ろくろ挽きで木地から生み出す“コトづくり” ろくろ舎
「カラカラカラ…カラカラカラ…」
木地をろくろ挽きする心地いい音が、工房から聞こえてきます!ここは福井県鯖江市の河和田地区という漆器の産地。この町で漆器の土台となる木地やオリジナル商品を製作しているのが、”ろくろ舎”を営む酒井義夫さん。
目指すのは”コトづくり”
粗挽きして乾燥させられた木地を仕入れ、さらに薄く仕上げていくのが木地師の仕事。自分で形にできることに魅力を感じる一方、本当に大事なのは商品が使い手に渡った後だと話す酒井さん。手に渡り使ってもらい、ハッピーな空間を囲めるようになるまでの”コトづくり”を目指しています。
これまで一方通行だった作り手・伝え手・使い手の流れが、最近になって変化してきています。例えば作り手と使い手が直接出会うなど、お互い顔が見えることをものづくりに求めている人たちが一定層いるようです。
河和田地区に目を向けると、丸物木地師の仕事は戦後全盛期の3分の1に減り、当時100名近くいた職人さんの数はわずか4名に。問屋さんからの受注を待っているだけでは現実は厳しく、ものづくりだけではない別の何かが求められているのかもしれません。
ろくろ挽き
粗挽きされた木地をさらに薄く仕上げていきます!
まずは木地をろくろにセットするために、
針打ちやはめ型という道具を使います。いろいろな大きさの木地を加工できるよう、種類がたくさん!
椅子の背後にある大きな箱の中でベルトが回っていて、それを動力としてろくろが回転する仕組みです。職人さんの仕事場ってもっと雑多なイメージがありましたが…こだわりの感じられるカッコいい仕事場ですね!
カラカラカラ…カラカラカラ…
なんとも言えない心地いい音と木の香りに包まれています!
基本的に使うのは5種類くらいだそうですが、商品の大きさや形状に合わせて様々なカンナを使い分けて削っていきます。
切れが悪くなってきたら刃を研ぎます。道具のメンテナンスも職人さんの大事な仕事ですね!
刃が特殊な角度で付いているので、楕円のような形状の砥石を使います。
お椀の湾曲部分は型に合わせて調節。
完成です!このまま使いたいぐらい美しいですが、ここから塗師さん(漆を塗る職人さん)にバトンタッチします。
器の中身まで考える
器はもちろんご飯を食べるために作られたもの。酒井さんは一歩踏み込んで、器だけでなくその中身までイメージできる作り手になりたいと考えていて、ゆくゆくは米作りにも挑戦されるそうです!
「お米のことを考えなが器を作っている職人さんって少ないと思う」と酒井さん。社会が発展していくにつれて分業が進み、本来一つのものであったものが隔てられているのかもしれませんね。
間伐材から生まれた"TIMBER POT"
“TIMBER POT”は杉の間伐材(河和田産)を丸太から削り出して作られた、ろくろ舎の集大成とも呼べる商品!
傷みや割れなど、木材本来の自然の経年変化を体感することができるTIMBER POTは、決して作り手である酒井さん一人で完結することはありません。どれも味があって素敵ですねー!
市場では間伐材は使いものにならず、価値がないとされています。枝打ちがされていないので節があって加工は大変ですが、TIMBER POTの場合はその生命力溢れる表情こそが魅力を生んでいます。少し欠点があってもそこがいい、なんだか人間みたいですね!
経済的な理由によってますます助長する間伐材問題ですが、こうして用途が広がり価値が認められれば解決への糸口となります。皆が少しずつでも間伐材に目を向ければ、新たな活路が見出だせるはず!
河和田にいらっしゃい!
現在、鯖江市のものづくりユニット"TSUGI"を筆頭に河和田工芸祭〜meet the makers〜(仮)の開催を企てている酒井さん。
これまでは自分たちが都市圏に出て行って、見てもらう、買ってもらう、ということが一般的でした。そうではなくて、「いいものを作っているから、どうぞ来てください!」と自信を持って言えるような河和田になっていきたいと話す酒井さん。地元の職人さんなどと協力しながら、河和田の良さを体感してもらえるようなイベントにしていきたいそうです。
ものづくりからことづくりへ。作り手として、そして伝え手としてのバランス感覚を合わせ持つ酒井さんのこれからに期待大です!
酒井さん、ありがとうございました!
(text:清谷、photo:坂田)
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