ピリっとくらしにスパイスを!新旧の文化・人を混ぜて暮らしを調合する新たな食堂 三条スパイス研究所
しゃかいか!のカレー担当として、カレーにまつわるの現場(カレールウ、カレー皿)を取材しておりますカレー女こと坂田です。
今年の3月に、カレー女に大変気になる情報が寄せられました。
新潟・三条市にスパイスの研究所ができたという情報です。日頃からスパイスにまみれた活動をしているカレー女にとっては、疑問符がいっぱいでした。
なぜ、三条の地でスパイスなのか…。
研究所とは一体なんなのか…。
しかも、建物の写真をみるとたいそう立派じゃないですか。
しかも、こんなにも美味しそうなカレーが食べられるようです。
この謎の包まれた、『三条スパイス研究所』とは一体全体なんなのか、その謎を紐解くためにいてもたってもいられず、今回は、噂の『三条スパイス研究所』にやってきました!
三条スパイス研究所は、上越新幹線の燕三条駅から一駅の北三条駅から歩いてすぐの所にありました。
写真で見ていたあの研究所、立派すぎて駅からすぐに見つけられましたよ。
今回ご案内いただくのは、三条スパイス研究所のディレクターを担当されているfoodrop(フードロップ)の山倉あゆみさんにご案内いただきます。
お会いした瞬間からすてきな笑顔で迎えてくださる山倉さん、本日はよろしくお願いします。
さっそくですが、山倉さん、三条スパイス研究所は何をしているところなんですか?
「三条スパイス研究所とは、『にほんのくらしにスパイスを』をモットーに、食文化や生活技術など地域にある新旧の知恵を刺激のあるスパイスのように混ぜ合わせてまちや暮らしを新たな形に再編集していくことを目指す組織です。研究所では、食材、技術、道具などを、ここに集う人たちが使いこなすことで、自分好みの『暮らしの調合』ができるようになることを目標にしていろいろなことをしています」と山倉さんにっこり。
名前通りスパイスの研究もしているけど、それだけじゃない!
三条スパイス研究所の入口に掛けられている暖簾(のれん)は、すり鉢をイメージしてデザインされています。
町の人だけでなく外の人、さらには文化(知恵)が、スパイスのように混ぜ合わさり、刺激のある暮らしが出来上がっていく場所として育っていってほしいとの想いが込められています。
いろいろな役割があり、楽しいことが起こりそうな三条スパイス研究所は、どんな場所なのかいざ、入室です!
棚にこけしたちの姿がっ
自家製のウコン酒から保存食の本まで、ついつい手にとって確かめてみたくなるものばかり。なんだかスパイスのように刺激が生まれてきそうな素敵な棚ですね。
一つ一つにこめた想いがきちんと伝わってくる
あっ、あんなところにダルマを発見。
居心地が良くてついついずっと居たくなる空間にもいろいろな仕掛けがあります。
内装コーディネートは、燕市吉田のカフェ、ツバメコーヒーの田中辰幸さん、アートディレクターは三条市出身の関川一郎さんが担当されたそうです。
全部違う表情をした味わいのある椅子たちが並んでいます。
表情や座り心地の違う椅子を毎日選んで座るのも楽しいですよね。
このかわいいクッションは、一つ一つの椅子に分けて三条市内の布作家さんに作っていただいたそうです。
気分が楽しくなる明るいクッション!毎日座りに来たくなりますね。
燕三条の地域といえば、カトラリーも有名ですよね。カトラリーもオシャレに飾ります。
装花として室内飾られている蘭は、
アートディレクターの関川一郎さんが、おじいちゃん、おばあちゃんが庭先で育てている庭木や盆栽をイメージして、愛着を持ちやすいようにと飾っています。なかなか育てるのは難しい植物と言われていますが、なかなか元気に育っていますね!
カレーのおいしい空気も吸っているからでしょうか!
ここの来られたみなさんが、おいしいそうに頬張っているあのカレー。
あのカレーを食べずには帰れません!ということで早速、カレーを注文しちゃいます。
食器やカトラリーは、コーディネーターの田中さんが選んだものです。
地場の製品を中心に料理や空間に合わせて世界中の食器や道具がバランス良くコーディネートされています。地場産のおしゃれなモノとの出会い、そしてそれらを使った独自のテーブルコーディネートが楽しめることもここの魅力ですね。
オシャレなコップで飲むコーヒーは、なんだかいつもと違う刺激を与えてくれます。
人気メニューのターリーセット、ビリヤニセットを注文しました!カレーは3種類から2種類を選ぶことができ、新潟の郷土食材「打ち豆」と干し野菜を使ったカレーをセレクト!
