野菜も育てるけど、農家のプロも育てる! 桐島畑
桐島畑さんにやってきました!
見学をさせていただく桐島畑の桐島正一さん。
桐島さんは2年間農業大学で勉強し、21歳から2年間留学、1年半は農家にステイして果汁の剪定や語学、専門分野の勉強をしました。専門誌の「現代農業」に作り方のノウハウが掲載されたり、出版物も多数!現代農家のお手本のような人です。
ジンジャーシロップ!
桐島畑さんのヒット商品はジンジャーシロップ。
あの!ほぼ日でも取り上げられたんです。
生姜を煮て、粗糖を加えただけのシンプルなジンジャーシロップ。
農薬も化学肥料も使わずに育てられた生姜を使っていて、パンチがあっても後にはひかない辛さが特長!
全体が木で作られた加工室。デザインは桐島さんの奥様です。
普通の家みたいに、作りたかったんだとか。木だと見てもらいやすくなるし、素材もほぼ全部(99%くらい)地元のものが使われています。建てて4〜5年目。
工場なので、作る本数、つまりロットの確保もたいせつ。
冬だと月に3,000本くらい生産する規模です。
1回(3日間)で600本作らないと採算があわないので、生産効率向上のために導線を入念に検討しました。
ジンジャーシロップができるのはおおよそ3日。
仮煮を1日して、
ゴミを落とす、削る、砂糖(雑味の強い砂糖、黒糖に近い)を入れる加工の工程が2日目。
そして、3日目は瓶詰めとラベル貼りの工程です。
ハリに埃がたまったりするし、衛生管理が大変。菌の繁殖も気にしないといけない。本当は天井があったほうがいいんだけど「条件はクリアするように、作りますんで」と許可をもらって、自分たちのやりたいようにしたかった、こだわりの加工場。
生姜風呂!
設備にももちろんこだわる。この生姜風呂は殺菌槽、蒸気釜の役割を担っていて、いろいろ試作したり、他の加工場を使ってみたりした、試行錯誤の末の設備。熱効率は良いけど対流がないのでまぜないといけない、けど焦げない方の利点を採用しました。
加工場では、農業を学びに来ている若者や桐島さんのお母さまも一緒になって働いています。
桐島畑の最大のこだわりは、できるだけ地元の人と一緒に作ること。ただたくさん売れるものを作るだけじゃなくて、誰と一緒に作るか?もたいせつなテーマです。
畑に移動!
車で5分くらいのところに桐島さんの畑があります。
昔の四万十川周辺の農業は栗とお茶、かいこが中心でした。
桐島さんはこの畑を20年借りていて、広さは約1町5反(おおよそ1.5ヘクタール)
桐島畑では、1年にだいたい80品目以上の野菜が育っています。
ただ、多品種をきちんと育てるということはとても大変で、ここでプロの技が発揮されます。
まずは種取り
実は収穫した野菜から採った種を植えてまた野菜にできる、という品種は少なくて、これまでの普通の農家だと、種を業者さんから買って栽培していきます。
しかし、桐島畑の場合は、種取りも70%くらいは桐島さん本人とお母さんでやっているそうです。
いろんな作物を作る
たとえば、こんもさやえんどうの栽培エリアでは、次に高菜、里芋とわざと異なる作物を回転させていきます。
短いものでも3ヶ月、混植していけば回転が増えるようになります。
3作か2作なのが、混植することで4〜5作できるようになります。
「実物(みもの)の次は、時間がかかるので葉物(はもの)」というように、種まきから収穫の期間のバランスをみて、また「同じエリア内でも茄子の間にルッコラの種を蒔く」、とか「ジャガイモ3ヶ月した後に里芋」とか計画的に時期や畑の場所を変えながら転作していきます。
桐島さんは単位あたりの収量はあまり考えてなくて、回転を増やすことを重視しているのだそうです。
この転作の効果はたくさんの種類の野菜ができることの他に、違う作物を植えることで土や水などの条件をわざと少しずつ変え、ずらすことで作物への負荷を変えていく、それがリスク回避にもつながります。
全部で1町5反の桐島畑では、2反くらいずつにわけて、作る野菜を変えることにしているのだそうです。
雑草抜きなどは地元のおばあちゃんにお願いして手仕事でやってもらい、
種取りなど残すものがあり少し工夫やコツのいる作業は桐島さんとお母さんで作業しています。
生姜はまだ芽が出てきていません。
桐島農場の生姜は、化学肥料と農薬は使っていません。
「JASなどの規格、認証は必要無い。今は認証があって売れるわけではないし、そもそもお客さんのほうがよく知っているので」と桐島さん。
でも、有機農法が最善だとも思っていません。「技術はみんなで一緒に勉強していくけど、農法まで統合すると農協になってしまう。看板に人の名前がでてるとか、そっちの方が面白みがある」若い人たちが集まって、各自がやりたいような農業であるためにも、農法などの技術で分けるよりも、四万十ブランドでどこそこさん家の○○ってブランドで打ち出していくほうが大事です。
そのまま食べることができます。もちもちした食感で、噛むとほんのり甘い。房のまま持ち帰って車の中でずっと食べてました。
万次郎かぼちゃ
冬はほとんど万次郎畑になります。
ひと苗でなんど500個くらい採れます!
