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かごんまの人たちがこのなく愛する焼酎蔵で、だれやめ!
小正醸造
みなさん、だれやめしてますかー?
「だれやめ」というのは鹿児島の方言で「晩酌」のことを言います。「だれ(疲れ)」を「止め」るから「だれやめ」。つまり「焼酎でも一杯飲んでお疲れさん!」みたいな感じの意味合いをもつ言葉。ということで、今日は焼酎づくりの蔵元にお邪魔しています。
見学するのは小正醸造株式会社。創業は明治16年(1883年)、130年以上の歴史を持つ焼酎メーカーです。実直なものづくりが評価されています。
工場を入ってすぐある直売所「こまさや」。芋焼酎を中心にたくさんの焼酎が並んでいます。
芋や米・麦といった原料が違うもの、長期熟成したものから、鹿児島限定品まで豊富なラインナップが揃っています。
鹿児島といえば西郷どん!
今日ガイドいただくのは、永野どん!
よろしくお願いします。
まずは原料のさつま芋を見せてもらいます。
芋の収穫は8月のお盆明けから11月の終わりくらいまで。今年は焼酎にとっては、良いお芋さんたちに育ったのだそうです。焼酎一本作るためにはお芋が2kg、4つくらい必要。
焼酎づくりではメジャーな原料、「黄金千貫」という品種です。畑でたくさん取れてデンプン価が高く、焼酎に向いているのだとか。だいたい1日に50トンも使用します。
こちらは「パープルスイートロード」というちょっとおしゃれな名前の芋。
今年は芋の活着(苗を植えた後、畑に根をはって育つ段階)後のお天気も良く雨も適量が降ったので、生育状態は順調!と杜氏の笠野さん。焼酎の味や香りを左右するさつま芋は、天候や味も年によって当然変わり、芋が含むデンプンの量など生育する地域によっても違ってくるのだそうです。
さつま芋は鹿児島県の各地で、土作りからこだわっている契約農家さんが大切に育ててくれます。焼酎の生産計画に基づいてさつま芋の生産量も例年1月頃に決めていきます。その後、4月くらいに「今年はこれくらい作ってね」と農家に発注がいきます。
その後、春には生産農家さんと小正醸造の社員が手作業でさつま芋の「苗植え」を行ないます。植え付け方によってさつま芋の収穫量が変わってくるので、この苗植えはとても大切な作業。春に植えた苗は夏の間には太陽と恵みの雨を受け、順調に育ち秋に収穫。そうしてまた来年に向けた土作りが始まる、といったサイクルで芋は作られています。
一見きれいな芋たちも、洗って中を見てみると虫が食べた跡があります。これらは味や風味に影響するので取り除かなければなりません。
ということで、
次の工程は選別です。毎日8時からたくさんの従業員の皆さんが作業しています。
一口に選別といっても、芋を洗う、大まかに切って、細かく砕いて、傷みや虫食い部分のチェック&除去、そして加工しやすいように大きさを切りそろえていく、といったたくさんの作業があります。
だからこれだけの人数が必要なんですね。
ちなみに、取り除かれた芋の不要な部分は飼料になります。
その後、選別作業が完了した芋たちは蒸されます。蒸された芋はタンクに仕込まれ芋のデンプンを麹が食べてブドウ糖を作り出し酵母によって発酵が進み、アルコールが生成されます。
そして、焼酎の原料となるのがお米。芋焼酎とはいえ、米とさつま芋、異なる2つの原料を加工し、混ぜ合わせているんですね。お米は国産米(一部は鹿児島県産米)を使用しています。
