冬の日本海トライアルステイ後編「町の魅力を発見するフィールドワーク」
食事などの生活基盤づくり、ご近所さんへのご挨拶まわりも終え、このトライアルステイに参加するメンバーも勢ぞろいして、いよいよ期間限定しゃかいか!の越廼サテライトオフィスが本格稼働。
ご近所の猫ともお知り合いになることができました。
毎朝律儀にあいさつしてくれます。
いつもより少しのんびりと朝食をいただいた後は、早速お仕事!
Web制作はパソコンとWi-Fiがあれば、だいたいできるので、朝からさっそくお仕事が始まっています。おのおの好きな場所に陣取って、普段は会議室で行う打ち合わせもテーブルに座り、
デザインチームはもくもくと、
ちょっと一休みしてみたり、
東京オフィスの人とリモートで打ち合わせしたり、エンジニアの面接もスカイプのテレビ電話でやってしまいます。
(面接を受けられた方は普通の家でやってると思ってるかもしれませんが)
普段のオフィスと違うのは、仕事に集中できること。ガッーと熱中して作業を行うにはとてもいい環境です。
外部から遮断されているわけではありませんし、好きな時に休憩して散歩してみたりと、自由だけど仕事はとても捗ります。
きっと静かな環境と、職住一体なので通勤で疲れることがないこと、そして、東京や大阪の人たちに遊んでいると思われたくないから頑張る、ということもあるのかな、と思いました。
越廼から六本木へ出発しなければいけない人もいる
一方、お客さんと打ち合わせをしたり折衝をしないといけないディレクター職もこのトライアルステイに参加しています。この期間中まったくお客さんと会わずに缶詰になるということはお仕事上難しいので、この日本海に面する越廼からお客さんのいる東京へ打ち合わせに向かうことになりました。
朝7時くらいにステイ先を出発。波をみながら、車を走らせる。
いくつか山を越えて、福井駅に到着。
ということで打ち合わせ場所である六本木ヒルズに到着、打ち合わせを終えて、17時頃新幹線に乗り、米原で特急しらさぎに乗ると福井県到着は21時過ぎ。それから車に乗って、お家にたどり着いたのは22時。東京での打ち合わせならこの越廼村からでも全然問題ないことが証明できました!
ちなみに、「福井発-福井着」という切符を買うとまともに往復料金を支払うより少しお得になります。ただし、行きは金沢経由の北陸新幹線で東京へ、戻りは東海道新幹線米原経由、ぐるっと一周するような感じで出発到着は同日内、という条件付きの切符です。数千円ですが、お得になります。
そして、福井ステイチームは、海鮮丼・ウニ丼のお昼ご飯と、海を見ながら、海の幸を堪能しました。満喫してるね。
午後もガツガツ働く!
そして、この日のディナーはカニ。福井と言えば!言わなくても!カニ!
おカニさま、よく我が家におこしくださいましたー
おカニさまの記念撮影。
まだ、生きています。
カニのさばき方をネットで調べて、
さばく。
足をとって、胴と顔を分解
味噌もスプーンですくいます。
笑顔がこぼれる。
お鍋の方も準備万端です。
お酒の方もオッケーです。
お鍋に投入しようと思います。
ということで、いただきまーす!
おれのカニ!
本場福井のカニすき鍋を堪能。
焼きがにも。
見てください、この笑顔。
▼カニパーティーのはしゃぎっぷりはこちらからどうぞ。
カニパワー!!
気合が入りすぎてのカニ疲れのせいか、マッサージで筋肉をほぐします。
こうして、福井のカニの夜は賑やかに更けていきました。
社長視察とカニパワーによって気合が入ったみんなは明日から普段より一層、働くのでした。
次回はいよいよ越廼の魅力を発見。フィールドワーク編です。
おはようございます!
この日はお散歩、ではなく越廼の魅力を発見するためのフィールドワーク!みんなで外を出歩いて、いろんな発見をするぞ!
