【イベントレポート】 東北の手仕事展&トークセッション「東北で、何する?〜この先5年の話〜」に行ってきました!
本日はすてきなイベントがあると知り、東北は会津へ!
「3.11」をひっくりかえして、「IIE(イー)」。会津地域の地元作家、縫製工場、授産施設などと、地域のものづくりの力を結集して、商品の生産販売をおこなう、IIEさん主催の「東北の手仕事展」にお邪魔しました!
「東北の手仕事展」は、東北で何百年も続く伝統を受け継いでいく人、震災をきっかけにものづくりを始めた人、どちらにも共通する時間と気持ちを込めた丁寧なものづくりを通し、
それぞれの地域の素晴らしさを伝え、東北の中で耐え抜いてきたからこそ滲み出てくる想いの深さを感じてもらうという企画です。
詳しくはコチラ
場所は、食堂つきとおひさま。
古民家を改装した雰囲気のあるスペースです。
IIEオリジナルストール。今回の展示のための限定品もありました。
TOHOK×荒井工芸所のコラボ商品、色べこ。かわいい!
ついつい、しゃかいか!編集部も樹ノ音工房のマグカップ購入。
会津木綿のくるみボタンのガチャガチャもありましたよ!(ちゃっかりしゃかいか!カラーをGET!)
訪問した3月10日には、トークセッション「東北で、何する?〜この先5年の話〜」が行なわれました。 IIE代表の谷津拓郎さんが、同じく東北で事業を行う、株式会社金入、東北STANDARD代表金入健雄さん、一般社団法人つむぎや代表友廣裕一さんを招き、東北を拠点にした活動の今までとこれからをテーマとして語る企画です。
とっても興味深いお話でしたので、以下、内容の一部を抜粋してお伝えしたいと思います!
まずは各々の今までの取り組み紹介から
友廣裕一さん(以下:友廣):大学卒業後、「地域に関わる仕事がしたい」と思い、日本全国70~80か所をヒッチハイクなどで訪ね、農家、林業、漁業などを生業としている、地方で暮らす人たちの話を聞いてまわりました。
どんな人がどんな想いで何をしているのかを学ぶ中、「これを手伝って欲しい!」を言われたことをひたすら返していこうと、ものや野菜を売ったり、商品を作ったり、ツアーをやったりと、いろんな仕事をしました。
そして、個人事業主としてやっていけるかなと思った頃に、震災が起きました。東北の沿岸部にも恩のある人が多かったので、通うようになり、その中で出会った石巻のお母さんたちと色々なプロジェクトをやってきました。
その一つが、OCICAというアクセサリーブランド。牡鹿半島の鹿の角を加工し、漁網の補修糸を使ってアクセサリーをつくりました。
最近では、元々賃金が安かった上に震災でさらに仕事がなくなった障害のある方と一緒に、地元の鹿革を原料としたペンケースをつくりました。当事者としての立場で、ものをつくり、売るお手伝いをしています。
また、震災後に100以上のものづくりの取り組みが新たに生まれたということを知り、その人たちの取り組みを紹介する東北マニュファクチュール・ストーリーというサイトを2013年に立ち上げました。毎週現場を訪ねて取材して発信しています。
谷津拓郎さん(以下:谷津):震災後、東北の仮設住宅に入居している方々の仕事づくりとして、フリンジ(※)をつくることを始めました。
そして、その経験を通し2015年秋、IIEを立ち上げました。これ始めるにあたって、継続してお客さまに愛されるプロジェクトにしたいと思い、仮設住宅に住んでいる人という縛りをなくし、地元の名産である「会津木綿」に着目し、仕事づくりと伝統を守ること合わせて活動してきました。その中でも今は、地元である会津坂下町にもともとあった産業の「会津青木木綿」を復活させ、より多くの方に手にとっていただけるような活動にしたいと思っています。
※繊維のはぎれの糸の部分を、布の裁ち目などがほつれないようにくくったり、束ねて結び先端を散す装飾のこと
金入健雄さん(以下:金入):青森県八戸市出身で、大学卒業後文房具屋である伊東屋で5年ほど働いた後、株式会社金入と、東北STANDARDの代表をしています。本業はコピー機、本屋、文房具屋、内装屋などです。
