日本の手仕事を守りたい! オリジナルラグが作れる「tufting studio KEKE」さんに潜入レポート
今回は、参加した人からの喜びの声が絶えず話題沸騰! 『tufting studio KEKE』のオリジナルラグ作りワークショップに潜入してきました!
ご一緒したのは、初の作品集「DISCOVER」を出版されたばかりの新進気鋭のイラストレーター・unpis(ウンピス)さん。
本の表紙や街中のポスター、SNSでもunpisさんの作品を見かけるので「知っている!」と思った人も多いのではないでしょうか? 日常の中で「ハッ」と感情が動く瞬間や遊び心が満載のイラストに、心を奪われている人も多いはず。unpisさんのイラストをラグにすれば強烈にかわいいのはず!ということでお声がけしました!
そしてワークショップでご指導いただくのは、『tufting studio KEKE』を運営する株式会社毛毛の代表KUMPEIさんと、妹のCHIYURIさんです。
実はこのワークショップ、KUMPEIさんが趣味で始めたところから日本の手仕事を守る活動にまで繋がったそう! そこには一体どんな背景があるのでしょうか? ラグ作りを体験しながら、じっくりとお話を伺ってみようと思います。
どんなラグでもデザインがあれば作れちゃう?
ということで、ラグ作り頑張るぞー! おー!
今回は、しゃかいか! より、石井さん。熱海で「薬膳喫茶gekiyaku」を運営する近藤さんとアートディレクター諸橋拓実さんチーム。そして、写真には映っていませんがunpisさんで、3つのラグを作成します。
KEKEさんのアトリエに入ると……
お〜! 糸がいっぱいっ!
今すぐにでも作りたい気持ちを抑えつつ、安全にワークショップを行うため、CHIYURIさんから作り方の説明を受けます。
ワークショップの流れを簡単にまとめると、以下の通り。
① 1週間前までにKEKEさんにデザインを納品
② 使う糸の色を決める
③ 練習する
④ 下書きをする
⑤ ひたすら糸を打ち込む
---------ワークショップはここまで!以下はKEKEさんが担当してくださります---------
⑥ のり付けをする
⑦ 丸1日、乾燥するのを待って、切り抜いたら完成!
ラグ作りに使う道具はこちらの「タフティングガン」のみ!
デザインを描いた布に、タフティングガンで糸を打ち込み、ラグを作っていきます。
最初にするのは「色選び」。打ち込むと糸が密集するため、実際の色よりも少しトーンが落ちるのだとか。徳島県にあるMIYOSHI RUG(三好敷物)さん(https://miyoshirug.com/)の糸を使用します。
色が決まったら、練習用のタフティングガンを使い、直線の打ち方、曲線の打ち方、空間の埋め方を実践します。
布に打ち込む前には、必ずタフティングガンに糸を通します。
糸通しを使って、5本に束ねた糸を通しましょう。
準備ができたら、布に向かって銃を持つように(!?)タフティングガンを構えます。右手(利き手)にあるレバーを握ると、「ガシャ!ガシャ!ガシャ!ガシャ!ガシャ!ガシャ!」とミシンのように布へ糸を打ち込むことができます。
縦線を引きたい時には、下から上へ。
横線を引きたい時には、ガンの向きを変え右から左へ。
ガンを移動させるスピードも重要で、速すぎるとふわふわと柔らかな仕上がりになり、遅すぎると糸の密度が詰まってみっちりとした仕上がりになってしまいます。均一にするためには、一定のスピードを維持することがポイントです。
タフティングガンの重さが、普段使わない腕の筋肉を刺激! 練習だけでも結構な重労働感があり、不思議とヘルメットも似合ってしまう……そんな現場でした。
ちなみに制作できるサイズは60cm×60cmなら、どんなデザインでもOK。それぞれどんなデザインのラグにするのか下書きの工程から見てみましょう。
石井さんが作るのは、株式会社TAMのキャラクターTAM君!
近藤さん&諸橋さんチームは、丸と四角……? 一体どんなものが出来上がるのでしょうか。
そして、unpisさんの飛び出すラグ。立体感あるラグになりそうで楽しみっ
通常のワークショップでは最大6色まで糸を使えます。自分がデザインしたロゴや、ペットのイラスト、お子さんが描いた絵など自由にデザインすることが可能です。
KEKEさんにはこれまで作られてきたラグが展示されていたのですが、プロならこんな「鶏の丸焼きラグ」や、
立体感のある「点字ブロックラグ」まで作れるようになりますよ!
