紋に生きる創業80年の毛筆と刷毛の味 杉下印染工場
「デジタルでやると微調整に時間がかかる。アナログの方が臨機応変に対応できて融通が利くから、お客さんからの要望にもっとも応えていける」
そう話すのは、京都で風呂敷から儀式用の紋や祭りの法被、飲食店ののれんや旗を作る創業80年の印染工場を営む杉下浩教さん。
冠婚葬祭で目にする名前や家紋・小紋が入った袴や小袖などに入れられ
各家庭で受け継がれる家紋。
だからこそ、昔からの変わらぬ技術が現代にも生き続けています。
今回は、お客様から指定のあった石川県加賀の白山紬を使用し、
生地の上に糊を置いて染めていく「糊置」の実演です。
使用する糊は、もち米でつくった糊に
亜鉛抹という重金属を混ぜてグレーにしています。
堅い糊に水を加えて柔らかくしますが、
水だけだとへたってしまいますが、亜鉛抹を加えることで全くへたりません。
水紙という水を通さないものから型紙を自分で彫って作っていきます。
京都には引き粉(おがくず)を作る専門店がある
糊を置いていくとひっつくので、
引き粉(おがくず)をふって水分を吸収させ、
糊を安定させて、くっつかないようにしていきます。
京都には、引き粉(おがくず)だけを作る商売があり、
灰汁抜きしたおがくずを使っているんだそうです。
竹の伸子張りで、型と生地をばしっと引き延ばします。
「毛筆じゃないといい毛の味が出ない」
糊置きというと裏側が乾いたら伸子を返し、裏側に糊をはめていく。
そのため下からライトをあてて細かな部分に糊をはめていきますが、
気候条件、春夏秋冬によって糊の加減をかえたりしています。
小さい先でないと糊がたれてくるので、
柿渋の和紙の包み紙で包み糊を入れています。
「引染」で染めていく。白抜きで糊が置いてあるところが白く浮き出るという
染め抜きという作業をするんです。
岸和田だんじり祭の屋根上から団扇を使って進路指示を出す「大工方」の法被も
一品一品染めていきます。
赤のところは小さい筆で色をさしていく。
オーダーメイドに対応し、工場で糊をおいて刷毛で染める作業繰り返します。
法被の紋もお客さんのイメージを一緒に考えて作っていくこともあります。
町のこだわりを形にするのに時間がかかることもありますが、
希望にあった生地から選定してお客さんと一緒に考えて作ります。
大量生産ではなく、一品一品その人にあったものを仕立てます。
折角なので、最後にだんじり祭の気分だけでも、
味わおうと法被に袖を通して分かりました。
この世に一つとない、
自分だけのものに身を包まれると
これほどまでに清々しい気持ちの良さに満たされるとは驚きです。
創業80年の歴史を肌で感じる一日、本日はありがとうございました!
【詳細情報】
有限会社 杉下印染工場
電話番号:075-221-0613
住所:京都市中京区油小路通三条下ル
(text:坂田、photo:坂田)
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