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海が見える工場で楽しく学ぶ!
アヲハタ ジャムデッキの工場見学とジャムづくり体験
こんにちは、しゃかいか!です。今日は、全国のコープの皆さんと産地を見学する「ラブコープ商品工場・産地見学会」というイベントにお招きあずかり、広島県竹原市忠海にあるアヲハタ株式会社さんの「アヲハタ ジャムデッキ」という施設に来ています。
アヲハタ ジャムデッキは瀬戸内海の島々を間近に望む港の近くにあります。
見学するのは、もちろんジャム。アヲハタ ジャムデッキの中には、歴代の製品やトリビアなどいろんな視点の展示があり、なんだか楽しくなってきます。ジャムを見てると楽しくなってくるのはなぜでしょうか?甘くておいしいから?輝く宝石のようだから?いったいなぜ?その辺のところも今回の体験を通して、お伝えしたいと思います。
まずはアヲハタの会社や工場のことについて、映像で勉強です。
なぜここにジャムの工場があるのか?それは原料の産地の真ん中にあるからです。 忠海の目の前に広がる瀬戸内の島々は、温暖な気候で柑橘類の栽培が盛んな地域。旬の新鮮な果実を素早く加工にするため、原料集積地のほぼ中心に位置するこの場所に工場を作ったというわけです。
(写真提供アヲハタ株式会社)
この忠海に工場があるのは創業当時から。前身である旗道園(きどうえん)の創業は1932年で、もともとはみかんの缶詰やオレンジママレードを作っていました。缶詰は戦争がはじまると国策製品ということになり、一時会社ごと国に接収されますが、戦後青旗缶詰という社名で再スタート。おなじみのアヲハタ株式会社という名前になったのは、1989年です。
アヲハタで最も大切にしていることは、何といっても原料です。
「農産加工品のおいしさは、原料でその7割が決まってしまいます。創意工夫によって、残りの3割の加工技術を高めることが大切です。」という原料調達の基本理念があり、創業から着色料や保存料を使用しない製品づくりが受け継がれています。
また「アヲハタ会」という国内の産地の組織を作り、生産者との信頼関係を深め、品質の高い原料を安定的に確保する仕組みや、国外の原料に対しても技術者を派遣し、栽培管理・農薬管理・トレーサビリティなど栽培から加工まで安全を担保できるさまざまな取り組みを進めていて、「良い製品は良い原料から」という原料へのこだわりを徹底しています。
そして、このアヲハタジャムデッキができたのは2012年の4月。ジャムを作っている様子を見学したり、ジャムづくりを体験できたり、ジャムをお買い物したりできるので、大人気な施設です。名前の中にあるデッキには、船の甲板という意味合いの他に、
美味しさ(Delicious)を発見(Discovery)し、感動(Emotion)と創造(Creative)を体験しながら、アヲハタのジャムをより深く知って(Knowledge)もらう場所(Deck)、というコンセプトが込められているんですって!
ジャムを見てるとなんだかワクワクしてくる秘密がここにありそうです。
ということでアヲハタの紹介の後は、工場見学に出発です!
以前は釜で煮た蒸気は工場の外に排出され「ご近所さんもああ今日はイチゴのジャムを作っているんだな」とわかったそうですが、今では工場の外はほとんど香りがしません。これは2005年からこの工場で採用された「香り戻し」という技術で、製造の際に蒸発したフルーツの香りをジャムの中に再び戻すことで生の果実のようなフルーツ本来の香りに近づけるというものです。原料へのこだわりと尊敬の思いがうかがえる技術です。
ざっとこの工場に運ばれるまでの原料のことを書き出すとこんな感じ。収穫し一次加工場に運ぶ水で洗浄され不良な果実が取り除かれ、冷凍保管。生産計画にあわせてそれらを解凍し、ジャム工場ラインで製造という流れになります。
工場の敷地の中にはいくつか建屋があり、瓶の大きさや少量多品種など製造するものによって分かれています。今日はその中からLS(ローシュガー)プラントを見学させてもらいます。
今日作っているのはアヲハタ55。糖度の低いジャムでアヲハタを代表する商品です。ひょっとすると皆さんの冷蔵庫にもあるのでは?このアヲハタ55は、1970年に日本で初めて発売された低糖度ジャムで発売当時の糖度が55度だったことから「アヲハタ55」と名づけられましたが、今ではもっと糖度が下がっているそうです。
工場に到着した果実は、砂糖などの材料を配合し、真空の釜の中で低温で濃縮します。濃縮というのは、果実の中の空気分を抜いて糖を浸透しやすくために必要な工程です。その後、細かい枝や種、果皮などのきょう雑物がないかをチェックする目視選別、内容物の殺菌という工程に進みます。殺菌の後には、金属探知機等で異物のチェック、瓶詰め、キャップを締めるという工程になります。
低糖度のジャムをおいしく作るポイントは、徹底的な衛生管理と熱をかけない工夫です。
「ジャムを作る環境の衛生管理を徹底するというのが一つ、そして、やはりおいしいジャムはフルーツの香りと味が豊かに感じられるものなので、熱をかけると減ってしまう風味やおいしさを保つために、できるだけ熱を加えず早く冷やすことが大切です。」
写真では残念ながらお見せできませんが、キャッピングの際には、瓶の中にあるジャムとフタの隙間(ヘッドスペースと言います)の酸素を窒素に置換。酸素をできるだけ減らし、酸化の進行を遅らせることで風味やジャムの鮮やかな色合いが保たれます。
キャップには隠し印字がありブラックライトで数字が浮かび出てきます。製造日はもちろん製造ロットまで後で追跡できるようになっています。
ジャムにはおいしさの他にも香りや作ってる人の思い、安全を追いかける情報などなど本当にいろんなものが詰まっています。
さて、検査はまだまだつづく。1瓶ごとに重さをチェックする重量検査。実は空の瓶も微妙に重さが異なっているので、内容量が適切かを検査せねばなりません。
その後は巨大なマシンで冷却。殺菌の際に高温な状態でジャムを瓶詰めしたので、段階的に冷却し温度を下げていきます。理由は急に冷却水をかけてしまうと瓶が割れてしまうから。30分間ほどかけて冷却します。
次はラベルの貼付、キャップシール(キャップの周りを覆うフィルム状のアレ)を熱でシュリンク、密封検査、外観検査へと進みます。
密封検査でチェックされるのは2つ。
キャップの凹みをチェック!
