢市野町1-1-36
電話番号: 076-214-6363
メール:info@mizuhiki.jp
URL:http://mizuhiki.jp/

(text:坂田、photo:坂田、一部津田水引折型さんからのご支給)

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