織物産地がにぎわう2日間!まちを愛する一人ひとりがつくる9年目の“ハタオリマチフェスティバル”【山梨・富士吉田】

富士山のお膝元、山梨県 富士吉田市で開催される年に一度の“機織り”の祭典。
ハタオリマチフェスティバル、通称「ハタフェス」にやってきました!

イベント開催エリアに着くと、たくさんの人で大賑わい!
古き良き商店街には、子どもから大人まで楽しそうな声が響きわたっています。

おいしそうなフードもある。お祭りっぽくてテンションあがる〜!

道路に面したショップも大人気!人だかりができていました。

今や各地域で産業観光や中心市街地活性化のためのイベントが活発になっていますが、ハタフェスは2016年からすでにこの取り組みをスタートさせています。

これまでしゃかいか!でもたびたび取材してきました。

そんなハタフェスは、今回でなんと開催9年目!そして次回は10年目を迎えるという、まさに節目の年。
長い年月を経て、イベントが、まちが、どう変わっているのでしょうか。

「いやいや、ハタフェスってそもそもなに?」という方もご安心ください。
ハタフェス初参戦のわたくし前田が、新鮮な目線でレポートしていきます!

そう、まずはお猿さんになるところから。

・・・なんでサル?

その秘密は、ずばり「富士山」にあります。
その名の通り、富士山と深い関わりがある富士吉田市。

この商店街(本町通り)からも、こーんなに大きく見える!

なんでも富士山の誕生年が申年であることから、猿(申)が富士山の使いとして古くから信仰されてきたんだそうです。

そのため、毎年ハタフェスのメインビジュアルにはキュートなお猿さんが登場しています。

いつもの車道も今日は歩行者天国。お猿さんもノリノリですね。
私も負けちゃいられない。気合い十分で、ハタフェスを堪能するぞ〜!

ハタオリマチってどんなとこ?東と西をまち歩き

さて、富士吉田市は、千年以上前から育まれてきた織物の産地。

富士山の清らかな湧き水は、染色や洗浄に適しており、古くから織物が発展してきました。
そのため、「ハタオリマチ」という愛称でも親しまれています。

そんなハタオリマチの魅力を教えてくれるのが、富士吉田市で地域おこし協力隊の経験もあるテキスタイルコーディネーターの森口理緒さん

協力隊の任期終了後も、富士吉田市や八王子など織物産地を拠点に活動を続け、約8年間にわたり富士吉田市との深い関わりを持ち続けています。

ちなみに先日は、しゃかいか!ライターとして「ハタオリ学」出版記念記事を書いてくださいました!

そんなハタオリマチを内からも外からも熟知している森口さんが、ものづくり産地のプレーヤーや行政機関の方向けに「ハタオリマチABCツアー」とやらを開催すると聞き、迷わず申し込み!

この町の歴史やちょっとディープな地元情報まで教えてくれるんだって。ワクワク!

定員10名のツアーは満員御礼!
みんなでゆっくりと歩きながら、この町の歴史や文化そしてハタフェスにまつわるお話を伺います。

「下吉田の織物産業は、このあたりにギュッと集約されていて、本町通りを境に、東側が『東裏』、西側が『西裏』と呼ばれています。」と森口さん。

なんでも、東裏は機屋と織物問屋が軒を連ねる問屋街で、昭和の時代には全国から多くの商人が訪れたのだとか。一方、西裏は東裏で儲けたお金を使って楽しむ飲み屋街として栄えていました。

全国で織物産業が発展した1950年代ごろは「ガチャマン時代」と呼ばれ、「ひと織り(ガチャン)で1万円」と言われていたくらい景気がよかったのだそう。

手に入れたお金をその場で気前よく使い、楽しむ商人たち…。
このエピソードを聞くだけで、織物産業が盛況であった時代の活気が目に浮かぶようです。

こちらが、西裏の飲み屋街エリア。

細い路地の中には小さなスナックや飲み屋の看板が並び、どこか懐かしい雰囲気が漂います。
昼間なので静かですが、今でも100店舗ほどは夕方5時以降から朝3時くらいの間に営業しているそうです。

なにやら哀愁漂う気になる看板も。(ドキドキ)一体どんなママがいるんだろう…?

