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見て、作って、買って、楽しむ!高岡市に新たにオープンした能作の工場に行ってきた。 株式会社能作
今日は高岡銅器の製造元、能作(のうさく)さんの、4月にオープンしたばかりの新工場にやってきました。
能作は今から101年前の1916年(大正5年)に仏具の製造元として創業。仏具は鋳造という技法で製造され、鋳造で作った製品が「鋳物」。
ここ高岡市は能作さんをはじめとして鋳物製造が盛んな土地です。
鋳物とはすごく簡単に書くと溶かした金属を型に流し込み冷やして製品にする技術。
高岡銅器といってもその範囲は広く、お寺の梵鐘や偉い人の銅像といった大きなものから、器といった日用品、インテリア雑貨まで多岐に渡ります。
しかし、なぜ、高岡市で鋳物製造が盛んなのでしょう?
こちらは、新高岡駅にある「高岡大兜」。加賀前田家の二代目当主、前田利長公が戦場へ赴く際に用いたとされる「銀鯰尾形兜(ぎんなまずおなりかぶと)」。鯰は「大地を揺るがす力を持つ動物」として縁起物とされていたのだとか。
1609年この前田利長公が高岡城を築城したことから高岡の町が開かれました。
町を開いた前田利長公は新しくできた城下町高岡を繁栄させるべく、7人の鋳物師(いもじ)をこの地に呼び寄せ、ここ金屋町に鋳物場をオープン!ここから高岡銅器をはじめとする鋳物の歴史がはじまり、藩の基幹産業として手厚く保護され鋳物の産地へと発展。400年以上経った現在でも、鋳物の産地として現在では日本の銅器の95%のシェアを占めるほどになったのだとか。
だいぶっつぁんも高岡銅器
高岡大仏は日本三大大仏の一つとされていて、歌人の与謝野晶子が「鎌倉大仏より一段と美男」と評したと言われているほど、オトコマエな大仏です。地元の皆さんからは「だいぶっつぁん」と親しまれています。現在は1993年に再建された三代目で全長16メートルの青銅製。過去二代の大仏様は、いずれも大きな火事で消失してしまいましたが、いずれも木造だったため、二度と火事を起こさないという願いを込め、高岡銅器の職人の技術を結集し、青銅製のものが作られたのだそうです。
と、高岡の町と鋳物の関係を予習したところで、能作さんの見学いってみよー。
駐車場のラインは能作の風鈴がモチーフになっています。
青い空に鮮やかに映える新工場の真っ赤な屋根は金属を溶かす炎を表現しています。
入り口には、曲線が美しい一輪挿し「そろり」がずらり。お出迎えしてくれました。
ガイドしてくれる能作千春さんです。
今日はよろしくお願いします!
この施設の中にはさまざまなお楽しみがあります。
製造現場を見ることのできる「FACTORY TOUR」、製品を購入できる「FACTORY SHOP」、錫製品の製作工程を実際に体験できる「NOUSAKU LAB」、能作の器でお食事を楽しむことのできる「IMONO KITCHEN」など盛りだくさん。さあ、どこから楽しみましょうか?