カレー女は、懐かしのインドを思い出していました。
インドでカレーを食べるときは、カレーはなく、ターリーという定食を注文します。
ターリーを注文すると一つの器に、数種類のカレーとバスマティライス、チャパティ、サモサ、おかず「サンバル」、サラダ、ヨーグルト、スープ、デザート、漬物「アチャール」などがセットになって出てきます。インドでは、ヨーグルトで辛さを調整しつつ、最終的には全部混ぜて食べます。
食べる順番も人それぞれで楽しみ方も何倍にもなります!
だから、ターリーっておいしいんですよね。
このオシャレなお皿は、インド製のターリー皿を料理のイメージに合わせて、燕三条の技術であえてマットな加工に仕上げています。
その発想も燕三条地域だからこそ実現できることですね!カレー女の懐かしのインドの思い出に、さらに新しい風が巻き起こっていきます。
ビリヤニセットには、ビリヤニスパイスごはん、カレー1種類!さらに、ドリンクにスパイスティーをセレクト!
ビリヤニに舌鼓!この美味しさを毎日味わいに通い詰めたいです。
研究所で提供されているドリンクや、カレーにも使われているウコンは、地元産のウコンを使用しているとのこと。
えっ、新潟でウコンって採れるんですか!?
カレーの色付けとして使われるスパイスのターメリック。
お酒の前に飲むといいと言われている漢方としてのウコンが
えっ、雪国の新潟で採れるんですか!?
こちらをご覧ください。
スパイス研究所の隣には、ウコンの葉がカレー女の身長並みに力強く育っています。
ウコンは、インドが生産量・輸出量ともに世界一で暑い地域で栽培されているはず…。
新潟のこの地で、なぜ、こんなにもウコンが茂っているのでしょうか。
冬を越す独自のウコン栽培を研究
雪国の地で、南国を好むウコンの栽培を始められた山崎一一(かずいち)さんの独自の生産技術・知識を残すため、山崎さんの指導のもと、スパイス研究所の隣でウコンの栽培を始められたそうです。
山崎さんとの出会いがスパイス研究所を始める重要な鍵になっているそうです。(*山崎さんについては、ウコン生産 山崎さんの回でご紹介の予定です)
重要の鍵の話にもかかわる「三条スパイス研究所」の成立ちをお聞きしていきます。
ちょっと複雑なのですが、
実は、ここ「三条スパイス研究所」は、三条市の公共施設、まちなか交流広場「ステージえんがわ」の中にある食堂なんです。
施設建設のはじまりは、三条市から『生涯にわたり健康で幸せに暮らせるまちづくりを目指すスマートウエルネス三条の推進のために高齢者が外出する機会を増やすための施設にしたい』という依頼から始まります。
おじいちゃん、おばあちゃんになったらどんな場所に出掛けてみたいかな?
三条市の取組みとして市の福祉課さんと一緒に高齢者が外出したくなる町は、どういう町であれば良いのかを探りはじめます。
そこで出てきた答えの一つが、「高齢者が外食する飲食店」でした。
和食は家で食べられるから、みんなが好きなカレー屋さんにしたらどうだろうか、
この話を受け、プロジェクトに参加することになった山倉さんは、今回の監修として参加している東京・押上にあるスパイス料理店「スパイスカフェ」の伊藤一城シェフを中心とした、プロジェクトチームのみんなで考えを巡らせます。
もともと、地域の給食施設跡地だったこの場所は、朝市の開催も含め、旬の食材や街の食文化を知ることができる学びの場だったはず。そのため、町の人の想いや食文化をカタチにした食に関する新たな取組みができる場所にしたいという想いも強くありました。
スパイス研究所の鍵となるウコン生産者 山崎さんのたくましさ
いろいろ町を探っていると三条市の下田村(しただむら)の直売所で一般に購入すれば高価なウコンが食材と同じように販売され、人気商品になっている現場に遭遇します。そして、直売所の方から、山崎さんというウコン生産者がいるという情報を聞きつけます。
沖縄などの温暖な地でしか育たないと思っていたウコンを山崎さんが、三条の山間部下田エリアで育てていました。
ウコン栽培の話に驚き、興味を持った山倉さんたちと、重要な鍵となる山崎さんとの出会いはここから始まります。
山崎さんが独自のウコン栽培過程によって得てきたたくましさ、探究心、そして冒険心のようなものが、飲食店という場を通じて様々な形で表現され始めたら、未来に向かった考察と楽しくて心豊かな食のステージが表現できるはず。と山倉さんたちは考えます。
これが「研究所」誕生のスタート地点です。
さらに町の調査をいろいろと進める中で、「自分だけの知識を大切にする」という町の人たちの強い欲求があることがわかってきました。
町に住むいろんな人が、育んできた個々の文化(スパイス)を育て、作り、調合できる場所に育てよう
