ひらりと返すと違う色のリバーシブル手ぬぐいhiraliの謎と、手ぬぐい産地のアツいフェス! 竹野染工
手ぬぐい好きも、そうでない皆さんもこんにちは!突然ですが、hirali (ひらり) という手ぬぐい、知ってますか?
その名前のとおり、風が吹いてひらりとなる時が最高にいい!なんと、裏返すと表とは違う色の、リバーシブル柄の手ぬぐいなんです。
はじめまして、今ちゃんです。
日常の生活シーンに溶け込みつつも少し先の未来を豊かに変えるようなプロダクトに憧れと敬意を感じ、私もそういうものをつくり続ける人でいたいと願う、ものづくり系クラスタです。
そんな私が、hiraliという1枚の手ぬぐいと出会ったことからはじまった壮大なしゃかいか!ストーリー、ど〜んとお届けしますね!
hiraliの雰囲気に、ひとめぼれ
私がはじめてhiraliに出会ったのは、今年の2月。ててて見本市という地域や素材の魅力をいかしたプロダクトやアイテムのつくり手が集まる東京での展示会でした。
かさねの色目という日本らしい裏と表の色の組み合わせの優しい雰囲気と、ひらっとなって裏が見えるというシーンの布ならではのやわらかさに、心つかまれました。
そして次の瞬間... いや、ちょっと待って。不思議じゃないか??
この手ぬぐい、どうやって作っているのかさっぱり分からなかったんです。
hiraliの不思議さに、ふためぼれ
手ぬぐいでよく見かける注染(ちゅうせん)という染めの技法では、染料をなみなみ注いで浸透させるので裏まで同じ色になります。糸をまるごと染めるので手触りは柔らか。
一方、顔料プリントの手ぬぐいも主流です。こちらは布の表面をコーティングするように色を乗せるので、裏面まで色は届きません。コーティングしているインクの層があるので少し布は固くなります。
▼注染が気になった方は、寄り道どうぞ!
じゃあ、この目の前にあるhiraliは何だろう?
聞くとプリント技法の一種、染料のロール捺染とおっしゃるのだけど、もう私の知っている小さな常識的な理解の範囲を飛び越えてしまったみたい。
その時、しゃかいか!的スイッチが入りました。気になる、知りたい、見に行きたい!
hiraliを前に頭の中が好奇心でいっぱいになり、それから半年。ついにhiraliの謎をとくべく、しゃかいか!編集部のみんなと、手ぬぐい産地の本場、大阪の堺市にやって来ました。
展望台から見下ろす市内には、古墳がずっしりと横たわっています。歴史の教科書で見るのとは迫力が違う。スケール感、ぶっ飛んでるなぁ。
まずは、hiraliをつくっている竹野染工も出展しているという、てぬぐいフェスへ。
「手ぬぐい産地の堺だからできるつくり手の顔が見えるフェス」を目指して、手ぬぐい産地を支える若手のつくり手たちが、昨年から始めたそうです。今年は2回目の開催。
受付近くの看板も、もちろん手ぬぐい! 「あなたの手ぬぐい事情を教えてください」という手ぬぐい愛にあふれたアンケートに答えて、私たちも早速手ぬぐいゲット。
いつもは祭りの影の立役者、このフェスだけは、手ぬぐいが主役!
