ひとつずつ刻むヤスリの目 柄沢ヤスリ
「みなさん、作業を一度止めてください」
柄沢ヤスリの社長柄沢良子さんがそう声をかけると
それまで作業をしていた職人さん達の手が止まりました。
柄沢さんは工場内に響いていた機械の音が静まるのを待ってから、
ゆっくりと職人さんひとりひとりの名前と
その方がいま何に取り組んでおられるのかを説明してくださりました。
私たちが訪れた柄沢ヤスリは新潟県燕市の市街地の中にあります。
創業は昭和14年。
燕市は江戸時代の和釘にはじまり、
鎚起銅器(ついきどうき)、煙管(キセル)、
洋食器などさまざまな金属加工が行われ、
ヤスリの工場も軒を連ねていました。
ヤスリの製造工程が電動化することで大量生産が可能になったり、
ヤスリの代替となるダイヤモンド工具の普及が進むと
次第に工場が数を減らし、
現在では2軒を残すのみとなりました。
ヤスリの製造大きく分けると7つの工程を経て作られます。
1.火造り
2.焼きなまし
3.削り
4.目立て
5.味噌付け
6.焼き入れ
7.表面仕上げ
その中でも、鋼に目の数だけ“たがね”を打ち込む“目立て”という作業があります。
この作業はヤスリの出来を左右するため、
職人さんが目視で確認しながら、
一目一目たがねを打ち込んで行きます!
たがねを打ち込む機械はトントントンとリズムよく動きます。
その様子は、ミシンを扱う様子にも似ていますが、
“たがね”を打ち込む目立て機はとても力強く
職人が目立て機を扱うことを
“つかまる”と表現するそうです。
いろんなメディアでも紹介される91歳の“目立て職人”岡部キンさんは、
爪やすりを専属で作られています。
岡部さんが目立てをされる「爪ヤスリシャイニーシリーズ」は人気で売り切れ中とのこと。
当日は細ヤスリの目立てをされていた職人さん。
技術的なリーダーという紹介をされて照れておられました。
目立ての次に行なうのが“味噌付け”
文字通り、目立てしたヤスリに“味噌”を塗り乾燥させることで、
蒸気膜を形成し次の工程“焼き入れ”を行なう際に、
鉛で目がつまらないようにするそうです。
味噌はスーパーで買ってきたものを使うそうで
最初に味噌を塗ろうと思った人は天才すぎる!
先人の知恵に驚きました。
若い職人さんへの技術の継承なども始められているそうで、
この場所で息の長いものづくりが続けられていくのだと思います。
柄沢ヤスリのカーブが美しい『踵(かかと)ヤスリ』や『高級爪ヤスリ』は、
東京都内のセレクトショップなどでも取り扱われ
デザイン性の高さとその品質が評価されています。
また、地域の企業と連携しながら開発をした
目詰まりのしにくいヤスリ『HOMARE 誉』などの新製品も開発され
未来を見据えたものづくりをされていることが伝わってきました!
“燕三条工場の祭典”のスタッフTシャツが似合う柄沢ヤスリ社長の柄沢良子さん。
職人さんをひとりひとり紹介されるその様子が誇らしげで
とても印象に残る素敵な方でした。
ご案内いただきありがとうございました!
【詳細情報】
有限会社柄沢ヤスリ
電話番号 0256-63-4766
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住所:新潟県燕市燕598-5
URL:http://www.yasuri.net/
(text:加藤、photo:市岡)
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