コラボで生み出す!どこにもない和菓子づくり『和菓子になったテキスタイル』 亀屋良長×SOU・SOU
前編に引き続き、何度かしゃかいか!で取材をさせていただいている京都のテキスタイルブランドSOU・SOUさんと、一緒に和菓子づくりをされている亀屋良長さんの工房を見学します。後編では、今までなかった和菓子『和菓子になったテキスタイルデザイン』のお話をお届けしていきます。
前編で見学させていただいた「鳥羽玉(うばたま)」づくりに続いて、
SOU・SOUさんの茶席、「SOU・SOU在釜(ザイフ)」で食べられる「和菓子になったテキスタイルデザイン」の3月(弥生)のお菓子づくりを見させていただきました!工房へいってみましょう!
「SOU・SOUさんの3月(弥生)の和菓子を作っていますよ」と亀屋良長、取締役の?村由依子さんに案内され、駆けつけます。
3月(弥生)の和菓子は、女の子の成長を願う「ひな祭り」の菱餅(ひしもち)をモチーフにしています。
SOU・SOUさんの今月のお菓子を担当している田中美海(よしみ)さんは、幅広いお菓子づくりができるという理由で、亀屋良長さんへ就職しました。将来は、自分のお店をもつために日々修行中です。
敷き詰めた桃の上に、桃の羊羹(ようかん)を流し固めています。
お菓子を食べた時の口どけをよくするこちらの道具「きんとん通し」を使って、
菱餅(ひしもち)のピンク色の部分になる餡をつくっていきます。
餡を「通し」でこすと、まるで桃の花が咲き誇っているかのようです。繊細な餡を「きんとん箸」を用いて、丁寧にすくっていきます。
桃の層の上に桃の花を崩れないように並べていきます。香りもよくおいしそう!完成品は、「SOU・SOU在釜(ザイフ)」でお披露目されます。
亀屋良長8代目?村良和さん、由依子さんに京都の老舗でありながら、SOU・SOUさんと一緒にするようになったきっかけをお聞きしていきます!
SOU・SOUさんとの出会い
2011年(平成23年)、知り合いのお坊さんから、SOU・SOUの若林さんがプロデュースするお茶会用のお菓子の依頼がありました。
「お茶会のためにお菓子をつくって欲しいという依頼の電話を知り合いのお坊さんから頂いたのですが、ちょうどSOU・SOUさんのお店へ行こうとしていたタイミングだったので不思議なご縁を感じましたよ」と当時を振り返る良和さん。
その頃、亀屋良長さんは、新商品のパッケージを依頼するも、なかなかピンをくるデザインに出会うことができない期間が続いていました。そんな時に、SOU・SOUさんに相談すると快くパッケージデザインを引き受けてくださり、お菓子とパッケージとが統一されたお菓子づくりに取り組めるようになっていきます。お菓子についても相談にのって頂くことも多く、どんどん素敵なお菓子が生まれました。
そうきたか!当たり前を覆された瞬間
「若林さんの提案は、いつもそうきたか!と思うことが多くて」と優しい表情で由依子さん。
由依子さんは、SOU・SOUさんとの最初の打ち合わせでのエピソードを振り返ります。
打ち合わせに持っていった丸い和菓子を若林さんがグチャッと潰して、男爵イモのような形になった和菓子を見て、「こっちの方がええんちゃいます」と言われたことがあったそうです。驚きの気持ちでいっぱいだった由依子さんですが、テキスタイルの上に置かれた男爵イモみたいな和菓子を見ると、とてもテキスタイルに合っていて、自分たちの当たり前を覆された瞬間だったそうです。
和菓子に果物・野菜、食感をプラス
SOU・SOUさんとの和菓子の打ち合わせでは、なかなか和菓子では使わない食材が選ばれるそうです。例えば、桃やメロン、イチゴ、リンゴの果物から、キュウリ、タケノコ、キノコ、ネギと野菜まで、味噌や、塩と日本の昔ながらの調味料を使って試行錯誤繰し商品を作り上げていくそうです。
和菓子は、お茶席で食べるためカリッと音をだすことは良くないとされ、食感のあるお菓子は嫌われていましたが、ナッツやピスタチオ、硬い食感のものを使用することも多いそうです。
毎月のお菓子をこれだけ頭をひねって、ひねって考えられていると知ると、毎月の新作和菓子が見逃せないです!
SOU・SOUの若林さんに毎月変わるSOU・SOUテキスタイルに合わせたオリジナル和菓子、『和菓子になったテキスタイルデザイン』のお話をお聞きしてきました!