ただ、本業と並行して工芸品の販売やプロデュース、動画を通した文化のPR、イベント企画、展示会など、東北の文化を発信するプロジェクトもやってきました。
大学時代、教授に「これから潰れる業種は文房具屋、本屋、おもちゃ屋だ」と言われ、「うちはそのうち2つ入ってる(文房具屋、本屋)、やばい!」と思い、どうしたらいいかと悶々としたまま地元に帰りました。そのタイミングで八戸ポータルミュージアムという、地元の文化を紹介する展示やギャラリー運営等行う、常設美術品のないMIX感のある新しい公共施設が2011年2月に自分の店の隣にオープンすることが決まり、運営者を募集していました。そこで、自分たちなりのローカルな発信ができないかと思っていたこともあり、運営のコンペに参加しました。
その時に初めて青森の工芸品を集めるということをしました。地域に関わる人を集め、お土産屋だけど地域のことを発信できる、工芸だけどデザインとアートもわかる、"工芸を中心にいろんなものを混ぜたお店"をやろうと提案し、開業した矢先、震災に見舞われました。ただ幸いにも比較的被害が少なかったこともあり、施設の再開と共に様々な活動を進めてきました。
ただ、活動する中で「東北の魅力とは何か」を、自分がはっきりと語りきれない部分があり、東北STANDARD PROJECTを始めました。工芸家を集めインタビューして動画を作り、紹介しながら自分たちも勉強するというプロジェクトです。
また今は、仙台に2店舗、盛岡に1店舗、青森に4店舗を展開し小売にも力を入れてやっています。
あと、直近だと、3月18日の仙台駅リニューアルに合わせ、「ヨリ未知SENDAI」というプロジェクトの製作をさせて頂いています。東北のことをPRする動画を作って流したり、トイレの壁を宮城の伝統工芸のタイルを使ったりなどして、仙台駅を通してお客さんが体感的に東北に興味を広げていけるようなプロジェクトです。
友廣さんはこの中で唯一東北出身者ではない立場ですが、どうして東北にこだわって活動しこられたのでしょうか?
友廣:最初は、被災地に入ると無力感しかなかったです。起こっていることが大きすぎて、現場にいるのに何もできない自分がすごく歯がゆかった。
そんな時、「自分たちで何かやりたい」という、パワフルなお母さんたちと出会いました。そのお母さんたちと関わる中で、「震災という大きなものに対してではなく、目の前のこの人たちのために何かしたい、この人たちのために踏み出せばいいんだ」と自分の中での力の注ぎどころがわかりました。そして、「せっかくこの人たちと何かやるなら、この人たちにしかできないことをやりたい」と、そこにある素材やその人たちの持っている技術を紐解いていく中で何か生まれたらいいな、と一緒になって考えました。
そう試行錯誤していると、たまたまミサンガを作るのが趣味だったというお母さんが現れ、みんなで地元の漁網を使ってミサンガ作るようになりました。
ミサンガはフェスなどで飛ぶように売れました。多分、色鮮やかで水にも強いというところがフェスにマッチしていたのだと思います。そして、それを始めてから、そのお母さんたちがどんどん元気になっていくのを見ました。もともと漁師の妻として、旦那さんの手伝いしかした経験がなく、自分でものを作って売るということをしていなかったので、手ごたえのある仕事だったからだと思います。そのお母さんたちは今、ミサンガで貯めたお金を元手に、これまで市場に出回らず捨てられていた魚を食材にしたお弁当屋さんをやっています。ミサンガの経験を通して、手を動かしてものを作るということの可能性、力みたいなのを感じたんだと思います。
自分としても、いろんな地域でいろんなことをやってきましたたが、ここまで実感が得られるような仕事はなかったです。支援者としてではなく、現地の人と同じ目線で一緒に歩めているということが、僕自身も無理なく楽しく関われる。それが続けられている理由だと思います。
この先、震災から時間が経ち、世間の印象が薄れていく中で、東北とどう関わっていきますか?
