綿織物の一大産地 ”遠州(静岡)” 染め織り工房見学ツアー feat. 産地の学校【前編】遠州織物会館&髙田織布工場
こんにちは〜!テキスタイル担当の西です!
普段は東京造形大学の大学院でテキスタイルデザインを学ぶ学生です。
今回も、前回の京都の八幡染色さんのレポートに続き、普段のしゃかいか!とは少し違った学生目線でのレポートをお届けできればと思います。
少しマニアックになってしまうかもしれませんが、、、よろしくお願いします!!
綿織物の一大産地 “遠州”
みなさん、浜松(静岡)といえばどんなイメージですか?
浜名湖、餃子、うなぎ、、、といったイメージでしょうか。
実は、浜松市を中心とした遠州地域は、泉州(大阪)、三河(愛知)と並び綿織物の三大産地として古くから栄え、繊維産業が盛んな地域なのです。
この地域は日照時間が長く天竜川の豊かな水にも恵まれ、江戸時代より綿花の栽培が盛んに行われてきました。取材で訪れたこの日も気持ち良いお天気!!
そして大正時代には、お隣の湖西市でトヨタ自動車の創業者である豊田佐吉さんが、緯(よこ)糸が切れても運転を止めず,緯(よこ)糸を自動的に補充し連続運転することを可能にした「自動織機」を発明し、綿織物の生産量は飛躍的に増加。生産技術の進歩とともに、浜松は綿の一大産地となりました。
機屋(※)さんのお話によると、昔は綿花をうなぎの飼料とし、それで育ったうなぎ食べ、残った骨や頭を今度は畑の飼料にする。という素晴らしいサイクルがあったとか…!
※はたや。機を織るのを職業とする会社、家。またその人のこと。
こんな歴史のある綿織物産地が、”遠州”!
今回の取材は、私が生徒として参加している「産地の学校」という週末学校の遠征授業と合わせて、取材をさせていただきました!
産地の学校とは?
繊維産地の活性を目的に2017年5月に開講した週末の学校。1) 繊維産地、アパレル産業に携わる人材の育成、2) 繊維産地における課題の明確化、人材のマッチング、自走可能なプロジェクト化、をプログラムテーマに掲げています。
しゃかいか!でも以前ライターとして参加してくださった、テキスタイル&ファッション業界で地域と業種を超えて活動する株式会社糸編(セコリ荘)の宮浦晋哉さん、デニム産業の一大集積地瀬戸内を起点とし、生産者と消費者がともに幸せになる持続可能なものづくりのあり方を模索するジーンズブランド「EVERY DENIM」共同代表の山脇耀平さんが中心となり立ち上げました。
「産地の学校では、座学やワークショップでテキスタイルを体系的に学ぶだけでなく、実際に産地を訪問し、リアルな生産現場を体感しながら学ぶことを大切にしています。遠州産地は家内工業が多いのがひとつ特徴です。産地の経営者や工場長と直接対話させてもらえるのは、繊維を学び始めたばかりの受講生にとって、貴重な機会になると思い最初の遠征先として産地の方々にご協力を仰ぎました。」と宮浦さん。熱い思いにテンション上がります!
ということで、「産地の学校」のメンバーとともに賑やかに出発です!
ファッションデザイナーが足繁く通う、遠州織物会館
まずお伺いしたのは遠州産地の情報発信の拠点「遠州織物会館」です。
展示ルームがあり、遠州織物工業協同組合に加入する機屋さんのたくさんの生地を見ながらデザイナーやアパレル関係の方が生地を探したり、相談できる場所になっています。
ここに来れば、一度に12、13社の生地をずら〜っと見る事ができます。
何時間でもいれそうな見応えです!
小幅の渋くてかっこいいこんな生地や
ポコポコと変わった加工のかろやかな生地も。
遠州産地のスーパーサポーター
こちらでお話を伺ったのが、遠州織物工業協同組合事務局長の松尾さん。
シャツの生地もなんだかすてきです!!
松尾さんはここで訪れた方に遠州の機屋さんを紹介し、産地を発信しています。
それだけでなく、他の産地との交流や地域とのやりとりなど、機屋さんが仕事をしやすいように、様々な面から機屋さんをサポートしています!
なんでも、海外でも有名な某ハイブランドのデザイナーも足繁く通うとのことです。
「私の仕事の跡を継げる人はいないよ!」と松尾さん。
機屋さんや生地のことだけでなく、経理や法律、地域のことまで!産地にまつわるいろいろなお話をしてくださり、松尾さんの驚くほど幅広い知識と経験、そして人柄で遠州の機屋さんは支えられているんだと、その存在の大きさに驚かされました。
生地について詳しく聞くことができ、さらには機屋さんごとの個性を感じることができる、とってもクリエイティブな空間でした!そして何と言っても松尾さんの遠州産地をささえる熱い想いを知ることができました!
最後は産地の学校メンバーも一緒に記念撮影!
お忙しいなか、お話ありがとうございました。
そしてはまゆう大橋を渡って、心地いい風のなか、次の目的地へ。
お伺いしたのは「髙田織布工場」。
繊維関連の工場でよく見るノコギリ屋根!