迷った結果、まずは我々の本分である工場見学から攻めることにします。
ずらりと並ぶ。何ですかーこれは?。
広々としたエントランスの空間に壁一面に掲出されているのは、鋳物の原型です。
これまで数々の金属加工の工場にお邪魔してきたしゃかいか!ですが、だいたい「型」は企業秘密で「写真NGです」というケースがほとんどでした。しかし、能作は写真オッケーにとどまらず、むしろそれを誇らしげにドドーンと展示しています。そして、これらの型は今でも現役で使われているのだとか。製造工程の核心である型をまず見せてもらうことで、能作の「見せる」工場づくりへの熱意が伝わります。
金属の原料を溶かして液状にしたものを型に流し込み冷やす技術である鋳造では、まず最初にこの原型と使い、鋳型を作ります。製品と同じ形状の原型に溶かした金属が流れ込む道が付いています。
いよいよ職人さんたちの働く現場にお邪魔します。
鋳物の「鋳」。この文字も鋳造して作られています。
中に入るとなんでしょう、この匂い。画面から伝えられないのが残念なのですが、これは溶けた金属の匂い。そしてちょっと熱い。こういう五感で体感できるのも製造現場のいいところです。
鋳物作りステップその1は、先ほどエントランスで見たような原型を枠の中にセットし、砂を突き固めていきます。原型を外して型が完成。砂なのでサラサラ流れ落ちてしまうかと思うと全然そのようなことはなくがっちりしています。この型のことを鋳型と言います。
この口から金属を流し込んでいきます。
ドロドロなっていますが、間違いなく金属。
原料は青銅、真鍮(しんちゅう)、錫(すず)などですが、それぞれ特徴があり使い分けられています。
青銅は古墳や遺跡から発見される銅鏡や銅鐸(社会科で習いましたね!)にも使われており、青銅は銅と錫の合金です。
奈良の大仏や長崎の平和祈念像にも使われている素材でブロンズとも呼ばれます(高岡大仏も青銅製です)。耐蝕性に優れているので外に置く像などに適していると言われています。
お次は真鍮。
真鍮は銅と亜鉛の合金で、5円玉にも使われている身近な素材。インテリアや建築用の金物など用途は広く、叩くと澄み切った音色がするので、「おりん」などの仏具や楽器としても使われることがあります。
独特の光沢感が魅了の錫です。
錫には抗菌作用があり、錫の器に入れた水は腐らない、お酒の味がまろやかになると言われています。したがってお酒の器や花器などに多く使われています。金や銀に次ぐ高価な金属。
そして、能作の代表的な製品が、この「曲がる」シリーズ!!
錫の柔らかい特性を生かした「曲がる」シリーズは、手で簡単に曲げ形状を自在に変えることができます。錫は通常、他の金属を混ぜて硬度を増し製品にするのですが、能作の錫は100%。金属は固く強ければ良い、という業界の常識の中で「柔ければ曲げて使えば良い」という逆転の発想で生まれたユニークな製品です。
これらの金属を炉で溶かし、先ほどの砂の型に流し込む。
数日冷ますのかと思いきや、数分ほどで型から取り出します。
取り出すタイミングは作る製品によって変わってきます。
取り出す、というか、鋳型をガンガン叩いて中の固まった金属を割り出さねばなりません。つまりそれだけ砂の方がしっかり固まっているということですね。
次の工程のお部屋へ。
取り出された製品はきれいに砂を払われます。しかし、まだ表面には砂の跡が付いていてザラザラ。鋳型の継ぎ目もまだ残っています。
この継ぎ目を削り落とし、そして、粗く磨いたあと、
「ろくろ」という工程でさらに磨きあげられます。
だんだんピカピカになってきた。
なんだか仕上がりが見えてきましたね。
複雑な形状のものや小さなパーツはバーナーで接合されます。
錫製品は、仕上げ磨きを経て表面がピカピカになります。
オヤ、女性の職人さんがいます。
実は手前の職人さんは高岡出身。小学生の時工場見学で見た能作の職人の仕事に感動、「自分もここで働きたい」という気持ちが芽生えました。その思いを持ち続け一昨年に能作に就職しました。千春さん曰く「彼女のように工場を見にきた小学生が将来、職人として高岡の伝統技術を継いでくれることも、この工場を見せる目的の一つなんです」とのこと。
じゃあ、やってみよう!
