タオル愛あふれるファンイベント 「今治オープンハウス」に参加しました! IKEUCHI ORGANIC(イケウチオーガニック)
IKEUCHI ORGANIC(イケウチオーガニック)は1953年に創業した愛媛県今治市のタオルメーカーです。ここでで生まれるタオルは、使う人だけではなく、環境、そして作る人にも優しく、創業120周年の2073年までには「赤ちゃんが食べても大丈夫なタオル」を作ることを目標にしています。
そんなIKEUCHI ORGANICが開催するファンイベント「今治オープンハウス」に、しゃかいか!もお呼ばれして参加することができました。
お出迎え有難うございます!
このオープンハウスは、IKEUCHI ORGANICのファン(タオルを持っている人が参加条件!)で40名限定。
世界一厳しいとされる瀬戸内海の廃水基準をクリアする浄化施設を持ったタオルの染色工場の、本社工場でタオルを糸から織っていく現場の見学(織機体験つき!)、いかにIKEUCHI ORGANIGのタオルを愛してるかを職人さんたちに直接伝え、お話しできるファンミーティング、ファクトリーストアでのお買い物、そしてシメは懇親会、と熱狂的なIKEUCHI ORGANICのタオル好きと作り手が交流する、盛りだくさんでファンにはたまらないツアーです。
バスに乗って出発!
ガイドしてくださるのは社長の阿部さん。
今日は、よろしくお願いします!
集合場所である愛媛空港を出発し、行程の説明や楽しいトークを聞きながらバスは走る。
そして、到着したのは、
洋食店!?
ここは「マルブン」と行って、西条市の伊予小松駅前のお店。
これから向かう予定の染色工場の近くにあり、メインディシュのナポリタンが絶品の代表いきつけのお店。
「染色工場に行くときは必ず寄るし、この洋食店に行くために工場に行くと言っても過言ではありません(笑)。」と池内さん。
みよ、このボリューム。しかし、量だけではなく、さすが代表のオススメだけあってもちろん味も抜群。
お昼前集合だったので、まずはお腹を満たしてから、まずは胃袋を握ってしまおう、という作戦かー
参加者の皆さん、作戦にはまってしまったみたいです。
お腹がいっぱいになったところでいよいよ本題の工場見学。
ここINTER WORKSは、タオルの染色の工程を担当する工場。
染色に必要なのは何と言っても豊富で品質に優れた水。
近くの石鎚山から流れてくる豊富な水を使って、タオルを染めて行きます。
地下80mの水源から取水し、染色に使用するわけですが、地下水だったらなんでも良いということではなく、タオルを安定的に染めるためには鉄分の少ない軟水が適していると言われています。
ここの工場で取水されるのは80〜100年前の水。これが石鎚山で蓄えられ、染色に適したバージンウォーターになっていきます。
石鎚山の水は、タオルの染色だけではなく、近くの酒蔵や飲料メーカーでも使われているのだとか。
「工場のあるところには質の良い水、優れた水源の近くには工場ができる」しゃかいか!で何度か耳にすることがありましたが、ここ愛媛県でもそれは同じみたいです。
この工場の特徴はタオルで連続で加工して1枚ずつするライン。だからとても大きい。
今治から約30キロ離れた西条市に染色工場を作ったのは、石鎚山の豊かな水源と大きな敷地が必要だったからなのだそうです。なるほど。
これから染められるタオルたち。
製織されたタオルが到着して、待っている工程は、タオルについた糊を洗い落とす「洗浄」→色をつける「染色」→タオルのふわふわ感を出すパイルを立たせるための「乾燥」→長手のカット→左右の耳を切り落とす→1枚ずつに切り落とすピースカットです。
染色は「染色機」に入れて行います。
タオルに限らず染色機に求められるのは染め上がり品質の安定。1枚目と100枚目でムラが出たりしてがいけない。
そして、タオルの染色で難しいのはふわふわボリュームを保ちつつ、きちんと染めること。
こちらの工場では、一度に染色するロットは、染色前のタオルで100kg、バスタオル約250枚分。
きちんと仕様通りに染まっているか?をチェックするのが、開発センター室。
一日中タオルを見ているとどれが正しいのかわからなくなってしまいそうですが、この見本帳を基準に、染色ロットごとのサンプルと見比べながらチェック。
「私もわからないほどの染め上がりの違いに気づいて発見してくれます。うちのタオルの染色品質が保たれているのはこの人のお陰!」
社長さんも頭が上がらない!
そして、染色した水の処理も実は大変。
この工場が面している瀬戸内海の廃水基準が特に厳しく、15ppm(100万分の15だけ汚れている)までが許容されていますが、この工場は独自の基準でさらに厳しく12ppm以下。
この工場から真水にして海に還す水はあの四万十川と同等かややきれいな水質なのだそうです。
この水槽の中にバクテリアを住まわせ、汚れを食べてくれています。
「この浄水設備の方にコストがかかってしまって、肝心の染色機が買えないのでは?というくらいお金がかかっています」と代表が胸を張る!
染色に続いては乾燥!
