パッタンパッタン♪機織りの音が鳴り響く町のお祭りにいってきた! 富士吉田市のハタオリマチフェスティバル(前編)
フジヤマポーズでこんにちは。
今日は富士山のおひざもと、山梨県富士吉田市にやってきました。
富士吉田市では、だいたいどこからでも富士山を望むことができます。
実は先日もネクタイを専門で作っている「HADACHU」さんと、
リネンを織るテンジンさんにお邪魔したのですが、
今日は、こちらの2社がある富士吉田で「ハタオリマチフェスティバル」というお祭りを11月にやるよー、とお声がけいただいたので、やってきました!
「ハタオリフェス…なんだそりゃ?」と思われるかもしれませんが、ハタオリとはつまり、機織り。こちら富士吉田市は織物の産地として有名なのですが、機織りの町である富士吉田の魅力がいっぱい詰まった2日間を過ごすことができるのお祭りがハタオリマチフェスティバル(略してハタフェス!)なんです。
今日は富士吉田の町のことや、ハタオリフェスとはいったいどんなお祭りなのかを現場からお届けします!
お祭りといえば神社!
ということで、お祭りのメイン会場である小室浅間神社に来ました。
お祭りということで、地元の皆さんがこの神社に集まってきます。笛がピーヒャラ、太鼓がドンドン♪という音は聞こえてこないのですが、なんだか町全体がウキウキしている感じが伝わってきます。
ということで、ウッキーウッキー!
お猿さんの顔ハメ看板があります。
実はハタオリフェスのメインキャラクターはこのお猿さん。
なぜお猿さんかというと富士山とお猿さんには深い関係があり「御眷属(ごけんぞく)」といって富士山信仰では神の遣いの動物とされています。
パンフレットには『富士山は暗雲に包まれていたが孝安天皇92年の庚申の年に突然空が晴れ渡って姿を現したという伝説があり、庚申の年は「ご縁年(ごえんねん)」として特別視されています。意外と知られていない、富士山とサルの関係。ハタフェスではメインキャラクターとしてイベント中もいろいろなところで活躍してくれます。』と書かれていました。
お猿さん、これから2日間よろしくお願いします!
鳥居をくぐるとこの賑わい。
「まだ、初日の午前なので人もまばらなのかな、ゆっくりお茶とかしてから今日の見学をスタートしよう」と思っていましたが、すでにこのにぎわい。実はハタフェスは今年がはじめてなのですが、小さなお子さんからおじいちゃんおばあちゃんまでこんなにたくさんの人が来ています。
ハタオリフェスは盛りだくさんで、ご当地の織物工場と日本各地のファクトリーマーケット(個人でクリエイターの作品もあります!)の「ハタオリ工場祭」、昔の機織りで使われていた手仕事の道具・廃材などを利用した雑貨の販売をする「吉田のまちの道具市」、機織りの職人さんさんや織物を仕入れに来た商人が楽しんだであろう夜の町富士吉田の屋台村や飲み屋をはしごする「富士山はしご祭」の3つのお祭りをベースに、音楽会や写真展なども同時開催。盛りだくさんな秋祭りなんですよ。
まずは「ハタオリ工場祭」に参加。
織物の産地、富士吉田が誇る機織りメーカーの製品を見ることができます。
この場所は「新世界乾杯通り」という名前の通り富士吉田の歓楽街。下吉田駅から歩いて数分のところ?にあります。昭和の夜の街っぽい名前の居酒屋やスナックのお店の看板が並ぶ細い路地を通り抜けると、唐突にあらわれるにぎやかな声。そういった場所で「ハタオリ工場祭」は開催。(きっと夜もきっと楽しいぞ!ウッキッキ)
工場祭の会場に入ると、富士吉田の生地を使ったネクタイ、雑貨、傘や生地そのものも展示されています。
手ぬぐいや、
カラフルで楽しくなる柄のネクタイッ!