こちらは「新世界乾杯通り」と呼ばれる昭和ごろまで栄えていた飲み屋街。

ある時期からシャッター街となっていたそうですが、15年ほど前から行政と民間が連携し、西裏地区活性化プロジェクトを開始したのだそう。まちづくりに取り組む方々など新たな仲間を迎え入れてリニューアルし、いまでは富士吉田を代表する飲み屋スポットに!

元々の建物を活かした、新しいお店も続々とオープンしました。

こちらの「かぎしっぽ」というイタリアンレストランは、地域おこし協力隊をやっていた方が独立して、開業されたお店。このように地域に関わってる方が空き家を使って新たな活動を始めることも多いのだといいます。

「近くに山中湖や河口湖などリゾート地があるので、そちらに泊まる方も多いのですが、夜も富士吉田で楽しんでほしいという思いがあって、行政とのリノベーションプロジェクトが動いたんです。」と森口さん。その甲斐もあって、今では若者も増えてきたんだそうです。

「ここの焼き鳥屋にいって、あそこのバーを2件はしごするのがいつものコースなんです。」
楽しそうに思い出を語る柔らかな表情から、森口さんの地域愛が伝わってきます。

次に向かったのは、「東裏」。先ほど紹介した織物の問屋街です。

こちらは「絹屋町」と呼ばれるエリアで、織物や糸を取り扱う問屋が集まり、織物産業の中心地として栄えていました。
当時は毎月1と6がつく日に市場が開催されていたので、その日をめがけて全国から多くの商人がやってきたのだそうです。

そんな絹屋町もハタフェスの開催エリア。
かつて問屋を営んでいた住宅では、「流しの洋裁人」さんの展示が開催されていました。

(とっても陽気だ!!)

「流しの洋裁人」こと、原田陽子さんは、全国各地にミシンや裁縫箱、生地を持参し、その場で縫製をして洋服をつくる活動をされています。
ハタフェス1回目の取材にも登場いただいた原田さん!9年目のいまもハタフェスに関わり続けています。

2014年に始動した「流しの洋裁人」の活動も今年で10周年

今回のハタフェスでは、これまでの活動を振り返る10周年展とセミオーダー服の販売や受注会、記念グッズの販売などを行っていました。

歴史ある建物内に展示された、たくさんの写真たち。原田さんのこれまでの活動を時系列に沿って知ることができます。

原田さんは、ハタフェスをきっかけに富士吉田市に移住し、地域おこし協力隊を経て独立。
現在は富士吉田市にかまえたアトリエをベースにしながら、日本各地の機屋さんから仕入れた生地を使って洋服の販売やイベントを全国で行っているそうです。

まさに富士吉田に出会い、魅了されたひとり

「調べ始めると古いものがいっぱい残った文化土壌が面白くって。」と原田さん。

全国各地へ流れながら洋服づくりをする原田さんにとって、身近に機屋さんがいて広いアトリエを持てる、かつ東京にも出やすいという立地がぴったりとハマったのだそうです。
「まあ最悪、富士山あるし、なんとかなるかなって!」とお茶目に笑っていました。

流しの洋裁人さんの展示会場は、大正期に建てられた文化財建築・旧高尾家住宅
ハタフェスでは、使われなくなった建造物を借りて会場にしているケースが多いようです。

聞くところによると、イベントを通して活用方法を見出し空き家を減らしていくこともイベントの目的のひとつなのだそう。実際に空き家が少なくなってきているので、毎年会場が変わっているらしいですよ。目に見えて成果がでているんですね、すごい…!

こちらの「旧山叶」も工場跡地を活用しているハタフェス会場のひとつ。

かつて、織物の部品などを扱う山叶(やまかの)さんという会社の工場があった建物なのだそう。
今回のハタフェスでは、富士吉田でつくられる織物や全国各地の製品が一堂に会するマーケット会場として、多くの人で賑わっていました。

広々とした2階建ての建物に35以上のショップが出店しており、「さっき行ったけど時間が足りませんでした(笑)」というツアー参加者の声も。

え〜、楽しそう!今すぐ買い物したくなる衝動に駆られながらも、我慢、我慢。
後ほどじっくり見に行こうと思います。財布の紐は今からゆるめておこう。

ツアーの最後に訪れたのは、「FUJIHIMURO」という会場です。

こちらは、イベントや展示などを通じて人々や文化の交流を図ることを目的として作られた富士吉田市のアートギャラリー。
もともと氷室として利用されていた建物の特徴を残しながら、氷の洞窟を彷彿とさせる空間に改装し、ギャラリーへと生まれ変わりました。

