やればできる!が育てたブランド米 山間屋
裏のテラスでは川の音を聞きながらのんびりした時間を過ごすことができます。
ちょうどお昼の時間。観光客の方たちはもちろん、地元の方もお弁当などを買いに来ています。
奥から、
茶粥、わらびの酢漬け、四万十牛の野菜いため、地元野菜のサラダ、はちく(たけのこ)の煮物、みょうがのブチの酢味噌、パスタのゆずソースがけ〜。
実はこのメニュー、ほぼオール四万十のご飯なんですよ。
しば餅(他の地方で言うと、かしわもち)もいきます。
このしば餅、サンキラという葉が使われているのが、かしわ餅との違い。
ごちそうしてくださった中脇裕美(なかわきゆみ)さん。
四万十の山問屋「山間屋」の代表で、「山間米(さんかんまい)」というお米をプロデュースしています。
四万十市西土佐生まれで地元育ち。西土佐村役場に勤務しご当地の商品開発等を担当。早期退職後、平成19年に「山間屋」を設立しました。
中脇さんが山間屋を作ったきっかけは、公務員時代の農業振興・観光振興の延長で、これまでやってきたことにもっと責任を持ちたい、という思い。そして内向きだと売り上げは横ばいか下がるけど、地元の人にお金がおちる仕組みづくりがしたい、という考えからでした。
外にも売れる地元の商品は、なんだろう?う〜んと頭をひねりながら悩む日々。商品を探し回るのが大変でした。やっと辿りついたのがお米。あまりにも身近すぎて気がつきませんでした。
入り水と棚田、遅植え遅刈り
こちらの江川崎地域は、現在は植林の山に隠れてしまいましたが、もともと棚田が川近くまで広がる米どころ。四万十のお米の武器は、「入り水」という山あいの一番上の田んぼに一番最初に引き込まれる豊かで冷たい谷の水と、棚田の一反に満たない小さい田んぼ。この水と田んぼのちっちゃさが、きれいな水が絶えずシャッフルされる、そして盆地がゆえのはげしい温度差が、お米にとっての良い環境になっています。
また、高知の山間の暑さによる高温障害と台風をさけるための遅植え遅刈りの農法。9月くらいから穂がでるようにコントロールして、稲刈りは10月の中旬から下旬。この遅植え遅刈りがツブのしっかりとしたお米を作ってくれます。
これらの条件が組み合わさって甘く安定した味のお米ができることを知りました。
幼い頃から育ってきた風景を思い出すことで米ブランド化へのチャレンジが始まります。
しかし、お米はどこにでもあるから特産品として売り出すのは難しい、とそこで考えたのがパッケージと流通の仕組みと品質管理。
ちょっとしたお土産な米袋がヒット
米を保管したり運ぶ時に使われる何十キロも入る米袋。農家のみなさんには当たり前に昔から使われてきたこの袋、米が息ができるようになっているのですが、女性が持ち運ぶには大変。そこで地元のデザイナーさんと相談して、可愛い小袋を作りました。この小袋が大ヒット、5キロ、4キロ、2キロ、3合、2合とバリエーションがあり、お菓子などのお土産代わりに持っていくには2キロがちょうどいい、結構売れてヒット商品になりました。
この袋には名前をつけることもできるので、水引をつけて引き出物などにも使われることがあるんだそうですよ。
農協と上手なおつきあい
ブランド米というと、インターネットや道の駅などでの直販が思い浮かびますが、山間米の場合は違います。
生産者から一旦農協に販売。生産者である山間米組合員が買い戻し、山間米になってお店や全国にお届けする、という流れになっています。なんでこんな面倒なことをしているかというと、倉庫がないから。新たな倉庫を持つことはなかなか難しいので、農協と手を組み保管コストを軽減。付加価値の高いけどお手頃な価格のお米としてお届けすることができます。農家の農協離れが全国的に話題になっていますが、上手なおつきあいで本当のウィンウィンを実現。うまい米はうまいことやってます。はじめは農協との関係を気にして、山間米への参加を迷っていた生産者さんたち、今では競うように植え始めるようになりました。
いつものお米を、いつものように
山間米の生産者で作る「四万十山間米組合」の現在の組合員は23人。田んぼの条件も違えば、作る人も違う、当然生産者ごとに味が変わってくるのですが、レベルの高いお米を維持するために、毎年必ず、目選、手選、色選を行い、全ての生産者ごとにお米を試食しています。8月下旬から収穫されるお米は普通、年を越すと古米と呼ばれ味が落ちますが、山間米の品種であるヒノヒカリは、冷温倉庫で保管することで、品質の変動をおさえ、甘み・粘りなど年を越しても美味しさが持続します。毎日食べるお米は味が変わればすぐに気がつくもの。「いつものお米を、いつものように」が山間米のテーマです。
今年山間米が生まれて10年目。ここまで続くとは思っていなかった中脇さんですが、すでに新たな商品も生まれています。
山間米でお酒を作る
初めてのお酒づくり、地元に酒蔵がないので中土佐町の酒蔵「西岡酒造店」さんに協力してもらって、1年目には1樽(720mlが1,600本)を製造、販売に苦労しましたが、3年目には一升瓶もつくってもらい、売れるようになりました。4年目には酒蔵の社長さんから「今年も作らせて!」とお声がかかるようになりました。酒米ではなく、食べるお米からつくったお酒はめったにありません。
川の魚に合うように辛口でカッと飲めるような味にしていただきました。
オール四万十のスイーツも
西土佐ふるさと市のおとなり、ストローベイルSANKANYAというスイーツのお店も開店。こちらも素材はオール四万十です。
左のレモンのチーズケーキは甘すぎないので男性にも人気。
もちろん、みんなでいただきました。ごちそうさまでした。
地元の良いものがわかるようになった
山間屋をやってみてわかったことは、地元にすぐにある良いものたち。
地元のおばちゃんたちが四万十の河原でとってくるたけのこ、無農薬のゆずの皮を使ったソースなどを使い、川弁、山弁といったここにしかない特長あるお弁当づくりもしています。自然の素材を使っているのでお腹が減りにくいのに吸収されやすい、オール四万十のお弁当。
「どう?おいしかった?」と笑顔で聞いてくる中脇さん、じつは今日は試食の会だったんです。
おいしいお昼ごはんと元気をいただくことができました。
ごちそうさまでした!のパシャ!また四万十の素材オールスター弁当を食べにきます。今日は有難うございました!
【詳細情報】
四万十の山問屋「山間屋」
電話番号: 0880-31-6474
住所:高知県四万十市西土佐江川崎2363
URL: http://www.sankanya.com/
ストローベイルSANKANYA
電話番号: 0880-31-6474
住所:高知県四万十市西土佐江川崎2410−1
開館時間:10:00〜17:00
(text:西村 photo:市岡 ※一部の写真は山間屋さん提供)
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