日本トップのニット産地、新潟・五泉市へ!工場見学で体感した、地域の連携とこだわりから生まれる「五泉ニット」の豊かな可能性

みなさん、こんにちは!

金と申します。私は、日本各地の繊維産地を巡る 「産地遠征プログラム」 に参加しています。
このプログラムは、繊維産業を学ぶ場 「産地の学校」 が新設した取り組みで、各地の生産現場を訪れ、ものづくりの背景や職人の技を学ぶことを目的としています。

これまでに訪れたのは、米沢(山形県)、備中備後(中国地方)、西脇(兵庫県) など、いずれも織物の産地。
そして今回は、新潟県の五泉産地にやってきました!
五泉はニット産地であり、今回の遠征先の中では唯一の編みの産地です。
私は幼い頃からニットが大好きでした。そのルーツは、祖父が経営していた泉州のニット工場にあります。大学在学時には五泉まで工場見学に行き、レポートを書いたこともあります。その経験をきっかけに、日本の繊維産業全体に興味を持ちました。
そして今回、この産地遠征プログラムで、再び五泉の工場を見学できる機会に恵まれました!
今回は、産地の学校の受講生、そしてしゃかいか!のライターとして、日本一のニット産地・五泉の魅力をお届けします。
五泉市はどんなところ?国内トップのニット産地へ

新潟駅に到着!これから向かう五泉市は、新潟のほぼ中央に位置します。
「泉」という漢字があるように、昔から良質で豊富な水資源に恵まれ、江戸時代から絹織物の名産地として栄えました。
戦後になると、織物産業からメリヤス(ニット)産業へと転換し、現在も国内有数のニット産地として知られています。特に婦人用セーターの生産額において国内トップを誇ります。
そして、この地域のニット産業を支える重要な存在が「五泉ニット組合」です。新潟県五泉市を拠点とするこの組合は、産地の魅力を国内外に発信しながら、ニット製造者を力強く支援しています。
五泉ニット組合が管理する「五泉ニットタグ」は、この地域で生産されたニット製品にのみ付けられるブランドタグであり、高い品質と信頼性の証として広く認知されています。

五泉ニットの特徴は、ハイゲージに特化していること。ゲージとは編み物の密度を表す単位で、数字が大きいほど細い糸で緻密に編まれていることを意味します。五泉産地では、他の産地や工場では難しい細い糸を使った編み立てを得意としているそうです
そんなニットづくりの技術と工夫、その奥深さを知ってもらうため、五泉産地では、毎年「ニットフェス」というイベントが開催されています。

今年は11月16日と17日の2日間にわたり行われ、記念すべき第10回目を迎えました。
実は、今回のバスツアーも五泉産地で毎年開催されている「ニットフェス」と「産地の学校」との初のコラボレーション企画として実現。
産地の学校の受講生たちと一緒に、五泉産地の熱気を肌で感じていきたいと思います!

作れる色は無限!「共同精練染色工業株式会社」
五泉市に到着し最初に伺ったのは、共同精練染色工業株式会社さんの工場です。こちらでは、主にセーターなどの糸を、希望通りの色へ染色する仕事をされています。
新潟県・五泉市の織物組合・ニット組合が協力して設立した会社だそうです。
到着すると、代表取締役社長の松尾孝さんが出迎えてくださいました。

さて、糸はどのように染められているのでしょうか?
早速、染色の工程を見学しに工場の中へ!

ムラなく大量に!大きな釜で糸が染まる工程を見学
松尾さんのガイドで工場内を巡りながら、染色の方法について詳しく教えていただきました。

そもそも染色には、生地になる前の糸の段階で染色する「先染め」と、生地を染色する「後染め」の2種類があります。
先染めの中にはさらに種類があり、「チーズ染め」と「カセ染め」の2種類があります。
簡単に説明すると、チーズ染めは糸をボビンに巻き取って染めた方法で、枷染めは糸を束ねた状態で染めます。
ちなみに、穴の空いたボビンに糸を巻きつけたものがナチュラルチーズに似ていることから「チーズ染め」と呼ぶようになったのだそう。