名古屋からきたテキスタイルデザイナーの小島日和さん。織物にまつわる人ならば、富士吉田以外の人でもオッケー!一緒に楽しもう!というのもハタオリマチフェスティバルの醍醐味です。
生地を選んで洋服をオーダーするヤンマ産業の受注会も開催。
こちらは「流しの洋裁人」こと、原田陽子さん。原田さんは店舗を持たずに全国を回りながら服を仕立てる、文字通り「流し」で、その土地の布で仕立てたり、織られている工場を見学したうえで各地の機屋さんから記事を仕入れ服を仕立てていきます。
もともとアパレルメーカーで営業と企画を担当していた原田さんは、学校や様々なイベントで出前の洋裁を通して目の前で作られていく過程も一緒に体験してもらうことで、ものがつくられる光景を生み出そうという活動を開始。現在では関西の芸術大学でファッションコースの専任講師として学生さんとともに服飾造形やファッションを取り巻く環境について考えています。
今日は、郡内織物の生地を用いて、ちょっとそこまで!来ていけそうなパジャマやサルエルパンツをオーダーすることができる「comme de pyjama & サルエルパンツ受注会 in 富士吉田」を開催。
展示してあった上着を着せてもらうと、とてもあったかな気持ちになりました。
ご本人いわく「洋裁界の平野レミ」。足を止めてくれた方や通りがかりの人を軽快なトークで巻き込みながら、ちゃきちゃきと洋服をつくるさまはまさにその人です。「アレェー、やっちゃった!ということもたまにあって(笑)」とのことでした。
洋服づくりに注ぎ込む愛情に溢れていて、しかし気さくなとっても素敵な方でした。
織物というと着物の反物のような円筒状ものをイメージしていた僕は、富士吉田でこんなにオシャレな最終製品にまでなっていることを知りませんでした。富士吉田のみなさん、ごめんなさい。
ということで、富士吉田の織物について勉強してきたことをここに証明したいと思います。
富士吉田でなんで織物が??いう疑問をお持ちのあなた!(というか私)。
理由はいくつかあります。
一つ目のキーワードは「郡内織物(ぐんないおりもの)」。
ここ富士吉田市を含む、山梨県の西桂町・都留市・大月市・上野原市を含む一帯は郡内地域と呼ばれ、千年も前からこの地域は織物の産地でした。
なぜか?それは富士山の水が関係していて、富士山から湧き出るきれいで豊かな水が、糸の発色に良く染色に適していたからです。
織物に限らず、モノづくりの現場ではなんども近くにきれいな水源があり、川が流れて水が豊かなのでという理由で工場が建ったり産業が発達した、というのは聞いてきたので、これはとても腹落ちしました。
郡内織物の特徴は3つあり、(1)製品や織り上げた生地を染めるのではなく、原料となる糸を染めて織り上げる「先染め(さきぞめ)」という手法で色鮮やかで高級感のある立体的な柄を表現できます。(2)次に使用する糸が細く、高密度な織り方であること。糸は細くなると取り扱いが難しいのだそうですが、その細い糸を高密度に織ることで薄くてもハリがあり、きめ細かく繊細で美しい生地が作られます。(3)最後は、多品種生産であること。上に書いたような先染め、細番手の糸、高密度という高度な技術が要求される手法によって、洋服はもちろんネクタイや、傘、ストールなど様々な製品に対応することができるようになり、この多品種生産は産地の機織り職人たちの技を鍛え上げることにつながりました。
二つ目のキーワード「甲斐絹(かいき)」。
甲斐絹と書いて「かいき」と読みます。この甲斐絹は江戸時代頃から昭和にかけてこの産地で作られていた高級絹織物。実はこの甲斐絹のはじまりは江戸時代のぜいたく禁止令なんです。質素倹約のお手本となるべき武士も町人もは着飾ってはいけない、だから着物は地味でベーシックなものにすべき、という制限の中で、当時のファッショニスタである江戸の武士や豪商が少しでもこっそりおしゃれを楽しみたい、という思いで工夫したのが羽織など着物の裏地。
先染めで染められた細い糸と高密度で織られ、繊細かつ独特の光沢がありさらっとした手触りの郡内織物。裏地として要求される機能は、薄手で軽く滑らかでコシがあるので裏地にも適しています。
それまでは、消費地から離れていた郡内地域の織物もその高い技術が注目され、高級裏地「甲斐絹」を流行の最先端江戸に供給、流通ルートが生まれることになりました。そうして、さらに郡内の機屋の職人の技はさらに磨き上げられていくことになります。
と、ここに書いた郡内織物のお話は、ハタフェス工場祭りでも配布されていたこの本で勉強しました!
