日本海洋研究の最先端!海洋広域研究船「かいめい」の船内を解明 JAMSTEC

やってきたぞ!JAMSTECJAMSTEC(ジャムステック)横須賀本部の施設一般公開にやってきました!
JAMSTECでは、研究に使用している船舶や施設の見学や、毎年最先端の研究成果の発表、子供向けの体験イベントなど盛りだくさんの一般公開をここ横須賀本部で毎年実施しています。

JAMSTECの見学は、昨年の「ちきゅう」に引き続き2回目です。

JAMSTEC看板JAMSTECの正式名称は国立研究開発法人 海洋研究開発機構。海洋に関する研究開発をおこなっています。国内外の大学や研究機関などとも協力して、世界レベルでの海洋科学技術の水準の向上を図り、学術研究の発展に貢献しています。

海から地震などの地殻変動を調べて地震のメカニズムを研究したり。深海にいる生命体の調査・研究をおこない生命誕生の謎を解き明かしたり。海底資源の調査も行うなど、日本の海に関する研究の最前線にある組織なのです!

会場風景一般公開の会場はJAMSTEC横須賀本部。広い〜。そして、海が近くて気持ちいいー。

ずらっと並ぶ今日の見学の目玉はこれ。「かいめい」という船です。
このかいめいは2015年6月に進水式を行い、2016年4月にJAMSTEC横須賀本部に入港したばかり。今日は一般のみなさんへのお披露目会です。

たくさん並んでいる初の一般公開ということで、たくさんの見学の人が来場しています。ちなみに午前は1時間待ちでした!

かいめい全景かいめいは「海底広域研究船」。日本周辺の広い海域に眠っている海底の鉱物資源や、東日本大震災のような巨大な津波を引き起こす海底地震のメカニズム、地球規模の気候変動に関係する待機・海洋環境の変化の把握など総合的かつ効果的に科学調査することができ、そのための設備や機器を備えた、日本の海洋研究の最先端の船です。

かいめい船名「かいめい」という名前は、一般公募されたものの中から選ばれました。
「新しい未来を切り開く使命を持ち、深海の謎を解明してほしい」という願いが込められているんです!

かいめい見上げる大きな姿に圧倒されます。

乗り込む1乗り込む2いよいよ乗船開始。

かいめい登るできたばかりの船は白くて眩しい。

外を眺める設計図かいめいは全長100.5m、幅は20.5m、5.74トン。定員は65名で最大40日の航海を続けることができます。

船室研究者の船室。テレビや冷蔵庫、デスクとソファもあってなかなか快適そう。一般公開用でしょうか?毛布で富士山の形が作られています。

毛布アートバラ

毛布アート(カーネーション)バラやカーネーションといったお花や、

山も山も。ちょっとした演出で楽しませてくれます。かいめいの乗組員さん、有難う!

食堂食堂の椅子やテーブルは船の揺れで倒れないようにしっかりと床に固定されています。

上へデッキを見る上のフロアには採取したサンプルを新鮮な状態で分析する研究ラボや、航行をコントロールする操舵室があります。

見下ろす高さを確認する。

デッキで記念撮影船首のデッキで記念撮影してもらいました。

救命ボート救命ボートの横をすり抜けて、

機器がいっぱい機器がいっぱい2操舵室に到着。船の位置や方位、海の中の地形を計測する機器がたくさん並んでいます。

かいめい船内LANシステム船内にはLANシステムがあり、航海・調査観測機器のデータを集め、船の中にある無線LANポイントを経由して、写真のような端末で乗組員のみなさんが情報にアクセスすることができます。
船の中は広く、それぞれ持ち場もあるのでこういった情報共有がとても大切。

見学風景

お父さんの方が夢中!

操舵室操舵室!

教えてもらうコンソールのそれぞれの機器がどんな役割を持つのかを教えてもらったので、

船長気分船長になった気分です!

外を見るどこへ行こうかと考えています。

外を見るどこかへ行きたい気持ちが止まりません。

下へ降りるデッキ見上げるデッキへ降りて次の見学は…

ピストンコアラーこの長く巨大な物体は「ピストンコアラー」といいます。
このピストンコアラーは、海底にパイプを突き刺し、海中の栄養素やプランクトンの死骸、砕屑物などが海底に積もった堆積物を採取するための機器です。
パイプを突き刺すだけでは、パイプの壁と堆積物の摩擦でパイプが深く突き刺さりにくかったり、堆積物を攪拌(かきまわす)して、正確なサンプルが採取できないので、
(1)まずは、パイプを突き刺し、
(2)パイプの中にピストンを入れ、
(3)パイプが堆積物を押し込む力とピストンが堆積物を引き上げる力のバランスが取れるので、
(4)より深く、そしてより正確なサンプルが採取できるようになる
という仕組みの機器。このかいめいに搭載されたピストンコアラーは40mもあり、JAMSTECで最長のものになります。

船員さんと教えてくれて有難うございます!

