Sponsored by 旅する新虎マーケット

鮭を愛してやまないまちの日本最初の鮭の博物館。イヨボヤ会館

鮭の塩引き街道

ここは新潟県の最北端に位置する村上市です。
そして目に飛び込んできたのが、軒先に吊るされた魚たち。これは一体何の儀式なのか?

実は、村上市は「鮭・酒・人情(なさけ)のまち」と、サケが三拍子揃ったキャッチフレーズで全国にアピール中!
特に鮭は平安時代には朝廷に献上され、地元では身だけではなく骨もエラも余すところなく味わい尽くす、という鮭をこよなく愛してきた食文化と歴史を持つ土地なんです。

鮭がどーん!
ということで、やってきたのは「イヨボヤ会館」!
「イヨボヤ」とは村上市では鮭のこと。古くから鮭のことをイヨボヤと呼んでいます。 イヨとは魚(ウオ)が転訛したもので、ボヤも魚の事を言う方言です。
つまり、村上の人たちにとって魚イコール鮭、くらいの存在感というわけですね。
なぜ村上市が鮭オシなのか?そしてそれほど深く鮭を愛する理由をこちらでくわしく学んでいきたいと思います。

日本最初の鮭の博物館

日本最初の鮭の博物館。村上市ならではの施設です。

館長の奥村さん

こちらが館長の奥村さん。
イクラを模した入り口の前でハイ、ポーズ。
館長直々のガイド恐れ入ります!

鮭シアター

鮭シアターで村上市の鮭の基礎知識をインプットしてから。
ちなみに村上市では鮭のことは「しゃけ」ではなく「さけ」と呼びます。
一説によると「しゃけ」と呼びはじめたのは東京の人たちで、酒と鮭を区別するために江戸の人が呼び分けたからなのだそうですよ。豆知識!

ミニふ化場

鮭のミニふ化場へ。

淡水魚

鮭のふ化は10月下旬から1月頃までなので、今の時期はウグイやヤマメなどの淡水魚が展示してあります。

ドジョウ

ドジョウすくいならぬドジョウつかみもできます。

パネルで勉強

パネルには、鮭の捕獲から蓄養(採卵するまで未成熟のメスを成熟させる)、採卵と受精、精子と混ぜ合わせた卵の洗浄、ふ化槽への収容、発眼した魚卵の検卵(無精卵や死卵の除去)、ふ化、餌付け、放流、という鮭の養殖の一連の流れが書かれています。

生態観察室 生態観察室 鮭の仲間 館長さんと 稚魚たち

生態観察室では、鮭の仲間が泳ぐ姿を観察できます。タイミングがあえば感動の産卵シーンに遭遇できるかも!

川の道

鮭になって川を遡っていく気分になる。

青砥武平治

そしてこの方が村上を鮭のまちにした張本人、というか功績のある方。
青砥武平治(あおとぶへいじ)さん。

この武平治さんがやったことは、日本で初めて鮭の「計画的な」捕獲!
約300年前の江戸時代の中頃、鮭が貴重な財源だった越後村上藩では、乱獲により鮭が枯渇。藩主からなんとかせよ、という使命を帯びた武平治さんは、鮭の母川回帰性(生まれた川に戻ってくる修正)に着目。現在の村上市の三面川(みおもてがわ)に種川というバイパスを造成し鮭を誘導、鮭が産卵するまでは禁漁し、卵を産んだ後の鮭のみを捕獲する「種川の制」という鮭の自然ふ化増殖システムを考案。つまり川に戻ってきた鮭をすぐに獲るのではなく、より計画的かつ効率的に鮭を増やしながら獲る仕組みを作りました。
その結果、200両程度だった村上藩の鮭の収入は約5倍に向上。見事藩の収益アップに貢献しました。

明治の種川

これ以後、村上でも人工ふ化増殖などが進められ、鮭のまちとして発展していくことになります。
また、この種川の制は近隣の庄内藩、明治期には北海道の石狩川でも実践され、受け継がれていくことになります。

アニメ映像

アニメ映像で勉強しました。

武平治さんが、世界で最初にサケの母川回帰性を発見、すごいな!
自然の恵み、悪い言い方をすると運任せ、獲れるときにとっちゃえ、というのが普通だった時代、コレだけ獲れれば、残りは後のために残しておこう、という発想は今だと当然かもしれませんが、間違ってたら漁師の生活を直撃。とても勇気のある決断だったと思います。