ということで、いつものように家の前の坂を下り海に向かいます。
まずは、誰か見つけて聞くのが一番早い、ということで海沿いの道を歩きまわってみますが、あまり人がいません。
すると、なにやら窓越しに人が動いている気配がしのたで、窓から「コンチはー」と声をかけて
「まあ入れや」とご招待いただきました。
こちらは、元漁師の山下三郎さん(90歳近い)。今は引退して自由なくらしで、今日は買ってきたお魚を調理中。漁はやめてもお魚大好き!昔は、スケソウダラ漁に北海道近くまで漁に出ていましたが、次第に獲れなくなり山下さんもそれをきっかけにリタイヤしたのだとか。
「タバコ屋があるから、そこに行くと誰かきっといるよ」と貴重な情報を聞き出しさっそく、移動。
たばこ屋、と呼ばれていますが、生活用品、調味料やトイレットペーパーなど結構充実した品揃えです。最近は見かけなくなりましたが、昔は都市部でもこういうお店が必ず町に一つありましたね。今はコンビニに変わってしまっているところがほとんどですが、越廼ではまだまだ残っています。学校帰りの時間になると、ご近所のお子さんもたくさん立ち寄るそうですよ。
たばこ屋のご主人と奥さま。
奥さんは東京上野で働いていたこともありましたが、里帰りし隣町からお嫁入りしてきたのだとか。居倉町の人は町外の人のことを「旅の人」と呼ぶのだそうです。「何十年も住んでいても、今でも旅の人って呼ばれる」きっと外から来る人が少なかったからなんじゃないかな、とのこと。
奥さんは水仙の卸業もやっています。
ここ越廼は水仙の群生地として全国的にも有名で、沿岸部の斜面には暖かくなると水仙が咲き誇るそうです。
マンホールにも水仙の絵が描かれています。
近くの「越前水仙の里公園」もあります。
この水仙の里公園では、温室で一年中水仙を見ることができます。
すこし物悲しい水仙の物語も伝わっています。
お店の中には七輪があってとてもあたたかい。
そして、暖かいところに人は集まります。
水仙売りのおばちゃんが登場。
賑やかなやり取りがはじまりました。
こちらは、西田さん。実はステイ先のお隣にお住まいです。
この地区の新聞配達を担当していて、とても早起き。配り終わり、海が時化ていない時にはだいたい漁に出ているのだとか。このへんでは、釣りの西田といえば結構有名。
釣りの西田です。
この辺は、「波の華(なみのはな)」っていうのが有名なんだよ、というお話をくことができました。波の華とは、海岸に打ち寄せる波が白く舞い花のように見えることから名がついた現象です。地元の人は「あわ」と呼ぶことの方が多いのだとか。
見たい見たい、ということで早速「波の華」探しに来るまで国道305号線を突っ走ります。
▼冬の日本海です。ヒュ〜ルリ〜♪ ヒュールリ〜ララ〜♪と歌いたくなります。
しかし、波はあっても波の華はない。
実は、波の華は、気温が低く風が強い日に起きる現象で、この越廼でも頻繁に見ることはできないのだとか。
波の花は、ただ波が舞い散るのではなく、海中に浮遊するプランクトンの粘液が海岸にぶつかり蓄積し、石鹸の泡のように白く見えるのだそうです。
違う日に、漁港へ出てみると波の華ならぬ「あわ」を発見!
これが舞い散ると波の華になります。
冬の越廼にお越しの際は、ぜひ探してみてくださいね。
福井のお料理のことも勉強します。
地元の食材をできるだけ使って地元のお料理を食べる、というのもこのトライアルステイの重要なミッションの一つです。
彼女は今回のステイでのお料理隊長。
そして、make.f(メイクエフ)という福井市&福井新聞が主催する、福井の良さをPRしていこうというプロジェクトに参加しています。このトライアルステイに参加したのも、そのプロジェクトで商品開発している福井の幸がいっぱい詰まったお弁当の食材を見つけたり、地元食の研究家の方にお話を聞くため。
こちらの先生に福井のお料理を勉強したお話、福井の山菜(福井というと日本海の海の幸のイメージが強いですが、ここ殿下地区は山の幸を使ったお料理が盛んです)のお話を聞いたり、地元のお料理の作り方や、お祭りや催しとお料理の関係などなどお話を聞くことができました。
ステイ先から車で走ること15分ほどで、福井市の殿下(でんが)地区の先生のお家に到着。
越廼地区の地域おこし協力隊、高橋要さんに連れてきていただきました。
有難うございます!
お料理の先生からも「かなめくん!」と呼ばれ、大のお気に入り。
福井と言えば、厚揚げ??