と、パンフレットにも書いてあります。見渡すと、いたるところに手ぬぐい。
ほんまや!(にわか大阪弁)
ステージ上ではためく手ぬぐいに、風になびいて影がゆらゆら落ちてくるタープ・テント。
風を吸い込みたくなって、思わず深呼吸。気持ちいいなぁ。風と手ぬぐいは、相性抜群です。
くりかえしパターンが続く裁断前の長〜い手ぬぐいは、普段は手ぬぐいづくりの工程内にしか存在しないもの。手ぬぐいづくりのシーンが重なるような錯覚を覚え、なんだかぐっときます。
大技も合わせ技も、キマってます
額に入った手ぬぐいが並んでいるのは、企業・個人問わず出展できる「手ぬぐいオリンピック」というコーナー。晒(さらし)工場や染工場も、出展者として名前を連ねてます。
今年のテーマは「渾身の一枚」。
手ぬぐいならではの、縦に長い構図を大胆に活かした生地いっぱいのアイスクリーム。
その左には、縦長の構織物の機械で緯糸を打ち込むシャトルという道具と綿がモチーフになっている、手ぬぐいの生地である和晒(わざらし)の機織りにちなんだ絵柄の作品が並びます。
「古きよき毛穴の風景」というタイトルの作品は、今でも手ぬぐい関連工場が並んでいるという堺市毛穴町で、手ぬぐいを天日干しにしているシーンがモチーフになっています。
そして、浮世絵の版画のように位置をぴったり合わせて違う版で複数回染めるという高度な染めの技術によって、1枚の手ぬぐいの上ににじみやグラデーション、しっかりしたラインなど多彩な表現が可能になってるそうです。
まさに、手ぬぐいづくりの現場から魂を込めて!という気迫を感じます。
清き一票!「て」シールで投票しました。
私も何かつくりたくなってきたぞ
渾身の手ぬぐいたちに触発されて、もくもくと創作意欲が湧いてきました。目に入ったのは、手捺染の体験コーナー。迷わずチャレンジです。
「手捺染」は、hiraliの「ロール捺染」と同じ、捺染というプリント手法のひとつですが、原理は全く異なります。
■ 手捺染は、柄の部分だけインクが通り抜ける平らな版を用いて、手で染める孔版のプリント手法 (いわゆるシルクスクリーン・プリント)
■ ロール捺染は、柄の部分だけ彫り込んだロール状の版を用いて、機械で染める凹版のプリント手法
まずは、版の端のほうの柄がない部分の上にインクをたっぷり置きます。
そして、スキージーというヘラを両手でしっかり持って、角度を変えず均一な力でスーッと上から下まで引っ張ると、
版の孔からインクが下に落ちて、布に絵柄が写し取られるという仕組みです。
今回チャレンジしたのはピンク1色のプリントですが、複数色たとえば3色で構成される柄の場合は、1色に対して版を1枚使うので位置合わせを慎重に、3回版を取り替えてプリントするそうです。
ドライヤーで乾かすと、もう完成!
布を染める/プリントするインクには、顔料と染料の2種類があります。今回のものは、プリント後に乾燥のみで仕上がる顔料タイプ。
一方で染料タイプは、染料を布に固定させるために染料を糊に溶かした色糊をプリントするので、その後には蒸して水洗いをし、糊を落とす工程が発生します。
できたよー!
かける力が偏って、片側の模様が太くなってしまいました。真っすぐスキージーを平行移動させたつもりだったのですが...これも手仕事の技、なのですね。
手ぬぐいフェスのロゴ「て」が6個くるくると集まって、お花のような模様。かわいいです。
hiraliは、どこかな?
会場にはもちろん、手ぬぐいの展示・販売のテントもずらり。手ぬぐいを浴衣に仕立てたものや、手ぬぐいをハーフサイズにした大判のハンカチなども並びます。
どうやら、お気に入りを見つけてしまったみたい。ビールの泡と液体の間のシュワシュワっていう部分が、ほんとうに美味しそう。
まさに手ぬぐい日和、ビール日和。
見つけました、hirali! そしてhiraliをつくっている、竹野染工の寺田さんです。
手元には、hiraliの兄弟ブランドOo(ワオ)も並んでいます。Oo(ワオ)も、hiraliと同じくリバーシブル染色で、輪っか状になっているのが特徴。
寺田さんが首元にも、爽やかな黄色と優しいグレーのOo(ワオ)が。とってもお似合いですね。
改めて、hiraliの謎と向き合います。うーむ。
手ぬぐいの切りっぱなしになっているの端っこや、手ぬぐいの長手のミミという生地が少しだけ分厚くなっている端の部分に、何か手がかりがないかと目を凝らして見ると、1本1本の糸が2種類の色に染まっているのがわかります。
やっぱり不思議だなぁ。
さて、いよいよhiraliの謎に迫ります!
場所変わって、竹野染工へやってきました。
寺田さん、よろしくお願いします。
今日は、青同系色のOo(ワオ)ですね。
しゃかいか!の青ヘルメットに合わせてくださったのかな。(違うかもしれないけど、それでもなんだか) うれしいなぁ。
一言も聞き漏らさないし、見逃さないぞ、の意気込みです。謎解きですから!