ノコギリの刃のような屋根の形は、北側の側面に大きな窓を作ることで、生地に直射日光は当てず、1日中安定した日の明かりを入れることができる昔ながらの工夫です。
社長の髙田さん、「大勢だね〜」と言いながら、笑顔で迎えて下さいました!
中へ入ると、少しムワっと湿度を感じます、
カシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャ...
機屋さんの音はなんだかわくわくします!
織り機が一斉に動いてる、というよりなんだか一台一台働いている!という感じ!
リズムよく音をたてて、たくましく働く姿に思わず見とれる…
レピア織機とは
髙田織布さんで使っているのは、レピア織機という種類の織り機。登場以前主流だったシャトル織機(※)をさらに効率的に、早く織れるように開発した織機です。
※詳しくは後編で解説します。
特徴的なのは、緯糸(よこいと)の運び方。
シャトル織機は、シャトルと呼ばれる道具が行ったり来たりすることで、1本の緯糸(よこいと)を運び、経糸(たていと)の間に入れ込んでいましたが、レピア織機では、レピアと言われる手のようなものが、片側から緯糸(よこいと)を引っ張って入れこんでいきます。
そうすることで、それまでより速いスピードでたくさんの生地を織ることができるようになったそうです。
…という説明を聞いても織り機の動きは目に見えない速さだし、言葉だけでは「???」となっていた私たち。
そこで織り機を止めながら、とっても丁寧に説明してくださいました!
まずは、これが生地の右端。
レピアが緯糸(よこいと)を持って、
経糸(たていと)の間を通って、緯糸(よこいと)を、生地の真ん中まで運んで、
そして左から来たもう片方のレピアが、緯糸(よこいと)を受け取ります。
「こんな感じにひっかけてもってくんだよ」と髙田さん。
最後は左のレピアが生地の左端まで緯糸(よこいと)を運びます。
この動きを、目にも止まらぬ速さで繰り返すことで生地が織られていきます。
みみに注目!
そしてもう一つの特徴が、「みみ」と言われる生地のはじっこ!
レピア織機で織られた生地はだいたいの場合、この「みみ」を見ればわかります。
レピア織機は、端についた小さなハサミが、生地からはみ出た緯糸(よこいと)をチョキチョキと切り揃えながら織り進んでいきます。
チョキチョキ…
織り上がるとこんなかんじ、緯糸がけばけばしています。また、髙田さんの生地の特徴的なはこんな感じの肉厚でしっかりとしているところ!暖かみのある風合いがすてきです
このみみをカットするハサミの動きがなんだかとってもかわいいんです!私的には!
じ〜〜っと撮影中…
産地の学校メンバーも初めて見る自動織機に釘付け!
織り機の真ん中でガッシャンガッシャン上下しているのが、綜絖(そうこう)と言われる部品。この部品が経糸(たていと)を上げたり下げたりして、その間を緯糸(よこいと)が通る仕組みです。
経糸(たていと)のあがり方によって織り方が変わり、生地に模様が入ります。
「今!!模様織ってるよ!」と髙田さん。
教わった通り、じーーっと綜絖(そうこう)の動きを見ていると、数回おきに綜絖(そうこう)が違う動きをして、白い生地の中に模様が織られていきます。
職人さんにもお話を伺うことができ、リアルな現場を味わうことができました!
そしてレピア織機についてわかってきたところで、おとなりへ移動!
実際に織られている生地のスワッチ(見本)をみせて頂きました!
髙田織布さんは、機屋さんで一般的な「OEM」「賃織り」などと呼ばれるような請負の仕事だけではなく、自社で開発した生地をベースにデザイナーさんに提案し商品開発を一緒にするような仕事も多いそう。ここにデザイナーさんが足を運んで、生地を見ながら打ち合わせなどをするそうです。
生地は、こ〜んな虫眼鏡で見たりします!
おもちゃのようですが本当に使いますよ!
生地に使われている糸や組織を見るのに使います。
これは「刺し子」がモチーフの生地、織物なのに刺繍したような仕上がり、
なんだか愛嬌のあるこの生地、パンツとかにしたらとても素敵だろうな〜と妄想しちゃいました!
お話の傍ら積荷の作業もされていました。本当にお忙しそう。
あれ?気がついたら宮浦さんも作業してる、、、!
「デザイナーさんとの布作りがモチベーションになる」とおっしゃる髙田さん。
そんな力強いお言葉と、その言葉を織ったかのような力強い風合いの生地がとても印象的でした。
初心者にもわかりやすく、丁寧に解説して頂きました、
ありがとうございました!!
そして、ツアーは後半に続きます!
【詳細情報】
産地の学校
遠州織物工業協同組合
住所:静岡県浜松市中区山下町1番地2 遠州織物会館 3F
TEL:053-478-0121
URL:http://www3.tokai.or.jp/enori/
髙田織布工場
住所:静岡県浜松市西区庄内町463
TEL:053-487-0059
(text:西、photo:市岡)
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