ものづくりの作り手と使い手を世田谷代田でつなげたい! 第5回ものこと祭り~「ありがとう。」でつなごう~
みなさん、「世田谷代田」駅に行ったことはありますか?
お洒落カフェ、古着や雑貨屋、美容室など若者が集う下北沢駅のすぐ隣で、ひっそりと存在するのがこの駅。普段は静かな住宅街が、毎年夏に一度、賑やかなお祭り会場に変身します!
世田谷代田で年に一度行われているのが、「ものこと祭り」というお祭り。全国各地からものづくりの職人さんが集まってお店を開いたり、ワークショップやイベントが開催されたりと、お客さんが「ものづくり」の機会に触れることができるお祭りです。
一体どんな作り手の方々が「ものこと祭り」に参加しているのか?
今回は、今年の8月27日(日)に開催される「第6回ものこと祭り ~「ありがとう。」でつなごう~」の予習復習として、2016年第5回の取材レポートをお届けしたいと思います!
街中をずらっと並ぶ出店!
駅を降りてさあ出発!…と意気込んでいると、「いらっしゃいませ~!」と元気な声が聞こえてきました。
世田谷代田駅を降りて徒歩一分のところにお店を構える、餃子専門店の「二代目龍太郎」さん。ものこと祭りに来たお客さんのために、お店イチオシ『肉汁はじける「爆汁肉餃子」』を路面販売しています!
販売しているお姉さんの元気に圧倒されて、私たちも「爆汁肉餃子」を購入。
いただきます!
名前の通り、一口食べるとはじけるように肉汁が飛び出してきて、とってもジューシー!
どうして爆汁肉餃子を作ったんですか?と聞いてみると、「食べているときにたくさん肉汁が出てくると嬉しいじゃん!」と、笑顔で話してくださいました。
お腹も満たされたところで、いよいよものづくりの方に会いにお店を回ります。
「楽しくうるしと。」をコンセプトに、漆を身近に感じられる場づくりを行っており、各地でイベントやワークショップを行う「うるしさん」。
ものこと祭りでは、マドラーやコースターなど、日用品を販売していました。
コースター。表面は布製、裏には一面うるしが塗られています。
マドラー。先についている四角や丸の木製部分がお洒落!
こちらは柿の木の枝にうるしをコーティング。切り口には錫(すず)粉をまぶしています。1年以上かけて作られているんだとか。
マドラーの使い心地を試すことができるよう、甘酒も販売していました!おいしい!
みなさん、うるしは「漆の木」からとれる樹液ということをご存じですか?
「漆の木」は日本を含むアジアの限られた地域でのみ、生育されています。
次に出会ったのは、株式会社「山一」さん
長野県木曽郡に本社をかまえ、木曽で産出される良質木材「ひのき」や「さわら」を素材とした木製品を製造・卸売をしています。
ひとつひとつ職人さんが手作りしているため、細かいところまでとてもていねい。
こちらの木のスプーンは、口に運んでから離れる瞬間まで、なめらかに進められるようスプーンの先を薄く作っているそうです。手作りならではのこだわりが詰まった木製品。わたしもスプーンお買い上げ!大切に使っています。
お次は「ナミイタ・ラボ」さん。
「ナミイタ・ラボ」では、石巻市雄勝町にある、波板という集落全体を研究所にみたて、集落の資源を研究材料に、体験型ツアーやワークショップを行っています。
私たちは波板で採れる玄昌石と、カラフルなガラスを使ったネックレス作りに挑戦!
まずは材料選びから。好きな玄昌石を一つ、ガラスを二つ選びます。
形が全くちがうので、どれを選んでも世界にひとつ!
各々好みの形の石を選び、さぁ、これから作り始めます!
まず、石のまわりに銅テープを貼り付けていきます。
この後銅テープに沿ってはんだをつけていくため、しっかり巻いて準備します。
選んだガラスひとつひとつにも、巻き付けます。
次に、「フラックス」という緑色の薬剤を、銅テープに塗っていきます。
フラックスは銅テープとはんだを癒着してくれるので、たっぷりと塗るのがポイント。
塗り終わったら、次ははんだ付けです!