ロール捺染が、量産可能なプリント手法としてヨーロッパから輸入されておよそ100年。
機械導入によって多くの部分が自動化され、安定した連続運転で比較的安価に染色ができるようになりました。
竹野染工ではそこから進化の向きを変えるようして、寺田さんの先代では、裏まで染め抜くという技術が完成。そして、3,4年前にはついに両面染めができるようになり、その技術を生かしてhiraliの構想が生まれ、実現へ。
「安く大量に」という技術が「誰にも真似できない」技術へと変わり、それに伴い工場の職人さんの意識も、仕事に対して誇りを感じ確かな自信を持てるように変化した実感があるそうです。
今回は、染色工程の前の、生成りの布から不純物を取り除き漂白して和晒の布に仕上げる晒工場と、その前の糸から生成りの布を織る織布工場も、併せて見学せていただけるとのこと。
いざ、手ぬぐいづくりを巡る逆再生の旅へ!
まずは、竹野染工の染工場の中へ。
工場の入り口に積み上がっているのは、染める前の白い手ぬぐい生地、和晒の束です。
長い長い手ぬぐいの帯、1000メートル
染工場に入ると、奥に長い見上げるほどの大きな機械が動いていました。
分速30メートル、ちょうどエスカレータくらいのスピードで長い帯状の布が繰られ、染め終えたものが目の前でゆらゆら折りたたまれて積み上がっていきます。なかなか途切れません。
機械の隣には、ミシンが置いてありました。和晒1本の長さは130メートル。もともとそんなに長いわけではありません。それを縫い合わせて何本も繋げて長くしているそうです。
連続運転することで、生産効率アップ!
顔料の泉、コポコポコポ
機械の反対側へまわってみました。
紺色の顔料が湧き出て、ロール状の版が紺色に染まり、ぐるぐる回っています。
ロール状の版に彫り込まれた溝部分に染料が流れ込み、そこに布を押し当てることで、布に転写されます。凹版印刷と同じ仕組みです。
hiraliは染料で染め上げる手ぬぐいですが、てぬぐいフェスでの手捺染体験同様、染色工程までのやり方は同じ(その後に蒸しと水洗いが発生するのは、染料タイプのみ)ということで、今回は顔料を使った工程を見学させていただきました。
染料タイプは糸の1本1本が中まで染まるのでやわらかく、顔料タイプは糸をコーティングするように糸の上に顔料がのるので少し硬くなります。
hiraliの風にひらりと舞うやわらかさは、染料ならではの表現なのです。
1本目の謎ときの鍵: 3回染め
この機械、ふつうの手ぬぐいは1回、hiraliは3回通るそうです。はじめに特別な染色工程があり、裏を染めて、表を染める。単純計算でも3倍の手間をかけています。
ちなみに、特別な工程の中身は、企業ヒ・ミ・ツ だそうです。竹野染工の積み上げてきた努力、知見、閃きによって編み出された3回染めなのですね。
工場にはロール状の版がずらり。柄ごと、1色ごとにあるので大変な量です。版の円周は90センチメートル、ぴったり手ぬぐい1本分の長さです。
版は金属の塊、想像以上の重量級!
腰を入れて両手で丁寧にぐっと...あれ、あれ! 全く持ち上がりません。
男性でも軽々というわけにはいかず、職人さんも両手でしっかり抱えるように持ち上げています。
版は、3色で染める場合には3個セットしますし、絵柄が変わるたびにつけ替え、使い終わった後はインクを洗ったり手入れをします。それがこんな重労働だったとは、驚愕です。
こちらが、hiraliの版!
磨りガラスのように見える部分が溝、ここに染料がたまります。溝といっても、指で撫でるとやっと凹んでいるのが分かるくらい、とても浅いもの。
2本目の謎ときの鍵: 版の溝の深さ
hiraliの両面異なる色は、裏からと表から染めていることが分かりました。
染料の色染み込み具合を生地の両側からちょうど半分くらいにする、その繊細なコントロールを可能にする重要な要素のひとつが、この版の溝の深さなんです。「これは何ミクロンくらいなんですか?」と質問してみました。すると、寺田さん「どうなんでしょうねぇ」と。...!?