ハタフェス期間中は、アートプロジェクト「ANIMA FORMA(アニマ・フォルマ)」の展覧会が開催されていました。

「ANIMA FORMA」とはラテン語で「魂のカタチ」という意味。
獣毛生地の生産過程で廃棄された端材を富士吉田市の工場で加工し、新たな毛物(獣)として、息を吹き込むというアートプロジェクトです。

このプロジェクトを立ち上げた、デザイナーの村松 恵さんにお話を伺いました。

村松さんは、衣服の大量生産によりゴミが増えていく繊維業界の状況をもどかしく思い、ゴミを価値のあるものにするために、一点もので、よりスペシャルなものをつくりたいという想いがありました。
そして生まれたのが、「ANIMA FORMA」というアートプロジェクトです。

「ウールやアルパカ、カシミヤなど、獣毛生地の端材を使っているので、動物の毛からまた新たな動物に蘇生させるという意味合いも込めて、作品は動物の毛皮を模して制作しています。」と村松さん。

獣毛生地を作るときに捨てられる端材部分を使って動物の毛皮の状態に形成し、最終加工として「ニードルパンチ技法」を用いて接着しているそうです。

ニードルパンチとは、生地を専用の針(ニードル)で叩き込み(パンチ)、繊維を絡ませてくっつける技法のこと。繊維同士が絡み合ってくっついてる状態なので、のりや縫製などは一切使わずに形を保つことができるのだそうです。

「ここからすぐ近くの工場でニードル加工させてもらってるんですよ。」

村松さんは、前職でデザイン関連の企業に勤めていた頃から、富士吉田のニードル工場を頻繁に訪れていました。独立を機に「ニードルで何かを作りたい」という思いが芽生え、これが現在の「端材×アート」の取り組みにつながったそうです。今回の展示も、そうしたご縁のもと実現したとのことでした。

捨てられるはずだったカケラが集まり、新しい命を吹き込まれたケモノたち。一面に連なる様子は、愛らしさの中にも生き続けることへの力強さを感じさせました。

さて、こちらの会場を最後に、約1時間半のツアーは終了。
充実しすぎてこの記事ではすべてを伝えきれなかったのですが、この町や取り組みについてたっぷりと学ぶことができました。森口さん、丁寧なツアーをありがとうございました!

余談ですが、「あ、りおちゃん!」と行く先々で森口さんに親しそうに声をかけてくれる方々が続々。
地元の職人さんや、地方でオープンファクトリーを開催している方など、さまざまな人たちがこの町に集まって、すれ違うみんなが仲間のようなアットホームな空気感。ふとした瞬間に垣間見える温かな日常に、思わずほっこりします。

あらゆる織物の魅力が集結!マーケット会場

さあ、みなさんお待ちかね。お買い物の時間です!
ツアーで後ろ髪をひかれまくった、旧山叶会場へ再びやってきました。

「さっき行ったけど時間が足りませんでした(笑)」の声を参考に、ここからはこちらの会場をメインに時間をたっぷり使っていこうと思います。

なんでも工場の跡地を使ったこの会場には、富士吉田を代表する織物ブランドが集まっているのだそう。

この町を知った今、どんな織物製品が生まれているのか気になってきているのでは?
ハタオリマチの知識がついたところで、お買い物をじっくりと味わっていきたいと思います!

てか、会場広いなー!入口から大勢の人で賑わい、活気にあふれています。

人だかりを横目に気合いを入れて進んでいくと、素敵な紋様のバッグを発見

クラシカルなデザインが単色のワンピースに映えそう。なんて、つい妄想をしてしまいます。

こちらは、富士吉田に住む手織り作家の佐藤リョウヘイさんの「rumbe dobby(ルンベドビー)」というブランド。

なんと、独学で織り機を自作し、オリジナルの布を織りあげ、ポーチやバッグなどをお一人で作っているそうです。柔らかな物腰でお話してくださいましたが、その笑顔の奥に秘められた探究心と行動力に圧倒されました。

ハタフェスには初年度から参加しており、最初はコースターから、ポーチ、バッグ…と年々パワーアップしているそうです。そのラインナップからもハタフェスとともに歩んだ9年の軌跡が見えます。いわば始まりのコースター、欲しくなっちゃいました。
いろんな柄や色を眺めて、どれにしようかな〜と悩む時間も楽しい!食卓を思い浮かべながら、家族のお土産に購入しました。

買い物袋を片手にぐるりと会場を進んでいくと、扉の奥にさらに広々とした空間が…!?

