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器の魅力を再発見!京都最大級の大陶器市に潜入!in 清水焼の郷まつり
秋晴れの気持ちいい中、やってきました!
京都市山科区の清水焼団地で行われている京都最大級の大陶器市、清水焼の郷まつり!
なんと京都府内から約80もの製陶事業者さんが出店しているそうです!
道沿いにはずらーっと焼き物の出店テントが立ち並んでいます!
早速多くのお客さんが陶芸品に触れている姿が目に入ってきます。
その賑やかな光景に楽しそうだなぁとワクワク。
皆さんはじめまして!
今回の記事を担当するのは、しゃかいか!インターン生の「りこ」です!
写真がどアップ過ぎてお恥ずかしい!
出身は愛媛県で、京都滞在歴4年目の大学4年生です。
現在、京都芸術大学にて建築を勉強しております。
建築といっても建物を設計するだけではなくて、身近なインテリアやお庭などの緑のデザイン、あとはまちづくりなど大きな規模の課題にも取り組んでおります。
今回清水焼団地一体となってのお祭りということで、街がどんな風に、どんな人たちによって賑わっていくのか、まちづくりの観点でも学ばせていただきたいと思っています。
私自身、京都に来てから伝統工芸に興味を持ちまして、普段から職人さんの作品や焼き物の器等を見に行ったり集めたりしております。
今回のおまつりも心を踊らせながら取材に臨みました!
清水焼の郷まつりは今年で46回目の開催となります。
去年と一昨年はコロナで開催できなかった為、今回3年ぶりの開催!
皆さん待ち望んでいらしたのではないでしょうか。
昔は夏の祇園祭と同じくらいの時期に開催していましたが、10年前くらいに10月の第3金曜〜日曜に変更したそうです。
確かにこれくらいの時期の方が気温も過ごしやすくていいかもしれませんね!
ちなみに、以前は「陶器まつり」という名前で開催されていましたが、現在は地域に根ざしたお祭りにしたいという思いから「清水焼の郷まつり」という名前に変更したそうです。
そもそも清水焼とはなんぞや?
ではまず最初に、お祭りの名前にもある「清水焼」とは一体どんな焼き物のことを言うのでしょうか。
作家さんに話を伺ってみたところ、正式名称は「京焼き・清水焼」とのことで、一般的には京都府内で焼かれたものであればなんでも清水焼と呼ぶことができるそうです。
清水焼の由来は清水周辺で焼かれていたことから来ていて、昔は各地方の名前がついた焼き物が多く存在したそうなのですが、今では随分減ってしまっています。
昔の京都では焼き物の原料である土が十分に取れなかったためか、独自の文化というよりも、全国から集まってきた職人さん達のいろんな技法によって今の焼き物文化が残っているんだそう。
以前、清水焼の作家さんが清水焼のことを「特徴が無いのが特徴」という風におっしゃっていたのですが、露店に並ぶバラエティに富んだ作品を見てみるとその言葉の意味がなんとなく理解できたように思いました。どんな技法も生きてるのが京都の焼き物の良いところですね。
「綺麗な絵が描いてあるものが京都の焼き物」というイメージを持ってる方も多いかもしれませんが、それだけではないのですね。
今では大量で安価な焼き物が沢山あるけれど、京都は少量多品種なところで勝負しているとのこと。少量生産だからこそ、京都の器たちとの出会いは毎回一期一会だなぁと感じます。
さあ行ってみよう!
さてさてまずはブース巡りに出発!MAPを見ながらいくつか気になるブースさんへ取材させていただきました!