米から麹を作る「製麴(せいきく)」という工程では、「麹米」と呼ばれる米を使用します。食用のお米をふるい、下に落ちてしまった米が加工用として焼酎に回され、1日10トンも使います。
麹を作るための「種麹」にも、白麹、黄麹、黒麹の3種類が使われ、それぞれ違う銘柄の焼酎になります。
米の状態に合わせた適切な量の水に漬け蒸し器に運び、蒸された米はコンベアの上で冷却され、種麹を加えます。この状態の米はおおよそ42時間くらいで麹になっていきます。
焼酎づくりは昔から「一に麹」と言われていて、この工程がもっとも重要なポイントです。
お米ではなく、芋に麹をつけて、麹は米を全く使わずに作る「イモイモ焼酎」というのもあり、芋の風味が強くなりますが、芋は雑菌に負けてしまうことがありデリケートなので、イモイモ焼酎は作るのがなかなか大変なのだとか。
次に、一次仕込みという作業。
製麹した麹と、水と酵母菌を混ぜ合わせます。
麹菌が原料のデンプンをブドウ糖に変え、酵母菌がブドウ糖をむしゃむしゃ食べて栄養分にし、アルコールを発生。そして、厳密な温度管理の中、およそ6日後には一次もろみが完成します。
この一次もろみに先ほどの蒸した芋を混ぜ発酵させ、アルコールが14%になる「二次もろみ」を蒸留したものが芋焼酎となります。
続いては、その蒸留という工程です。
この区画に入ると焼酎の強い香りを感じます。
蒸留は混合物である二次もろみを加熱し蒸発させ気体になったものをもう一度凝縮し、沸点の違う揮発成分を分離したものだけを取り出す作業です。
小正醸造では、県内で唯一横型の蒸留機があります。横型のメリットとしては、高さがないため層が薄くなり、沸騰した蒸気が上の方に溜まりやすくなります。そのことで、原料のもつ本来の特徴や「らしさ」が出やすくなります。
いっぽうタテ型は、沸騰した蒸気が出口まで届くまでに時間がより必要となり滞留するので、もろみが混ざり合ってまろやかになる。
マイルドなものはタテ型に、力強いものは横型に、というように使い分けているのだとか。
次に訪れたのは「師魂蔵(しこんぐら)」という施設。
この師魂蔵は、小正醸造の社員さんの研修やお得意さまの研修、そして我らのように工場を訪れたお客さんが焼酎を手作りで作る様子を見ることができます。名前の通り、「魂を込めた」焼酎づくりのための場所。
種麹をつける作業もここでは手作りで、間近に見ることができます。
そして、小さな木樽蒸留器で加熱して蒸留させる。
甕の中で熟成。
杉でできた蒸留器を使用して蒸溜を行います。
ちなみに、工場から少し離れたところには「メローコヅルの里」という樽専用の貯蔵庫があります。
「メローコヅル」とは、小正醸造の銘柄の一つで、吟味厳選した米を原料とする原酒を樽に貯蔵して熟成、1957年二代目 小正嘉之助(かのすけ)さんの手によって誕生しました。焼酎業界で初めて樽で貯蔵した米焼酎として高い評価を受けています。このように独自の貯蔵技術を持っていることも小正醸造の特徴です。
吹上浜に面したこの貯蔵庫は気候に左右されないよう半地下に貯蔵することで、米や麦を原料とした熟成焼酎特有の芳醇な香り、心地よく溶けるコクを味わうことができます。
そして、この師魂蔵の地下でも、やはり焼酎たちが今もおいしくなるために眠っています。
ここに置かれているのは、手造り蔵の試験品。この蔵の外ではまだ味わえない焼酎たちです。
甕の中をのぞいて見ると…
ゲホッ!