「確かに似ている……(?)」と妙に納得してしまいました。
先染めで一番大事なことは、色むらを作らないようにすること。
この工場では色むらにならないようにするため、ボビンに糸を巻くとき、巻く密度を計算して作り上げる特殊な技術があるのだそうです。
色むらをなくすには、染色工程の遥か前の糸を巻く瞬間からこだわりが詰まっているなんて。一見単純に思える工程にも、さまざまな工夫があることを実感し、見えないところで差がつく、ものづくりの奥深さを感じました。
次に見せていただいたのは、枷染め用に巻かれた糸の塊です。
この糸の塊は、一つで約250gだそう。

枷染めは、この糸の塊を枷染め用の噴射染色機にかけて染めていきます。

初めて見たので大興奮!今まで産地の学校でも枷染めについては学んでいましたが、口頭での説明だけで実際に染める工程や機械をみたことがなかったので、かなり嬉しかったです。
よく見ると小さな穴がたくさんあり、そこから染色液が流れてシャワーのように染まるのだそう。
枷染めは手作業で行うので大量生産には向いていないらしく、基本的には、柔らかくて太い糸が向いているそうです。
松尾さん曰く、ほとんどの工場は枷染めとチーズ染めのどちらかに特化しており、両方の染色機がある加工工場はかなり珍しいとのこと。
でも共同精練さんには、両方ある!
おかげさまで2つの染色機を見比べることができてテンションがさらに高まりました。
この工場はどちらも行っていますが、チーズ染めがメインとなります。
ここからは、チーズ染めの工程を詳しく教えていただきます。

1台の染色機には、チーズを5個重ねたもの×20本、合計200個をセットします。
この固定している台のようなものはキャリアと呼ばれ、キャリアごと染色機に沈めます。
キャリアの下には大きな穴があり、染色機に設置されているポンプから染料を循環させて染めていきます。

このように大きな釜の中で、200個のチーズを一気に染めます。
かなり大きい!成人男性10人は入りそう。
松尾さん曰く、お家にある圧力鍋の大きいバージョンらしいです。上も下も同じ圧力で均等にムラなく染めることができるそうです。わかりやすい!
温度は、低いもので60度、高いもので130度くらい。繊維によって染料や温度も異なるそうです。
また、天然繊維はムラになりやすく合成繊維は比較的綺麗に染まるとのこと。
染色をした後は、脱水、そして乾燥を行います。

「この釜の中に入って糸が染められている光景も見てみたいな〜」と変な想像をしながらこの大きな釜を後にしました。
工場の一角にはサンプル染のスペースも。
ここではコンピューターを使って、染料の度合いを調整します。


まずはサンプル染めが必要なので、この小さな釜でサンプルを作り、そこから量産へ持っていくそうです。
サンプル染めを行うことで、最終製品の色や品質が期待通りかどうかを確認します。
なので、品質を確保するための最も重要な過程といえます!

先ほど大きな釜を見たので、サンプル用の釜は可愛く感じました。
コンピューターで色を数値化。無限の色が生まれる秘密
次に案内されたのは、試験室という場所。

こちらでは色を作る作業と、作り終わった色がどれだけ落ちるか(色落ちの度合い)を研究しています。
ガラス戸の奥をのぞくと、パソコンとにらめっこしている方が見えます。

コンピューターの測色機を使って、デザイナーさんからいただいた色見本からデータをとり、屈折率から色を数値化して試験染めをしているのだそう。
測色機で見本とする色の70点くらいの完成度に近づけるそうですが、100点までに持っていくまでは職人さんの微調整が必要です。

これを聞いて、やっぱり日本の産地がもつ魅力は、機械では代替できない職人さんたちの卓越した精緻な技術にあるのだと思いました。

イエロー、レッド、ブルーの三原色を使って、アイボリーから黒まで再現しています。
染料はポリエステル用のもの、アクリル用のものなど繊維ごとにあり、使い分けているのだそうです。