Aフレームクレーンなにか、やってくれそうな雰囲気を醸し出すマシン!
これも海底のサンプルを採取するための装置。奥のクレーンから振り出され、水深6,000mの海底表面にある岩石や堆積物を採取します。

パワーグラブ二つ並んでいる機器は「パワーグラブ」といいます。
左のシェル型は柔らかい泥場の海底を浚います。カメラが5台ずつ装備されていて、船の上から海底の映像を見ながらリモートで操作。でっかいUFOキャッチャーみたいなものです。

かいめいパワーグラブ6本爪右側の「6本爪型」は固い岩盤の海底を砕きながら採取します。

沖縄チムニー沖縄トラフで採取された「チムニー」です。
このサンプルは沖縄の熱水噴出域にあった煙突状の構造がありチムニーと呼ばれ、有用な金属を含むため、海底熱水鉱床としての可能性を知るために、採取し分析されます。
このパワーグラブという機器を使うことで、新鮮な試料を採取できるようになりました。

かいめい地震探査システムかいめいの最後の目玉は、3モード地震探査システム。
この長〜いケーブル(ストリーマーケーブルといいます)を海底に敷設し、海底下の地殻構造を探査、可視化することができます。

(3モード地震探査システムの図)
しかも、目的によって
(1)3,000m×4本のストリーマーケーブルで地殻構造を3次元的に捉える「3次元探査」
(2)300m×20本のストリーマーケーブルを展開し、より調査範囲を絞り込み、詳細かつ高解像度の探査を行い可視化する「3次元高解像度探査」
(3)12,000m×1本をつなぎ、より深くまでの探査が必要な場合に使用する「2次元探査」
3つのモードを使い分けすることができます。

デッキで記念撮影勉強しながらも記念撮影は忘れません。

ROV全体かいめいROVこれはROVという無人探査機。3,000m級の深さまで潜って、海底や海中の撮影、生物や鉱物資源のサンプル回収を行うことができます。

かいめいROV2

かいめいROV3かいめいROV4かいめいROVカメラハイビジョンテレビカメラや海水の塩分、水温、圧力(深度)を計測するCTDセンサーを装備し、海水の特性や流れの解析することができます。

かいめいCTD「かいめいは海の底だけでなく、海中の調査もやってるんですよ〜」

潜水調査船整備場かいめいを降りても、一般公開はまだまだ盛りだくさん。
潜水調査船整備場にあるのは、

しんかい6500全景あの「しんかい6500」!
名前の通り深度6,500mまで潜ることができる有人潜水調査船です。
日本近海のみならず、太平洋・大西洋・インド洋と世界中の海底の地形や地質、深海生物の調査を行ってきました。これまでに延べ1,463回の潜航を行い、のべ1,000人を超える研究者を海の底へ沈めてきた(いい意味で!)潜水船。日本だけではなく世界の深海研究で重要な役割を果たしています。

しんかい6500横しんかい6500は2012年に大きく改造されました。
船尾の主推進器を1台の大型プロペラから左右に2台の中型プロペラにすることで、それぞれのプロペラの回転数に差をつけ、推進力の差でお尻を左右に振りやすく、小回りが利くようになりました。また、2つになった推進器の上に水平スラスタをつけることで、横への移動がスムーズになりました。
そして、推進器を動かすモーターを「DCブラシレス電動機」にすることで、「後進!」と指示をしてから推進器が逆回転を始めるまでにかかっていた時間をぐっと短縮。
新しくなったしんかい6500は行きたい方向へすぐに動けるようになり、効率よく調査ができるようになりました。

しんかい6500をのぞく潜航しているときには、乗組員さんが中から見る覗き穴を今日は外から見ます。

しんかい6500の中いろんな機器が見えます。けど、何に使うのかはわからない〜

しんかいレプリカ

しんかいの内部しんかい6500(のレプリカ)の内部を見学。居住スペースは2mほどの空間。乗ることができるのは、パイロット・副パイロット・研究者の3名で、潜航中はその3人があぐらをかいて船の中にいるそうです。
ちなみにお手洗いはありませんので、そのへんは注意が必要です。しかし、しんかい6500を運転するのに必要な資格はなんと小型船舶免許のみなのだそうですよ!