と言うことで、見学の後は、鋳物製作を体験できる「NOUSAKU LAB」。
このNOUSAKU LABでは、砂を押し固めて鋳型を作り、金属を溶かして流す「生型鋳造法」を実際に体験することができます。作るのはぐい呑みや器など6種類から選べますが、しゃかいか!おじさんは難易度も低くお子様にもおすすめなペーパーウェイトづくりに挑戦。
これが原型。
この中に、しゃかいか!の「しゃ」の文字のシールを貼ったペーパーウェイトの原型を置き、
砂と原型がくっつかないように離型剤をふりかけます。
砂がダマにならないようにふるいを通しながら、砂をかけていきます。
途中、何度か押し固めながら、
どんどん砂を振りかけていきます。
これを繰り返します。
端の方は、棒で念入りに固めていく。
たっぷり隙間なく砂を型に入れた後は、先に板のついた棒(スタンプ)で上からぎゅっと押して…
立ち上がって、力を入れて押して、
余分な砂をそぎ落として、
鋳型が完成。
原型を取り出します。
ちゃんと文字も出てる。
原型を取り出したところにフーッと息を吹きかけ、表面の砂を落とします。
その後、熱々に溶けた錫を流し込みます。
危険なので、この作業は先生が行います。
これで5分ほど待ちます。
ツンツンして、固まっているのを確かめたら、
台の上で鋳型を叩き割ります。
どこやー、俺のペーパーウェイト、と探す。
見つけた。
これで完成です。
お隣では、トレーを作っているご夫婦も。
後から刻印を打つこともできます。
ペーパーウェイトやぐい呑み、小鉢、チャームなどなど他にも選べて、思い出作りプラス品物と考えるととってもお得な体験です。
お買い物は工房のすぐ隣で。
能作の「FACTORY SHOP」では、百貨店などのお店では購入することのできない限定商品もあります。
地元高岡市の和菓子メーカーとコラボしたオリジナルアイテム。
高岡鋳物と和菓子。双方に共通する「伝統を守りつつ新しいものづくりに挑む」姿勢から生まれた商品です。
おしゃれな能作Tシャツ。
工場でみた職人の皆さんが着ていたのと同じ柄。欲しくなります。
お買い物もしたし、お腹減ったなー、と思ってると丁度良く「IMONO KITCHEN」というカフェを発見。知ってたけど!
15種類以上の野菜を使ったサラダとカレーや自家製ビザ、ベーグルのセットなどをいただくことができます。
能作の「の」の文字をあしらった「のベーグル」!
お食事は能作の器に盛られてきます。器を見たくなってついつい欲張って注文。お腹いっぱいになるので、皆さんもご注意ください。
この錫の板の壁のお部屋は「NOUSAKU CUBE」と言って、いろんなイベントが開催されるフリースペース。オープンすぐの時期に開かれていたのは「能作ができるまで展」。この能作の新しい工場が出来上がるまでの苦労の跡や設計図なども見ることができました。
なんとこのプロジェクトのはじまりは、居酒屋さんでの社長の一言からだったのだそうですよ。
さあ、帰ろうかな、と思っていると出口付近には観光案内スペースがあります。
ここは「TOYAMA DOORS」と言って、ここに来たお客さんに高岡や富山を楽しんでほしい、という思いから作られたスペースです。
富山の見どころをプロジェクションマッピングでみたり、
能作さんの社員の皆さんによるおすすめスポットのカードがあります。
「まだまだ途中なんですけど、実はこれらの写真や文章は能作社員たちが実際に現地に行って、撮ったりしたものなんです。ここ能作の見学を入り口としていろんな高岡・富山の表情を発見してほしいと思います。そのために産業観光部というセクションも新たに作りました。」
と千春さん。
ちなみに千春さんのオススメはたい焼き屋さんです。
と、気づけばすでに半日ほど時間が経ってしまっていました。
工房の見学や鋳物体験、お買い物にお食事とここだけで楽しみが盛りだくさん。そして最後には富山県の次の楽しみ方までガイドしてくれるという、いたれり尽せりの工場見学。
工芸の町、高岡に身を置く会社として、他の会社や高岡の人たちと一緒に歩んでいこう、という思いが強く感じられ、400年の歴史に基づいた町と工場の関係を学ぶことができた工場見学でした。
株式会社能作の社長、能作克治さんと記念ショット。素敵な笑顔!!
能作の皆さん、今日は有難うございました!
(text、photo:西村)
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