道の駅を村のダイジェストに!京都で唯一の村に新しく生まれた「道の駅 お茶の京都 みなみやましろ村」に行ってきました。
今日の見学は「村」にできた道の駅!
こんにちは、道の駅大好きのしゃかいか!です。
南山城村は京都府にただ一つ残る人口2,800人ほどの村です。大阪と京都市内から車で約90分。すこし足を伸ばせばこんなにのどかな風景が楽しめる。今日はそんな村に4月にできた道の駅をレポートします。
南山城村があるのは、ここ!
南山城村は、国道163号沿いにあり京都府木津川市を経て大阪へと通じる「木津街道」、奈良へと通じる「奈良街道」、伊賀へと通じる「伊賀街道」と古くから人や物の行き交うところ。京都府の南の端っこ、近畿地方の地図のへそ的な位置にあり、奈良市、滋賀県の甲賀市、三重県伊賀市と3つの県境に接しています。
南山城村では、木津川が国道163号と並行して流れています。
南山城村の主要な産業は宇治茶の生産。
グランドオープンしたのは4月中旬の土曜日。僕は翌日の日曜日に来たのですが、朝からこの盛況っぷりです。駐車場も満車御礼で、オープン当日は5,000名以上の来客を記録。
昨日はこの道の駅が異常に人口密度が高くなりました。
こちらは、お隣の町から来た親子づれ。「お天気が良かったのでやってきましたー」とのこと。
村の人も、近隣の町から来た人も、ふらっと通りがかった人も、晴れた今日はみんなこの道の駅にやってきます。
9時の開店とともに扉が開くと、人がなだれ込む。ちょっと身動きも取れないくらい。
こちらがこの道の駅の運営を担当する、「株式会社 南山城」の代表取締役、森本健次さん。
「茶どころなのでやはり、この道の駅の見どころはお茶。
品物はお茶を中心に地域の農産物を揃え、名前も『お茶』『京都』『南山城村』というのがパッと伝わるようにストレートなものを採用しました。
この辺りは宇治茶の生産地なのですが、『宇治茶』を名乗っても村のPRにはなりにくいし『村茶』という名前の地域ブランドを作り、隠れたお茶の里をアピールしています。」
道の駅の看板にも「お茶の京都 みなみやましろ村」と「お茶」の文字がきちんと入っています。
村のお茶。だから「村茶」。
お茶のようかんはまるで茶畑のよう。
休憩スペース「村茶屋」も野点風のたたずまい。
とにかく、お茶がすごい。
上質なお茶を贅沢にこれでもかこれでもかとふんだんに使っているのは、産地の余裕です。
「村茶」というマークの南山城村で取れたお茶を使ったアイテムの数がすごく多い。
しかし、お茶だけかーと思った皆さん、実は「村のもん」という地元産のお野菜や果物、おべんとうやお惣菜の売り場もあります。南山城村のものはもちろん、中には隣接する三重・奈良・滋賀の農作物もあって、ちょっとだけ嬉しい。
「のもん市場」は村茶をはじめとする採れたて野菜、村の食材や食文化を生かしたお弁当やお惣菜など盛りだくさん。この地域では自給自足で米・野菜・保存食を食べる生活が古くから続いていて、村人の知恵と想い、そして自然の恩恵が味わえる、そんな農作物が所狭しと並んでいます。
お野菜は地元価格でお安い。
「しいたけがきましたよー」と籠を抱えて持ってきた農家の人の大きな声が響きます。
いいのかなと思うくらい安い!