隅々までショップが並んでおり、買い物欲をさらに掻き立てます。
うーん、これは時間が足りないというのも納得。全部ほしくなっちゃいそう…。

先ほどのツアーで聞いた話によると、富士吉田の織物産地の特徴のひとつに「多種多様な織物をつくっている点」があるそうです。

会場内には、ネクタイ、ストール、タオル、インテリア生地、傘など、さまざまな製品がずらりと並び、その多彩さが一目でわかります。

どれも素敵すぎて目移りしちゃう…。

「織物」と聞くと、つい衣服やストールなどを思い浮かべがちですが、実はこんなにも幅広いバリエーションがあるなんて、おどろきです。

わあ、とても気持ち良い手触り…。
こちらは、Watanabe Textile(渡邊織物)さんのマフラー。ウールとアルパカをブレンドした糸が織り込まれているそうです。

この日は、急な雨風が吹き付けるという10月とは思えないほど肌寒い日。
薄着で震えていた私が出会ったマフラー。しかも欲しかったブラウンがある。これは運命…?

ということで、渡邊織物3代目の渡邊竜康さん直々に接客いただきながら、寒い冬を共に乗り越える相棒を手に入れることができました。

早速首もとに巻いてみると、軽いのにほわほわであったかい…。羊さんとアルパカさんありがとう。

ちなみに、しゃかいかの高田さんは、「ヘルメットをいれるのにぴったりー!」と、TENJIN-factory(テンジンファクトリー)さんで、あずま袋をうれしそうに買っていました。

取材でいつも身につけているヘルメット。ぴったりなバッグが見つかるとテンションあがるんですよね。これって、しゃかいかあるあるかも?!

織物工場×美大生。フレッシュな感性が導く新たな織物の可能性

この左端のもの、縫製に出したブランド製品ではなく僕個人がハタフェスお土産で作ったものでして、もし織物製品の別カットがあれば差し替えていただけるとありがたいです…!

お、お寿司!?

こちらは、富士吉田の織物工場と美大生がタッグを組んで商品開発をする「フジヤマテキスタイルプロジェクト」で生まれたプロダクト。
富士山テキスタイルプロジェクトは、東京造形大学の学外プロジェクトとして2009年から継続して行われている取り組みなのだそう。

このプロジェクトから生まれた製品をブランドとして展開しているデザイナーに出会いました。

左から鈴木 龍之介さん、片岡 美央さん、徐 笠さん。

先ほどのお寿司シリーズは、「メゾン寿司 -MAISON SUSHI-」という鈴木さんが手がけるブランドです。
高級座布団の老舗メーカー、田辺織物さんとのタッグにより生まれたのだといいます。
光沢のある生地がつるりと光って、脂がのってておいしそう。
織物でお寿司の質感を表現できるなんて奥が深すぎます!

ちなみに、左のマスコットは鈴木さんがハタフェスのお土産用に作ったオリジナルグッズ。
こういうイベントでしか手に入らない限定グッズって、特別感があって嬉しいですよね。

こちらは、片岡さんが手がける銭湯テキスタイルブランド「IIYU TEXTILE」。
和雑貨や雛人形の生地等を製造する光織物さんと協力して生まれたプロダクトです。

温泉マークやタイルのデザインがかわいい!銭湯にいくのが楽しくなっちゃいますね。
いくつになってもパステルカラーは乙女心をくすぐります。

こちらは、台湾出身のテキスタイルデザイナー、徐 笠(じょ・りゅう)さんのプロダクト。
徐さんがよく遊びに行く、山梨県の富士山麓にある5つの湖・富士五湖を表現しているのだそう。まるで絵画のような繊細なデザイン。機織りでこんな表現までできるんだ…。
瑞々しい木々や葉が眼に浮かぶようで、思わず手にとって眺めてしまいました。

