信州の銘酒の米を搗く、田んぼの中の最新工場! アルプス搗精工場

信濃大町にきました今日の見学は長野県大町市。北アルプスの登山口や黒部アルペンルートの長野県側からの出発点にもなっていて、リュックを担いだ登山者のみなさんも、たくさんいます。

搗精工場遠景見学する工場は、アルプス搗精工場(とうせいこうじょう)。田んぼの中にあるカマボコ型の建物が目印です。

搗精は精米のことです
搗精とは精米と同じ。刈り取った稲から籾殻を取り除いた玄米の糠層を削り取り、精白(せいはく)することを指します。
昔は杵や棒で米をついて精米していたのですがそれを「米搗き(こめつき)」と言っていたので、その名残で搗精という言葉も残っています。

到着到着!建物デカッ!
この工場が搗精するお米はお酒に使われます。
このアルプス搗精工場は、長野県の酒蔵のやく90%が所属する長野県酒造協同組合が運営し、お米を共同で仕入れ、あらかじめ計画された米の品種・量ごとに精米したお酒用の米を酒蔵に配分しています。設立の目的は共同仕入れによって価格を抑えることと、精米の品質を確保すること。このアルプス搗精工場は長野県にあった5つの精米工場を統合して生まれたのですが、県単位で精米工場を持っているのは、全国でも珍しいんだとか。
つまり、信州のお酒の原料となる米の大部分がこちらに集まってくるから、工場もこんなに大きいんです。

ロビー吹き抜けの大きなロビー。

柄杓のエントランスエントランスはお酒をすくう柄杓の形になっています。

枯山水お米をイメージさせる枯山水や、

お米のマークお米のマークのオブジェ
真ん中の丸はお米の芯をあらわしています。

松尾神社松尾神社は酒づくりの守り神。酒蔵をはじめお酒を生業とする会社・商店には、だいたい祀ってあるのだそうです。

堀島さん今日、ご案内いただく堀島さんです。
堀島さんはこの道20年以上のベテラン。酒米のことなら何でも知っています。

展示工場には展示エリアもあり、昔の酒造りの様子や、精米率の異なるお米の説明、信州のお酒などが紹介されています。

田んぼ信州のお酒は米と水と太陽が命!
信州では「美山錦(みやまにしき)」と「ひとごこち」という品種が酒米として有名です。
特徴は「大粒であって心白の大きい米」。つまり粒の大きいお米は削り取っても心白(しんぱく・芯の部分)が多く残るのでお酒には優れた米の品種、ということになります。
酒米にとって大切なのは良質の水と太陽、そして適度な風。長野県が醸造県として有名なのは、空気の美味しくキレイな土壌の土地で、太陽の光を十分に浴びてお米がすくすく生育できる点と、北アルプスの雪解け水という条件が揃っているからです。

大町駅前の水飲み場信濃大町では天然の湧水を飲むことができる水場がいくつかあります。町全体で水を大切にしています。

お酒の原料としての米の適正度を示す「精米歩合」
お酒は製造方法や原料によって、吟醸酒や純米酒、大吟醸酒など8つの種類に分かれています。
原料のお米に限って言うと、精米歩合(せいまいぶあい)という「お米の不要部分をどれだけ削って芯を残したか?」という率があり、これは白米の玄米に対する重量で計算されます。たとえば「精米歩合60%」というときには、玄米の表層部の糠層等を40%削り取ったお米ということになります。ちなみに純米酒だと精米歩合は70%以下(玄米の表層が30%削り取られている)、大吟醸酒だと精米歩合は50%以下(半分以上削り取られている)というのが目安。
そして、この不要部分が少なく、使用原料の率が良いほど、酒米として適している(酒造好適米)とされています。食用の米と酒米は、玄米の時にフルイにかけられ、食用は1.85mm、酒用は2mm以上(つまり粒が大きい)で選別されます。

精米歩合70こちらは精米歩合70%以下で精米されたお米。楕円形で胚芽が削り取られ、ご飯でいただく米粒の形になっています。純米酒などに使われます。

精米歩合50こちらは精米歩合50%以下で大吟醸に使われる酒米。上の70%に比べ、丸に近い形。たくさん削り取られているので丸くなっています。
米の芯である心白の割合が高いと、麹菌が繁殖しやすく柔らかく仕込みの時に溶け具合をコントロールしやすいので、いい麹(こうじ)と言われます。