しんかい6500の1回の潜航時間は8時間まで。
朝の7時に作業が開始され、8時半に着水、9時に潜水が開始、毎分約40mの速度で加工し、2時間後の11時30分頃にやっと海底へ到着、調査がスタートします。
しかし、14時30分には離底開始、17時に海面へ到達、船の上へ引き上げられます。
大半が潜水と船に戻る移動の時間で、実際に調査できるのは3時間ほどなのですね。

海洋工学実験場海洋工学実験場に展示されているのは、
自律型無人探査機「ゆめいるか」と「おとひめ」が展示されています。

ゆめいるか「ゆめいるか」は、効率よく広い範囲を移動して資源を探し出すのが得意!
日本周辺の海底に眠るメタンハイドレードや希少金属などの豊富な資源を活用するために、資源の場所や種類、そしてその地形を詳細に知ることを目的に開発、このゆめいるかはスラスタを4つもち、平均時速4〜6kmで移動しながら最大16時間、「資源はどこだーないかー」と探査を行うことができます。
船首・船尾にある4つのX型の翼で姿勢を自在に変えることができ、お腹の部分に搭載された「合成開口ソナー」という機器で広い範囲の地形を鮮明に捉えることができます。

おとひめこちらも無人で海底の地形を細部まで調べることができる探査機の「おとひめ」。かわいらしい名前ですが、実はとっても働き者で、たくさんのカメラが搭載され、海底の画像を細かく記録することができます。また「マニュピレータ」という遠隔で操作するマジックハンドのようなものをつけることができ、海底に着底し、サンプル採取やセンサーを設置などを担当。
このような「着底」、「作業」のほか、海の中を移動しながら記録していく「巡航」と3つの運用で、目的にあった作業を行います。

じんべい海の環境を調べるのが得意な「じんべい」
こちらの探査機は「じんべい」といいます。
じんべいは、先ほどのゆめいるかと同じように海底地形調査や資源探査を行うことができますが、得意分野は化学センサを使った観測。
海中の塩分・水温・深度を計測する「CTD」、海水中の酸素濃度を測る「DO」、海のにごりや海水中の葉緑素濃度を測る「蛍光濁度計」、海中のCO2濃度・pH値を測る「pH-CO2ハイブリッドセンサ」など海の環境を知ることのできる機器が盛りだくさん。地球温暖化の主な原因である人間活動によって排出され、海に吸収(約3割!)された二酸化炭素の濃度を把握することで、地球環境を知ることを目的にじんべいは開発されました。

うらしまこの長〜い船は、深海巡航探査機「うらしま」です!
このうらしま、期待に内蔵したコンピュータに前もってセットされたシナリオに従い、音響によって自分の位置を検出、障害物を探知・回避しながら、移動することができます。2005年に世界記録となる連続航送距離317kmを達成。
自立型無人探査、は先ほどのゆめいるか、おとひめ、じんべいと同じですが、このうらしまのすごいところは、自律航行によりカバーできる範囲の広さと全長10mの大きな機体を生かして、観測機器をたくさん積めること、サイドスキャナーソナーやマルチビーム測深機、CTDOセンサ(…書ききれない)機器を積み込むことで、海底地形、海底下構造データの取得、海洋データなど研究者からの様々な要望に応えて、観測・調査することができます。

このように同じ探査機でも目的によっていろいろな船が使い分けられている船たち。親しみやすい名前をつけてくれているので、「みんな、頑張ってね」という気分になってきます。

まいなみ(洋上中継機)こちらは、洋上中継器「まいなみ」。うらしまやじんべいといった海中の探査機を追いかけ、行動を見守ります。通常は自立型無人探査機を使った海底調査では、海中を走る1機の探査機に対して1隻の母船が必要でした。今日お披露目のかいめいもこの母船の一つです。しかし、1機の探査機に対して1機の母船では、カバーできる範囲が限られ、調査海域が広い場合には、長い期間が必要となってしまいます。このまいなみは、母船の代わりに海中の探査機を自動で追いかけ、行動を見守ることで、複数の探査機を同時に運用できるようになりました。

まいなみの説明を聞く探査機とのやりとりは、海中では電波が利用できないため、底に着いた音響通信装置で行います。海中で探査機から受け取った情報は、まいなみの船の上についた電波通信装置を通して、母船や地上の基地局とのやりとりを行います。いわば、探査機のお目付役であり中継役。このまいなみのおかげでよりたくさんの調査が短時間でできるようになりました。

まいなみの説明を聞く「賢いんですよー、助かってます」

無人探査機整備場無人探査機整備場にやってきた!