開封前の瓶詰めジャムでフタの真ん中が凹んでいるあの凹みの高さを測っているんです。フタの凹みはバキュームで瓶の中の空気の量を抜き、空気の量が少なくなっています。つまり凹みは密閉の証。測る目的は、この密封状態がきちんと保たれているかを確かめるため。規定の高さの凹みがない製品は、密閉状態が不良と判断されラインから取り除かれます。
もう一つは音です。金属であるキャップを磁力で引っ張ってから離した時に発するわずかな音の違いで「良」「不良」を判定しているんです。瓶詰めのジャムならではの検査!
キャップが違っていないかもチェックします。
中身とキャップが合致しているか。例えば55ジャムからまるごと果実などの他の商品に切り替えたときに、中身とキャップが違うものになってしまいます。そうしたことがないかをチェックされるのです。
外観検査その2は、瓶のラベルのチェック。
瓶のラベルが剥がれたりずれたりしていないか、きちんと決まった場所に貼られているかを上下左右から計測します。内容物に問題はなくても、ラベルの少々のズレでも、瓶がずらっと並んだ時に、買ってもらいにくくなるし、中身まで印象が良くなく思われるので、外観検査はとても大切です。
いくつもの工程を経てようやくジャムが完成。トラックに乗ってここ忠海からお店や皆さんのお家へ。そして、パンやヨーグルトなどと一緒においしく食べてもらうことになります。
見学の様子を動画でもどうぞ♪
工場見学を終了した後は、お楽しみのジャムづくり体験が待っています。今日は工場見学で見せてもらったのと同じ、いちごジャムを作ります。工場の生産ラインを思い出しながら、ジャムづくりのポイントを学んでいきましょう!
こちらがジャムづくりの先生の畑さん。よろしくお願いします!
材料と道具はコレ。タッパーに入った原料のいちご、おたま、それに見たことない器具もあります。
おっしゃー、ジャムつくるぞー。
お鍋の中にいちごを投入。しかし、このいちごは果実の状態ではなく、あらかじめ砂糖をまぶして冷凍したものを解凍しています。
鍋の中の液体は水ではなく、この下処理によっていちごの中から出てきた果汁。先に砂糖をまぶしておくと浸透圧の関係で果汁が滲み出てきます。
いちごの果肉が大きいものは、半分に切っていきます。潰すのではなく切る。サイズが大きいままだと糖が十分に染み込みにくいためです。
味見をしてみると、ジャムではなくまだいちごの味。「作業を進めていくとどんどん味が変わっていくので、今のこの状態の味を覚えておきましょうー!!」と先生。ジャムづくり体験では徐々に変わっていく味を楽しむこともできます。
徐々に部屋の中がいちごの匂いに包まれます。まるでこの鍋のいちごのお風呂に入っているかような優しくて甘い香り。この香りをお届けできたらいいのに♪
「おいしくなぁれ〜」と念じながら混ぜます。湯気が出てきたら火加減を調整します。
いちごを鍋から取り出してみると、少ししぼみます。これはいちごの中の空気が抜けたから。
空気が含まれたままのいちごをジャムにすると、瓶詰した時にいちごが全部浮いてしまい、液体と分離してしまいます。今、鍋の中ではいちごの中の空気がどんどん追い出していて、鍋の表面に出てくる泡もそのせいなんです。
次に登場するのは、計量カップに入った白い色と少し茶色っぽい二つの色の粉です。
白いのが砂糖で、茶色はペクチンと呼ばれジャムの固めていくはたらきをします。ペクチンはジャムに限らずお菓子などでも「増粘安定剤」などと原材料表示に記載がありますが、もともとは果物やお野菜の食物繊維の一つで安心して食べることができます。少し舐めてみると味はなく、ちょっと口の中がネバネバしてきます。つまりこれがジャムのネバネバのひみつ。
ダマにならないよう砂糖と一緒に計量カップの中でしっかり混ぜていきます。
ペクチンを投入!