水車による精米昔は水車で米を搗いていたのですね。

米搗きのミニチュア米搗きのミニチュアです。一生懸命働いています。

工場全体それが今はコレ!
アルプス搗精工場の中です。現在はこの秋の稼働時期に備えてメンテナンス中だったので中に入れなかったのですが、最新鋭なのがわかります。4万俵以上収容可能な原料タンクに30台の精米機。長野県のほとんどの酒米を担当しているので、大きいのは納得したけど、やっぱりデカイなー。
こちらの工場の繁忙期は9月中旬から3月いっぱいくらい。とくに10月から1月の間は24時間フル稼働なのだそうです。冬には蔵元でのお酒作りが本格化するので、年末はとっても忙しい。

工場のミニチュア工場のミニチュアです。マシンがズラーッと並んでます。

玄米の受け入れ赤い部分で玄米を受け入れる部分。30kg単位の米袋の玄米が入っていきます。
青い部分は精米されたお米を貯めておくタンク。

精米機緑の屋根のマシンが精米機。
年ごとの出来や、品種ごとに異なる精米のパターンが微妙に変わってくるので、あらかじめプログラムされたコンピュータで制御されています。このコンピュータ化された精米機のおかげで多品種かつ高精度な精米が可能になりました。

精米機のしくみ精米マシンの仕組み
精米機の説明図も展示されています。
精米の基本は米同士をすり合わせて、表面を削ることの繰り返しです。テレビで一升瓶にはいった米を棒でこすっているのを見たことがありますが、あの原理を応用したと考えれば良いのだそうです。上から玄米を投入し、途中のヤスリで米が研磨され、精米と不要物が選り分けられていきます。
投入した玄米と出てきた精米の重量の差、と40%だと7~10時間、70%だと12時間というように稼働時間で精米歩合が決まります。

精米機のヤスリ精米機の中のヤスリ。この中を米が通っていきます。
あらかじめプログラムされているので、人がかかわるのは微調整くらいなのだそうですが、気をつけないといけないのは温度。精米の際の摩擦で水分が飛び出るので、モーターのスピードを変えていきます。収穫された年の気候や品種によって変わってくるので、仕入れた玄米ごとに実際に精米をしてみて、人の目で見てチェック、調節して、さあ本格的な精米!となります。

不要物の処理奥の黄色い屋根のマシンでは、精米のステップで選り別けられた糠などの不要物が処理されます。

糠の種類不要物である糠もたいせつに使われます!
酒米としては邪魔者である糠も、実はたんぱく質が豊富で栄養価が高いので、キチンと使われます。不純物の配合率によって色々な目的があり、たとえば、少し茶色い赤糠はキノコ栽培の菌床になったり、トラ糠は飼料、だんだん白くなって外皮の率が少ない上糠や特上粉は味噌や醤油、酢などの発酵食品の原料にもなります。不純物とか不要物とか邪魔者とか書いてすいません、糠さん。

特上粉特上粉になるときめがとても細やかです。

制御室この工場の頭脳である制御室。

堀島さん2でも、5名で動かしています
この大っきな工場を動かしているのは、全部で5人(事務の方1名を含む)なんですって!
受け入れから、精米の制御、製品や副産物のパレット積みなど全自動化されているとはいえ、少ないのでは?と思いましたが、キチンと回しています。
堀島さんの担当は、稼働計画の策定、精米の仕上がり具合のチェック、マシンの稼働状況の監視業務、機器のメンテナンス、仕入元や卸先との調整などなどなど..たくさんの役割があります。精米がわかる職人であり、マシンを診ることのエンジニアでもあり、全体もみないといけない。

信州のお酒の展示全体信州のお酒ヨリ信州のお酒がズラ〜リ
工場の中の展示スペースには約70種類の蔵元のお酒も紹介されています。
県内のほとんどの酒蔵のお酒を搗精する、とはいえ面積が全国第4位の長野県、その面積は広大で。しかし、長野県では信州という単位よりさらに細かく、安曇野や松本といったさまざまなエリアごとにお酒を楽しむことができます。酒飲み天国な県。

日本酒の需要アップに向けて、東京、大阪、長野市内でのイベントや試飲ツアーなど、長野県の蔵元は、みんなで元気に活動中。田んぼの中の工場が信州のお酒を支えています。

はいポーズ信州のお酒ラベルがずらりと並んだポスターとともにパチリ。
今日は見学を有難うございました!

【詳細情報】

アルプス搗精工場

電話番号:0261-22-5251
住所:長野県大町市大字平1040の250番
入館料:無料
開館日、開館時間等はお問い合わせください。

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