日本製カトラリーの産みの親 小林工業
「箸のように使いやすいカトラリー」がコンセプト
新潟県燕市でスプーン・フォーク・ナイフなど
カトラリーの製造を行っている小林工業へお伺いしました。
小林工業は「ラッキーウッド」というブランド名で商品を展開、
「箸のように使いやすいカトラリー」をコンセプトに、
日本人に使いやすく求めやすいカトラリーを企画、製造しています。
スプーンやフォークなどに3本の木があしらわれたロゴを
目にしたことがある方も多いのではないでしょうか?
今回は、工場見学に加えて
小林工業6代目社長の小林貞夫さんによる
カトラリー講座を体験してきました!
小林工業の創業は、1868年(明治元年)までさかのぼります。
矢立て(筆と墨壺を組み合わせた携帯用の筆記用具)や
炭ならしなどの家庭用金物の鍛冶工房から始まり、
1915年(大正4年)からカトラリーの製造を開始。
昭和にはいるとまだ珍しかったステンレス素材のカトラリー製造を行い
戦後には、輸出産業としても大きく業績を伸ばし
外貨獲得を一番に成し遂げたそうです。
カトラリーの製造工程は、
板材を加工しやすい形にする「打抜き」
各部分を適度な厚さにする「圧延」
スプーンやフォークのなど頭のアウトラインを決める「半切り」
平たい状態で一度磨き上げる「平磨き」
持ち手の部分の模様を出す「柄押し」
スプーンの皿を起す「皿押し」
磨いて光沢を出す「仕上げ」といったように
細かい工程で分かれています。
カトラリーの製造には、金属加工の7割から8割にあたる
技術が必要になります。
これらを1人でこなし製品を作り上げると伝統工芸になりますが、
小林工業では、それぞれの工程で職人が腕を磨くことで
工業製品として高い品質を保っているそうです。
工場に移動すると軽快に機械が動く音が聞こえてきます。
入り口付近にあるのが材料置き場です。
鋼材メーカーから仕入れる
カトラリー用に製造されたステンレス板材が並べられています。
板材をなるべくムダにしないように原型を「打抜き」します。
あまった鋼材は100%リサイクルに回されます。
打ち抜いて、切って、叩いて、延ばして
スプーンやフォークはどんどんそれらしい形になっていきます。
各部分を適度な厚さにする「圧延」
集中力が必要な「柄押し」作業。
「皿押し」する金型が沢山ならんでいます。
商品のバリエーションも豊富なので沢山。
金型は使うと傷んでくるものです。
100円ショップで売られているようなカトラリーは、
1つの金型を使い潰して10万本のスプーンやフォークを作るそうですが、
小林産業では、製品の品質を高めるために
職人さんが金型を微調整(高価な製品の場合は1500本づつくらい毎に)しながら使っていくそうです。
スプーンやフォークを磨く工程では、
女性の職人さんが沢山働いています。
磨きの工程を男性に任せると午後の3時を過ぎた頃に
作業効率が落ちていくそうですが、
女性はしなやかで耐久力があり効率が落ちないそうです。
仕上がった製品は厳しい目で検査されます。
この日もぱっと見ただけでは分からないような
歪みのある製品がはじかれていました。
工場見学の後はカトラリー講座です。
100均ショップで売られている商品と高価な商品を持ち比べ体験しました。
持ち比べた感想を文章で表すのはとてもむずかしいのですが、
100均ショップで売られている商品は手に取ると
ただのステンレスの棒という感じです。
高価なカトラリーを手に持つと、ずっしりと存在感があります。
指にそっとおいてみると絶妙なバランス。
握ってみるとそれぞれのカトラリーが
役割(肉を切ったり、アイスをすくったり)を持って
生まれてきたことが手を通して伝わってきます。
カトラリーのトップブランドと草分けとなった「ラッキーウッド」。
デザイン・使いやすさ・機能性にいち早く注目し、
これまでに70にも及ぶグッドデザイン賞を受賞してきたその背景を
垣間見ることが出来た工場見学でした!
小林工業さんありがとうございました!
(text:加藤 photo:市岡)
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