タフティングガンで、打ち込み開始っ!
ここからはチームごとに作業過程をご紹介しましょう。
まずは、KEKEさんのワークショップ最短記録を打ち出した近藤さん&諸橋さんチーム!
主に近藤さんがタフティングガンを握っていましたが、この時点では出来上がりが想像できません……!
ある程度埋まってきた所で、ついに諸橋さんがガンを握りました。赤い丸の中は空洞になるんですね。もしかして、赤い枠の中に、グレーの丸を入れるのかしら?!
CHIYURIさんに最終チェックをしてもらって……
なんと1時間もかからず、完成! 二人とも「はやく終わってしまってすみません」と、周りに恐縮気味でしたが、ヘルメットの効果もあって、途中から「職人さんかな?」と思うほどの手際の良さでした。KUMPEIさんからスカウトの声がかかるのも時間の問題かもしれませんよ!
続いては、TAM君を制作するビッグな社運を背負った石井さん。
TAM君の帽子に使う黄色を「どれかな〜」と悩みながら決めていました。同じ黄色でも何種類もあるので、出来上がりを想像しながら選ぶのもまた楽しいですよね。
実際に、打ち込みを始めると、「がんばれー!」と加藤さんが見守ります。
最初は笑顔で頑張っていた石井さんも、30分もすると「腕がやばい……」と無口に。
最終的には「アツい!」と上着を脱いで腰に巻き、完全に職人の姿になっていました。
後ろ姿がカッコ良すぎる……!
ちなみにタイムラプスで仕上がりまでの様子は記録していたので、よければこちらもご覧ください♪
こちらもCHIYURIさんに最終チェックをしてもらい……
2時間ほどで、完成!
口の部分や帽子の曲線も上手にできていますね。終わった後の石井さんは、オリンピックで自己ベストを出したスポーツ選手のような清々しさがあり、カッコよかったです!
最後は、この場にいた全員が大注目だったunpisさんのラグ。通常は、6色の糸で作っていきますが、今回は特別に9色の糸を使用しています。見た目もかわいく、比較的シンプルなデザインに見えますが……
枝のゆらいだ曲線や、コップから溢れた水たまりの曲線は複雑で、KUMPEIさんも「上級者向けですね」と一言。
下絵を描いている時には気がつかなかった「上級者向け」の意味を、実際に打ち込みを始めてからunpisさんは実感することになるのです……。
最初に取り掛かったのは、ラグのベースとなるクリーム色の部分。こちらは、ひたすら埋めていく作業ですが、意外と面積があるので、ここを塗り終わるだけでも1時間ほどかかりました。unpisさんは仕事がとっても丁寧なので、遠くからみても隙間が均等に保たれているのが分かります。さすがすぎる……!
打ち込んでいる側からみても、点線が規則的に埋まっており、unpisさんの丁寧さがよりはっきりと浮き彫りに。
たくさんの色を使うので、その度に糸を交換し、タフティングガンでひたすら打ち込んでいきます。途中ふらふらとなりながらも、「がんばります」とひたむきに打ち続ける姿は、芸術家のようでした。
KUMPEIさんの最終チェックを経て……
超大作が、完成しました!
まるで絵画!
アート作品のようなラグマットが完成しました。所要時間約3時間、ひとりでここまで完成させたunpisさん、素晴らしい! 完成品をみて「絶対、作品展に飾りたいです」とおっしゃっていました。個展で見れる日をお楽しみに!
最後はみんなで完成品を前に写真撮影。お疲れ様でしたー!
この後は、のり付けをして、糸と布を接着させるため、丸1日乾燥させます。
出来上がりが楽しみですね!