とピンと来る人は少ないかもしれません。日本海、越前海岸と聞くとどうしても思い浮かぶのはカニや海の幸。ぼくもお話を聞くまではそう思っていましたが、実は福井県の厚揚げは有名で、20年連続消費量日本一。スーパーに行くと分厚くて、さまざまな製造元の厚揚げを楽しむことができるんです。
でも、なぜ福井で厚揚げなのか?というと…
福井県は仏教が盛んだから、です。
お寺でいたただく精進料理では肉や魚はNG。そこでたんぱく源を摂取する食材として大豆をつかったお豆腐や厚揚げといったお料理が発達。特に厚揚げは、風味や旨味があり、加熱しているので長期保存が効く、いろいろ調理できるのでいつも食べてても飽きない、といったメリットから福井で発達しました。
福井のお家では、だいたい厚揚げは冷蔵庫の中に常時ストックされていて、どんなお料理にもとりあえず入れとく、のだとか。
こちらは、ふの辛子和え。
角ふ、をふやかして、同じくこの地域の郷土料理であるじがらしをタレに混ぜ込みます。
火は一切使わず手間もかからないけど、時間は以外とかかります。でも、それがおいしい秘密。
この角ふも精進料理の素材のひとつです。
福井は持ち家率が多く、勤勉でお金持ち(収入は普通なので3世代で共働きなので、世帯収入が多い)、社長が一番多い、という県民性が有名ですが、大きな仏壇があるのも特徴のひとつ。
それは、信仰が空気のように溶け込んでいるからではないか、といわれています。
そして、お盆に親戚がかならず集まる風習があり、みんなが熱心にお経をあげるわけではありませんが、お盆になると遠くにいても近くで別の家に住んでいても、家族みんなが自然に集まろうという空気になるのだそうです。
このような空気に溶け込んだような信仰に加え、冬が厳しく雪国で冬を越すために、麹漬け、乾燥や保存方法などさまざまな工夫が発達しているのも福井の食文化の特徴。信仰心、気候条件とダイレクトにつながっているお料理を今も見ることができるのが福井の食の特徴です。
先生はかつて幼稚園の先生をしながら、女性の地位向上の活動をしていて、今も近くにある「かじかの里」という福井料理を出すお店で監修的な立場でお料理のメニュー開発や指導に携わっています。
では、生まれも育ちも殿下地区、かというとそうではなくお嫁入りでこの土地にやってきました。ここで嫁ぎ先のお母さんに教わりながら、この土地のお料理を研究してきました。先生が目指しているのは、越前海岸の海の幸や肉など福井名物!として持ち上げられている食材ではなく、すぐ近くの山で採れる山菜料理を受け継いでいくことです。
「大根も米のとぎ汁と一緒に煮るとすぐにやわらかくなるんだから!」と先生に聞いて、さっそく挑戦しました。
1時間の予定が3時間ほど、と大幅に予定をオーバーして福井の食に関する聞き取りが終了。
さて、海の幸など豪華食材をあえて使わずに作る、福井のお弁当、一体どんなものができあがるのでしょうか?楽しみです。
いっぽう、その頃もう一つのフィールドワークのチームは、というと...
「乗ってく?」
鳥羽さんの車に同乗させてもらって、さらに上の集落の見学をします。
山裾には水仙の花が咲いていたり、
岩石が長い間、自然の風と波の浸食されて出来た洞穴「呼鳥門」という観光名所を望むこともできます。
この呼鳥門周辺は観光地で、ホテルや食べ物屋さんなどがあり、比較的賑やかな地区です。
居倉町から山の方へ車で5分ほど。「赤坂」という集落に到着しました。
集落の名前と同じ、赤坂さんというお宅があり、こちらは年配のご夫婦が暮らしています。
他の20件以上あるお家は全て空き家です。
あたりは風の音だけでとても静か、生活用具が残ったままのお家もあります。
はじめて目にした「限界集落」。新聞やテレビで言葉としては知っていたけど、目の当たりにすると言葉がでてきません。
居倉町と赤坂の間にある「城有(シロアリ)」という集落。こちらには専西寺というお寺があります。しかし、人はいるにはいるものの空き家が多い。
こうして比べてみると、高齢化は進んでいるものの、居倉町はまだまだ元気に感じてきます。
約1時間のツアーが終了。鳥羽さん、ガイドを有難うございました。
「昨日の新聞見て来ました!」
何やら、お客様が来ています。こちらは越廼中学校の校長先生。先日掲載された福井新聞をご覧になって、このトライアルステイ先にやってきました。
この校長先生の心配ごとは年々減っていく子供たちの数。今年小学校に入学した一年生は2名。ということは、中学校への入学者数も6年後には減っていくわけで、なんとか事態を打開すべく奮闘中。「うちの中学は、いち早く冷暖房完備にしました。そして、全員バス送迎付き、遠くても交通事故の心配もない。修学旅行はなんとオーストラリアで、グランドが野球場2面分もあって広い(ただし人数が少ないので野球部はもうすぐなくなってしまう)、人数が少ないからいじめもない、みんないい子!!」と、とにかく熱く語ります。
課外学習として「この町を元気にする方法」を考える時間も設けて、コンビニを呼んでくれば若い人たちがくるね、といったように生徒のみなさんと一緒に解決方法を探しています。
「いい学校だから、たくさんの人に伝えてね!!」という言葉とともに、嵐のように去っていかれました。熱い校長先生だな!