まず1件目。ブース全体から伝わる可愛らしい雰囲気に惹かれました。全体的に淡くて優しい色味の作品が多いようです。
こちらのブースを出店なさっている河合美月さんは、大学で陶芸を勉強し、卒業後に窯元で4年間の修行を経て今年の春に独立なさったそうです。
なぜ京都で活動しようと思ったのかを尋ねてみたところ、「京都はギャラリーも多くて色んな人の作品も見れるので刺激になりそうと思ったからです」とお答えいただきました。
河合さんの作品を見てみると、全体的に空間やお料理等を選ばず邪魔しないような落ち着いた作品が多い印象を受けました。釉薬のかかり方や重なり方で他とは違った河合さんの個性を感じます。
ご本人のほわっとした朗らかな雰囲気とも相まっているような気がしました。
ちなみに、取材スタッフもお椀や一輪挿しを購入し、絶賛愛用中だそうです。
それでは続いてのブースです。
目に止まったこの獅子の焼き物。
どうもこちら、作家さんがご自身で採ってきた土を練って焼いたものだそうです。
こちらのブースを出店なさっている河原修子さんは季節の飾りになるような作品をよく作っているそうで、今回は獅子を作っておられました。
「この獅子の土はどこの土ですか」と尋ねてみると、秘密だとおっしゃっておられました…とっても気になります…
工事現場で土をもらってきてはその土を材料に焼き物を作っているそうで、「京都でも土は採れるのよ」とおっしゃっていました。なんだか斬新で面白いです。建物を建てる際には必ず土が出てくるのですが、この残土は大体は処分されていきます。ですがこのように焼き物にも生まれ変わることもあるのだと知ってとても素敵なサイクルだなと感じました。
赤の獅子の原料となった土は焼き時間で色が変わったり、艶の出方が違ったりと焼いてみないことには完成がどうなるのかわからなかったそうです。土によって性質が違うところが面白いんだとか。
獅子たちも全部手作業で作っている為、足が揃わなかったり、前足を上げているのもいれば後ろ足が上がっているものがあったりとそれぞれにそれぞれの可愛さがありました。
顔も判で押してはいるそうですがやっぱり差が出るそうで、表情も少しずつ変わっていました。これこそが一点ものの魅力ですね。
ちなみに私のお気に入りはこちらを見つめているこの子です。
みんな違うからこその特別感、なんだかぬいぐるみを選ぶ時にどの子にするか顔を見て悩むのに似てるなと思いました。
最後はチャレンジブースの若手職人さん達に取材してきました。
こちらのブースは山﨑さん、山本さん、山川さん、川上さんの4人による出店。
今回は20代のチャレンジブースでグループ出店ができるということで、同じ大学の同期や先輩後輩に声をかけたそう。
それぞれ持っている作品が少なかったのでみんなで持ち寄って1つのスペースに並べておられました。
メンバーの中には在学中の方もいらっしゃるようで、これからの活躍が楽しみです。
男性の御三方はみなさん窯元の息子さんで、普段は家で仕事をしながら合間でそれぞれの個人作品を制作しているそうです。
他にも道中素敵な作品がたくさん!
取材メンバーそれぞれが惹かれたところに立ち止まって清水焼を堪能しました。
ワクワク!京七宝ワークショップ体験!
お次はワークショップ体験をするために清水焼の郷会館に向かいました。
中に入るとワークショップの受付と職人さんたちの実演ブースが設置されていました。
ワークショップの試みは今年からで、京都の若手の職人さんで構成されている「京の伝統産業わかば会」さんに声をかけて、実演とワークショップをお願いされたんだそう。
しかも、まつりの期間中、毎日異なるワークショップや実演をされているとのこと!どれも魅力的すぎて全て体験したくなりました。
今回私たちが体験させていただいたのは京七宝の制作体験!
京七宝ヒロミ・アートの室井さんにご指導いただきました。
京七宝とは京都の神社仏閣などに残る七宝細工や京都で作られた七宝細工のことで、主に金属の素地にガラス質の釉を焼きつけて装飾する技法、および、その製品のことを指します。
見てください。このキラキラした粒たち。これはフリットと呼ばれる釉薬に使用されるガラス素材の破片です。今回はこのフリットを使ってオリジナル七宝を作っていきます。
まずは土台となる純銀板を選びます。それぞれ好きな形を選んだのですが、半月型が人気でした!
計16色の中から土台に載せる下地となる色を選びます。
カメラのフィルムケースの中には釉薬の粉と水を混ぜた少しとろっとした液体が入っていました。
やっぱり16色もあると悩んでしまいますね。よく見ているとそれぞれ選び方に違いがあって、下地の色から決めていく派と、フリットの色を先に決めて、それに合う下地の色を選んでいく派に分かれていました。
私は優柔不断なので、後者で直感で選んだフリットに合わせて色を選んでいきました。
下地の色が決まったら早速土台に乗せていきます。サーっと塗り伸ばすのではなく、ちょんちょんと乗せていくのがポイントです。
下地が完成したらその上にフリットを乗せていきます。
ピンセットで細かな粒を掴んで乗せていく作業はなかなか難しく、気づけばみんな黙って作業していました。
そんなこんなでフリットも乗せ終わりました!みんなそれぞれ違っていて面白い。
ちなみに私のはこんな感じ。下地の色には淡赤という深みのある赤色を選んだのですが、まだ今の感じだと桜色に見えますよね。これが本当に深い赤色になるのかと思うと不思議です。
さて次が最後の行程です。800度の電気炉でフリットを溶かしていきます。
フリットが垂れて網にくっつかないよう網から少し浮かせます。
それでは、いってらっしゃい!