熱いので、手袋を着用してはんだ付けを行います。
ガラスとの接着部分は取れないようしっかりと。
表面は綺麗に見えるよう、集中してはんだ付けをしていきます。
はんだ付けが終わったら、水につけて、スポンジで軽くこすり、さび止めのワックスを塗って出来上がり。
ワックスの後、液体を塗ってはんだの色を銅色にすることもできました。
完成!
太平洋を望む小さな浜の集落「波板」は、海と山の距離がとても近く、魚介や海藻が採れる豊かな海と、かつて重要な産業だった石切り場の跡が残る山に囲まれています。ここで採れる「波板石」は、昔から住む人にとって思い出の石。現在「ナミイタ・ラボ」では、波板石を使って防潮堤を埋め尽くす、「メモリアルウォール」を作成中とこのこでした。
私たちもメッセージを書いて、メモリアルウォール作りにも参加してきました!
最後はいよいよメイン会場の代田八幡神社へ
ここでは地元の方々で大賑わい!
ここでは世田谷代田のお店の仕事をお手伝いできる「こどもお仕事体験」が1日に2回開催されます。こどもたちが地元のお店で30分間、実際に働かせてもらい、お店からお給料として紙のお金と給料明細を渡す、というイベント。お仕事は美容室、大工、靴屋、ミュージシャンなど10種類!「ものこと祭り」特製エプロンをつけてお仕事です!
お仕事の後には代田八幡神社の境内で使える「お給料」も手に入ります。
働いたお金で買ったお菓子は、いつもよりおいしさ倍増!
また、境内では流しそうめんのように「じゅんさい」を流す「じゅんさい流し」もビッグイベントの一つです。
「じゅんさい」とは、淡水の沼に生息する水草の一種で、秋田県が有名な特産地。
「じゅんさい沼」に小舟をうかべ、水面にうかぶ葉をかきわけ、水中のじゅんさいを一粒一粒手でつみとる大変な作業。普段は1キロ7,000円するじゅんさいを、ものこと祭りでは5キロ一気に流します!
受付でタレとお箸をもらい、
ポジションを確保し、
さあ、じゅんさい流しの始まりです!
じゅんさいの周りにはゼリー状のヌメリがついているため、みんな箸でつかむのに苦戦中。
なんとかゲット!いただきます!
爽やかで、スッキリとしたクセのない味。水で冷えてのどごしも気持ちよく、どんどん食べられました。
実行委員会代表の南秀治さんにインタビューさせていただきました
全国各地から集まる出店舗、ワークショップや様々なイベントが用意されている「ものこと祭り」は2017年で6回目の開催。どうして「ものこと祭り」を始めたのか、今後どのようになっていくのか、実行委員会代表の南秀治さんにお話を伺ってきました。
―ものこと祭り、お店やイベントがたくさんあって、思いっきり楽しんでしまいました!早速ですが、南さんはどうしてものこと祭りをはじめようと思ったんですか?
「昔のような世田谷代田には、もう戻れない」と、地元の方が寂しそうに話していたことがきっかけですね。世田谷代田って、昔はすごく栄えていた商店街だったそうなんです。
-確かに、ものこと祭りで出店している方は、シャッターの閉まったお店を活用してお店を出してましたね。
「世田谷代田を活気づけるのはもう無理だ」という地元の人を見て、「きっと無理じゃない、何か方法があるんじゃないか」と思い、それを仲間に話したことがきっかけで、ものこと祭りが始まりました。
―ものづくりにフォーカスをあてたのは、どういった理由からだったのでしょうか。
僕自身、家具を作る作り手だったからです。世田谷代田に来たのも、自分の工房を持つために物件を探していたのがきっかけでした。当時は音が出る、ゴミが出るとかで、工房にできる物件が見つからず、最終的には自分で歩いて探す程。あちこち回って世田谷代田にたどりついた時、シャッターにクリーニング屋さんの閉店のお知らせが貼ってあるのを見つけたんです。もしかしたらと思い家主のおばあちゃんに状況を話したら、工房として場所を貸してくれて。そこから僕は、世田谷代田でものづくりすることに夢中になっていきました。
-ものこと祭りはどんなイベントにしていこうと思って始めたんですか。
時間をかけないとできない、僕たちじゃなきゃできないことをやってみよう、と思って企画を考えたのが始まりです。もともと僕たちはイベント企画やまちおこしのバックグラウンドがあるわけではないので、大きな資本を得て、たくさん人を呼んでマッチングして・・・瞬発力で勝負することにはあまり興味がなかったんです。なので、じっくり時間をかけ、最低10年はものこと祭りを続けていくつもりです。
-時間をかけないとできないこと、とは?