三面川

これが三面川。イヨボヤ会館のすぐ隣を流れています。
残念ながら、大雨の翌日だったので濁っていますが、普段は澄んでいてとってもきれいな川です。

釣りキチ

鮭のシーズンではありませんが、地元の釣りキチさんが鮎釣りをしていました。

種川

武平治さんは、川底が砂利であることによって鮭が産んだ卵が外敵から守られることなど、鮭が卵を産みやすい条件を備えた産卵専用の「種川」を本流とは別に30年以上の歳月をかけて整備しました。
これが三面川に人工的に作られた種川。イヨボヤ会館と目と鼻の先。

養殖施設

三面川を挟んでイヨボヤ会館や種川の対岸には、三面川鮭産漁業協同組合のふ化場があります。

養殖施設2

産卵期になると捕獲された鮭から採卵、稚魚になるまで飼育され、放流されます。

特売

この養殖施設では、鮭祭りという催しの際には、現地価格でお得に買える特売会も行われます。

鮭観察自然館話を戻してイヨボヤ会館へ。
実は、イヨボヤ会館と種川は地下でつながっていて、秋になると種川を遡上する鮭の群れをガラス越しに観察することができます。

観察

また、鮭だけではなく種川に生息する生き物を見ることもできます。

サケ漁 漁法

館内には村上に伝統的に伝わる居繰網漁(いぐりあみりょう)で使用する川船や漁具を展示するコーナーもあります。

居繰り網漁

居繰網漁とは、2艘の船の間に網を張り、遡上してくる鮭を獲る漁法です。

居繰網漁

三面川を遡上する鮭。

居繰網漁

季節になるとたくさんの観光客の方が、居繰網漁や鮭の一括採捕などの鮭漁の様子を見学に訪れます。

鮭のジャケット

イヨボヤ会館で見た鮭皮のジャケット!
今はバリバリと固い感じですが、ずっと着ていると柔らかく馴染んでくるのだそうですよ。
以前、数十万円で購入希望の方もいらっしゃったのだとか。

こども鮭科学館

お子さん向けのコーナー「こども鮭科学館」。ゲームで「さけのねんれいはどこをみたらわかるの?」「生まれたかわにもどれるわけは?」といった鮭の生態などを勉強できます。
大人も楽しむことができます。

教室

イヨボヤ会館では、毎年秋になると名人たちが講師になって伝統的な塩引き鮭作りに挑戦できる「越後村上三ノ丸流塩引き道場」も開催されます。

塩引き鮭_2

荒巻鮭でも塩鮭でもなく、村上市の鮭は「塩引き鮭」。
塩を擦り込んだ鮭は日本全国にありますが、村上市の鮭は日本海からの寒風によって風乾発酵され、「塩引き鮭」となります。
これは村上市に伝わる伝統的な製法で、最盛期のオス鮭だけを選び出し腹を捌き内臓を取り除いた後、表面のぬめりがなくなるまで塩を何度も何度も身の部分はもちろん、鱗の間にもいきわたるように丁寧に擦り込んで、一週間ほど塩漬けにします。その後、適度に塩を抜き、家の軒先などに吊るして屋外の寒風に晒し、乾燥・熟成させます。
これが軒先に鮭が吊るされている理由だったんですね。
ちなみに鮭は重いし大きいので、村上市では男の仕事。塩の量や干しておく期間などお家それぞれのやり方があり、味も違ってくるのだそうですよ。

記念写真

鮭の生態や村上と鮭の関係についてたくさん勉強することができました。
奥村館長、有難うございました!

マンホール ふた マンホール

とはいえ、食べてみないとわからんなー、記事書けないわー、ということで鮭をいただけるお店を探して街を歩くと、マンホールに描かれた鮭の絵を見つけることができました。

井筒屋

やってきたのは井筒屋さん。この3月にオープンしたばかりのお店です。

鮭のロゴ

店先には大きく「鮭」の文字!