中でどうなっていくのかみんな興味津々!真ん中に開いた小さな丸窓から変わりばんこで中を覗きました。
おお〜!溶けてる〜!と私も大興奮。溶けるとフリットは約2倍程に広がるそうで、出てきた際にどんな姿に変わっているのかワクワクしました。
遂に出てきました!溶けたてのアツアツ七宝です。まだ熱くて赤くなっています。まるでマグマみたいですね。冷めるまでもう少し待ちましょう。
冷めてきて色が変わったらついに完成です!
なんと美しいのでしょう!光に当たるとより一層美しく見えます。
私のも最初桜色だったのが嘘みたいに綺麗な赤へと変貌しました。
なんだかサングリアみたいだねと言ってもらえたのでこの子の名前はサングリアに決めました。私、ぬいぐるみやお気に入りのものに名前をつける癖があるんですよね。名前をつけるとより愛着が湧くのでおすすめです!
最後は作った七宝をペンダントにしてもらって記念撮影。みんなそれぞれ似合っていて、帰るまでずっと付けていました。
食べて味わう!料理と器のコラボレーション企画!
続いての取材先はTOKINOHAさん。
入り口に「シェフの作るローストビーフ丼」という文字が!
こちらは京都にあるレストランmotoiさんの前田元(まえだ もとい)シェフが作るローストビーフ丼とTOKINOHAさんの器とのコラボレーション企画。
料理を盛って完成する器というのを目標に掲げているTOKINOHAさん。
TOKINOHAの代表清水さんに今回のこの企画についてお話しを伺うと、「普段から料理を盛った時に器が一番輝くように考えながら制作しています」とお話しいただきました。
器が一番輝くように見える、100%の状態をお客さんにも体験していただく為にこのような機会を設けたそうです。TOKINOHAさんのコンセプトが輝く素敵な企画ですね!
TOKINOHAさんのコロンと可愛らしく安定感のある器にシェフがどんどん食材を乗せていく姿はとても美しく、完成までその光景に釘付けになってしまいました。
見てください!この美味しそうなロートビーフ丼!写真を見る度もう一度味わいたくなるこの体験。
まずはみんなの器を並べて撮影会。早く食べたくてうずうずしてしまいました。器の色もいろいろあっていいですよね。今回私は黄色の器でいただきました。
ではみんなの元に丼が行き渡ったということで、手を合わせていただきます!
まずは一口・・・
見てください!この素敵な笑顔!
一口目から口に広がる幸せ!
みんなお箸が止まりません!
私も美味し過ぎて思わずこんな表情に!
ずっと食べることに集中していたのですが、器にも注目してみると色んな気づきが。まずは程よく手に収まるこのフォルムとサイズ感。重さもちょうど良くてまるでお料理を支える縁の下の力持ちみたい!
お椀の口の広さもお箸で食べやすいような広さになっていて、使うカトラリーとの相性までも考えられた繊細な器なのだなと気づかされました。
ローストビーフ丼を食べた後は今回この企画を考案し、この器の製作者でもあるTOKINOHAの清水さんにお話を伺うことができました。
笑顔が優しい清水さん、私たちの質問にも沢山答えてくださいました。
清水さんは学生時代は京都府立大学の環境デザイン学科で建築を学んでいたそうなのですが、ご実家が窯元ということもあり、大学を卒業してから陶芸の世界に飛び込みました。
それから陶芸の専門学校に2年通い、親元を離れて3年間の修行をしてから、窯元である実家に帰ってきました。修行後戻ったものの、親から仕事を貰ったり一緒に仕事するのではなく、自分のスペースをもらってそこで2年間自身の作品作りに励まれました。
その後結婚を経てできたのが今のTOKINOHAでした。
TOKINOHAという名前の由来は、ご夫婦二人が最初に借りた借家の住所に関係しているそうで、町の名前が「紫竹西桃ノ本町」ということから、紫と桃という色を表す二文字が入ってることに着目し、その二色に関係のあるものを色々と調べてみたのだそう。
そしてその時に見つけたのが鳥のトキだったのです。トキは白い見た目が特徴的ですが、白い羽の裏側は紫がかった桃色になっているそうです。
その羽の朱鷺色(ときいろ)が町名にある色ともぴったりだということで、朱鷺の羽、トキノハという名前ができました。
「何々窯っていうのではなく、カタカナの名前って誰もしてないなと思ってカタカナの名前にしたんです」と教えてくださいました。
2011年にこの場所を借りて、そこから半年間程は昼間は大工としてセルフリノベーションをしつつ、夜は陶芸をして生活していたそう。
去年現在の状態に新たにリノベーションして、工房とショップ一体型の作るところから売るところまでが完結している場所になりました。壁に陶芸で使う道具が展示されており、工房としても使われている様子が感じられます。
今は工房兼店舗での販売とオーダーメイドの注文を主に受けていて、色んなお店の希望を聞きながらそれに合った商品を制作しています。お店やシェフによって要望が様々なのでそれに答えるのがなかなか難しいと話されていました。
そう言った細かい要望にも対応できるのが清水焼の良いところなのかもしれませんね!