この本の名前は「LOOM(ルーム)」といって織機や機(はた)の意味があります。山梨県富士工業技術センターが発行元で、TAKE FREEのとってもぜいたくな読み物になっています。
フリーペーパーというにはあまりにラグジュアリーなこの一冊、ご興味がある方はぜひ一度手にとってよんでいただきたいです!
こうして高度な技術で生まれた織物が江戸というマーケットを獲得することになりましたが、なんで今まで聞いたことがなかったのかな?今はどうなっているのかな?という疑問がわきませんか!
ということで、富士吉田市内のハタオリ工場を巡る「ハタフェスバスツアー」に参加します!
バスガイドはこの方、渡小織物(わたしょうおりもの)という機織り屋の三代目、渡辺太郎さん
。本業の司会者かと思うほどの、豊富な地元ネタと軽快なトーク。いよっ!若旦那まってましたっ、と声をかけたくなります。渡辺さんは富士急行を退職後、家業を継いでブランドも立ち上げ、現在は職人としてそして経営にも携わっています。
職人さんの口から直接聞くことができるツアーなのでとても楽しみ!
今日は快晴!「おとといは0.1度と極寒だったけど、今日は晴れだー!」と渡辺さん。
バスは織物の現場へ向かって走ります。
江戸時代から明治期にかけて盛んに生産された甲斐絹もやがて和服を着る文化が洋服に代わられることで戦争の時期(1940年頃)には、その姿を消すことになります。
ガイドの渡辺さんの富士吉田の織物と町の説明に続き、富士吉田の織物の現在が語られました。
「着物がだんだん洋服に変わってきてからも、富士吉田を中心とする郡内地域の織物は傘、座布団、和風の旅館、旅館で使われるような「夜具地(やぐじ)」といわれる金の糸を使った布団、金襴緞子(きんらんどんす)なども作っていましたが、戦後の富士吉田の織物を支えてきたのはアパレルメーカーからのいろんな請負の仕事、OEMでした。しかし他の産業と同じくここ何年かは中国や海外の商品に押されて出荷や取引高も減少しています。
しかし、自分を含め、それぞれの機織り屋さんが何かしなければ、ということでひとつひとつ自分たちのブランディングをはじめていったのが今の富士吉田の機織り。今日は富士吉田の中でも一番2番と言われるくらい自分たちのブランドをブラッシュアップした先輩の機屋さんたち。満足度の高い、職人が見ても満足度が高い2社を見てもらいますー!」と軽妙な語り口。
楽しみ度がいよいよ増してきます。
バスを降りて向かうのは「羽田忠織物(はだちゅうおりもの)」さん。
この辺は機屋さんが密集している。山と山に囲まれたところ。「暮地(くれち)」という集落です。
ここに1921年、当時の富士山麓鉄道の駅ができたのですが「暮地っていう名前は墓地に字面が似て不吉じゃないか」ということで、そこの駅の名前は1981年、「寿(ことぶき)」というハッピーネームに改称、真逆の名前になりました!
これは大学を卒業して3年間富士急行に勤めていた渡辺さんの豆知識。
ダンディー社長の羽田正二さん。今日もお世話になります!
とてもおしゃれな社長さん。渡辺さん達若い機織り職人にとっては兄貴的な存在なのだそうです。
羽田忠織物は、ネクタイを専門で折っている織物屋さん。「HADACHU」というブランドで、自社のネクタイ、蝶ネクタイ、ポケットチーフ、ポーチ、バッグの生地など多種にわたってネクタイの生地をつかってブランディングをしています。
HADACHUのネクタイは渋谷ヒカリエなどのD&DEPARTMENTでも販売されていて、人気のブランドです。
さっそくショールームを見学!