趣味で始めたラグ作りから、職人を守る活動へ
2021年9月に会社を設立し、10月からワークショップを始めた株式会社毛毛。どのように取り組みがスタートしたのか、KUMPEIさんにもお話を伺いました。
「1年くらい前から、趣味でラグ作りを始めました。SNSで海外の情報を仕入れながら試行錯誤していたところ、徳島県にあるMIYOSHI RUG(三好敷物)さんから声をかけてもらい、あれよあれよと現在に至っています。工場では、今日みなさんが体験してもらったタフティングガンよりも重い、もう壊れたら使えなくなるようなレトロな機械を使っていたんです。僕が使っていたタフティングガンの使い方を教えて欲しいとの連絡でした」
日本にいると、“ラグを作る”という発想はほとんどありませんが、海外ではDIYのひとつとして、親しまれているのだとか。
デザイナーとしても活動しているKUMPEIさん。MIYOSHI RUG(三好敷物)さんと繋がったことで、ワークショップを始めます。10月にスタートし、毎月100名以上の方にラグ作りを体験してもらえるようになりました。
「最初は身内だけでやる予定だったので、この人数は予想外でした。90%以上はインスタからの参加で、その8割は女性。未経験の方がほとんどです。デザインも1週間前には送ってもらうようにしているのですが、『これは無理だなぁ』というデザインもあるので、相談しながら完成させます。グラデーションがあるものや、細かいデザインはお断りすることもありますね」
趣味で始めたラグ作りでしたが、想像以上のペースでワークショップ参加者の申し込みが増えていきました。
そんな中、日本ではラグ作り職人が減っていることも知ったKUMPEIさん。今では、山形県、大阪府、京都府、徳島県と数えるくらいしか工場は残っていない事実を目の当たりにします。ワークショップを続けていく中で、「伝統を守りたい」思いも生まれてきました。
「一緒に活動させてもらっているMIYOSHI RUG(三好敷物)さんがある徳島県も、昔はいっぱい工場があったそうなのですが、今は3つだけ。僕らが出会った頃には、働き手不足によって、産業の危機が迫っていました。そこで、ワークショップを通じて働き手を繋げる仕組み作りを始めたんです。実際にワークショップやKEKEでバイトをしていた人を含めて6〜7人、工場で働いています。少しずつですが、産業も盛り上がってきている所です」
工場でもタフティングガンを使い、OEM製品を中心にラグを制作しています。今後もこの活動を続けていきながら、日本でも趣味のひとつとしてラグ作りが広まって欲しいと語ってくれました。
ちなみに、KEKEさんではタフティングガンも販売中。ワークショップを受けて、実際に自分でも作ってみたいと思った方は、ぜひタフティングガンをゲットしてみてくださいね。
《KEKEタフティングガン スターターセット》
価格:¥65,000(税込)
商品内容:基本の7アイテム(タフティングガン/ラグ用バリカン/ヘッシャン/裏地用メッシュ/裏地用糊2kg/糸5色/糸巻き器)
https://kekerug.shop/items/61f0c8a2e3bbd114cb6739ce
ラグが届いたよー!
ラグ作りをしてから約1週間、私たちが作ったラグが届きました!
かわいいーーー!
近藤さん&諸橋さんチームのラグは、バラバラなパーツが、
パズルのようにピタッとハマりました。
おしゃれ!
そして、unpisさんのラグも飛び出した部分が整えられて、おしゃれなラグになりました。雑貨屋さんにあったら絶対買っちゃう!
そして、TAM君もこんな感じで遊べちゃう!
世界にひとつだけのオリジナルラグは、作っている最中も楽しいですが、こうやって手元に届いてからも笑顔になる逸品でした。
今人気のtufting studio KEKEさんのワークショップはなかなか予約が取れにくい状況ではありますが、少しずつでもラグ産業の助けになって、私たちの生活に身近になってくるといいですよね。自分で作ることで、大事に使う気持ちも生まれるはず!
普段何気なく目にするラグを見る目が変わる、そんなラグ作り体験でした。
tufting studio KEKE
住所:東京都台東区池之端3-3-9 花園アレイ105(根津駅徒歩5分)
Instagram: https://www.instagram.com/keke_rug/
ホームページ:kekerug.com
公式LINE:https://lin.ee/Qx6D4Xm
YouTube:https://www.youtube.com/channel/UCb-rSTKXIanMI2DCaLunalw
TikTok:https://www.tiktok.com/@tufting_studio_keke
写真:市岡 祐次郎
文章:つるたちかこ
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