内装2 内装

中に入ると囲炉裏と和室、洋風なスペースもあります。

松尾芭蕉の由来

もともとこの井筒屋は、あの奥の細道で有名な俳人松尾芭蕉が投宿したところと言われていて、きちんと1855年(安政2年)に出版された江戸時代の旅のガイドブック「東講商人鑑(あずまこうあきんどかがみ)」にも掲載されています。現在の建物は国の有形文化財に指定されています。旅館だったものを名前はそのままにして、鮭専門料理のお店として生まれ変わりました。

焼き鮭

七輪で炙った鮭から漂う香ばしい香り〜♪

岩船米

まずは土鍋でふっくらと炊き上げた同じ地元産のホカホカの岩船米を、そのままひとくちいただく、そして…焼いた塩引き鮭をご飯の上にのせ、一膳目はだしをかけず、そのままいただく。
塩がしっかり効いていて、甘いお米とのマリアージュが最高。そこで獲れたもの同士の相性って絶対いいんですよね。

お茶漬け

さらに、ご飯をお代わりしてだし入りのお茶を注いで塩引鮭のお茶漬にして食べる。
さらさらさら。

コース

お茶漬けの他にも手まり寿司、昆布巻、酒びたし、白子煮などなど鮭を余すところなく使った鮭の御膳もあります。

村上の鮭料理は百種類もあると言われています。
イクラはもちろん、骨やなんとエラまでもボリボリ余すところなく食べてしまいます。

なぜそれほどまでに鮭に思い入れがあるのか...

その理由は、豊かな森を源とする清涼な川がまちに流れ、人々が古くから川に親しみ、川の恵みを受けてきたこと、青砥武平治が鮭の増殖を成功させたこと、そして、人々が、鮭を尊び慈しんでいるから。

はぁー、美味しかった。お腹いっぱい!村上市の鮭料理を美味しくいただき、続いては鮭を加工しているお店へ。

きっかわ外観

お店で詳しくお話を聞きます。お邪魔したのは村上の「千年鮭 きっかわ」というお店。
実は先ほどの井筒屋さんは、村上の「千年鮭きっかわ」が村上名物の鮭を楽しんでもらえるように、と作ったお店です。

塩引き鮭イメージ 店内

江戸時代にワープしたかのようなお店の雰囲気です。

高橋さん

広報担当の髙橋さんです。今日はありがとうございます!

加工場

きっかわでは、千年前から続く鮭料理を食文化として伝えるべく、食品添加物や化学調味料は一切使わず、鮭と塩と麹だけで自然な製法を守っています。お酒の他にも味噌や醤油といった食品も取り扱っており、冬場に寒風の強い村上市の気候風土で発酵・熟成する塩引き鮭の味を何より大切にしています。

職人さん

職人さんが鮭を吊るしにきました。

職人さん

きっかわでは一年を通して鮭料理を楽しんでもらうため、この蔵の中で一年中鮭が吊るされています。しかし、風通しや気温によって、鮭それぞれの熟成具合を見計らいながら干している場所を微妙に変えていく必要があります。

きっかわは1626年(寛永3年)米問屋として創業した歴史あるお店で、江戸時代の末には造り酒屋に、そして、家庭料理だった村上の鮭を専門に加工・販売するお店を昭和30年ごろに村上市で初めて開業。一千年もの歴史を持つという村上の鮭料理も、昭和30年代当時は時代の中で消えかけていましたが、村上の鮭の食文化の火を絶やすまいと、先代の現会長が一念発起。講習会を開くなど鮭料理の普及に努めながら、鮭料理の素晴らしさを訴え続けてきました。まさに村上の鮭文化のパイオニア的な存在のお店です。
そして、昭和50年代には村上市で鮭製品を取り扱うお店が徐々に拡大。村上市の飲食店でも鮭料理が振舞われるようになり、「鮭のまち村上」の礎を築きました。

鮭塩引き街道

村上市の鮭をめぐるレポート、いかがでしたか?
実際に村上市に足を運んで、鮭の生態や歴史を博物館で学び、お料理を食べて、生業にしている皆さんにお話を聞くことで、鮭のために尽力してきた人々の歴史と鮭を尊ぶ食文化のことがよくわかりました。
次回はぜひ鮭の漁の季節にお邪魔したいな、と思います。

今回ご協力いただいた博物館のみなさん、お店のみなさん、村上市役所のみなさん、有難うございました!

【詳細情報】

イヨボヤ会館

電話番号:0254-52-7117
住所:新潟県村上市塩町13-34
URL:http://www.iyoboya.jp/

村上の千年鮭 きっかわ

電話番号:0254-53-2213
住所:新潟県村上市大町1-20
URL:https://www.murakamisake.com/

千年鮭 井筒屋

電話番号:0254-53-7700
住所:新潟県村上市小町1-12
URL:https://www.murakamiidutsuya.com/

(text:西村、photo:市岡 ※一部の写真は村上市さん、イヨボヤ会館さん提供)

関連するキーワード

関連記事

最新訪問ブログ

訪問ブログ一覧へもどる