壁の什器も楽しい。HADACHUの商品に合わせて大工さんにオーダーメイドで設計したものなんですって。
色や柄が楽しくなるネクタイたちがショールームに展示されています。
蝶ネクタイも置いてある。今まで蝶ネクタイは未経験ですが、どこかにつけて出かけたくなる楽しい柄ばかり。
女性たちは、ネクタイの生地を使った雑貨に夢中です。
工房を見学させてもらうことができました。バッタンバッタンバッタンバッタン♪
気持ちいい音に聞き入ってしまう。
ネクタイを織るジャカード機、というマシン。柄を出すのが得意で、先ほどショールームで見たさまざまな柄を織り上げることができます。
1万本くらいの糸がこのジャカード機に供給されます。
縦糸と横糸を組み合わせて織り上げるのですが、ネクタイの柄を作りだすのは、
紋紙(もんがみ)という紙。ジャカード機と連動し、たて糸が上下することで、美しい柄を生み出す、という仕組みになっています。
でもこのような紙から柄がどんな柄ができるのか、想像できない。
ネクタイは50㎝幅の生地を使用します。10㎝単位でデザインされ、あとは繰り返して作られます。
柄は組織の組合せで無制限に作ることができるそうです。
羽田さんが考えてデザインした柄を、紋紙を作る専門の職人さんにお願いすることになります。
すごいー。
もともとお父さま達の代では、織るまでの糸の準備を自分たちでやっていたそうですが、産業が盛んになるにつれて分業が進みました。
ここで織りあげた生地は、ネクタイの風合いを出す加工場で仕上げることで、先ほどの楽しいネクタイたちが生まれていくことになります。
工場見学の後は、ショールームに戻って羽田忠さんからのご厚意で丸藤酒造甲州ワイン「ルバイヤート」をいただきます。辛口でスッキリ飲みやすいのが特長です。
おいしいわっ!楽しいわっ!
お子様にはぶどうジュース(ワインになる前!)が振舞われました。
羽田忠織物のショールームには、製品の展示はもちろん、羽田さんの人柄が伝わる雰囲気があふれ出ています。それはきっと社長である羽田さんの「好きなものを作りたい」という思いがこもっているからなんだな、と思います。
バスに乗って次の見学先に移動。
バスの中ではお土産が配られました!
こちらがお土産の和菓子。今回のイベント用に特別に作ってもらったものなんですって!
富士さんの周りには富士急ハイランド、山中湖、河口湖とたくさん見どころがありますが今はなんといっても「富士山の忠霊塔」。この忠霊塔は下吉田の駅近くの山の中腹にある戦没者慰霊碑なのですが、ここから見た景色がサイコー!ということで、特に富士山が世界遺産に認定されてからは、タイやインドネシアなど東南アジアの観光客がたくさんきて、下吉田の駅がまるで成田空港状態。と、前置きが長くなりましたが、その忠霊塔の近くにある和菓子屋さんが作ってくれた今回だけのスペシャルな和菓子なんです。
外に巻いてある布は、渡辺さんのご実家の織物屋さん渡小織物で作った富士山柄のネクタイの生地をお菓子の色味に合わせて作ったもの。このイベント用に作ったやはり特別バージョンでポケットチーフとして、そして何か敷物にも使える。
「オールシルクのそこそこいい生地です」と宣伝ももちろん忘れない!
「富士見バイパス」という富士吉田市新屋から同市富士見までの国道139号線のバイパス道路。「富士」という名前のつく地名や道路がたくさんあります。
といっている間に到着したのは、
ハンサム社長小林新司さんが営む「テンジン」です。
テンジンは、以前はネクタイ屋さんだったのですが、10数年前にリネンのクロスなどの商品にシフトチェンジ。現在は、自社ブランドALDIN(アルディン)を展開し、その種類は100以上にものぼります。
リネンという生地を作る糸の原料はフラックスという植物の茎の繊維。昔はその繊維を取り出す時に川の水で晒していました。現在は土で発酵させています。
これがリネンの原料となる植物。
今のリネンの糸はこんな感じで、縦糸にする場合は、でんぷんのりを糸に付着させます。
縦糸は「へだま」といっておばあちゃんが縁側で縦糸にしていた、今はそういう手法は途絶えてしまって、専門の業者さんに糸とお巻きを渡して作ってもらう。それを織機で生地に織りあげていくのだそうです。
さっそく工場を見学!
