大本山永平寺御用達!福井で愛される「米五のみそ」

今回しゃかいか!編集部がやってきたのは、今年で創業187年を迎える米五さんです!

とてもきれいな店構えの米五さん。以前にしゃかいか!ニュースでもお知らせしましたが、今年の6月に新店舗をオープンされました。そちらの様子もまた後半で!

米屋の五右ヱ門、味噌屋になる

米五の系譜はもともと寛文8(1668)年に開業された米屋が始まりで、当主は「五右ヱ門」という名前を二代目から七代目まで受け継いできました。米屋の五右ヱ門だから「米五」という名前になったんですね!

米屋がなぜ味噌屋になったのか、その詳細についてはわからないそうですが、米五に関する古い文書の中から米屋という表記が消え、味噌屋を営んでいたことを確認できるのが、五代目が活躍していたであろう天保2(1831)年頃のこと。つまり創業187年というのは確実に味噌屋を営んでいるとわかっている頃から数えての話で、米屋時代から数えると、実に350年もの歴史を持つお店なのです。

伝統は大切に。親しみも忘れずに。

そんな由緒ある米五の味噌は、曹洞宗の大本山として知られる永平寺御用達の一品でもあります。昭和45年の味噌蔵の預りから始まり、昭和54年には永平寺御用達の認証を正式に授かりました。今も当時と変わらない原料と手法で、永平寺の認めた伝統の味を変わらずに守り続けているそう。

一方で、福井市近辺の学校給食や病院食などにも使われ、街のスーパーでも手頃な値段で手に入る米五の味噌は、福井に暮らす人々の生活に寄り添う身近な存在でもあります。

伝統を受け継ぎながら、福井のまちとも絶妙な距離感で結びつく米五の味噌。

一体どんな人たちがどんな思いでつくっているのでしょう?

期待に胸を膨らませた編集部を案内してくれるのは、米五の十二代目にあたる多田健太郎さん。

現代風の爽やかな笑顔の若旦那。今日はよろしくお願いします!

それでは、さっそく工場の中に潜入。味噌蔵独特の芳しい香りと、どこか懐かしい雰囲気漂う工場内。わくわくしますね。

この日は平日でしたが、味噌の仕込み作業を行なっていたところを見学させてもらいました。通常、仕込みは週末にすることが多いそうです。

味噌の原料は米と大豆と塩。米五の味噌に使われる原料は、全て国内産です。

味噌作りの最初の工程は原料を洗うこと。こちらの先穀機で洗われた大豆や米が、中央の二本の管を通って二階へと運ばれます。大豆は蒸され、米は米麹に。

工場二階にあるこちらは、円盤製麹機(えんばんせいぎくき)と呼ばれる機械の中。洗った後に蒸されてこうじ菌のつけられた米を、約45時間かけて麹にしていきます。

こちらは洗われて二階へと運ばれてきた大豆を蒸す機械。このときは蒸しあがった大豆が混合機の中へと送り込まれる最中でした。

味噌に使われる大豆は蒸し具合がとても大事。産地や季節などによって蒸し時間などが異なってくるため、指で潰してみて、その感触で蒸し具合を判断します。通常は500グラムほどの力で潰れるくらいがちょうどよいとされていますが、米五さんはそれよりも少し柔らかめに蒸し上げるそうです。その絶妙な感覚が職人から職人へと受け継がれ、米五の味が守られていくわけですね。

さて、蒸された大豆が細かくなってどんどんと出てきて、天日塩や先ほどの米麹と一緒に混ぜられていきます。こちらの混合機では最大3トンまで一度に混ぜることができるそう。ちなみに、これも工場の二階にある機械です。

こちら一階。

混ざり終わった味噌は、そのまま下の階に置かれた樽の中へと入れられていきます。樽の上から味噌が出てくるところ、わかりますか?

味噌が落ちてくる間は、できるだけ空気が入らないように、できるだけ均等な高さになるように樽を前後に動かしながら調整します。

こちら二階。

材料を無駄にしないように、機械に残った味噌もしっかりと樽へと送り出します。

最後の最後まで!

再び一階。

全ての味噌が樽に入ったら、空気を抜きながら表面を水平にしていきます。

「(この作業が)結構きついんですよ」と、入社したての渡辺さん。頑張ってください!

渡辺さんを応援していたら見つけました。永平寺御用達の味噌樽!