「乾燥」と一括りにしてしまいましたが、最初は脱水、予備乾燥、さらに乾燥2回、というようにいくつか段階を経て水分を徐々に減らしていきます。一度に乾燥してしまうと、あのフワフワした風合いが出ないので徐々に優しく水分を減らしていきます。
大きなタオルはカットされ、上のフロアで両端のミミの部分を縫います。(人の手で!)
1枚ずつ切っていきます。(やっぱり人の手で!)
IKEUCHI ORGANICの黄色いネームが縫い付けらるのもこのステップ。
最後は、もちろん人の目で、厳しく検品。
人は直接肌に触れるものなので、針などの異物がないかは機械でチェックされますが、織り傷がないか、パイル抜けがないか、汚れがついていないかなどなどを確認するには大変だけどやはり信頼の置けるのは人。
これでやっと1枚のタオルになっていきます。
そして次なる見学先は、IKEUCHI ORGANIC本社。
IKEUCHIのIの文字が誇らしい。
玄関先にはオーガニックコットンが植えられています。
優しいタオルになるんだよ。
こちらはデザイナーの松田さん
ベビー向けの商品を開発しています。
赤ちゃん用の商品で大切なのは、肌触りと強度。
縫ったところが直接触れるとむずがるのでえり口は無縫製でなければならない、赤ちゃんは噛んだり食べようとしたりするので生地が傷みやすいけれどもオーガニックコットンではゴムを使うことはできない。一見矛盾するようないくつもの条件を満たすために、何度も試作が必要になります。
そして、出来上がったファーストサンプルはお母さんに実際にモニターしてもらって意見をもらいながらさらに改善と、一つの商品が生まれるまでには大変です。
そんなIKEUCHI ORGANICが目指しているのは「食べられるタオル」です。
食べられるタオル?んなアホな。と僕も最初は思いましたが、IKEUCHI ORGANICは本気で目指しています。
『綿花は食べない野菜』という発想から始まったこのプロジェクトの陣頭指揮をとるのは、ISO管理室の曽我部さん。
JQAホームページによると「ISO 22000は、HACCPの食品衛生管理手法をもとに、消費者への安全な食品提供を可能にする食品安全マネジメントシステム(FSMS)の国際規格です。」なのだそうですが、食品の衛生管理に必要なISO22000の認証を、なんとタオルのメーカーが取得してしまいました。もちろん繊維業界初!
衛生や安全の基準は食品工場と同等で「織布工場から食布工場へ」というスローガンを掲げながら、創業120年にあたる2073年の完成に向けて本気で着々と進んでいます。
設計のお部屋を見せてもらいました。
タオルの図柄をジャガードで表現するため、織機に指令するプログラムを入力しています。
担当の矢野さん曰く「繊維の硬め柔らかめといった特性や、パイルの長さ、ドットの一つにどう落とし込んでいくか、といったタオルならではの特性を理解しながらプログラムしていく必要があります。タオルは横方向に比べ縦方向の密度が高いので、タオルになった時に原画通りであるためには、やや横長に調整してあげる必要があるんです」。
とっても細かい作業。
しかし、これもタオル専用のCADが導入されてからとっても助かっているのだとか。
それまで織機は紋紙(もんがみ)と呼ばれる紙製の型と職人さんの感で柄が決められていました。タオル専用のCADというIKEUCHI ORGANICが業界で初めて導入したシステムはデザイン工程では安定した品質をもたらしました。
いよいよ工場の中に潜入。
とってもきれいです。
ゴミや菌を持ち込まないように、シューズカバーを装着してお邪魔します。
産地であるタンザニアやインドからやってきた糸はまだ一本のまま。この「原糸」を二つに縒りあわせる「撚糸加工」を経て、できた塊は「チーズ」と呼ばれます。
このチーズが「クリル」という機械にセットされ、
大きなドラム型の「ビーム」いう糸巻き機に巻き取られて行きます。
この一つのドラムに巻き取られる前のチーズは3万メートルの糸。バスタオルに換算すると約700枚分です。様々なタオルの表情を出すために適度なテンションで巻き取ることが大切。
この適度なテンションを保つことを「糸の調子をとる」といいます。この作業で一人前になるには5〜10年もかかるのだそうですよ。
「切れやすく繊細なので、タオルの糸が細くなればなるほど難しくなります」と職人さん。
「IKEUCHI ORGANICの代表的な商品である「オーガニックエアー」は名前の通り、手に持って見ても重さを感じないほど。イケウチさんの商品の中でも60番手というもっとも細い糸を使っているので、気を使う」のだそう。タオルの軽さや肌触りの良さを実現するのは大変です。
この巻き取った糸を織っていく前に、
セットされた5,000本もの糸を櫛で職人さんが手作業で梳きます。
工場見学では、タオル織りも体験できます。
やらせてもらいます!