ジャカード機があります。ほどのネクタイ工場である羽田忠さんで見せてもらった通り、ジャカード機は柄が得意。
一方シマ、チェック、無地が多いリネンはドビー機という織機できれいに織ることができ、アンティークリネンと呼ばれる昔ながらのリネン布も、このドビー機で作られます。
こちらの音は「カッタンカッタン♪」で機械の種類によっても音が微妙に違うのがわかります。
テンジンさんの織機のもう一つの特徴は古い(昭和の初めくらい)シャトル織機があること。
シャトル機は文字通り、糸を通す「シャトル」が縦糸の間を往復し、製品になっていきます。色糸をいれてデザインに使えることもあります。
「シャトルのいとがなくなると、どうするの?しょくにんさんはねないでまっているのですか?」と参加者のお子さんからするどい質問が飛び出しました。
「いい質問ですね!」と小林さん。
このシャトルは糸を通したものをいくつか用意しておいて、この機械はかしこいので自動で補充してくれるのだそうです。
「おおー!」と参加者から驚きの声があがります。昔は人がやって変えてたそうです。
機械もかしこいですが、目のつけどころの良い質問者にも拍手!
ショールームで、こちらの工場で生まれた製品に触れてみることができました。
「どうぞー、入ってくださ〜い」と優しい声の主は、小林さんの奥様のたかこさん。
こちらのショールームの運営のほか、営業や生産も担当しています。
ショールームが生まれたのは「ああやって布ってできてるんだな、と現場を見てほしい」という思いから。
手間をかけて一枚一枚織り上げた生地をつかった製品がこちらで紹介されています。
やさしい風合いのリネンは思わず触ってみたくなります。
そして、寝転びたくなります。
リネンの糸は細い繊維を取り出し、撚り合わせて糸になっていきます。
郡内織物の特徴である先染め。リネンの場合は濃い色の場合はそのまま染色し、薄色を染める時はいったん漂白してから綺麗な色の糸を作ります。一本の中にもいろんな色が混じる糸も作ることができます。
やさしい〜
糸を2万本使ったちょっと贅沢なワッフルの寝具。横糸がカシミアで天然繊維の織物工場なのでこんなぜいたくな手触りが可能で、表と裏が同じ折り方になっているのどちらの面も使うことができます。
リネンは経年変化を楽しむ生地。
できたばかりのもの、5年もの、8年ものと触らせてもらいます。時間が経つにつれてやさしくなり肌になじんでくる触りごごちは、まるで熟成して味がまろやかになっていくようなワインのよう〜とおしゃれに比喩したくなる。
富士吉田で生まれたファクトリーブランド、さらに次の動きが始まっています。
富士吉田を代表する二つの織物工場を見学させてもらって印象に残ったのは、どちらも好きなことをしながら強みを見つけて自立しているところ。
郡内織物、甲斐絹という高度な技術が必要で高品質な織物をルーツとする富士吉田のハタオリ工場は、戦後、着物文化の変化や海外製品へのシフトなどさまざまな逆風の中、生き残ってきましたが、自社ブランドを持ち既存の流通に立ち向かうべく新しい試みが進んでいることを実感しました。
富士吉田にこの新しい風を起こしたのは、羽田忠さんも、テンジンさんも、渡辺さんの渡小織物も所属している「ヤマナシハタオリトラベル」というチーム。
今年で4年目で自社ブランディングをしっかりして、安心してお届けできる、という機屋さんの集合体で11社あります。
活動内容は、最近だと青山のスパイラルの1Fのショーケースで販売会をしたり、都内の大手デパートや販売店でイベントを開催。
「なんとなくみんなAKBじゃないんですけど、最初はみんなで動いてたんですが、個々に動きが出始めているのがヤマナシハタオリトラベル内のチームの現在です」と渡辺さん。
これまでは、チームとして固まりで動いていたが、ネクタイ、テンジンさんだったらリネンやクロスやエプロン、それぞれのブランドに売り場に合うように個々に声がかかって自立し始めるというさらに新たな動きも生まれているそうです。
バスツアーだけど、次の場所へは歩いて移動!