試験染めでは10gの糸を作って染めており、一度で12色に染めることができます。


このようにアパレル会社などのお客様の要望通りに色を作り、染め上げています。
色は試験室で毎日新しく開発され、共同精練さんが作れる色は無限なんです!
染色工場と聞くと、ただ糸を染めるだけの工場だと思っていたのですが、染める工程だけでなく、先ほど出てきたように糸を巻いたり色をつくったりなど、完成までに様々な細かい工程があることを知りました。またその一つ一つの工程に、職人さんたちの知恵と経験が詰まっていることが知れて、本当に面白かったです。
最後に松尾さんは、五泉産地のお話を少ししてくださいました。
松尾さんによると、五泉では1950年代〜1960年代に織物産業もニット産業も盛んに盛り上がりましたが、1990年代に入り、整理加工商品の生産拠点が海外に変わっていったそうです。その変わり目で仕事が少なくなり、生産額のピークは15億でしたが、現在では5分の1の3億5000万となりました。

また、工場の廃業が続いているので人材不足がかなり深刻な問題になっているとのこと。
そんな中でも、代表自らが工場を案内してくださり、自社の技術に誇りを持ちながら説明される姿は、めちゃくちゃ格好良かったです。
私はこの素晴らしい職人さんたちを見るために工場見学に来たんだ!と、最初の見学から胸がかなり熱くなりながら、次の工場へ向かいました。
ニット作りのオールラウンダー「高橋ニット株式会社」
次に向かった先は、ニットの企画から出荷までを一貫して行っている高橋ニット株式会社さんです。

私は2年前、大学生の頃に五泉に訪れたことがあるのですが、高橋ニットのオフラインショップである「Milestone」にも訪れています。
工場に着くと、まずは社長の髙橋慶至さんから高橋ニットの歴史やニットづくりの工程について簡単にご説明いただきました。


ニットづくりの工程を、イラストでわかりやすく説明した紙も。
見学前に大まかな流れを理解できたので、これから見学する工場への期待がより一層高まります!
ユニークな編み地を生み出す、特殊な機械とは?
高橋ニットは、年間のサンプル作成数が500〜1000着にもおよび、その企画力と商品力が強みだと言われていますが、工場に入って、早速その意味がわかった気がしました。

なんと、横編み機が50台もあるんです!
そのおかげで、こちらでは5,7,12,14,16ゲージのニットを編むことができます。

ゲージとは、密度を表す単位で、1インチ(約2.54cm)に編み針が何本入るのか、という基準になっています。5Gは1インチに編み針が5本入り、16ゲージは1インチに編み針が16本入ります。つまり、数字が大きいほど糸が細く、編み目が細かいものになるということ。
私が一番気になったのは、こちらの糸を飛ばす編み地に特化した機械です。
糸を飛ばすというのは、編む際に一部の糸をあえて編み目にからめず飛ばす(スキップする)ことです。

今まで横編み機の機械を何度か見てきましたが、糸を飛ばす組織の編み地に特化している機械を見るのは初めてで、そんな機械があったことも初めて知りました。

また、ループ状でないので横伸びしないところがかなり面白い。

この機械で作ったもう一つの生地。

さわってみると・・・モッチモチ!
この編み地は、片側を多く編んで、もう片側を少なく編むことでカーブを描いた形になっています。中にはウールのような糸を通しているので、感触が不思議!もちもちしながらも硬く、硬いながらも柔らかい手触りでした。段ボールのような感触です!
ニットでこんな表現ができるんだ〜と、私が知っていたニットの世界はかなり狭かったことを悟りました。
次に見せてもらったのはホールガーメントの機械です。ホールガーメントとは島精機さんが開発した無縫製のニットです。

ニットは大きく分けると、生地からパターンを当てて裁断するものと、パターンと同じ形で編む成型編みの2種類に分けることができます。
ですがホールガーメントは、1本の糸で1着のニットを丸ごと編みあげます。つまり無縫製、縫い目がないニットになるということです。


高橋ニットでは、自社ブランドの商品としてこの機械でアームウォーマー、ネックウォーマー、毛糸のパンツなどを編んでいるそうです。
次に説明してくださったのは、風合いの出し方です。