和菓子に求めるSOU・SOUらしさ
SOU・SOUさんは、テキスタイルデザインを和三盆のお干菓子に取り入れて商品化した経験があり、このお干菓子の次の段階として、今までない和菓子をずっと作りたいと考えていました。
「お茶席で出されるようなお菓子を白い懐紙(かいし)の上に置くのと、テキスタイルデザインの上に置くのではどちらがSOU・SOUらしいかと考えたら、それは後者でしょ」と若林さん。
その発想を実現するために誰と一緒にお菓子を作るのかを考えていきます。若林さんは、SOU・SOUとコラボした相手のメリットをまず第一に考えられているそうです。
老舗が新しい挑戦をすることに意味がある
「その業界の重鎮が新しい挑戦をすることに意味がある」と若林さん。200年以上続く老舗、亀屋良長さんの歴史・技術を生かして、新しいSOU・SOUさんのアイデアを融合し、どこにもなかった『和菓子になったテキスタイルデザイン』が生まれます。
どこにもない仕掛けは食べた後まで
SOU・SOUさんの店舗で和菓子を出していたある日、黒柳徹子さんが来店されて和菓子を召し上がられたそうです。その時の和菓子がやわらかい道明寺の桜餅で、 テキスタイルを印刷した用紙の上に敷いたフィルムにくっついて食べにくかったというハプニングがありました。それがきっかけとなり、少しコストがかかっても接着タイプのフィルムに変更してお菓子を食べ易くし、食べ終わった後にはフィルムをはがして持ち帰られるようになったそうです。
さらに、和菓子の下に敷かれた用紙がハガキになっているので、例えば、旅行先の京都の旅館から手紙を書いて思い出を増やせたりと、食べた後にもさらなる仕掛けが続きます。
SOU・SOU京都店の地下1階のSOU・SOU在釜(ザイフ)で、毎月変わるテキスタイルに合わせたオリジナル和菓子と一緒に、お抹茶を楽しめます!
心安らぐほのかに明るい空間で高橋さんが、お抹茶を点てていらっしゃいます。
店内に入ってすぐ左の壁には、今月のテキスタイルがお軸のように飾られています。
それでは、お点前頂戴します。
今年のテーマは“日本の意匠”
和菓子とテキスタイルとお抹茶、見事な共演です。毎年、テーマを決めて和菓子づくりをしています。今年のテーマは“日本の意匠”だそうです。
弥生のテキスタイルデザイン“お粧し(おめかし)”の舞台の上で、女の子の成長を願う年中行事、ひな祭りの菱餅をモチーフにした和菓子がスポットライトを浴びます。菱餅の三色には、それぞれに意味があり、真ん中の白い層を雪に見立て、残雪(白)の下には新芽(緑)が芽吹き、雪の上には桃の花(ピンク)が咲き、春の訪れをお祝いする気持ちを表しているそうです。
なんておいしいのでしょうか。カリカリとした食感、口一面に広がる桃の甘さ、そしてほどよい甘さの餡、またしも見事な共演です。これはやられました!
月替わりの和菓子を楽しみに毎月、SOU・SOU在釜(ザイフ)に食べにきているという和菓子ファンの男性との話もすみ、高橋さんとの談笑も終えて、帰ろうとした時に
「こちらのフィルムをはがしてくださいね。ハガキはお持ち帰りできますよ」と 高橋さんが笑顔で声をかけてくれます。食べ終えておいしい思い出、高橋さんとの一服の思い出、ハガキで締めくくる思い出、思い出がまた増えました。
新しい和菓子の世界に挑む亀屋良長8代目の?村良和さん、由依子さんご夫妻ありがとうございました。伝統の中で作るお菓子だからこその魅力をこれからも生み出し続けてくださいね、応援しています!
【詳細情報】
亀屋良長 株式会社
住所:京都府京都市下京区四条通油小路西入柏屋町17-19
営業時間:9時〜18時、年中無休(1月1.2日はお休み)
お問い合わせ:info@kameya-yoshinaga.com
URL: http://kameya-yoshinaga.com/
SOU・SOU在釜(ザイフ)
住所:京都府京都市中京区中京区中之町(新京極通)565−72 P91ビルB1
営業時間:12:00~20:00(19:00ラストオーダー)
URL: http://sousounetshop.jp/?no=0&mode=cate&cbid=1528424&csid=0
(text:坂田、photo:市岡)
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