到着したのは、おしゃれな建物。
“THE DEARGROUND(ザ ディアグラウンド)”というカフェで、ひと休みです。
店内からもやはり富士山をちらりと望むことができます。
スコーンやケーキもいただきながら、まったりしたいと思います。
カフェの中は白い壁に黒いライト、それにイギリス国旗。こだわりが随所に伺えます。
…というのも、実はこちらのカフェ、リネン織物を軸にした製品で人気の、富士吉田が誇るアパレルブランド“OLDMAN’S TAILOR(オールドマンズテーラー)”のデザイナーしむら祐次さん・とくさんご夫妻が運営しているから。
同じ建物の3階にはOLD MAN’S TAILORのアトリエがあります。
OLD MAN’S TAILORは富士吉田に拠点を持ちながら全国のセレクトショップでその製品が取り扱われている人気っぷり。実は先ほど見学させていただいたテンジンさんはとくさんのご実家。案内をしてくれた小林新司さんはとくさんのお兄さんなのです。とくさんはご実家で一緒にネクタイ生地などを作っていましたが、小林さんが職人として織り上げたリネン生地を使い服や雑貨に展開、2004年に「R&D.M.Co-」を立ち上げました。
オールドマンズな雰囲気の道具も飾られています。
お茶を待っている間、アトリエにおじゃまして服を見たり、このツアーに参加した皆さんとお話をしたりと、ゆっくりした時間を楽しむことができました。
バスツアー最後の見学先は、Longtemps(ロンタン)という雑貨屋さん。
中には、食器や雑貨が並んでいます。Longtempsというお店のお名前はLong time(長い間)を意味するフランス語。日々の暮らしの中でいいものや人との出会いを大切にして、末長くお付き合いしましょう、という思いが込められています。
3Fには家具の展示スペースもあり、末長くお付き合いしたくなるものがいっぱいあって楽しくなります。
こちらのお店の中では、写真家・濱田英明さんの富士吉田をテーマにした写真展を開催。
「富士吉田の人や自然、富士山などあたりまえの日常が、まちにとけこむようにそこにはあります。」とパンレットに書かれている通り、今日見てきたシーンを思い出したり、そしてまだ見ていない富士吉田の風景に触れたくなったり。
ツアーの最後にふさわしく、富士吉田の町のことに思いをはせてツアーは終了。
お店の外にでるとあっという間に夕方になっていました。
この「富士吉田市内のハタオリ工場を巡る」バスツアーは、今までバイヤーやデザイナーに向けたバスツアーは開催していましたが、一般の方々に向けたものとしては初開催。富士吉田の主な産業である織物工場を回りながら、作っている現場や製品を見ることのほかに、秋祭りとして富士吉田の町の魅力にも触れることのできた素敵な催しでした。
参加者も大満足で、ものづくりをきっかけに町に興味を持ってもらおう、という運営しているみなさんの思いも確実につたわったことと思います。
見学先のみなさん、ガイドの渡辺さん、有難うございました!
しかし、お祭りはまだまだ終わらず、後編(夜の町&第2日)へと続く。
【詳細情報】
主催/山梨県富士吉田市・ハタフェス実行委員会
電話番号:山梨県富士吉田市富士山課 0555-22-1111
URL:http://hatafes.jp/
有限会社羽田忠織物/HADACHU ORIMONO
電話番号:0555-22-4584
住所:山梨県富士吉田市上暮地3-7-26
URL: http://hadachuorimono.jp/
有限会社テンジン(TENJIN Co.,Ltd)
電話番号:0555-22-1860
住所:山梨県富士吉田市下吉田7-29-2
URL: http://www.tenjin-factory.com/
有限会社 渡小織物
電話番号:0555-22-1885
住所:山梨県富士吉田市富士見5-5-52
URL:http://www.watasho-orimono.com/
流しの洋裁人 原田陽子さん
https://www.facebook.com/yoko.harada.7792
LONGTEMPS(ロンタン)
電話番号:0555-22-0400
住所:山梨県富士吉田市下吉田3-12-54
URL:http://www.longtemps.jp/
(text:西村、photo:市岡)
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