例えば、来てくれたお客さんと出店者との会話の中から、来年のものこと祭りで販売する商品や企画が生まれるとか。それをお客さんが友達に話して、翌年は友達も買いにきてくれたりと、みんながものこと祭りに参加して、つながりを作っていくことですね。
-実際に、お客さんからリクエストをもらって始まったことはありますか?
そうですね。例えば「ダイタデシカ、」もお客さんからリクエストいただいたものの一つです。
「ものこと祭りに出ていたお店のものを普段も買いたい」「職人とまちのひとがコミュニケーションできる場がもっとほしい」という声があり、またぼくたちも日常の中にものこと祭りの雰囲気を取り入れたいと思って、セレクトショップ「ダイタデシカ、」をつくりました。ここでは物販のほか、月に一度ものづくりの職人さんや作家さんを呼んでワークショップを開催しています。
―作り手と使い手を、世田谷代田でつなげるのがものこと祭りなんですね。
はい。顔が見えるお隣さん、おむかいさんや出展者、運営メンバーがつながって、みんなが世田谷代田で幸せになれるようなお祭りにしたいです。お祭りを通して、"ご近所さん"の力になれたらいいな、と思ってます。
―"ご近所さん"ですか。
"ご近所さん"は僕の中でふたつあって、ひとつは世田谷代田に住んでるご近所さん。もうひとつは全国の作り手さん。お世話になっているものづくりの作り手さんがいて、お世話になっている地域のおじいちゃん、おばあちゃんがいて、みんなをくっつけて幸せにできたら、きっと楽しいんじゃないかなぁと。
-「ありがとうでつなごう」というタイトルにはどんなメッセージがこめられていますか?
使い手からお客さんに対しては、「代田に来てくれてありがとう」「素敵なものを作ってくれてありがとう」とか、作り手からすると「実際の利用シーンについてアドバイスくれてありがとう」「大切に使ってくれてありがとう」とか、そういうお金とモノ以外にやりとりできるもの、繋がりを作り出せるイベントにしたいという思いを込めています。
-そうやって買ったモノって、大切に使いたいな、という思いも生まれそうですね。
そうなんです。今って、何を買うにも「安いもの」が基準になってしまうことが多いじゃないですか。価格以外の基準をお客さんが持っていないと、心をこめて作ったものでも売れないんです。売れないと作り手は苦しくなってしまいます。
たとえ目に見えなくても、ものには作った人の愛情が込められています。お客さんがその愛情に気づいて、ものを大事にしようと思ったり、壊れても直して使いたい、と思ってもらえるようになると嬉しいです。
―10年続けるという目標からいくと、今回が折り返し地点ですね。今後はものこと祭りをどんなお祭りにしていきたいですか。
関わってくれている人たちにとって心地よいお祭りであり続けたいです。地元の人が自慢できるお祭りであること、また一緒にやっている仲間が、ずっと続けていきたい!と思ってくれる。今後もずっと"ご近所さん“にとって居心地のいいお祭りでいられるよう、続けていきたいです。
「ものづくり」と「世田谷代田」。ふたつの"ご近所さん“を大切に思う南さんの気持ちから生まれた「ものこと祭り」は、出展者もお客さんも、自分のペースでのびのびとお祭りを楽しんでいるように思えました。
昨年来場された方もそうでない方も、今年はぜひみなさんも足を運んでみてください!
【詳細情報】
世田谷代田ものこと祭り 〜「ありがとう。」で、つなごう〜
URL: http://monocoto-matsuri.com/
ダイタデシカ、
住所: 155-0033 東京都世田谷区代田5-9-7
営業日: 金.土.日.月
営業時間: 13時―20時
URL:http://www.daitadeshika.com/
(text:森谷、photo:市岡)
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