四万十の地域ビジネスの仕掛け人!畦地履正さんと行く、ご当地の濃い人たちと出会う旅

道の駅四万十とおわ高知県四万十町の道の駅「四万十とおわ」にやってきました。
ここ四万十町は、みなさまご存じ日本最後の清流といわれる四万十川の中流域の山間地に位置しています。
実は、この四万十エリアが今激アツ!といっても40度以上の記録的な夏の気温のことではなくて、地域の資源を活用しながら経済を活性化し、町づくりも一緒に元気になる「いなかビジネス」がとんでもなく盛り上がっています。

畦地さんプロフィールそんな四万十エリアのビジネスをアッツアツにしている張本人がこの人!四万十ドラマの畦地履正さんです。
畦地さんにしゃかいか!でお世話になるのはこれで2回目。昨年参加した「いなかパイプ」さんの「いなかビジネス開発モニターツアー」に参加し、お近づきになることができたご縁で、「おもろいとこ、連れてったるでー」ということになり、そのお言葉に遠慮なく甘えて飛んできたというわけです。

畦地さんが運営する「四万十ドラマ」の歩みを聞かせてもらった記事もご覧くださいー

今日、畦地さんに連れて行ってもらう見学ツアーはこんな感じ!
道の駅を出発
(1)塩の生産現場を見せてもらう
(2)四万十流域の野菜のこれからはじまるプロジェクトのお話をきく
(3)高知県にしかない柑橘「すみかん」のお話をきく
(4)無農薬&循環型農業、高知県の地鶏の生産現場を見せてもらう
なんと、この5つの現場を今日一気に回る!われわれしゃかいか!編集員もこれまで数えきれないほど、見学してきましたが1日でこれだけ回ることは滅多にありません。
うわぁー楽しみやー。

まず一つ目の見学先は塩!
道の駅四万十とおわを出発し、車で30分ほど行くと着いたのは山に囲まれた田んぼが広がるところ。あれ?塩って言ってたのになー。塩づくりと聞いて太平洋に面した砂浜を想像していたので、びっくりです。

塩ハウスこれが塩を作る小屋。外から見ると一見何かの作物を育てているようなハウス。実はこの中で塩を作っているんですって!

山塩これが山塩。

山塩小僧この方が生産者の「山塩小僧」こと、森澤宏夫さん。こう見えても(失礼!)神戸出身のシティボーイで、高知県の県職員として勤務し退職、それから20年以上、この土地で塩を作っています。お二人が知り合ったのは、森澤さんが塩づくりを、畦地さんが地域ビジネスの「四万十ドラマ」を立ち上げたころ。20年を同じ場所で、ご商売のこと&地域のことを一緒に考えてきた仲間であり、同志。
畦地さんによると森澤さんは「会ったらびっくりするよ、変わってるけどとても面白い人!でも、僕がいいと思った人しか連れて来んからねー」と車の中で聞いていたので、ドキドキしながら訪問。

塩ハウス内塩アップ小屋の中を見せてもらいながら、作り方の他にも、塩を作ることになったきっかけ、山で作っている理由、山塩小僧を全国に広めたいという思いなどいっぱいお話を聞くことができました。

くわしくは山塩小僧の記事を見てみてくださいね。

続いては、四万十流域のお野菜のプロジェクトについてお話を伺います。

四万十野菜建物こちらは、四万十野菜合同会社。
四万十川流域のお野菜の価値を高め、生産方法の見直しや流通を拡大していこうという試みです。

土佐くろしお鉄道土佐くろしお鉄道がすぐ近くを通っています。

四万十野菜合同会社は、ちょうど立ち上げのための準備の真っ最中。
高知県で四万十よろずマーケット「しまんとハマヤ」を営む浜崎さんが中心となってスタートしたプロジェクト。

ハマヤ浜崎隆しまんとハマヤの社長、浜崎隆さんです。

そもそものきっかけは、作物をもってきてくれる仕入れ先でもある生産者の方と、売るところを構えているスーパーが一緒に野菜づくりをしたら、働く場所が生まれ、IターンやUターンで若い人たちが帰ってくるのではないか?そして地元を元気にしていくぞ!というアイデアから。

桐島畑の桐島正一さん今日は、このプロジェクトに参加している農家に野菜の栽培方法を指導している桐島正一さんもきてくれています。桐島さんは、農業大学卒業後、その後留学&農家にステイして剪定や語学、海外で農業分野の勉強をし、有機農法や個人ブランドの野菜づくり、プロ農家の育成などに挑戦している、現代農業のお手本のような人。

昨年、じっくりお話を伺ったので、こちらの記事もぜひご覧ください!