この立派な木樽は、福井県産の越前杉でつくられた特注品です。

本来なら全ての味噌を木樽で仕込みたいところですが、もう木樽を作れる職人が日本でもほとんど残っていないということと、異物の混入を防ぐという狙いもあって、他の味噌のほとんどは食品用プラスチック製のタンクで仕込んでいるそう。

ただしこの御用達の味噌だけは、昔ながらの製法を守るため、今もこうやって木樽で作られています。

そうこうしているうちに、ならし作業が終わっていました。お疲れ様です!

先輩社員の吉村さんと二人で状態をチェック。「前よりいい感じにできてるやん!」と吉村さん。

全体が水平になったら、味噌が空気に触れないようにビニールをかけて密閉していきます。

冬場に仕込んで、自然に熟成させながら次の秋に食べられる味噌をつくるというのが、寒仕込みという昔ながらの仕込み方ですが、今日仕込みの準備をしていたのは学校給食などでも使われる「越前こうじ味噌」という出荷量の多いもの。その全量を天然熟成しようとすると現在の蔵の広さでは置き場所がないため、専用の熟成蔵へと運び入れ、出荷のサイクルに間に合うように発酵を早めます。

熟成蔵に入れられた味噌は30〜35℃ほどで保存されることで通常より早く熟成が進み、2ヶ月ほどで食べられるようになるそうです。

米五の天然熟成味噌は、基本的に約1年、長いものだと2年ほど熟成されます。「やっぱり、熟成期間が長いと全然違います。自然にゆっくり時間をかけて熟成させたほうが、美味しいお味噌ができますね」と健太郎さん。

熟成が済んだお味噌は樽に小分けにされ、出荷のときを静かに待ちます。

貯蔵庫。透明なカーテンの奥は3℃、その手前は8℃。

加熱殺菌などに頼らず、あくまでも自然な美味しさにこだわる米五の味噌は、品質の低下を防ぐために徹底した温度管理のもとで保存されます。出荷ペースの早いものは手前に。ゆっくりと出ていくものは奥に。

味噌が出荷される際には、ひとつひとつ人の手でパック詰め。手間暇がかかっても、機械を導入するよりはこうしたほうが割にも合うのだとか。店頭に並んでいる味噌のひとつひとつがこうやって誰かに詰めてもらったものだと思うと、なんだかちょっと嬉しいですね。

米五に65年務めたという先代の工場長からバトンを受け注いだ、現工場長の片岡さん。

「常に違う条件のもとで味噌作りをしていく中で、いかに米五の味噌としての味を守っていくことができるかですね」

この時期に、この大豆とこの米を使うなら、どう蒸してどう混ぜてどう熟成させれば米五の味噌になるのか。そこに、味噌作りの難しさと奥深さがあるといいます。

では工場長、味噌づくりの楽しさといえば?

「最近はカフェなんかもできましたから、そこで自分たちのつくった味噌を美味しいと言ってくれるお客様がいれば、やっぱり嬉しいですね」

ん?

カフェ??

味噌屋がカフェ!時代を読む米五の戦略とは。

昔ながらの工場で作り手の思いをたっぷりと感じたあとは、2018年6月9日オープンしたばかりの米五さんの新店舗「みそ楽」に寄ってみました。

ここでは、米五で作られている8種類の味噌が量り売りで購入できるほか、味噌に関する様々な商品が販売されています!

バラエティ豊かな熟成味噌たち。すり味噌と粒味噌を区別すると、12種類もの味噌からお好みのものを選ぶことができます。車で1時間以上かけてわざわざ買いに来られるお客様もいるんだとか。

すでにパックに詰められたものを買うこともできます。食べ比べもできるので、お気に入りを見つけて買っていきたいところ。

ご飯のお供や料理の味付けにも使える様々な加工味噌も扱っています。

気になるみそ楽オリジナルの味噌ビール!

永平寺御用達の「蔵」という味噌を使用して作られています。

の、飲みたい…。

お味噌やおしょうゆ、こうじのアイスもいただくことができます。

そのほかにも様々な商品が並び、一階だけでも十分楽しめる「みそ楽」ですが、注目したいのはその二階。

ばばーん。

そう、片岡工場長が言っていた、カフェです。その名も「misola」。

2018年7月5日にオープンしたばかりで、米五のみそを使ったランチセットやカレー、味噌屋ならではのカフェメニューなどを楽しむことができます。

「越前鍋みそ」を塗った焼きおにぎり。本日のみそスープもついています。

絶妙な焼き加減のおにぎりが本当に美味しい!