台湾の大学を卒業後、グラフィックデザイナーとして台湾で働いていた徐さん。

テキスタイルを学ぶため東京造形大学の大学院に入り、富士山テキスタイルプロジェクトの中で地元の座布団専門工場と協力し、手描き柄の座布団を開発しました。

この商品開発をきっかけに、「日本のテキスタイルをもっと深く学びたい」という思いが芽生え、2021年に富士吉田市への移住を決意したのだといいます。

そして、移住から2年目。台湾の展示会への出展をきっかけに、リネンのTENJIN FACTORYさんとオーガニックコットンの前田源商店さんとともに作品を開発し、地元の生産者との取り組みを本格的にスタートさせたのだそうです。

フレッシュで柔軟な発想力と機屋さんの高い技術力が合わさり、新たな魅力にあふれた素敵な製品がうまれているのですね。伝統と未来をつなげる素敵な活動がこれからどのように発展していくのか、とても楽しみです!

定番生地を後世に残す。コラボで生まれた持続可能な商品づくり

なにやら、一際目立つブースを発見。
さまざまな生地でつくられたバッグが吊るされ、ディスプレイされています。遠くからでも思わず目を奪われました。

説明を読むと、ふむふむ。こちらは「D&DEPARTMENT」さんとのコラボ企画のようです。
ここでしか買えないハタフェス限定のオリジナルバッグ…?とーっても気になります!

「D&DEPARTMENT」取締役副社長の黒江美穂さんにお話を伺いました。

こちらは、「ARCHIVES」という定番生地を用いたバッグコレクションで、D&DEPARTMENTさんと郡内地域10社の機屋が協力して制作したものだそうです。

ハタオリマチフェスティバル 公式サイトより

大・小の2サイズがあり、大きいものは女性だとすっぽり斜め掛けできちゃうほどのサイズ感。着るテキスタイルといえるくらい、素材の魅力を余すところなく周囲にアピールできるデザインですね。

「富士吉田は本当にすごくて。織元の皆さんがそれぞれ高い技術に特化されていて、ひとつの産地でこんなにバリエーションが出るところは他にないと思います。」と黒江さん。

(参加企業:オヤマダ、田辺織物、テンジン、羽田忠織物、光織物、舟久保織物、前田源商店、宮下織物、渡小織物、Watanabe Textile)

本当だ。それぞれ柄はもちろん質感も手触りも全然違う!

こちらは、前田源商店さんの「こもれび」という生地。

なんと、濃淡を織りで表現したという驚きの模様です。調べたところによると、山梨県産業技術センターと山梨大学の共同研究で織りあげたオーガニックコットン生地なのだそう。あたたかな春の日差しを思わせるような柔らかな色使いと手触りがとっても魅力的…。

では、なぜ今回このコラボ企画が生まれたのでしょうか
このあと開催されるトークショーで、その謎が明かされると聞き会場へ向かいました!

トークのテーマは、「技術を残し、未来に繋ぐ、ものづくり」。

ハタフェス立ち上げメンバーのひとりである藤枝大裕さんをMCに、D&DEPARTMENT ファッション部門コーディネーターの重松久惠さんがどのようにしてハタオリマチと出会ったのか、はじまりの物語が展開されていきます。

重松さんが富士吉田のみなさんと出会ったのは、今から10年ほど前。
D&DEPARTMENTさんが出版するデザイン観光ガイドブック「d design travel」の山梨号の取材で訪れたことがきっかけだったそうです。

「最初はすごく多様な生地をつくってる産地だなってびっくりしたんですね。タオルとかニットとか、ひとつの品目を作ってる産地が多いのですが、富士吉田はネクタイが作られてるところがあれば、裏地を作れるところもある。それがものすごくユニークで、面白い産地なんだなと感じました。」と重松さん。

個々の作り手さんが素敵で、生き方にも参考になる点が多く、テキスタイルという観点だけでなく、作り手の生活そのものに関心を持たれているのだといいます。富士吉田にはたびたび訪れていて、家族のように親しい機屋さんも多いのだとか。素敵な関係性ですね。

「ARCHIVES」が生まれた経緯について、重松さんは話を続けます。

ロングライフをテーマに、暮らしや観光をデザインの視点で見つめ直す D&DEPARTMENTさんは、技術を残して未来に繋げていくために、工場に眠るストック生地を仕立て直して売る「LIFESTOCK(ライフストック)」という活動を約10年前から行っているそうです。