現在、この四万十野菜プロジェクトに参加する農家は40人ほど。定期的に集まって、栽培方法のレクチャーや話し合いをしています。指導する中で、今は慣行栽培(農薬や化学肥料を使って病害虫を駆除する一般的な方法)を特別栽培(科学肥料に含まれる窒素成分を半分以下に減らして生産する)に変えていこうと話をしているのだそうです。ただし、みんなでいっせいのーで、で切り替えることは難しく、たとえば玉ねぎなどは今のままでも十分に糖度の高いものが作られているので、品質を保つためにも見極めが必要なのだそうです。
こういった作る作物や農家ごとの個別の事情があるので、まずは試してみて、二つの農法を組み合わせて進めていこう。というところから始めるのだそうです。

今後は浜崎さんの「しまんとはまや」はもちろん、畦地さんの「道の駅 しまんととおわ」も、四万十野菜が供給されれば積極的に取り扱っていく予定。安定的な供給が実現すれば、ブランドの価値を高め、また生産量を増やしていく、そして四万十野菜に携わる人が増え、地域が元気になっていく、といった好ましい循環を生み出していくのが最終目的です。

四万十野菜プロジェクト記念写真「たまねぎぃ〜」を合図にパシャッ!

お野菜の次、三軒目の見学先はー
「ぶしゅかん」

ぶしゅかんなんじゃそらー、はじめて聞いたし、そして、はじめて打った文字列。
「ぶしゅかん」とは、高知県しかもこの四万十川河口付近で大昔からある柑橘類の果物。どのくらい大昔からあるかはわからないくらい。
しかし、流通せず、作っているこの地域の中でほとんど消費しています。つまり、日本の人たちにほとんど知られていない、ここだけの果物なのです。

ぶしゅかん社長この方が「四万十ぶしゅかん株式会社」の田村社長。
今日はよろしくお願いします!

ぶしゅかんは主に魚料理にかけて使います。特にソーダ鰹のこども(地元では「しんこ」と呼ばれています)にかけていただくと、魚の素材が2〜3ランク上がる。「ゆずは香りが強すぎて素材に買ってしまうけど、ぶしゅかんは素材の引き立て役」なのだとか。地元ではお寿司の酢飯に使ったりすることもあります。

他にも、酎ハイにいれる「ぶちゅハイ」や、日本酒の酔鯨とぶしゅかんでフィズみたいにして飲んだりと、アルコールに入れるとアルコールを香りで打ち消し飲みやすくなってしまうので、ついつい飲み過ぎてしまう、危険な果物でもあるのです。

高山さんお酒じゃなくて原液ですが飲んでみてください、と同じく四万十ぶしゅかん株式会社の高山竜大さん。

ぶしゅかん試飲原液は黄色で、きれいなレモンイエローならぬ、ぶしゅかんイエロー

ぶしゅかん試飲2すっぱ!想像よりすっぱっ!口の中がキュッとなる
しかし、その酸味はまろやかで優しい感じ。確かにお酒が進むかも。

ぶしゅかん話しを聞く謎の果物ぶしゅかんのお話にみんな引き込まれています。

カツオとお酒という高知県の食文化とぴったりマッチして、地元ではけっこう活躍しているぶしゅかん。なのに、なぜあまり知られていないのか?というと...

当たり前すぎたから!

ぶしゅかんは昔から各農家に1本植えられていて、地元のおじいさんおばあさんには当たり前の存在。しかし、ほとんどが自家需要。自分ちの分だけ収穫できるとそれでいい、外に流通させることまで気がまわらなかった、という果物でした。決して隠していたわけではありません。
そして、広がらなかったもう一つの理由は、なぜかこの地域でしか育たないから。
柑橘類の栽培に適した海べりの地域でも、土のせいなのか気候のせいなのか、山を一つ越え、他の地域になるとぶしゅかんが育たないのでした。

ぶしゅかん店内お店の中でも、一生懸命説明しないといけません。

美味しんぼしかし、ぶしゅかんは漫画「美味しんぼ」にも取り上げられました。
知ってる人は知っている。

ぶしゅかんの最盛期は8月中頃から10月で他の柑橘類よりも少し早め。100年以上実がなり続け、近場では130年の木もあり、一本の木から多いものだと100kgくらいの果実が収穫できる木もあります(他の柑橘類は平均30〜40kg)。
しかも、ほぼ農薬を使わずに栽培でき、ハウスに入れずに露地栽培。面倒をみるのは木の周りの草刈りだけ。すごい生命力で病気にも強いので、ほったらかしでもすごいどんどん育つ。トゲもなく、農薬をかける必要もないので、手間がかからないので高齢者向きの作物と言われています。