版に溝を掘るのは染工場ではなく、京都にある捺染の金型を製造する彫刻所です。なんと、彫刻所の職人さんとは深さを指定する際には尺貫法もメートル法でもなく「特に単位のない、でもお互いはわかる数字」で話をするそうです。私たちにとってはもう、暗号のような世界です。
力を込めて左右に引っ張るように作業をしているのは、竹野染工でも唯一、つまり日本で唯一hiraliの両面染色ができるベテランの職人さんです。
染工場で、研磨!?
顔料の泉の前で、色の準備やロール版の準備ではなく... 刃を研いでいらっしゃいます!!
3本目の謎ときの鍵: 刃をいい塩梅に研ぐ
この刃は、染料/顔料を版の溝に流し込むときに均等にインクが行き渡るようにインクを掻き取るもの。染料/顔料の泉のすぐ裏側にセットします。てぬぐいフェスで体験した手捺染の手法でいうと、スキージーの役目に当たります。
職人さんは、染める柄に合わせて自ら研磨したマイ刃をつくり、染料/顔料の供給量を絶妙に調整しながら機械を回しているんだそうです。
上が研磨した刃、下が研磨する前の金属板。染工場の職人さんになって最初の3,4年、この刃を研磨する修行をするそうです。染め具合を思い通りにコントロールすることができるマイ刃がつくれるようになって、やっと染工職人のスタートライン。
思わず、口があいてます。
染めの技が、研磨の技の上に成り立つものだったなんて。
目の前で実演してくださった、刃。
上側の研磨した部分が鈍く光っています。
工場の壁には、こうして研磨された機械刃置き場がありました。道場の片隅の武具置き場、くらいの強い存在感を放っています。
3度もの染色工程を経る手間。両面染めの塩梅を絶妙に調整する、版の溝の深さと自ら研磨する機械刃。
hiraliの謎解きの鍵を、3本手に入れたところで、染色のひとつ前の行程へ!
染工場を後にして、車でほんの数分。寺田さんに引率いただき訪れたのは、晒工場です。
もわっと湿度の高い中で、働く男たち!
汗が光ります。とてもとても力強い!
声をかけてお話を伺う前からもう、晒工場の歴史や伝統が言語を介さずお腹の底からガンガン伝わってくるようです。
三共晒の中野さんです。釜から出した真っ白な和晒をえいやっと投げて渡す、組み作業中。
なんだか圧倒されてぼーっとしてしまいますが、そもそも、晒工場が何をする場所なのか、順番に見ていきましょう。
中野さんたちのいる工場の奥には、搬入された生地を保管している生機(きばた)倉庫があります。
ごわごわの生成りの生地を、白く柔らかく美しく
綿花から作られた糸で布を織る織布工場から、搬入された「生成り(きなり)」という状態の生地は、植物である綿花のもともとの淡い褐色の色や、布を織るために糸につけている糊を含んでいるため、真っ白ではありません。そしてごわごわしています。
これをさきほどの染工場で見た状態の、柔らかくたゆたゆの白い布の状態にするのが晒工場。釜焚き、脱水、乾燥という、大きく3つの工程に分けられます。
釜焚きは、じっくりコトコト
釜焚きの工程は、3日間弱い薬品を使ってぐつぐつと、生地についている糊抜き、精錬、中和、漂白、そして水洗いをおこないます。海外の布生地はもっと強い薬品を使って数時間で完了するのですが、和晒の柔らかな風合いを出すには、これだけの時間がかかるそうです。クレーンを使って、釜から大きなカゴを引き下ろします。
カゴには生地がぎっしり400本、詰まっています。釜から取り出した状態の生地は、水分をたくさん含んでいます。
なので、とても重い!
ふたりで両手でしっかり掴んで、1本の生地を落とさないようにするのがやっと。先ほど中野さんがおこなっていたのは、この釜から出した生地を脱水機に移し替える作業。これを日々、テンポよく投げて渡しているなんて...屈強な身体になるわけですね。
生地は、1本ずつ手作業で遠心分離機にバランスよく8本詰めていきます。
脱水!
ぐるんぐるん、4分間勢いよく回します。
脱水後の生地は、乾燥工程に進みます。ふわりひらり、染工場で目にしたような生地のふるまいになってきました。そして美しい白さ!
hiraliに限らず手ぬぐいの手ざわりの良さ、そして白い美しさや絵柄の発色の良さを支えているのは、この晒工程だったのですね。
三共晒工場をあとにして向かったのが、和晒の織布工場です。いよいよ、糸が布になるところまで遡ってきましたよ!