「ヤーコン」というお野菜はすこし甘みがあるお芋の仲間。
見た目はサツマイモそっくりですが、味や歯触りは梨。シャキシャキした食感と甘さが特徴で、サラダやかき揚げ、きんぴらにしても美味しい。低カロリーで腸内の善玉菌であるクラフトオリゴ糖やポリフェノールが豊富な高機能性食品でもあります。
お茶づくし地元の食材づくしの「村御膳」
食堂は大人気で約90分待ちでしたが、その分楽しみが倍増。
今日のお膳は、
(1)京都産の一番茶を使用した抹茶の確かな味わいを感じられる茶そば、(2)衣に南山城村の煎茶を使用した香り豊かなてんぷらを抹茶塩で、(3)南山城村のほうじ茶で炊いた香りで楽しむ茶飯、(4)京都の煮干しで出汁をとって伊賀玉味噌で仕上げた特製味噌汁、(5)南山城村高尾地区の仲西さんから伝授された村の伝統料理である大豆南蛮に(6)季節野菜の小鉢。
作っている人たちの顔が思い浮かぶようなメニューです。
村の周りは山なので、生肉や鮮魚はなく、山の幸をつかった保存食がこの地域の伝統的なお料理の特徴。早速、この村を味わいつくしたいと思います。
お食事の後の一杯はホッとする。
食前には南山城村童仙房地区の煎茶一番茶の冷茶、食後には南山城村田山地区の熱いほうじ茶、とこちらもお茶づくしで、贅沢な気分を味わうことができました。
この食堂の名前は「つちのうぶ」と言います
「つちのうぶ」は漢字で書くと「土(つち)の産(うぶ)」、つまりその土地で生まれたものという意味。「つちのうぶ」はこの地域に古くから伝わり、道の駅のBGMとしても使われている「みなみやましろのうた」の歌詞の中にでてくることばです。「おらが自慢の、つちのうぶぅ〜♪」と歌われていて、この地域で作っている恵みをを村人が誇りに感じていることわかります。
そして、「みなみやましろ村」という道の駅ロゴは、その「みなみやましろのうた」の古いレコードジャケットからとって使われています。
こちらがそのレコードジャケットです。
この道の駅で働く人たちは、村の人たちが中心。7割が村民で残り3割ほどが近隣の町の人たちです。
村のおかんの作る「おかん弁当」は大人気商品。
オカンのメッセージ付きです!
お茶、農作物に続いてはおかんオシだ!
そして、村人たち。
みなさん良い表情ばかり。
「この道の駅には人の顔がいっぱいですね?」と、道の駅の方にお話を聞いてみました。
こちらは広報担当の中村さん(写真右)。
中村さんは大和高田市生まれ。天理大学を在学中に写真のお隣に写っているお隣は近くにある天理大学の生涯教育担当の講師の先生である谷口さん(写真の左の人)からアドバイスを受け、卒業後この道の駅を運営する「株式会社南山城」に2016年に就職。南山城村に移住してきました。
村のダイジェスト、な道の駅
「お茶をはじめとする特産品や農作物、さきほど召し上がっていただいた村御膳などの食事はもちろん村の名物なのですが、移住してまだ時間の浅い私が外から目線で感じたこの町の面白いのは人です。
南山城村もいくつかのエリアに分かれるのですが、黙々と伝統的な生活を守り続ける地域、またちょっと癖が強いけどやっていることがユニークな人が多いところ、ニュータウンで比較的若い人が多く住む区域など、この小さな村でも集落ごとにそれぞれ個性があります。
そういった人たちの作ったものや、これまで全員で助け合ってきた行政区分としての南山城村ではない生活のつながりとしての共同体の姿、価値や物語を表現する場がこの道の駅です」と中村さん。この道の駅のコンセプトである「村のダイジェスト」という考え方がよくわかりました。
「むらびぃと」という村のことがわかる雑誌。月刊誌です。
そしてもう一つ、花踊りや餅まき、といった地域地域の伝統行事が盛んなのもこの村の特徴なのだそうです。
さらに…
「村キャバ」
なんじゃこりゃ〜。
〈むらキャバ〉は神出鬼没
一夜限りのスペシャル・イベント。クィーン達による華やかなSHOW音楽のLIVESNACスタイルのおしゃべり場&交流の場と盛り沢山に楽しんでいただける村キャバレー『月世界』は廃校になってしまった小学校の講堂に限定オープンする催し。
消滅可能性自治体にあげられた南山城村。
この村を夜から盛り上げたい!!!!!