かいこう(無人探査機)世界で一番深い海に到達した「かいこう」
かいこうは深度7,000mまで潜航可能な世界トップクラスの無人探査機なのでご存じの方もたくさんいるはず。1994年にマリアナ海溝チャレンジャー海淵に世界で初めて到達し、その後マリアナ海溝水深10,911mで底生生物の「カイコウオオソコエビ」の採取、インド洋での熱水噴出孔生物群を発見しました。

カイコウオオソコエビ1998年に採取されたカイコウオオソコエビ。
(写真はJAMSTECさんより)

かいこう(メカ)かいこうは、海底で動き回り仕事をする「ビーグル」とビーグルとつながって海面と海底の間の運搬を担当する「ランチャー」という2つの機体で構成されてます。
ビーグルには深海での水圧に耐えられるように、チタン合金性の高強度フレームや耐圧容器が採用され、ハイビジョンカメラやLED、ハロゲン投光器といった深海を照らす灯など世界で一番深い海に潜るための機材や設備が満載。

気圧で縮む海の底では水圧でこれくらい縮む!

かいこうランチャーランチャーは母船とビーグルをつなぎ、ケーブルにかかる水の抵抗を受ける役割を担います。

ハイパードルフィン2ハイパードルフィンという探査機です。こちらは母船からパイロットや研究者がリモートで操作(自律型ではない)し、調査します。

ハイパードルフィン正面高精細のハイビジョンカメラを搭載しているのが特徴で、体調1~2cmの小さな深海の生物や海底の様子を鮮明な映像で見たり、CCDカメラで細かいところの映像を撮影することができます。観察だけではなく、観測機器を設置・回収したり、生物や岩石のサンプルを持ち帰ることもあります。

海底地震計海底地震計。

観測機器こういった観測機器を回収します。

スマトラ亀裂(写真はJAMSTECさんより)
ハイパードルフィンが撮影したスマトラ沖合200kmで発見した亀裂。このような亀裂の下に自信を起こした断層があるのかもしれない。
ハイパードルフィンは2004年のインドネシア・スマトラ島沖の巨大海底地震の震源海域の調査を行い、巨大な亀裂を発見しました。

シロウリガイの展示2日前に発見されたニュース!
植物プランクトンを土台とした光合成生態系とは異なり、熱水噴出孔から出るメタンや硫化水素をエネルギー源とする生物の一つであるシロウリガイ。このシロウリガイは、共生細菌によって硫化水素を栄養分に変えてもらい自分のエネルギーに変換してもらうという生態だったのですが、異なる生物である共生細菌を次の世代(子どもの)のシロウリガイへをどうやって伝えるのかが謎でした。
この見学の2日前、JAMSTECで世界で初めて実験室内で人工的にシロウリガイを抱卵することに成功!その結果、シロウリガイの卵細胞膜の外側に共生細菌が貼り付くように存在していることを発見。異なる生物である共生細菌ごとシロウリガイが次世代へ引き継ぐという全く新しい共生細菌伝達スタイルが発見されました。

シロウリガイを楽しく激レア、って!

カビ深海から分離された真菌類、通称カビです。

さまざまな海洋生物さまざまな海洋生物が展示されています。

キャラクターこんな生き物もいます。

凹む海底に沈めた鉄の玉。タイヤみたいだけど元は球形。これだけへこむってことです。

レアアースチムニー2010年、水深3,000近く南部マリアナトラフで採取されたチムニー。顕微鏡で見るとレアアースを始めとする貴重な鉱石が含まれています。

体験会場では、研究成果や展示だけではなく、実験教室、海流シミュレーションゲーム、科学工作教室や航跡図づくりなどお子さんが、触れて体験できる催しも数多く用意されています。

火山噴火火山はなぜ噴火するか?という仕組みをコーラとラムネを使って再現する、お芝居&実験教室!

火山噴火2噴火するぞー、急いで逃げろ〜

サメ解剖謎の多い深海ザメの解剖実演。血を見るのが苦手な方は注意!それとニオイにも注意。
お子さんは案外平気。親御さんの方がギョッ!としてたり引きつってたりします。

スタンプラリーこの日の一般公開では、スタンプラリーを実施。船や研究発表が本当にたくさんあって、会場は一日で回りきれないほどです。

スタンプラリー時間がない大急ぎでスタンプを押して回ります。

模型海洋調査船「なつしま」(の模型)!
このなつしまは1981年に有人潜水調査船「しんかい2000」の支援母船として就航。
以来、日本海中部地震の震源調査(1983年)、北海道南西沖地震の研究調査(1983年)シロウリガイ群集の発見(1983年)、沖ノ鳥島の気象観測装置の設置(1988年)、サイパン沖海底での火山噴火の確認(2005年)、スマトラ島沖地震の研究調査(2005年)で大活躍しました。