サカエ織布の花谷さんです。織布工場の入り口には、出荷待ちの生地が積み上がっています。先ほどの晒工場の生機(きばた)倉庫で見たものと、同じもの。
サカエ織布で織っている綿織物は全て、この約35センチメートル幅の小巾(こはば)の和晒。手ぬぐいや浴衣になる生地です。小巾の織物は日本でしか使われず、洋服では1メートル以上の広巾(ひろはば)の生地を織って、必要な幅に応じて生地を裁断して使うそうです。
小巾の生地ならではのプロダクト、手ぬぐい
それなら大は小を兼ねるというし、手ぬぐいも広巾の生地を裁断したらいいのでは?と思ってしまいそうですが...
手ぬぐいの切りっぱなしの端部(短手)は、まさに長い生地を裁断したままの状態。結びやすく裂きやすいという、手ぬぐいの使い勝手と直結しています。一方手ぬぐいの長手の両端は、よく見ると少しだけ生地が厚い、ミミと呼ばれる部分です。小巾の織物で、シャトル織機という緯糸(よこいと)を折り返して織り進む機械の種類だから、このミミができて、手ぬぐいはバラバラに糸がほどけないんだそうです。
工場の扉を開けるともう、ガッタンガッタンと、シャトル織機の動く音が聞こえてきました。
響き渡る、独特のリズムの大合唱
64台、シャトル織機が整然と並んでいます。
大声を出さないと会話ができないくらいの音量です。シャトル機械の上にほわほわしているのは、綿ぼこり。目の前に広がっているのは糸から布になる工程ですが、糸の前の綿花の姿がふとチラつきます。
思わずじーっと眺めてしまう。
人間が主役でない空間が広がっています。
この合唱の正体は、長い経糸(たていと)の列に緯糸(よこいと)を通していく、そのキビキビした往復運動が折り返すときに端にぶつかる音。音がなるたびに、ミミが作られているんですね。
シャトル織機の「シャトル」は、この緯糸を通す道具のこと。シャトルバスやバトミントンの羽でおなじみの往復運動を示す語源になっています。シャトル織機は、分速6センチメートルで織り進みます。縦に織り進むのはゆっくりに感じますが、左右にすごい勢いで動いているので、動きはかなり激しいです。
こんな調子でシャトルバス運行したら怖いなぁ、と謎の妄想をしてしまいました。
シャトルには、細い棒に緯糸を巻きつけた管巻(くだまき)がセットされています。糸がなくなると織機のランプが点灯し、手作業で取り替えます。
織機の横には、管巻がひしめき合って待機!
織布工場の奥には、管巻を作る機械があります。
細い糸が、上から下までバランスよく巻きつけられていきます。規則正しい小さな動きの繰り返しは、なんだかかわいらしい。
酔っぱらいが「くだを巻く」の語源は、この管巻きの繰り返しだそうです。こんなにかわいい管巻きなら、許せるし、許される気がします。ちなみに「緯度、経度」も経糸と緯糸が語源なのだそうです。
語源であふれる、織布工場
私たちの使う言葉と布を織る際の道具や工程の名前の結びつき、今では語源であることが忘れられるくらい昔から深い部分で繋がっているんだと思うと、感慨深いものがあります。
石津川(いしづがわ)沿いのこの地域を中心に営まれてきた、手ぬぐいや浴衣をつくる和晒産業。
竹野染工の寺田さんの話には「産地」という言葉がくり返し登場しました。注染もロール捺染も顔料プリントも、染屋も晒屋も織屋も、みんなで産地を盛り上げてみんなで進化しようという思いが、てぬぐいフェスになり、技術の進化自体がストレートに魅力と直結するhiraliがうまれるきっかけにもなったのだと思います。
「どうやって作っているんだろう?」というhiraliの製法の謎を追いかけていたら、hiraliというプロダクトそのものが誕生する裏側の、つくり手のアツい想いに辿りつきました。これが、hiraliの最後の謎をとく鍵、だったのかもしれません。
寺田さんはじめ、竹野染工、三共晒、サカエ織布のみなさん、手ぬぐいフェスのみなさんも、ありがとうございましたー!
これからも手ぬぐいの主役っぷりな進化と活躍から、目が離せません。
(text:今飯田、photo:市岡、加藤)
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