「長い間、新商品の開発やモノ作り、農業などいろんな形で携わってきた方々が、ここ、ものづくりの町三条のおじいちゃんなのかもしれません。個性を大切に独自に育まれてきた文化を「楽しむもの」と思っているおじいちゃんたちの様子を「かっこいい」と思うこと、新旧の知識を尊敬し、大事にすることができれば高齢者との関係性にも守り、守られるの関係性とは違う新しい目線がきっと育ちます。この町の高齢者の方々は、そういう知恵をたくさん持っている。まだまだ元気でいてくれなきゃ困るし、実際、私たちよりずっと活動的でキラキラしています。」と山倉さんはいいます。
スパイス料理を食べる飲食店の機能だけでなく、町のおじいちゃんや、おばあちゃんこの町に住むいろんな人が、育んできた個々の文化(スパイス)を育て、作り、調合できる場所に育てよう。
人や知識を含めた地域資源をつなぎ、新たなコミュニティが生まれる場所にできたら、毎日出掛けたくなる場所になるはず!と目指す先が固まりました。
建築にも工夫がいっぱいあります。
手塚建築研究所の手塚貴晴さん+手塚由比さんご夫婦、現場のリーダーとして島田真弓さんが担当されました。
長い「えんがわ」でひと休憩
木デッキの軒下には80メートルにも及ぶ長い縁側があり、なーんと199.5人が座ることができ、
ちょっと休憩しよう、
ちょっと話をしよう、
じゃあ、「えんがわ」で!と地元の方が朝から自由に腰掛け思い思いの時間を過ごしています。
両側にスロープ!壁をなくして人が集う空間の仕掛け
建物の両側を全面スロープにすることで、お年寄りからこどもまでゆったりとした傾斜を歩いて軒下へ向かう仕掛けや、
内と外の隔たりないように建物の壁をガラス張りにし、出入りが自由な空間を再現。ガラスの折れ戸を全面開放することもでき、開放された開放された公共施設として機能しています。
使用されているモノは、燕三条地域でオーダーメイドで作られたモノばかり。
あの部品がない、こんなものが欲しい。と町の誰かに相談すれば、その部品はあそこで作れるかもよとみんなが教えてくれるそうです。
まちの知識が集まり作られた公共施設。みんなが集うこの施設には、ひとつひとつに大切な想いが詰まっているんですね。
さすが、ものづくりの町の強みですよね。
えんがわで外用に使用している椅子には、しゃかいか!でも取材させていただいた庖丁工房タダフサさんのマークが入っています。これは、抗菌炭化木というまな板や包丁の柄に使われる木材で、外に置いて濡れても腐らないのです!
地域の方からのグランドピアノの寄付があり、歌声喫茶などではピアノの生伴奏に合わせて合唱することもあるそうです。
音があるだけで楽しい気分になってきます。
「えんがわカレンダーでは、65歳以上で構成された演劇レッスンや、うたごえ喫茶、やさしい紙工作など、この場所で行なわれているコミュニティの活動をお知らせしていますよ」と山倉さん。
屋根付きの「ステージえんがわ」では、結婚式や、2次会、送別会、発表会、ちょっとした会議に将棋大会など、本当に毎日いろいろな使い方をされているようです。
三条市在住の方でなくても新潟の方でなくても、ここは誰でも自由に施設を使うことができます。
人が集まり交流し、新たなコミュニティが生まれていく「ステージえんがわ」は、おじいちゃん、おばあちゃんからこどもまでみんなの暮らしに彩りを与え、新たな文化を生み出し始めています。
二・七の市
「ステージえんがわ」脇では、2と7の付く日に朝から営業する「二・七の市(にひちのいち)」が開催されます。おいしくて新鮮な食材が安く購入できる朝市では、ワンコインで食べられる朝ごはんの提供まであります。
今年の燕三条 工場の祭典2016開催中に、7がつく日がありますね。これは行かないとですね!
ご案内していただいた親しみやすい山倉さん、ありがとうございました!山倉さんは、こうして地域の方と共に三条スパイス研究所にさらなるスパイスを加え続けてくれています。
単なるスパイスを研究する施設かと思いきや、いろいろな想いが詰まったこちらの公共施設は、
いろいろな人や文化とのつながりを作り(調合し)、スパイスのような刺激を育む場所でした!
まちなか交流広場「ステージえんがわ」は、2016年度のグッドデザイン賞を取組の部門で受賞されたそうですよ!
新潟に行かれた際には、ぜひ足を運ばれてみてはいかがですか!
本日は、三条スパイス研究所の皆さまありがとうございました!スパイシーな人生は、日々の暮らしを楽しくしてくれそうですね。
【詳細情報】
三条スパイス研究所
住所: 新潟県三条市元町11-63
電話番号:0256-47-0086
営業時間: 10:00 〜 20:00(L.O. 19:00)
定休日: 毎週水曜日、第一火曜日
URL: http://spicelabo.net/
Facebook:https://www.facebook.com/spicelabosanjo/?fref=ts
まちなか交流広場 ステージえんがわ
URL:http://sanjoy-machinaka.jp/engawa/
(text:坂田、photo:市岡)
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