栄養のあげ方にも工夫が必要
桐島畑の野菜では、鶏糞(鶏糞)を使っています。
肥料をあげるタイミングも2回に分けていてそれぞれ目的があります。
1度目は、堆肥のために収穫の1ヶ月前に。この一度目で土の中の微生物が肥料を食べて、窒素の状態を整えておきます。そうして土地を良い状態にしておいて、歯の状態を見ながら2度目の2~3週間前に野菜のために肥料を入れます。
季節によっても肥料の効き具合は違っていて、秋冬は徐々に効いてくるので上のようにタイミングを計りながら、夏と春は入れた分だけ効いていくので、いっぺんに入れるなどの経験に基づいたコツが生きています。
このように肥料の撒き方にも、うまくタイミングと場所を選ぶという工夫がされています。
「『状態を看ることができる』そこがプロで、きちんと工夫もできる」と桐島さん。
ズッキーニは作りやすい作物で4〜5日でOK。こんな大きさになります。
流通へのチャレンジ
農業をはじめて20年。もともとは一つの作物をたくさん作っていたスタイルでしたが「それでもよかったけど面白みがないので」現在のような多品種な畑づくりになっていきました。しかし霧島さんが行った様々なチャレンジは畑づくりだけではなく、流通も。
これまでの卸先は主に通販でしたが、直接取引の宅配もスタート。最初は2〜3軒からはじめて、やがて口コミから広がっていき、主に大阪と東京などの都市部を中心に、九州から青森までお客さんがいて全部で70世帯くらいになりました。レストランの料理人からも声がかかったり、すこしハイレベルな東京のスーパーとの取引もはじまりました。
雑誌に載せてもらえるようにもなって、ジンジャーシロップなどの加工品はセレクトショップにおいてもらっています。
しかし、こういった独自の流通の開拓といった外向きの活動だけではなく、地に足をつけた活動にも取り組んでいます。
一緒に勉強して、個人ブランドの野菜づくりを目指す
「四万十町という単位だと、研修生や地域の人と一緒に地元のスーパーなんかとも協力して地域のブランドを上げていきたい。マニアックなルートだけではなく、きちんとした流通にのるようにするためには、198円くらいで売れていく単価レベルにして、市場性のあるものにしないといけないと考えています。そのために農家さんを組織化し、一緒に技術を勉強する、でも農法まで統合すると農協になってしまうので、四万十ブランドって出して、その人の名前をつけていく方が面白い。看板には○○農法の野菜、じゃなくて、人の名前を看板にすることで、やりたいことがある、高品質な人が集まる環境づくりにもつながると思うんです」
プロ農家を育てる
「自分でも今やっとトントンでできるようにはなっているけど、まだまだ一人ではできないこともあるので、『農業のプロを育てたい』と思っている。田舎で農業だけでは食べていけないイメージがありますが、桐島さんの考えるプロ農家は、田舎でくらしながら、Webデザインや喫茶店や写真とか、農的な暮らしをしながら食っていける世界。そのために若い人に集まってきてもらって、次につなげるのが僕の役割」
今後は、農法の指導だけではなく、人が入ってこれるようなスペースづくりなど、プロ農家が集う場所の仕組みづくりに知恵をしぼっていきます。
桐島さん、今日はお話を聞かせていただきありがとうございました!
【詳細情報】
桐島畑
電話番号:080-3153-1049
住所:高知県高岡郡四万十町久保川524-1
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