続いてお鍋にインするのはお砂糖です。量が多いので3回ほどに分けて投入。お鍋に入れたら混ぜる、入れたら混ぜるを繰り返します。砂糖は重いので鍋底にどんどん溜まっていってしまうので、ヘラの先を使って鍋の底をジグザグジグザグ。ゆっくり優しく端から真ん中までまんべんなく混ぜるのがポイントです。
ずいぶんとジャムらしい見栄えになってきましたが、ここで第2回めの味見です。今度は液体をペロッと舐めてみます。
熱いのでしっかり冷ますためにフーフーフー。この時の味はちょっと甘すぎ。砂糖を入れたばかりなのでまだ糖分が果肉に行き渡らずに液の中にたっぷり入っているからです。
これから浸透圧の関係で砂糖は果肉の中に入っていきだんだんジャムの味になっていきます。味づくりはまだまだ続く。
火加減を調節ししばらくすると今度は、
糖度計で甘さを測っていきます。フタを開けてジャムをのせ、
糖度計を見る、みんな一斉に見る。
砂糖が固まらず全体に行き渡るようにお鍋の中をよくかき混ぜることと、ジャムをのせた後時間がたってしまうと水分が蒸発して正しい糖度を測れなくなるので、のせたらすぐにのぞくのがコツです。
糖度計での計測を合計3回繰り返します。最後の計測値が2回目の値より上か同じだったらオッケー。ヒーターの電源を切ります。
このタイミングで味見したジャムは先ほどの甘いものよりもずいぶん食べやすくなっています。これは果実から出た果汁に含まれる水分と酸味が程よく砂糖と混じり合ったから。味のバランスが整って食べやすくなったというわけです。
ここで10分ほどジャムを一旦おいて、休憩へ。
休憩中にはジャムデッキの上に登って、海を眺めたり写真を撮ったり。
そして休憩を終え戻ってくると...
見ためのジャム感アップ!
再び温めていきます。この時の加熱は殺菌のためです。
今度はレモン果汁を入れてしっかり混ぜる。
糖度計の値が61〜65の間だったらオッケーです。
次は泡取り。表面の泡を集めて丁寧にヘラですくっていきます。ジャムの量が減るので泡の取りすぎ注意。しかし、この泡はアク(灰汁)ではないので、食べてみると実はなかなかおいしいんです。
いよいよ最終工程。瓶詰めです。
容器の口のギリギリ5mm下まで入れます。
こぼれないようにそっとジャムを注ぎます。
しかし、あまりのんびりしていてもいけません。
フタを閉めたらジャムをくるくるくると3度回します。そして一瞬フタを開けてプシューという音が聞こえたらオッケー。
ジャムの音を聞きます。
聞こえたら、すぐにフタを締め直します。
この3回くるくるプシューのこの作業は、おいしくなぁれのセレモニーなどではなく、しっかりとした理由があります。
それは密封。ジャムは加熱・殺菌しているとはいえ、密封されていないと菌が繁殖し品質や安全性に影響を及ぼしてしまいます。容器とジャムの隙間の空気をジャムの熱で温め膨張させ、一瞬フタを開けることでこの膨張した空気を外に逃がします。そうしてヘッドスペースにある空気の量を真空に近づけることで、密封し保存状態を良好に保つということなんです。ジャムづくり体験では、くるくる回しましたが、工場の生産ラインでは酸素が窒素に置換されます。
これでおいしい手づくりジャムの完成!
最後に記念写真を撮って工場見学は無事終了しました。
原料のいちごをお鍋で煮るところから本格的なジャムの味づくりを体験させてもらうことで、工場の中のいろんな機械の中で行われている工程の大変さや工夫されているところを実感することができました。
工場見学とジャムづくりを組み合わせることで、楽しみながら学べるとてもよい体験をできるのがアヲハタジャムデッキのいいところです。
皆さんも、きれいな景色とおいしいジャムをぜひ味わいに来てみてくださいね。
アヲハタさん、今日は本当に有難うございました!
【詳細情報】
生協の組合員さんとアヲハタ株式会社との勉強会の様子はこちら(コープ商品サイト)
アヲハタ ジャムデッキ
住所:広島県竹原市忠海中町1-2-43
開館時間:9:30~16:30
電話番号:0846-26-1550(工場見学・ジャムづくり体験の予約電話)
電話受付:9:00~18:00
休館日:日曜日、月曜日、祝日、年末年始その他指定休あり
工場見学・ジャムづくり体験は完全予約制
体験料:ジャムづくり体験&工場見学コース800円
工場見学コースのみの場合は見学料無料
URL: http://www.aohata.co.jp/jamdeck/
(text:西村 photo:林)
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