しかし、活動を続ける中で、かつては産地の倉庫にたくさん眠っていた生地が少なくなっていきました。その理由は、SDGsの浸透によって人々の意識が変わり残布を使うことが当たり前のことになっていったこと、そして工場の生産量自体が落ちたことが挙げられます。

捨てられる生地が減少したことは良いことですが、「つくる」からこそ経済が発展し生地も売れていく。だからこそ、自分たちもいま「需要をつくる取り組み」をしていかなければ、前に進むことができないと思うようになったのだといいます。

そこで、大切な技術や歴史を「ロングライフデザイン」の観点から残すため、アーカイブとして「後世に残したいもの」を商品化するというアイディアにたどり着きました。

ところが、伝統的で特徴のある生地は高価なものが多く、商品化しようとするとどうしても価格が高くなってしまう…。そうすると、若い人の手に届かなくなるという課題がありました。

そこで誕生したのが、持ちやすくて手軽に使える、今回の「布のバッグ」

オリジナル生地を使って商品をつくるとなると、50〜70m以上の発注が必要となりますが、今回は昔から織っている定番生地を使うことで、機屋さんに相乗りの相談ができ、発注する布のサイズを最小限にすることができました。

また、生産方法にもこだわり、生地を無駄なく使い切るデザインにしているのだそう!
産地の特徴でもある機屋さんごとの生地幅のばらつきを活かして、2つ折りか3つ折りで作れる単純なパターンにしたことで、生地を捨てることなくまるまる使っているのだといいます。

新たな持続可能な提案だったわけですね。」と藤枝さん。

この取り組みによって、機屋さんへの負担を軽減しながら、在庫を増やすことなく商品展開することができました。これは、持続可能な商品づくりにつながる新しい発見だったといえます。

「過去から長く続いているものだけでなく、未来に残したいものもロングライフデザインなのではないかと考えるようになったんです。」と、重松さんは話します。

この経験が「未来の人が見てロングライフデザインだと感じるもの」を現在から作っていく、という視点を持つきっかけになったそうです。

こうして誕生した、ハタフェスオリジナルの「ARCHIVES」コレクション

これまでのロングライフデザインの考え方に基づくだけでなく、未来へ向けた持続的な価値創造を目指すこのイベントと町の象徴として、9年目にふさわしいコラボ商品となりました!

・・・そんな素敵な話を聞いたらさ、欲しくなっちゃうよね。

ということで、トークショーが終わってからブースへ駆けつけ、こもれび柄のバッグをゲットしてきました!ひと目みたときからとっても惹かれていたんです。

嬉しすぎてこの笑顔。多幸感で寒さなんて吹き飛ぶぜ!

今回、富士吉田の地に足を踏み入れることも初めてだったわたし。
そのはずなのに、なんだろうこの親近感は…。懐かしくて温かい、まさに理想のふるさと。みんながこの町に惹かれる気持ちがすごく分かります。

しゃかいかのみんなも「ハタフェスはええぞ〜」っていつも言ってたけど、私もすっかり好きになってしまいました。
たった2日間の出来事でしたが、ハタオリマチを愛するたくさんの人々に出会い、機織りの技術と素敵な製品にふれ、この町の魅力を身をもって実感することができました。

後から聞くと、2024年の来場者数は過去最高の2万4000人だったそうです!
たくさん人がきているな〜という実感はありましたが、数字で見ると圧倒されますね…!

初回は4000人規模だったイベントが、10年も経たずに6倍以上の来場者に。
ハタフェスは、今や山梨を代表するイベントとして、県内外で注目を集めています。

機織りという伝統的な工芸に焦点を当てたイベントが、どうやってここまで成長したのか…。
きっと、その秘密を知りたくなってきたはず。

実は、その裏側には立ち上げから現在まで中心人物として活躍されている、キーパーソンの存在がありました。

後編記事では、ハタオリマチフェスティバルの初期メンバーとして、立ち上げから運営まで、様々な立場で活躍されている4名の方に、9年間の変化と10年目を迎えるこれからのハタフェスについて聞いてきました。

ぜひこちらも合わせてお読みください!

「ハタオリマチフェスティバル」
主催/山梨県富士吉田市・ハタフェス実行委員会
電話番号:0555-22-1111 (富士吉田市富士山課)
URL:http://hatafes.jp/

(text:前田恵莉、photo:市岡祐次郎、篠原豪太、高田結香子)

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