と、ちょうどなんだか町の人たちと顔見知りになったり、仲良くなりかけてきたなぁ、というころにトライアルステイが終了。本当に短い1週間でした。
都会から遠くな離れた越廼の地にオフィスを構えて、はたして仕事になるのか?という点が一番心配でしたが、思いのほか業務は捗ったようです。満員電車での通勤もなく静かで、日本海の波を見ながら休憩していると、ときどき通りすがりのご近所さんたちが、挨拶してくれたり、のんびりした心地とじっくり仕事に向き合えて良いバランスで集中することができました。しかし、差し迫った納期のある仕事をしていた一部のメンバーは、このゆったりとした環境からのモードの切り替えが少し大変だったようです。陽の出ているうちはフィールドワーク、そして夜更けまで提案書づくり(めちゃめちゃ集中できたのだそうです)に追われていました。
また、ここに参加したメンバーは、結束が固まった、チームワークが深まったと口を揃えていいます。これは共同生活を一定期間行うことで獲得できた効果。一方、東京や大阪のオフィスとのやりとりは、スカイプという簡易なテレビ電話会議のようなもので行ったのですが、やはり意思が伝わりにくく、やりとりに四苦八苦。リモート会議がはじまるまでに事前に資料など目に見えるものを準備しておく、先ほどの気持ちのモードがやはりオフィスとステイ先では差が出てしまうので、意識合わせまでに少し時間がかかるという意見もありました。
お客さんと打ち合わせしなければならない業務に携わる人は、ステイ先から大阪へ、東京へと出かけていかなければならず、日帰りでの打ち合わせは可能、しかし、毎日はとてもじゃないが難しそうです。
トライアルステイを通して得たお仕事のコツとしては、生活+仕事+楽しみの時間のコントールができること、移動の時間を有効に使えること、じっくり向き合うような仕事の人に向いているかなぁと思います。集中力をもって仕事にじっくり向き合う+チームワークが高まる、という効果を考えると、何かアイデアを出し合って新事業を起こすような場合には合宿地として適しているのではないでしょうか?気分転換もすぐできるし。
生活の面では、おいしいもの、あたたかい人たち、と大満足なステイでした。僕らの場合は、幸運にも、このステイを企画してくださった皆さんや、鳥羽さんをはじめとするご近所の皆さんのサポートを受けることができました。たまたまあった総会でみなさんにご挨拶させてもらったのもラッキー。設備やお買い物の環境、交通手段といったハード面ももちろん重要なのですが、「ご近所さん」たちがいれば、物心ともどもなんとかなるのかな、という印象を受けました。
テレビも見せてもらえたし、おこたでみかんもご馳走になったし、サラダ油も貸してもらったし。鳥羽さんがいなければ、ずーっと籠りっぱなしで、名所を回るだけだったかもしれません。
トライアルステイ、または移住をお考えの皆さん、ご近所さんへのご挨拶はたいせつです!
最後に、アプトプットできたか?世界に越廼の魅力を発信できたか?については、これから取り組んでいくことになります。このレポートもその一つなのですが、今回はくらし、仕事、ご近所づきあいの足がかりはつかめたものの、その地域の魅力を適切に伝えるには、やはりもう少しステイの時間を長く持って、これから深めていかないといけないな、と思いました。
校長先生とお話しした、地元の中学生や小学生と何か一緒にできないかな、というお話しが少しヒントになりそうです。
あっという間の冬の日本海トライアルステイ、記事を書きながらもう懐かしくなっています。
また、機会があれば、ぜひ行きたい!参加したい!
もし、この記事を読んでくださったみなさんで、福井市の越廼地区居倉町にご興味が湧いた方はぜひ、実際に現地に行ってみて、その魅力を確かめてみてください。
「また、いつでもおいで」と鳥羽さん。
ぜったい、また行きます!
【詳細情報】
実施主体 未来につなぐ ふくい魅える化プロジェクト
主宰 福井市
協力 福井大学産学官連携本部、株式会社福井銀行、株式会社福井新聞社
運営 株式会社リ・パブリック、株式会社福井新聞社
URL: http://makef.jp/make/plus-extra/
(text:西村、photo:参加者のみんな)
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