編みたての生機はカサカサだったり、生地が体のラインに沿ってフィットしますが言葉を変えると物性的に不安定だったりします。

なので風合いを出したり、安定度を出すために必ず高温の蒸気で蒸すそうです。もしくは洗い加工をします。
写真では伝わりにくいですが、触って比較するとかなり違います!
同じものとは思えないくらい手触りが違いました。
この風合いを出すために、ゲージの選定、助剤の選定、そして乾燥方法まで徹底的に考え抜かれているとのことでした。
職人技を間近で!裁断と縫製を見学
そして次は裁断の工程へ。

かなり近くで裁断の様子を見せてもらいました。四角の生地は、職人さんの手にかかるとあっという間にパターン通りの形へ切り取られていきます。

驚くほどスムーズ。
袖口のリブ(ゴム編み)の部分は裁断機で切らず、手で一つ一つ切ります。
リブの部分は目に沿って正確に切らないと、合わせる時に真っ直ぐにならないからだそうです。
細かいところまで丁寧な作業でびっくりです。
次に案内されたのは縫製を行っているエリア。
五泉ニットの高い品質は、縫製の技術力にも支えられています。

こちらではミシンとリンキングの二つを行っていました。
なんとボタンつけミシンも!
目が追いつかなかったのでとりあえずスローモーションで動画を撮りました。

リンキングとはニット生地特有の縫製方法で、ミシンとは異なり、ループとループを縫うため、編み目を合わせることができますし、ズレが起きません。

縫い代もないためニット特有の伸縮性も生きる!
その代わりリンキングの作業はかなり細かいです。ループに一つ一つ針を刺していきます。

この写真は、生地のかなり小さな編み目に、細い糸を通している場面です。
肉眼で見えるのか?というぐらい細かいのですが、慣れた手つきによってすごいスピードで作業されていました。
リンキングは、一つでもループをズレて繋いでしまうと、すぐに解けてしまって不良品となるそうです。
それぐらいニットでは重要な工程だと知り、この一瞬たりとも気が抜けない工程を目の当たりにして夢中で見入ってしまいました。
このような手作業の緻密な作業がニットの品質を支えていると思うと、ますますニットへの愛着が深まった気がします。
ケチャップをかけても大丈夫?撥水加工のニット
次は企画室へ。

高橋ニットでは、様々な機能をもつ商品を企画されていますが、今回は撥水加工をしているニットを見せていただきました。
「思い切ってケチャップをかけてください」と言われ、産地の学校のメンバーである坂本さんがブチャっとケチャップをかけます。

そして水を流します。
するとケチャップが消える!水も染み込みません。

このように、糸のループをできるだけ小さくして水を弾けるニットも開発しているんだとか。
品質へのこだわり、そしてお客様へ
最後は検品をする場所へ。

こちらで、「指示書通りにものができているか」「編み地に異常がないか」を検品し、検針機に通してアイロンをかけ、出荷となります。

ニットが大好きな私にとって、その製造工程を一つひとつ見られたことは本当に感動的でした。
最後にニットを長く着るためのコツを聞いてみると、「着た後きれいに畳んで保管してくださいね」とのことでした。
糸が形になり、素敵な一着に仕上がっていく様子を知った今、これまで以上に大切に着て、大切に保管しようと思いました。

そして2年ぶりのMilestoneへ!

滞在時間は短かったのですが、かわいいニットをたくさん見れました。
セールもしていて、この品質でこの値段?!というようなものがいっぱいありました。

お店の試着室には、外国人の観光客もいらっしゃいました。
時間が押していたのですぐにバスへ。
あと5分長ければ爆買いしていたかもしれなかったので、それはそれでよかったかもしれません。

国内でも珍しいチーゼル加工を見学!「株式会社ナック」
工場見学の最後は、株式会社ナックさん。

ニットの整理加工を中心に、編み立てから、加工、縫製など出荷までの全ての工程を行っています。

まずは、代表の長谷川泰さんにご案内いただき、サンプルがたくさん置いてあるデスクへ。
目に留まったのは、糸の見本帳。


最近の傾向では、春夏にこの見本帳が売れているそうです。

様々な種類の糸が揃えられており、ものづくりへのこだわりを感じます。
手触りが全く違う!ニットの品質を高める加工の工程
次は洗い加工、縮絨(しゅくじゅう)加工を行っているところへ。
縮絨加工は、生地を熱湯につけたり、高熱の蒸気を当てたりする加工のことです。この加工を通して、生地がよりしっかりとし肌触りもよくなります。