甕の中から焼酎の香りが直撃。プロでもむせる香りの強さです。
次にやってきたのは瓶詰めの工程です。
この建物では月に30万本から40万本の瓶詰めが行われています。
ガイドしてくれるのは平川どんです。
先ほどまでの工程で生産された焼酎はパイプで充てん室に運ばれ瓶に詰められます。充てん室はクリーンルームになっていて、HEPAフィルターによってゴミとかチリが入らないようになっています。
一番手前のラインは一升のラインで時間2千本充てんをするするライン、真ん中は900mlのラインは時間3千本瓶詰めできるライン、一番奥の方のラインは特殊な瓶、瓶型が角瓶、細い高さのある瓶に充填する、というように量や瓶の形によって使い分けられています。
焼酎の充てんで難しいところは、量の調節です。
蒸留された液体は冬場になれば冷たくなるので収縮、夏場になれば膨張というように気温によって量が変わってしまいます。このラインでは「空寸充てん(瓶口から何mm開けてくださいよ)とプログラムされている充てん方法)」が採用されていますが、この方法では、夏に詰めたアルコールが冬場になると減り、お店やさんに並んだ時に、同じ銘柄なのに量が多いのと少ないことが発生してしまいます。その均一性を持たせるために、この中では、パイプを追加して運ばれてきた焼酎を、30度の一定温度で加湿し、その後充てんすることで均一性を保つようにしています。
検査を行うのは人です!
充てんされたものは次の部屋に移動し、中の異物や瓶のかけやヒビがないか検査されます。
このタイミングで検品を行うのは、充てんされたものにキャップをする時にかかる圧力によって、弱った瓶にヒビが入りかけらなどの異物が混入することがある、という理由から。
平川さんによると「様々なカメラや検知器が登場していますが、機械は液体の中で動いているのを感知します。すると瓶の中のエアーの動きも同時に感知してしまうので誤診断が多くなるんです。やはりそういった点をふまえると人間による検査が最適で、人間にはかないません」とのこと。
無事検査を通過した焼酎はその後、ラベル貼り、箱詰めされてお店に並ぶことになります。
以上で、工程は完了。
さぁ、試飲だ試飲だ、だれやめだれやめ。
蔵元内にある直売施設「こまさや」に戻って、焼酎をいただきます。
焼酎づくりの現場見せてもらった後なのでいやが上にも高まる期待の中、登場してくださったお焼酎さまは、
すっきりとした柔らかさが飲みやすい「赤猿」あらわる!
独特の香りとコク、まろやかさが深いこだわりを感じさせる「蔵の師魂」
強烈な芋の香りが直撃「小鶴 初心者お断り」は最後に3杯ほど。
ふえぇ〜。気持ちええ、ダレなんか吹っ飛ぶ〜。
芋の品種や麹の種類、製法はもちろん、熟成の仕方によってもこんなに個性が出てくるんだなぁと感心しました。
薩摩焼酎には「地理的表示」と言って、その産地で獲れたさつま芋を使用し、決められた製法で作られたものしか名のることができないマークがついています。つまり、ウイスキーの「スコッチ」やワインの「ボルドー」と同じ。世界の銘酒の仲間になったと言えます。
そして、焼酎の文化は、器にも表現されています。
この酒器は「そらきゅう」と言います。そらっー、と注がれてきゅー!と飲み干さないといけないから「そらきゅう」(諸説あり。でも勢いがあるネーミングなので僕にとってはそれが正解でいいです!)。
飲み干すためには器を置いてはいけませんから、そこが円錐状になっていたり、穴が空いているので指で絶えず抑え続けていない工夫?(というか意地悪!!)が凝らされています。
もう一つの器、黒千代香(くろぢょか)という急須を平たくしたような焼酎の道具。
焼酎を温めるために用いられる陶器の土瓶です。
鹿児島では焼酎を割るとき、お湯を注ぐのではなく、このような黒千代香に焼酎とお水を入れて温めます。こうすることで口当たりがまろやかになるそうです。黒千代香は日置市のもう一つの名産で伝統工芸である薩摩焼のものが好まれるようですよ。
今日は楽しいばかりの見学で全然疲れていませんが、原料や製法はもちろん、その器にも息づくかごんまの焼酎文化に思いをはせながら、芋焼酎のお湯割で乾杯!!
今夜もだれやめしたいと思います。
小正醸造の皆さん、有難うございましたー!!
(text:西村、photo:市岡)
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