木桶ジェラート。米五のすりみそをつかったジェラートが木桶に入って運ばれてきます。欲張って甘さ控えめの甘酒とセットにしてみました。

味噌の塩気がジェラートの甘さを引き立てながら口の中で溶けていきます。こちらも美味。

ランチやカフェメニューで使用されている商品は一階で紹介されているので、ランチで気に入ったものがあれば帰り際に買って帰ることができます。

「misola」と同じ階にある体験教室。年々需要の増えていく味噌づくりのワークショップなどを通して、楽しみながら味噌について知ることができます。

米五では、スタッフのほとんどがみそソムリエの資格を取得。どこにいっても味噌の専門家がいることで、味噌の魅力をあらゆるタイミングで発信でき、結果として、工場やカフェなど、それぞれの場所の魅力がひとつのつながりをもってお客さんに伝わっていきます。

こういった、工場・体験教室・カフェ・ショップという異なる性質をもったサービスのつながりこそが、「みそ楽」を通して生み出したかったこと。

「うちは味噌屋ですけど、単なる味噌製造業ではないと思ってます」という健太郎さんの言葉の通り、「みそ楽」が完成した今の米五にくれば、工場見学から食事、体験教室、買い物まで、味噌に関するあらゆることを楽しむことができます。味噌をきっかけにして様々な体験を楽しむことができ、購買にもつながっていくという「みそ楽」。とても戦略的な施設です。

とはいえ、これだけの施設をつくるのにそれなりのコストもかかり、リスクも生じるはず。単なる味噌づくりにとどまらず、ここまで色んなことにチャレンジできる理由はなんなのでしょうか。

米五マスコットキャラクター「米五郎」

味噌という変わらない食材だからこそ、自分たちが変わる。

「とりあえずやってみるという姿勢は社長も一緒かもしれないですけど…」と前置きし、健太郎さんが話します。

「ぼくら親子は二人とも前職が情報系なんです。ITの現場って時代変化がめちゃくちゃ早い。去年使ってた技術が今年はもう古いみたいな。だから次々に新しい技術を取り入れていくんですけど、味噌屋はそれが止まってしまう。だから、もっと変わっていかなきゃいけないんじゃないかという思いは常にあります」。

そんな思いからか、昨年度は福井市が主宰する小さなデザインの教室「XSCHOOL」にもパートナー企業として参加。

本来は受講生とともにプロジェクトの実現を目指していくという立場でしたが、途中から受講生そっちのけでパートナー企業同士で新商品の開発を進めるなど、「とりあえずやってみる」精神を存分に発揮。新たな発想や価値観との出会いを楽しみました。

その後、XSCHOOLで生まれたあるプロジェクトと連携し商品化を進めていたのですが…

ここで重大発表!!

なんと本日9月22日、米五とXSCHOOL受講生の連携商品「福井絵巻味噌」が発売されます!!

福井に伝わる民話とともに郷土の食にふれる「福井絵巻味噌」。福井県産の大豆と米をつかった「然みそ」が包まれています。

XSCHOOL絵巻味噌チーム「おいしい絵巻編集部」と健太郎さん。

「福井絵巻味噌」は「みそ楽」の店頭で販売されるほか、米五のオンラインショップでも取り扱われます。

関心のある方はぜひお買い求めください!

「味噌をないがしろにせず、絵巻の内容とリンクさせてくれていることにも共感できましたし、お土産としても面白いんじゃないかと思いました」と健太郎さん。

色々なタイミングもあり、とりあえずやってみる精神で話を進めたら、商品化までこぎつけてしまった福井絵巻味噌。「外部の刺激を受けてひとつのものを生み出すことが大事。じゃないと、(我々だけでは)こんな発想はなかなか出てこないですよ」。

「みそ楽」も「福井絵巻味噌」も、リスクや変化を恐れていては実現しなかったものたち。

時代の流れに気を配りながら、変わらないために変わっていく。

それが、米五が米五であるための秘訣かもしれませんね。

さて、楽しかった米五さん訪問もこれにて終了!

健太郎さんはじめ、少ししかお会いできなかった多田社長、素敵な笑顔で迎えてくれた事務室のみなさま、ショップ、カフェ、工場のスタッフのみなさま、ありがとうございました〜!

【詳細情報】

株式会社米五

住所:福井県福井市春山2丁目15-26
電話番号:0776-24-0081
URL:https://www.komego.com/

(text:髙橋、photo:髙橋、室谷、おいしい絵巻編集部)

関連するキーワード

関連記事

最新訪問ブログ

訪問ブログ一覧へもどる