工場見学の面白さの一つに、工場の掟が書かれたこのような看板を見ることがあります。
こういった看板は手書きが多く、めちゃくちゃかっこいい。
哲学好きな私は見入ってしまいます。
それはさておき、まずは、洗い加工について説明してくださいました。
温度は18度から40度くらいになるそうですが、温度や時間は素材によって異なり、どんな風合いにするかでプロの職人さんが一つ一つ条件を判断しています。

比べてみると、洗い加工をしたものとしていないもので、全く違うことがわかります。

写真でもはっきりと違いが見えますが、やっぱり手触りはもっと異なります!フワフワで、起毛加工みたいな感触!
ナックさんは、いかに加工して風合いを出していくかということをニットの製造工程の中で最重要視しているそうです。
そしてこの機械は、パーマック加工用の機械。

パーマック加工は風合いを出すというよりは、汚れや油を落とすために行うらしいです。
編み立ての生地は目に見えない汚れがたくさんあるらしく、それが後々品質に大きな影響を与えてしまうそうです。そのため、こちらの機械によって品質が保たれています。

洗い加工の次は、乾燥機をかけます。

この機械で行う乾燥を「NDR乾燥」と言うそうです。

乾燥をさせるときに、乾燥によるシワが問題になるそうですが、NDR乾燥は、乾燥時にできるシワを軽減させることができるのだそうです。
加工は追求すればするほど数多くの段階があることを知り、加工工程の魅力にどっぷりはまってしまいました。

そして次はアイロン部の見学へ。

このアイロンは、成型編みの生地に特化しているそうです。
仕事は早いのにすごく丁寧。

夢中で動画を撮ってしまいました。
工場の職人さんたちに共通しているのは、丁寧なのにスピードがかなり早いことです。

ふわふわにする秘密。チーゼル加工を体験
そんな職人技に感嘆する暇もなく、次はチーゼル機の元へと足を運びます。
チーゼル機とは起毛用の機械で、その名前はチーゼルという植物に由来しています。


ナックさんには計4台のチーゼル機があり、去年はフル稼働で約7000枚のニットをあげたそうです。
現在チーゼル機が稼働している工場は、ナックさんを含め2つだけなのだそう。
こんなレアな機械を見ることができるなんて…

一つの機械に120個くらいのチーゼルがついているそうです。
なんと、3人が体験できるとのことで、私も挙手!
やらせていただきました。

実際に体験してみると、想像以上に力が必要です。
チーゼル機の中にニットを入れて引っ張っていくのですが、引っ張り具合で全然違う起毛の立ち方になるのではないかと思いました。

それくらい、職人さんのさじ加減が重要になってくる工程です。

チーゼル機を使って起毛加工をしたものは瞬く間にふわふわに。

貴重な体験をさせていただいて、ただただ感謝でした。
工場併設!立ち寄り必至の直営ショップへ
最後は工場の横に併設しているショップ「CRAFTMAN KNIT」に寄りました。
ナックさんのファクトリーブランドは合計で3つあります。
その中でも私が気に入ったのは「ROUTINE」というブランド。

その由来がとても素敵でした。
「流行りに囚われず、日常で着るニットになってほしい」「常日頃から身近にある存在でいてほしい」という思いから作られたそうです。

私は服を選ぶとき、デザインや素材はもちろんですが、ブランドのミッションやデザイナーの想いも無意識のうちに自分の判断基準に含まれていると思っています。だからこそROUTINEの服は心に深く響きました。
最後は「五泉産地×産地の学校」交流会へ

最後に、展示会を兼ねた交流会に参加するため、「LOOP&LOOP」にやって来ました。
「LOOP&LOOP」は、セレクトショップやカフェ、レンタルスペースを併設する自由な交流スペース。2021年9月にオープンした、五泉ニット組合の複合施設です。

