型を作るけど型にはまらない、びっくり!な金型工場 中辻金型工業
来ました!ザ・町工場タウン東大阪。
工場見学をご紹介してるのに、来るのが遅くなりました、たいへんすいません!
こちらの中辻金型工業さんでは、ものづくりの楽しさを多くの人に知ってもらおうと
「こども金型職人」を生み出す秘密基地「enjoy mono」というプロジェクトを立ち上げました。
こども金型職人って?
子どもたちや学生さんから現場経験の浅い、ものづくり初心者のこと。みんなこども金型職人です。
このプロジェクトを立ち上げたのは戸屋加代さん。
生まれも育ちもここ東大阪で中辻金型工業の総括部長。卒業後は情報処理会社へ就職。1年半勤めた後、結婚を機に退職し1年後、第一子が誕生。専業主婦をやってみるもまったく肌に合わず、両親の工場で経理のお手伝いとして入社。経理をやるも肌が合わずCAD/CAMをやることになり、ある日、1人の社員さんが退社をきっかけに、その社員さんの代わりに現場の仕事を引き継ぐことに、現場の経験を積むことになり、現在は統括部長としてマネジメントを担当しています。
モノづくりをおもしろさを知ったのは現実に製品として出来上がった時。自社はもちろん、図面・加工・金型・処理などいろんな取引先や協力会社の現場を見て経験し、作ることに関してとにかく「やってみる」姿勢で挑戦。図に描いたものが、じっさいにモノとして出来上がった時に「すごいこれ!」と思ったのが、みんなに金型のことを知って欲しいと思ったきっかけ。
ちょうど今日は春休みということで今日ははじめてのしゃかいか!子ども編集員が登場!
とわくん(お兄ちゃん)とごおくん(弟くん)です。
つなぎを着させてもらって、かっこいいなぁ!!職人さんっぽいぞ。
これが金型!
そもそも金型って何?ということから教わります。
たとえば、冷蔵庫など家電や車の部品、同じ形の大量の数の製品を作るために、手で削り出すのではなく、プレスして製品をどんどん作っていきます。そのプレスをする時のマシンにはめ込む「型」のことを金型といいます、というのをこどもに伝えるために、「たい焼き食べたことあるよねー、たくさんできるよね!」という身近な話題から、やさしく丁寧に説明してもらいます。
組み立てる作業の前に、まずは図面の見方を教わります。
ごおくん、数字が多くてちょっとびっくりかな??
ほら、ぴったりやろ!
実際のものを設計図に当ててもらいながら「ほら、ぴったりになってるやろ?」と教わります。実際のものを見てみてふたりも納得!
これが金型の部品たち。これを今から組み立てるんだけど、これも図面にしたがってやらなければなりません。
これが金型の図面。今回組み立てるのは穴を開けるための型。複雑な型になっています。
なぜ金型で「抜く」のかというと、品質を均一に保つためと、スピード(つまり効率)が理由。たとえば家電のパーツを0.何ミリ単位の誤差なく、決まった時間の中で作るには「この型で抜く」作業が必要になります。つまり、太ってたりやせてたりするたい焼きを作らない、ために、ということ。
おとうとには負けへんで(心のこえ)
ちなみにとわくんは学校では図工と国語が大好きです!
この金型の設計書を書くのも職人さんの仕事
金型を作るのは職人さんのお仕事、そしてこの設計書を書くことも含まれています。お客さんから「こんな金型つくって!」と設計図ではなく、モックなどの物や作る物の図面をわたされて「そのための金型はこんなの」と考えながら、設計していきます。この時サイズや形だけではなく、「どこに使うのか?」とか「何の目的で使うのか?」ということも、一緒に考えないといけません。製品側、金型側とも強度や耐性を決めるため。
図面に色をつけてみようっ!
複雑に線や数字が描かれている図面、なかなか大人でもわかりません。
板やねじたちが図面のどこにあたるのか、色鉛筆で塗ってみることにします。
図面に部品を当てながら、やってみます。いいやり方を見つけたね。
いよいよ組み立て!
色ぬりが終わるといよいよ組み立て。ふたり力を合わせてやってみよう。
部品の役割をそれぞれ説明してもらいながら。
「このねじの役割は、土台どうしをくっつけるために使います」
名前は難しくて覚えられなかったけど、なんのためのねじなのかはわかった様子。
図面と見比べながら〜
六角レンチ
「これ、お父さんがやってるの見たことある」
いよいよ工場へGO!
おっきな機械(=プレス機)があります。
このプレス機や型抜きする製品の大きさによって加わる力(○トンとか)が異なるので、いくつか種類があります。
おっちゃん達の背中がかっこいいです。
先ほど作った金型はこういったプレス機に装備されて使われます。
自分たちが何を作っていたのかと、どこで使われるのかを知ることができました。
つづいて刻印の体験も!
ハンマーを使うコツは「手が自然に台と平行になる位置で、肘を支点にハンマーの重みに任せて降ろす感じ、腕ごと上下させない」ということなのですが、見ててコツを掴んだみたい。なかなか上手と褒めてもらうことができました。よかったね!
バリってわかるかな?
「そのキーホルダーの横んところ触ってみてみ」型抜きしたキーホルダーの角はトゲトゲしているので、ヤスリで削らなければなりません。ヤスリのおじ..おにいちゃんが登場!
いっぱいの人が働いてるなぁ、と実感。
町工場という秘密基地から生み出す!
今回は工場見学と金型の組み立て体験でしたが、このプロジェクトでは、町工場の企業さんが専門の講座を開いて職人さんの技を学ぶ講座や、アイデアを実現して形にしていくための相談を現場で働く職人さんに直接お話しできたりもします。
なんで製造業はこんなに楽しいのにやらないんだろう?
このプロジェクトを立ち上げた理由は、これまでに閉鎖的だった金型の世界をオープンにして、たくさんの人に知って欲しかったから。
「『なんで製造業はこんなに楽しいのになんでみんなやらないんだろう?』という疑問が湧き、『私のように実体験することができないからなのでは?』と気がつきました」と戸屋さん。3Kというイメージと閉鎖的な業界を打ち破るべく、これまではパキッ!と分かれていた使う人と原材料から設計・成型・表面加工など作る人の垣根をできるだけ低くして、クローズだった現場のことを知ってもらい、実際に体験してもらう場を提供したい。
そしてこの場所をきっかけにして、将来のものづくりを背負ってくこどもたちを育て、ものづくり輪を広げたい、ということが戸屋さんの野望。
今、戸屋さんはモノづくり情報発信基地「enjoy mono」で、一緒にプロジェクトを進めていただけるサポーターを募集中です!
一緒に「東大阪にこども金型職人を生み出す発信基地を作りたいねん!」と思われる方はぜひ、ご覧くださいね。
しゃちょうも登場です。
社長の中辻儀治(よしはる)さん。戸屋さんのお父さんです。この世界で50年。
「わたしらはずーっとものづくりの現場で生きてきた。何やっとるかくわしくはわからんけど、こんな子らが見てもらうのは、ええ機会やと思う!」
僕もこれまでいくつかの工場で「型のところだけは撮影NG」ということがほとんどだったのですが、ここまで開かれた工場は初めて。型を作るけど、型にはまらない、びっくりな工場でした!
最後にパシャッ!
彼らが大きくなるころ、この体験のこと思い出してくれるといいな、と思います。
中辻金型工業のみなさん、今日は貴重な体験をありがとうございました!
関連するキーワード