宇和島と離島をつないだ九島フェリー最後の日!おつかれさま、第八くしま
今日は愛媛県宇和島市、九島(くしま)フェリーの見学です。宇和島港と4キロほど沖にある九島を15分ほどで運行しているこのフェリー、実は、2016年4月の宇和島と九島をつなぐ九島大橋の完成をもってお役御免、運行が終了することになりました。
この九島フェリー最後の一日の様子をお届けしたいと思います。
宇和島港と九島の間を15分ほどでつなぐこのフェリーは1952(昭和27)年に運行を開始。以来64年間、九島と宇和島市内を行き来する島民にとって大切な交通手段として活躍しましたが、橋の開通にあわせてこの船もお役御免、役割を終えることになりました。この船は10代目で「第八くしま」という名前です。
九島(くしま)は愛媛県宇和島市の沖、4キロほどの距離にあり、周囲は約12kmで自転車であれば1時間ほどで一周できる大きさ、人口は900人ほどの小さな島です。
九島の産業で盛んなのはイワシ漁やハマチ・ワカメの養殖といった漁業と柑橘系の栽培です。
これが、完成した九島大橋、これが宇和島本土と九島をつなぐ新しい交通手段になります。
いよいよ今日が九島フェリー最終日。運行を終える第八くしまに乗ってみたいと思います。
僕は船に乗るのは1年のうちにあるかないかなので、少し緊張するのですが、お客さんを見ていると、気軽にひょいひょいと乗り込んできます。毎日の交通手段なので電車やバスと同じ感覚なのですね、きっと。
宇和島市などの四国側に通勤・通学する九島島民は、車を宇和島港周辺の駐車場に置いておき、フェリーには徒歩で乗ります。だから、あまりフェリーに乗り込む車はありません。
今日は、最終日とあって乗客もたくさん。
フェリーから望む宇和島港もこれが見納めです。
いよいよ、出発!
あれが、開通する九島大橋。
橋の下を潜ります。
今日の目的地は蛤という最も宇和島よりの港。あっという間です。
九島大橋の開通にあわせて、蛤港の前にはコンビニが開店しました。
九島の主だった集落は、本九島(ほんくしま)、百之浦(もものうら)、蛤(はまぐり)の3つで、島には平地が少なく、ギリギリまで山がせまっているので、お家が島のきわにへばりつくように密集して立っています。この3つの集落を繋いでいたのが九島フェリー。
港の待合室もこれで役割が終了します。
くしまフェリーは通勤・通学の時間帯は1時間に一本ほど。平日だと1日9本が運行していました。
夜も乗ります!第八くしま。
最終便とあって、報道陣も撮影にきています。
これで本当のお別れ。最終便です。
中を探検していると操舵室の扉が開いていることを発見!ひょいと中を覗くと船員さんがいて「見ていいよ」とのこと。遠慮なくお邪魔しました!
「ヘルメット被っているから、仲間かと思った」と職員さん。幸せを呼ぶ青いヘルメット。
操舵室!
調子に乗って、でもお許しをもらってハンドルや舵を握らせてもらいます。(停泊中です!念のため)
「第八くしま」の船長さん。本当に有難うございました!
宇和島港を後にして、
九島大橋の下をくぐる。
あっという間に港が近づいてきた。
雨の最終便になりました。
去っていく第八くしまの「ブォー、ブォー」という汽笛の音は、とても悲しげに聞こえて涙が出そうになるくらい。
「これまで64年間、本当に有難うございました」と船内のアナウンスが繰り返され、今回はじめて乗ったにもかかわらず、すでに第八くしまに親しみを覚えていた僕は、とてもさみしい気持ちになりました。
翌日には「さよなら第八くしま」のセレモニーに参加。
ほとんどの島民のみなさんが参加しているのではないか、というほどの賑わいです。
宇和島市長さん、九島フェリーの運行会社の社長さんが、島民の皆さんに向けてこれまでのお礼を熱く語っていました。ちょっと涙が出そうなくらい、熱のこもった語り口でした。
そのあいさつを聞く島のみなさんの中にもきっといろんな思いがこみ上げているのだろうな、と思います。
地元の幼稚園と小学生(これでみんなです)が分担して「第八くしま」にお礼のメッセージ。九島には小学校はありますが、中学生になると宇和島市内の学校へ通うことになります。
まだ小さな彼らは、フェリーよりも橋の記憶の方が多くを占めることになりそうです。
そして、お待ちかねのもちまき!ちょっとしんみりムードだったセレモニーですが、この時間はみんな元気いっぱい。
最後に第八くしまの職員さんに花束を贈呈してイベントは終了。第八くしまは、乗客を乗せることなく去っていきました。
第八くしまは、九島フェリーとしての役割は終えますが、メンテナンスや修理の後、東南アジアでまた活躍することになっています。東南アジアへは自走で運んでいくので、外海での航行可能な状態に改造が控えていて、職員のみなさんもその作業に携わるのだそうです。今までお疲れさまでした!そして、明日からも頑張ってください。
島民の皆さんに見送られながら出航した第八くしまが発する「ブォー、ブォー」という汽笛の音は「行ってくるよー!」と少し元気に聞こえました。
さよなら第八くしま。
九島大橋や島のくらしのレポートへとつづく。
(text:西村、photo:市岡、加藤)
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