五泉市長や、五泉ニットフェスの理事長、そして各ニット工場の社長さんや新潟日報の記者さんなど、多彩な顔ぶれが揃いました。



サイフクさん、高橋ニットさん、塚野メリヤスさん、桜井メリヤスさん、ウメダニットさん、ナックさんなど、ニット会社さんの代表による挨拶が終わり、名刺交換や展示会が行われました。

産地の学校の受講生たちは、工場見学で感じた新たな発見や感動を胸に、ニット会社の方々と積極的に交流をしていました。

「今年ニットフェスが10回目を迎え、ご近所さんや地域の人たちにも認知されていき、関係者以外の一般の方たちも足を運んでくれるようになりました。少しずつですが、実ってきているのではと感じます。」

そう語るのは、五泉ニット組合の監事をされている高橋ニットの高橋さん。
「参加しているメンバーのそれぞれの方向性や熱量が違う中で、足並みを揃えるのはかなり難しいですが、10年も続いてこれたというのはやっぱりこのフェスを必要としている人が多く、増えてもきているということだと思います。」


次にお話を伺ったのは、五泉ニット組合の事務局の高橋さん。
今ニット工場の社長たちは、2代目、3代目に変わって、産地を継続していくためにいろんな取り組みを行なっているのだそうです。
また、五泉産地の年間の生産額は現在約100億になりますが、その9割はOEM生産。OEMは主要なビジネスでありながらも、一般向けへのファクトリーブランドにも注力していきたいとのことでした。

これからは、一般のお客さんへの認知も増やしながら、直接受注やビジネスにつながるBtoB向けに展示会なども活発に行っていくそうです。
かつては工場同士が競い合う時代もありましたが、今は産地全体で一丸となって、ビジネスチャンスを掴むために協力しあっているそうです。
そういう意味で、今回の産地の学校とのコラボレーションは大きな一歩になり、大きな意義があるとのこと。

「勝ち残る産地になりたい。」
高橋さんから熱い言葉をいただきました。淡々と話されていましたが、産地全体が団結し、未来のビジネスを切り拓こう、産地を継続させようという強い思いを感じられました。
世界の様々なブランドが日本の繊維産業に注目する理由は、この地場産業を力強く支える職人さんたちにあると思います。
現在日本で流通しているニットの99%は輸入商品が占めています。
この問題を語る時、日本のニット工場は廃業の危機にさらされている、というところに焦点が当てられますが、私はこの厳しい環境下でも、日本のニットが持つ唯一無二の価値を守り抜き、伝統技術と現代のトレンドを融合させて奮闘する工場や職人さんたちにこそ、光を当てるべきだと考えています。


五泉産地のツアーに参加して感じたのは、工場ごとに個性や特長が全く異なるという点です。同じ地域で活動しているにもかかわらず、それぞれの工場が持つ技術、取り組み方が独自の色を放っているのが印象的でした。その多様性こそが、五泉産地全体の魅力を形成しているのだと気づかされました。


五泉の現場に直接足を運ぶことで、これまで表面的にしか知らなかった「ニット」の奥行きに触れることができた気がします。
五泉ニットフェスは毎年開催されます。関係者の方たちだけでなく、一般の方も温かく迎えてくれる五泉へ、皆さんも一度足を運んでみてください!
また五泉ニットタグのついた商品は全国の百貨店やセレクトショップ、オンラインショップでも購入ができるので、ぜひ実際に商品を手にとって、五泉の魅力を肌で感じてみてください!

五泉ニット工業協同組合
〒959-1824 新潟県五泉市吉沢1-1-1
Web:https://gosenknit.or.jp/
共同精練染色工業株式会社
〒959-1874 新潟県五泉市横町3丁目2−15
高橋ニット株式会社
〒959-1876 新潟県五泉市泉町2丁目3−15
Web:https://www.takahashiknit.co.jp/
株式会社ナック
〒959-1825 新潟県五泉市太田619
Web:https://www.nac-knit.com/
にいがた五泉商店
〒150-0031 東京都渋谷区桜丘町27-1-602
Web:https://www.instagram.com/5000_shoten/
産地の学校
Web:http://sanchinogacco.com/
text:金、photo:市岡 祐次郎
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