現在はTOKINOHA以外にもTOKINOHAの若手職人育成の過程をブランド化したプロジェクト、「トキノタネ」があります。陶芸家を目指す若手を増やしたい、陶芸家として独り立ちさせたい、そんな想いから生まれた形だそうです。
途中経過は外に出したらダメとするのではなく、清水さんは未熟だとしてもどんどん世に出していくことが大切だと考えたそうです。
若い作家さんを支援することで、今後の陶芸の世界にも新しい風が吹くのではないでしょうか。
もっと知ろう!清水焼団地と郷まつり!
では、最後に今回の清水焼郷まつりの運営をなさっている和蘭の三谷さんにお祭りについてのお話を伺いました。
今回のお祭りの会場にもなっているこの清水焼団地は、京都大学で都市計画をされていた教授が京都市と一緒になって始めた計画のひとつだったそうです。60年程前にこの土地が整備され、団地が形成されていきました。
元々東山五条の方にいた陶器に関連する窯元さんもそのタイミングでこの団地に移ってきました。和蘭さんは祖父の代から始まってこちらに移ってきたそう。
「清水焼の全ての工程がここで済むように」という思いで、京都中から窯元さん以外にも問屋さんや粘土などの原料屋さん、出荷する為の木箱屋さんなどが集まって団地がつくられていきました。
昔は今よりも倍くらい実店舗があったそうなのですが、後継者問題等で60年の間に団地から人が抜け、清水焼団地内での陶芸人口は減ってしまいました。
その代わりに現在は、竹の職人さんや、仏具を作る方たちが入ってきたりと幅広い職人の街へと変化してきています。
京都には陶芸の訓練校や、芸術大学・美術大学があるので、そこを卒業した方が窯元さんに入ったり、個人で活動したりすることも多いそうです。
今回チャレンジブースにも力を入れたのは、そんな若い世代の作家さんたちに「陶芸って楽しいな」「清水焼団地って良いな」と思ってもらうきっかけになればと思ったからだそう。
これからの清水焼団地がどんどん賑わいある団地になっていきますように!
最後に、今回のお祭りに関しての新たな試みや、三谷さんの思いを伺いました。
今回3年ぶりの開催ということで、区切りの年として今回から新しく取り入れたものもいくつかあるとのこと。
まず最初は集客においての心配が大きかったそう。
アクセスについてはシャトルバス等を活用して、公共交通機関を利用するように計画。不便な場所なので、今までは車で訪れることを前提にやってきていたのですが、今年は、駐車場を無くしたのでとても不安だったそう。
しかし、3年ぶりということでみんな心待ちにしていたのか、多くのお客さんが足を運んでくれたそうです。「客足も3年前と比べても戻ってきてるように感じる」と嬉しそうにおっしゃっていました。
もうひとつ今年から変わったことは、出店者を絞ったこと。
以前は信楽焼や美濃焼瀬戸焼の方も出店してもらっていたそうなのですが、今回は京都で事業所を構えている窯元さんや作家さんに出店者を絞って開催しました。
初めて京都府内だけで出店者を募り、せっかくならより多くの京都府内の作家さんに参加して欲しいということで、今回は大々的にSNS等での募集も行いました。そのおかげか多くの若い世代の出店者さんを集めることができたそうです。
昔からいる窯元さんに加えて新しい出店者も増え、テントブースは半分くらい新しい方のように思うとおっしゃられていました。
このようにお祭りを通して新しい作家さんと出会えるのも魅力ですよね。
みんなメモをとりながら熱心にお話しを聞いていました。
おまけ!私の購入品紹介!
最後に私のお気に入りの購入品をご紹介したいと思います!
こちらTOKINOHAさんで購入した箸置きです。
このワンちゃんはシュナウザーでしょうか、レトリバーでしょうか。
この青い釉薬のかかり具合も一体一体少しずつ違っていて、どの子にするか悩みました。
こうやって自分のお気に入りを見つける時間が大好きです。
清水焼の郷まつりのおかげでもっと陶器が好きになりました!
取材にご協力いただいた皆様、ありがとうございました!
第46回 大陶器市『清水焼の郷まつり』
会期:2022年10月21日(金)~23日(日)
開催時間:10時~17時(最終日16時まで)
会場:京都市山科区 清水焼団地一帯
入場:無料
ホームページ:https://www.kiyomizuyaki.or.jp/fest
協力:京都市伝統産業未来構築事業 https://kmtc.jp/sfc/
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