ボタンを押すと
複雑な機構を通って、
何本もの縦糸が供給され、
ガッタンガッタンと大きな音で織りが進む。
目だけじゃなく、機械の音でタオルが織られていくのを感じることができます。
何か、機械に貼ってあるゾ。(この日のために作った、池内代表直筆の說明文です)
工場の中には、部門ごとに従業員の皆さんを紹介するポスターもいろんな場所に貼ってあります。タオルも素晴らしいのですが、働く皆さんの笑顔も素敵。
実はIKEUCHI ORGANIC、というかタオル業界全体なのですがバブル期以来海外産のタオルに圧迫され、職人さんの採用も控えていたため、20年ほど技術の伝承が途絶えていたのだそうです。機械の進化で助けられたところもあるそうですが、今治タオルがブランディングが成功し、新卒採用が再開されたのもここ最近のお話。ベテランと20代が中心の若手の職人さんの間の世代がズボって抜け落ちてしまっています。このベテランと若手が一緒に働くためにもこういったポスターのように、働く人にイケウチの一員であることを意識してもらう職場環境や、人を大切にする雰囲気づくりが重要なのかな、と思いました。
織機で一度に織り上げられるのは約25〜30kg。出荷前に染め工場で効率よく染められるためには、タオルを100kgにしておく必要があります。そのために行われるのが「解反(かいたん)」というタオルのロール同士を繋げる作業。ロールの端と端を解いてミシンでつなぎます。
この解反作業を担当するのは宇都宮主任。
まっすぐに繋がないとその後の工程に影響するので、ミシンで素早くかつ美しく縫い合わせるとともに、タオルのオモテ裏を目視で確認。織りの密度が一定か、粗くなっていないか(今治弁で「あずっている」というそうです)をチェックチェック〜。
「結構力仕事なんだよ」
見よ!この筋肉。
お次は刺繍の部屋。
今治市のキャラクター「みきゃん」の可愛らしい柄や、
タオルの横側、ミミの部分を縫っていきます。
IKEUCHI ORGANICのIマークのシンボルのタブがつけられるのもこの工程。
そして、出来上がりの前に待つのが検品。
全て目視、そしてチェックは女性。
検針は全数を機械で行いますが、
汚れや編み込み部分の不具合は目視でチェック。
そして、タオル工場の検品作業で気をつけないといけないのが、パイルのほつれ。
「オーガニックエアー」は特に糸が細いので何かに引っかかるとパイルが出てきてしまいます。
チェックして不具合のあった箇所(赤いマーク)を見せてもらいましたが、ほとんどわからない。何がダメかは教えてもらって目を凝らして見てみてはじめてわかるくらい。
そして、タオルからパイルが出てきた場合の対処方法について教えてもらうことができました。
「出てきた糸を放っておいたり、引っ張ったりするとさらにどんどん出てきてしまうので、出てきた糸の根元のところから、糸切りハサミなどで素早く切るのがいいです。見つけたらすぐ切る。こうしてメンテナンスしながら使っていくととっても長持ちするんですよ」と検品担当の木村さん。
今日の見学はIKEUCHI ORGANICのファンの集いでみんな持ち主なので、長持ちさせるコツが聞けてとても嬉しそうでした。
「ありがとうございました!」
これにて工場の見学は終了。
「作っているところを見たら、買わないわけにはいかない作戦」にはまる。
ファクトリーショップの中は大混雑でした。
その後はどれだけIKEUCHI ORGANICのタオルを愛しているのかを自慢し合うファンの集いや、従業員の皆さんとの交流会が行われました。
「10数年使い続けているタオルを持って来たよ」とか「毎年工場に直接買いに来ているよ」という方、「新商品が出るたびに買っちゃう。毎回進化していくのがわかる」というお客さんなどなどIKEUCHI ORGANICラブな皆さんのお話が披露されました。
最後は乾杯〜!で懇親会がスタート。
ほんと、みんな楽しそう。
IKEUCHI ORGANICのファンが集うはじめてのオープンハウス。
今日はいつもの工場見学よりも参加者の熱量が高く、びっくりしました。
ただの作り手とお客さんというよりは、ファンや応援団…いやいや、もはや会社の一員と思われるくらい(実際にファンで就職してしまった従業員の方もいるそうです)。そして、質問が濃くて、参加者の見学中の目の色が違う。なんだろう!?不思議な関係です。
「地場産業である今治タオルは、これまでみんな一緒に成長して来たけど、今治タオルの中で選んでもらうステップに入ったと思う。自社ブランドで社名を堂々と打ち出すことがこれから求められていくんじゃないかな。イケウチの場合は、今はどんな作り手がタオルを作っているのか、を知ってもらうことに力を入れている」と阿部さん。
メーカーとお客さん、売り手と買い手ではなく、ファンも巻き込んで一緒に進んでいく新しい関係作り…といった掛け声なんかはこれまでもよく耳にして来たのですが、本気で実践している現場を目の当たりにして、作っている人とそれを使う人が直に会う事ってすごいパワーが生まれるんだなぁと感じました。そういう接点としての工場見学って、とっても価値があって大切、ということに気づかされた今日のオープンハウスでした。
IKEUCHI ORGANICの皆さん、今日はとても楽しく濃い時間をいただくことができて本当にありがとうございました。
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