あなたの想い、着物にのせます! 友禅アート染華
加賀友禅ってご存知ですか?近頃は着物に触れる機会が減ってきましたが、日本に生まれたからには生活の一部に着物を取り入れていきたい!今回は、金沢市の工房で創作に励む加賀友禅作家・下村利明さんに話をうかがってきました。
柄の細かさが魅力です
時代は遡ること約300年。京都の扇絵師であった宮崎友禅斎が着物の模様や染色技法を加賀へと伝え、それが後に「友禅」と呼ばれるように。いわば友禅斎さんは「友禅ブランド」の創始者!
「加賀友禅の最大の魅力は何と言っても柄の細かさ」と下村さん。鳥や花などの自然の情景が、日本画のように細かく描かれています。こ、細かい…!!
技術を守ることが大事
近年では日常的に着物を着る機会はほとんどなくなってしまい、加賀友禅業界は苦境に立たされています。
下村さんにとって最も気がかりなことは「技術をいかに保持していくか」ということ。生産量が落ちるということは、すなわち職人にとっての技術低下に直結します。職人は手を休めないことが原則で、下村さんはたとえ仕事がなかったとしても自分で生地を購入して絵を描き、技術を維持してきたそうです。
あなたの想い、着物にのせます
お客さんとの話し合いで、どんな着物にしていくかを決めていいく大切な工程。イメージ通りになるように、何度も話し合いを重ねるそうです。自分の想いの詰まった着物…素敵すぎます!
図案を一度紙に書き起こします。着物になったときにどんな見え方をするのか、構成までしっかりと考えないといけません。着物の形のまま絵をほどこすのではなく、反物から仕上げていく。反物を体にまとうようにして作り上げていく絶妙な構成力に驚き!
いよいよ反物に下絵を写していきます。紫露草の汁を和紙に染み込ませた「青花」という液で下絵を施します。
下絵に沿って糸目糊置き(もち粉とぬか粉を混ぜたもの)をしていきます。糊が防染の役割を果たし、隣の染料が写ってこないようにするそうです!
糊を反物に定着させた後は、いよいよ彩色です!
一反の着物を作るのに最低でも40〜50色は調合するそうです。全体をイメージした彩色や染料の調合が仕上がりの印象を大きく左右し、それだけ重要な仕事です。
反物の表には糊が置かれていて葉の筋は見えませんが、
裏から見ると、糊置きした部分にまでは染料が染み込んでいないことがよくわかります!
彩色を定着させ、次は反物全体を染めていくために糊伏せという作業に。絵柄の上に糊を置いていき、こちらも防染の役割を果たします!
刷毛を使って色ムラなく、スピーディーに染め上げていきます。
反物を蒸して色が定着した後には水洗いです。1時間半ほどかけ、余分な染料や糊置きの糊や伏せ糊などを丁寧に落としていきます。
乾燥させたらいよいよ完成です!本当にきれいですね!こちらは花嫁のれんという北陸地方各地で見られる、婚礼に用いられる特別なのれんです。
すべての工程ができます
友禅業界は分業のもとに成り立っているようですが、下村さんは加賀友禅の工程に関わる全ての作業を一貫して行っています。一体なぜ!?
「すべての工程ができるからこそ、お客様の依頼に柔軟に対応することができ、そして次の世代へと技術を継承することができる。苦しい時代ですが、だからこそ自分のような作家にとってはチャンスとも言えます」と話す下村さん。
江戸時代に花開いた加賀友禅ですが、それが現在にまで伝わってきたのは、下村さんのような気概を持った職人・作家さんの意志が脈々と受け継がれてきたからではないでしょうか。
加賀友禅をもっと知ってもらうために、子供に向けた体験教室も行っています。
糸目糊置きの工程を、手取り足取り教えていただきました!
もっと歩み寄りませんか?
着物の需要が少なくなれば、作り手は安定的な生産や材料・道具の調達が困難になり、売り手は弱気になって安売りに走ってしまう。消費者としては安く買えることはありがたいことですが、その歪みは作り手に大きな打撃を与えてしまいます。私たち消費者はものづくりの全てを知っているわけではないので、なかなかモノの価値を判断しづらい状況にあります。だからこそ、作り手と消費者はもっと互いに歩み寄っていくべきなのかもしれませんね。
「作り手と消費者の距離を近づける」
そういうメディアに成長していけるよう、私たちも頑張っていきたいと思います。朝早くからご準備してくださった下村さん、ありがとうございました!!
(text:清谷、photo:市岡)
関連するキーワード