金入:元々自分たちは「復興」という文脈ではできるだけ語らないようにしてきました。だから地震が起こる前から元々あるいいものを発信していきたいというメッセージを込め、「スタンダード」を名前に使いました。震災で流されていった暮らしの中には、多様な文化があったと思っていて、それぞれのスタンダードを発信していくことで、復興とは関係なく、世界の人へインスピレーションを与えることができるのではないかと。それは「復興」が遠ざかってもしっかりとやっていれば伝わると思っています。東北にこだわっているけど、東北にとどまらない価値を遠くに向かって発信していこうと。これからが本当に試されるのではないかと思います。
友廣:「スタンダード」という切り口で話すと、震災後に新しくはじまった手仕事の取組みが、自分が知っている中だけでざっと100組ぐらいあります。これは阪神淡路大震災の後の人々にはなかった動きで、そこには東北ならではの「東北性」みたいなものがあるような気がしています。
手を動かすということなのか、ものを生み出すということなのか、そういうものが震災を通じて炙り出されてきた一つのスタンダードなんじゃないかと。
見方によっては、それはただの復興商品で、一時的な内職みたいにも見えるかもしれないですが、違う光の当て方をするとそこから本当の意味でのスタンダードに昇華していく可能性があるのではと思っています。
今まで資本主義経済の中で埋もれて消えていくだけだったかもしれない精神性みたいなものが、いろいろ失った時にぽこぽこと生まれてきてる。これを今後は、金入さんがやっているような復興とは別の文脈でちゃんと売る仕事と繋がりながら活動していくべきだと思います。
金入:復興ブームと同時に、「今は手仕事ブーム、だけどこの先、価値観が震災前に戻ったらどうなるの?」と言われますが、震災を通し人が繋がって、暮らしを見つめどう生きるかを考える中で生まれた価値観みたいなものは、一つの価値観として必然的に今生まれたものです。だから「手仕事ブーム」はなくなっていかないんじゃないかと。
谷津:植物を育てていくような感じに似ているかなと思います。震災の空気感でできた植物(=価値観)を、より地域に根付いた形にシフトしていけたらいいなと。それを収穫してお客さんに届ける八百屋さんみたいな存在に自分たちはなっていきたいです。今までは震災を背景に、また若者でもあることから一段飛ばしで、物事を進めてこれた。これからは逆に落ち着いていかないといけない段階に入ったのではと思います。まだ何もできていないので偉そうなことは言えないのですが(笑)。
金入:最初から根拠もってやれることなんてないと思うので、震災というきっかけを与えてもらってやっていくって感じでいいのではと思いますよ。
友廣:3人とも共通するのは震災がなかったら今のような仕事をしていなかったことですよね。
金入さんの東北STANDARDは、一見本業とは全然別のことをやってるように見えるのですが、繋がりはあるのでしょうか?
金入:元々は、もっとマーケティング寄りの考え方で、他社との差別化を図るために工芸を扱ったのですが、それを発信していくこと自体から学ぶことがたくさんありました。また一方で、やっぱりそれが本業にも返ってきたらいいなと思っていて。最近は文房具屋を改めて頑張ろうと思ってます。たとえば、今はコミュニケーションの仕方が変わり、手紙を書くという行為がマニアックなものになってきていると思います。その流れにより「手紙を書く」という行為自体や、ものを大切にするということが「東北的である」と言い換えられるようになってきています。そうすると東北STANDARDでやってきたことが文房具屋に生きてくるかなと。また、内装業でも東北のものを使ったりとか、そういう方向にも進んできはじめています。ただ一方で、やっぱり東北STANDARDの活動もバランス良く頑張っていきたいですね。
友廣:金入さんの面白いところは、工芸を「工芸」っていう文脈で広めていなくて、文房具屋の中に自然に工芸が並べているところですよね。文房具のギフトを選ぶために入ってみると、パッと工芸品が目に入るようになっている。今まであんまりなかった工芸品が好きな人ではなくても工芸品を買うことができるというところですね。
金入:2人がやっていることもすごいなと思います。今まで行き先がなかったものの場所を作ってるというか。自分なりのオリジナリティを探してるんですよね。自分はデザイナーじゃないので、小売業にそういうものを探しています。みんなそれぞれ得意な場所で広げていけたらいいですね。
イベントの最後には、つきとおひさま特製とうほく晩ごはんは振舞われ大盛況でした。どれもとっても美味しかったです!
イベントが行われた3月10日は偶然にも震災の前日、「あれからちょうど5年か」と参加者で振り返る場面もありました。
登壇された3人は、震災がきっかけで今の仕事をしていると語ります。
少しずつ震災の印象が薄れていくなか大切なことは、「東北性」や東北の「スタンダード」と語られた、震災を通し新たに見えてきた"東北ならではの価値"を守り、適切な場所、適切な文脈で発信し、事業につなげていくことなのかもしれません。
トークイベント、とても勉強になりました。
3人の活動に今後も注目です!!
【詳細情報】
株式会社IIE(イー)http://iie-aizu.jp
〒969-6511 福島県河沼郡会津坂下町大字青木字宮田205番地
tel:0242-23-7760
fax:0242-23-7760
株式会社金入 http://www.kaneiri.co.jp/
東北STANDARD株式会社 http://tohoku-standard.jp/
〒039-1121 青森県八戸市卸センター二丁目4-12
tel:0178-28-2871
fax:0178-20-2764
一般社団法人つむぎや http://tumugiya.org/
OCICA http://www.ocica.jp/
東京都墨田区東向島2-24-14
tel:070-6646-5756
食堂つきとおひさま http://tukitoohisama.com/
〒966-0871 福島県喜多方市字寺町南5006番地
tel:0241-23-5188
(text、photo:市岡 ※一部の写真はIIEさん、東北STANDARDさん、OCICAさん提供)
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