村生まれ村育ちの村っ子と村に惹かれてきた移住者がいっしょに作る大人のためのエンターテイメントです。
このイベントの実行主体は村の若者や移住者たち。村の恒例イベントになりました。
「最初は賛否両論ありましたが、今では地域のお母さん方もドラァグクイーンと一緒に歌を歌ったり結構定着しています」とのこと。
そして、この村キャバ主催者の一人、南山城村にIターンで移住してきた里ロビンさんはApotheke(アポテケ)というテクノバンドの作曲を担当しこの南山城村とベルリンを拠点にして活動しています。
南山城村では地元産品を売る催しに参加、この道の駅のプロジェクトにも積極的に関わることになり、テーマソングも作ってくれました。道の駅のオープニングイベントでは、道の駅のテーマソングが披露されました。
のんびりした村の風景とぴったり。「ここにおいでよー♪」のメロディーが印象的なPVをぜひ、ご覧ください。
南山城村にはなんだか、面白い人が集まってくる。
食後の抹茶ソフトをいただきながら、森本さんとお話することができました。
「この道の駅の言い出しっぺは村長で、バイパスができて工事の際に出た土を谷に埋めて、それで道の駅を作ろうか!となったのがもともとの出発点です。
私は当時、南山城村の役場の職員で、農業振興をはじめ、高齢者の生活支援、新規就農支援などの村おこしを担当していたのですが、、道の駅を作れ、ということになりました。
農業振興の取り組みではお茶の生産者とお話をする中で、『作る以外の仕事を誰がやるのか?』が課題であることがわかりました。モノは作ることができる、しかし、営業などの売る場所づくりやPRといった作る以外のことを誰がやるのか?そこをちゃんとしないと、というのが若い生産者と私の一致した意見でした。」
道の駅には、地域商社機能が必要
「やがて道の駅の基本計画作りが始まり、道の駅の先進地である『四万十ドラマ』に視察に行くことになりました。
自分で言うのも照れくさいんですけど、実はその頃「できる公務員」として、役所の中ではブイブイいわしてて、茶髪でロン毛でチャラい感じで、高知の道の駅四万十とおわに行きました。でも、行ってみるとこっち向いてお話ししてくれない、むしろ恰幅も貫禄もある私の部下に向けてお話しするわけです」
イケイケ時代の森本さんです。
「第一印象では高知の人たちは『高飛車なやつ』という印象を持たれたでしょうし、こっちも『ちょっと成功したからって、エラそうに』という思いもありました。
お互いそんな印象のまま夕方の飲み会になり、誰がこの道の駅の責任者になるかわからない、という話になりました。
『お前が腹くくるしかないやろ、お前がやるんだったら手伝うぞ』と皆さんに言われ、こっちも酔った勢いで『じゃあ俺がやる』と返事しました。
視察を終えた翌日さっそく村長室に行って、視察の報告と合わせて、僕がやるので役場をやめて道の駅の責任者になります、と話をすると「ちょっと落ち着け」となった。
うちに帰って家族にも伝えるとやはり『何考えているの?』と言われましたね(笑)。3人の子供がいるのですが、当時、上の二人はすでに独立してて高校1年の息子がいたので、まあ一人くらいならばなんとかなるやろ、と家族も賛成してました。
結局すぐに役場を辞めることはなかったのですが、そこから一人でハード作り、ふるさと納税を使った道の駅の運営資金作り、商品開発とひとりでやり始めました。やがて、地域おこし協力隊や村に住んでいるデザイナーなど徐々に仲間も増えてきて、2016年に役場を退職し、法人化しました。」
お話に出てきた、先進地である高知の道の駅の人たち。
今日はそのご縁で、高知県から南山城村までやってきて一生懸命お手伝いしていました。
「お前が腹くくれ」と言った張本人、道の駅四万十とおわを運営する畦地履正さん(写真右)。しゃかいか!でもお馴染みです。
道の駅よって西土佐の駅長はオープン当日もお掃除をしたり。
多くの地域ブランドを手がける高知のデザイナー迫田さんは品出しや陳列をお手伝いしたり。
ここへ来れば南山城村に触れられる、そんな道の駅を目指しています
「ようやくスタートラインに立つことができました。村のことを知ろうと思っても情報源は役所のホームページくらいしかありません。この道の駅に来れば、何か村の必要な情報が得られる、そんな場所になること、いわば、村のプラットフォームを目指しています。たくさんの人にこの道の駅に来てもらって、もっともっと上手に発信して産業振興や観光、働く場所づくりや移住、商品を作る会社が立ち上がるといったように、村への波及効果を生み出すところ。そして、村の人たちの生活に役立つ場としても広げていきたいと思います」と森本さん。
生産者、村の人、仲間と素敵な出会いを繰り返しながら、森本さんがずっと考えているのは村のこと。役場を退職して道の駅の駅長となった森本さんが作る、はじまったばかりの「村のダイジェスト」はこれからどのように進化していくのでしょうか?
しゃかいか!では村のその後もレポートしていきたいと思います。
道の駅 お茶の京都 みなみやましろ村の皆さん、今日は有難うございました!!
【詳細情報】
道の駅 お茶の京都 みなみやましろ村
電話番号: 0743-93-1392
住所: 京都府相楽郡南山城村北大河原殿田102
URL: https://michinoeki.kyoto.jp/
(text、photo:西村 ※一部の写真は道の駅 お茶の京都 みなみやましろ村さん、南山城村役場提供)
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