トライトンブイ赤道域を中心に設置を行い、熱帯域の暖水が世界中の気候におよぼす影響を調査するトライトンブイ。こういった大きな海洋観測ブイを母船が回収するのも母船の役割です。

彼女は、海底生物や地震メカニズムの調査研究の他にも、 太平洋戦争中の1944年に撃沈された対馬丸の調査(1997年)や、1999年に発射され目ロケットエンジンが突然停止、小笠原沖に落下したH2ロケットの捜索など研究分野の垣根を越え、大きな航跡と功績を残しました。

なつしま(wikipedia)(写真はWikipediaより)
三位一体のシステムとして開発された海洋調査船なつしま
彼女(=なつしまのこと。英語圏では、船は女性名詞として扱われるのです)は、潜水調査船である「しんかい2000」と無人探査機「ドルフィン3K」とのトリオで頑張ってきました。すでにある船に調査用の設備や装置を後づけするのが当然だった時代、なつしまの設計時には船単体ではなく、最初から海洋調査船としての大切な役割を与えられ、しんかいやドルフィンと三位一体で運用できるように考えられました。実はなつしまは世界初のエポックメイキングな取り組みとして、日本が世界に先駆けて開発された船だったんです。
上に書いた数々のなつしまの輝かしい実績も、数十トンものを探査機を安全確実に上げ下げする訓練を可能な限り実施、地殻構造の探査・地下試料採取の技術といった探査機の安全確実で効率的な運用機能を現場で鍛えた研究者たちの努力の積み重ねの賜物だったんですね。

しかし、彼女も船齢30年を超える老朽船となり、搭載している観測機材の旧式化が著しくなったこと、時代の要求によってより高度な調査研究に対応しなければならないという理由から、新しく生まれた「かいめい」の就航と入れ代わりに2016年JAMSTECの海洋調査船としては退役。これから、なつしまは水産会社であるニッスイマリンで「コンセプト」と名前を変え、民間調査船として第二の人生を歩むことになります。

かいめい遠景JAMSTECが長年培ってきたスピリットが結集した、海底広域研究船「かいめい」
「新しい船を作ろう!」となったのは、これまでの海洋調査の船の老朽化の問題もありますが、国の方針である「海洋基本計画」に基づき、文部科学省が資源や海底構造物などどういうことを調べるかを審議し、JAMSTECが細かい船の仕様を提言、税金を使うので「本当にこの調査が必要か?そのリターンはコストに見合っているか?」といった点を踏まえて、開発が検討されます。
かいめいの起工(建造開始)は2015年1月で、進水式は同年の6月、約半年で作られました。
しかし、この時点で完了したのは走る船としての完成までで、そこから約9ヶ月間はさまざまな調査・観測装置を搭載する作業や、実際に海の上で着水揚収の訓練を積み重ねました。
かいめいの船内見学で見せてもらったさまざまな最新設備や観測機器・装置には、操船手法、洋上での安全確実な着水揚収手法、探査機の運用ノウハウ、観測技術などこれまでの船で培ったものが豊富に注ぎ込まれています。
つまり、JAMSTECが長年培ってきた設計思想、考え方、スピリットを継承し、最先端の技術や知見を持って新たな開発にチャレンジした船が、このかいめいということです。

かいめい船長気分海を知ることの大切さに気づくことができました。
今日は大きな船や最新研究成果の発表、楽しいイベントなどなどに圧倒され、1日では残念ながら全てを回りきることはできず、ご紹介出来たのもほんの一部でしたが、海を知ることの大切さについて気づかせてくれた見学。
世界第6位の排他的経済水域を持つ日本に住んでいても、普段の生活ではなかなか思いをはせることはないかもしれませんが、海の底に眠る資源、巨大地震を引き起こす海底地震のメカニズム、道の海洋生物の存在の可能性など、その研究範囲はそれこそ海のように広大。JAMSTECではたくさんの技術者・研究者が海の研究に日々情熱を注いでいることをそばに感じることができました。

来年は朝から夕方まで1日ぎっしりと詰め込んで計画的に回りたいと思います。
JAMSTECのみなさん、これからも世界の海をよろしくお願いします!

【詳細情報】

JAMSTEC 横須賀本部

住所: 神奈川県横須賀市夏島町2-15
URL: http://www.jamstec.go.jp/j/

(text:西村、photo:市岡 ※一部の写真はJAMSTECさん提供)

関連するキーワード

関連記事

最新訪問ブログ

訪問ブログ一覧へもどる