魚も人も天然物!四万十の魚と川文化を守る 四万十川西部漁業協同組合 鮎市場

四万十川の5月の風景四万十川の5月の風景。
今日は鯉ではなく、ウナギと鮎の漁業協同組合にうかがいます。

お話を伺います四万十川には5つの漁協があります。全長196キロもあるので!さすが。
その中でも西部漁業協同組合「鮎市場」は、四万十川の中流域を担当。西土佐から十和村で獲られたも魚だけを仕入れています。川のものを扱う漁協は全国でも少なく、こちらと岐阜県長良川くらい。

市場長の林さん今日お話してくださるのは市場長の林さん。

四万十川に住む淡水魚は約206種類!
「鮎市場」と名前がついていますが、取り扱いは鮎の他にも、うなぎ、川エビ、ツガニ、スッポンなどたくさんです。スッポンやナマズは、フライや南蛮、洗いなどになって専門店で大人気なのだとか。沼のと違って川のは、ドブ臭くないのが人気の理由。

スッポンスッポン!

鮎鮎の解禁は6月1日から

ウナギ取り出す
ウナギニョロニョロ四万十川の天然のウナギです
日本では市場に出ているウナギは養殖が99.9%で、天然ものはわずか0.1%。
四万十川のウナギは数少ない天然物ですが、近くのお店に卸されるので、高知県や愛媛県など、周辺の地域でしかいただくことができません。

ウナギピッチピチ天然ウナギの特徴は黄色いおなか
脂がノッているのがウナギの美味しさの目安のひとつですが、実は天然ウナギは余分な脂が少なく、サッパリとした味が特徴。そして天然物は一般的に大きいのが少ないと言われています。
エサがよければ大きく育ち、大きくなればウナギが川を下ってきます。川の上流で獲れるウナギは小さく、モチモチした歯ごたえで少しかたいけれど味がのっています。
自然のものを食べて自然のごとく育つのが四万十のウナギの流儀。

小さいのもいけるよちっこいのは、ちっこいなりの美味しさがあります。天然ウナギは一度、獲ってしまったら川に戻しても生きていけないので、小さなウナギも食べます。

「ウナギはいなくなりますか?」
夏になると「絶滅する、国産のがいなくなる」と話題のウナギ。ちょっと毎年なので恒例行事っぽいですが、もし絶滅危惧種に指定されて、ワシントン条約で輸入が制限されたりするともう食べられなくなるかも!と僕も毎年夏、スーパーのお魚売り場で心配しているクチです。

ウナギのお話をする林さんウナギ全体を考えると確かに年々減っている、と林さん。
稚魚であるシラスウナギが外洋に出てマリアナ海溝あたりを回遊し、3~4年後に川に戻ってくるウナギ。親ウナギに育つものがそもそも減っているのか、黒潮の流れが変わっていて川に戻ってこないのかは現在研究中なんだそうです。

ウナギピチピチ今年も元気です、四万十川のウナギです
しかし、四万十川とおとなりの仁淀川のウナギは今年もワリと順調。
その理由は大きいウナギも小さいウナギも今年は入ってきているから。
川で獲れるのが大きいウナギだけだとなんだかオカシイぞ、つまり外洋から四万十川に戻ってくるはずの子ウナギが成長することができない環境の変化など何かあったのではないか、これから数年先が心配、というわけです。

四万十川イメージ四万十川はふところが深い
清流をうたう四万十川ですが、水質がキレイだから魚がいるのではなく、餌になるプランクトンや岩が堆積して魚のすみかが豊かで、居住条件に優れた「生き物が住める川」だから。
春には春の川、夏になると夏の川、と季節ごとに適した住みやすさを提供してくれるふところの深い川なんです。

四万十川の魚たちも安心はしてられません。
しかし、ふところの深かった四万十川も徐々に姿が変わりつつあります。
上流にある砂防ダムによって魚のすみかである岩のすき間には岩など堆積物が減ってきていて、魚のすみかがなくなり、魚が減ってきているから。
「暴れ川としても知られる四万十川の洪水を防ぐために作られたダム、しかし同時に魚の住みにくい川になりつつある、そして漁師さんの仕事が減ってしまい人がいなくなる。せっかく作ったダムも人がいなくなってしまっては、もったいない」と林さん。
魚と人、両方の目線から四万十川の衰退を心配しています。

鮎市場の中セリがない市場!
四万十の川漁師さんは、天然物だけを扱っていて、3日取れなくても、1週間取れなくもずっと待っています。また一年間を通して川に入ることができるのは下流域だけ。中流域の西部漁業協同組合では、6~7割の漁師さんが兼業、漁師の高齢化による後継者不足も合わさって、獲る人の方の悩みも尽きません。
漁協なので魚の集荷や出荷を行いますが、こちらの市場では、なんとセリがありません。商品は漁師さんから固定価格で仕入れ。セリで価格が決まってしまうと買い手市場になって、生産者である川漁師さんの生活が苦しくなるから。生産者の利益を守ることで川漁師の減少を防いでいます。
四万十川の魚たちと食文化を残すための知恵と工夫。

林さんが語る自然のルールに従い、川と寄り添いながらやってく
それでも四万十の漁師さんたちは、天然物にこだわりながら生きています。全国に天然ものの魚を発送する仕組みを整えたり、若い人たちがいろんな取り組みをスタート。来年には道の駅もでき、川とともに生きることを選んだ成果も徐々に現れるはず。

林さんと記念ショット「天然物だから数は少ないし、ここに食べに来てもらわないといけないけど、四万十の自然を見ながら食べるのが一番いい」と林さん。
自然の中でつづけてきた川と人の営みは、次の世代に繋がりつつあります。
林さん、今日はお話を聞かせていただいて有難うございました。
天然物をいただきにまた来たいと思います!

【詳細情報】

四万十川西部漁業協同組合 鮎市場

電話番号:0880-52-1148
住所:高知県四万十市西土佐江川崎249-1
URL: http://40010.chu.jp/

(text:西村 photo:市岡)

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