高山さんお話するぶしゅかんの搾汁を一手に担う高山さんいわく「とるのが嫌になるくらい獲れる」

こんな育てやすくて便利な果物を、外に出していこうと気づいたのは、数年前。しかし、今ある木はほぼ自家用で出荷用の果樹として植えていたものではなく、木を植えて実際に収穫できるのは5年ほどかかってしまう(2〜3年で実派なるけど、あんまり実を付け始めると木が弱ってしまうので、わざと数年間は間引く)ので、ようやく数年前から収穫できるようになり搾汁した原液、その原液を使った製品づくりが本格的に始まったのは、なんと今年からなのだそうです。

しかし、まだまだ数が足りず、過疎化による耕作放棄地がたくさんあるのでそこを開墾して活用し、四万十市も注目し、2,000本ほどの木が育ちつつあります。

ぶしゅかん製品1ぶしゅかん製品2今、関東ではポツポツとレストランや居酒屋さんで使い始められているそうですが、全国的にはまだまだ存在がしられていません。これからはぶしゅかんを使ったレシピや製品づくり、知名度アップとやることが山積みです。

ぶしゅまろぼくも知名度アップに貢献しています、とPR係の「ぶしゅまろくん」です。

今は収穫の時期ではないので、畑にはいきませんでしたが、ぶしゅかんについて、この動画にくわしく説明されています。
「禁断の果実 ぶしゅかん」

最初は3分間歌、四万十市の観光地の説明が入っているので一緒に楽しんでくださいね!

ぶしゅかん記念写真今日は誰かに言いたくなるお話をたくさん聞くことができました。四万十ぶしゅかんのお二人、有難うございました!

みなさんももし、ぶしゅかんに出会うことがあれば、知らない人にぶしゅかんストーリーをぜひ、お話してみてください。そして「ユズじゃない〜すだちでもない♫禁断の果実〜」と歌ってくださいね。

いちえん農場見学 柑橘系の木

見学先のラストは、太平洋に面した丘の上にあるいちえん農場。
農薬を一切使用せずに作っている柑橘類、米、炭と土佐ジローを育てています。

土佐ジローコケーッ!高知の地鶏土佐ジローです。

栗の木そして、植えてから今年で4年目に成る栗の木。
桃栗3年柿8年の4年目となる栗は今年の秋、はじめて収穫されます。

畦地さんと一圓さんの企み高知県の栗再生の先導役でもある畦地さんさえも感心してしまう栗の木の生育状況。二人で今年初めて出荷する栗について、熱心に、そして楽しそうにお話していました。(ここでは書けないけど!)

一圓さん無農薬&循環型農業に挑戦する一圓信明さん、家族型経営の農業の限界に挑戦していることや、日本の農業のことまで熱く、そしてテンションマックスで語ってもらうことができましたので、ぜひこちらの記事も読んでくださいね。

そして最後は、打ち上げ。

カツオ刺身土佐ジローのお肉をお店のご行為で調理してもらったり、今日見学にお邪魔した、山塩小僧の塩やぶしゅかんをカツオのたたきにかけて食べてみたり。今日一日の締めを飾るにふさわしい夜になりました。

打ち上げ記念写真高知の酒飲みのマナー「返杯」の応酬で、いい気持ちになったメンバーです。
最っ高ーの1日でした。旅行会社のツアーだったらいかほど万円だったのでしょうか?たまらん。

今日、畦地さんに連れて行ってもらったのは、このコース。

たった一日でこれだけ中身の濃い見学ができたのは、地域を知り尽くした畦地さんがセットしてくれたから。観光案内にはまったく載っていない場所に行ったり、僕らが普段会うことができないような楽しい人たちと出会うことができました。

このツアー、また来たい!
今日ご紹介できた見学先はまだほんの一部で、畦地さんによると「まだまだまだまだ、あるよっ!」ということなので、また、この四万十エリアにお邪魔したいと思います。

畦地さん、今日は素敵なツアーを有難うございました!

【詳細情報】

株式会社四万十ドラマ

住所:高知県高岡郡四万十町十和川口62-9
電話番号:0880-28-5527
URL: http://shimanto-drama.jp/

森澤 宏夫(山塩小僧)

電話番号:0880-26-0369
住所:高知県高岡郡四万十町上岡95

四万十野菜合同会社

電話番号:0880-22-2108
住所:高知県高岡郡四万十町若井32-3

株式会社ハマヤ

電話番号:0880-22-2700
住所:高知県高岡郡四万十町琴平町476-1

四万十ぶしゅかん株式会社

電話番号:0880-31-9211
住所:高知県四万十市山路2494-1
URL:http://busyukan.shimantoya.com/

いちえん農場

電話番号:0880-36-2567
住所:高知県四万十市名鹿465-81
URL:http://ichiyen.net

(text:西村、photo:市岡 ※一部の写真は取材先提供)

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