道路もつなぐし未来もつなぐ。巨大ジャンクションの工事を見学! NEXCO西日本 新名神高速道路京都府域(城陽~八幡間)工事
今日は、NEXCO西日本の「なるほど!高速道路発見」の見学の第二弾、新名神高速道路の京都府の城陽市から八幡市の区間を見学です!
40分短縮されるぞ!神戸から名古屋
新名神高速道路は全長174km、名古屋から神戸市北区の神戸JCT(ジャンクション)を繋ぐ道路になります。
全線開通した場合には、名古屋から神戸まで、東名ー名神ー中国道経由の場合、約160分(約240km)かかっているところを、この新名神高速道路だと伊勢湾岸道・新名神経由の場合は約120分(200km)と、距離は約40km、時間は40分が短くなることが予想されています。また、あの中国道の宝塚東・西トンネルの慢性的な渋滞の緩和が期待されています。
今日、ガイドしてくれるのはNEXCO西日本新名神京都事務所の工務課、諸岡さん。
NEXCO西日本は高速道路の建設や管理を担当しています。
今日は夏休み、予想気温35度、日差しの下の体感だとそれ以上。
だけどたくさんの親子が見学に訪れています。
ジャンクション、デカっ!
京奈道路と新名神が接続する城陽ジャンクションの工事。
今回見学する城陽JCTから八幡JCTの約3.5kmの区間は、現在は用地買収が完了、2016年度(平成28年度)開通に向けて、今はまさに工事の最盛期の区間です。
その一方の起点である城陽JCTでは、橋梁の橋脚・橋台(橋を支える足の部分)の下部工(かぶこう)はほぼ完成。足の上の橋桁や床版(車の走る部分)の上部工(じょうぶこう)が進行中です。
ジャンクションとは高速道路同士を繋ぐ接続部分のこと。このジャンクションは、これから道路になる新名神高速道路と、京都と奈良を繋ぐ「京奈道路」とつながることになり、とても便利になります。
このジャンクション部分だけで広さが甲子園5個分で、トラック11万台の土が必要。今は40%くらいが完成しています。
道路を支える脚!橋脚(きょうきゃく)
今回見学する城陽JCTから八幡JCTの約3.5kmの区間はほとんど橋!しかし、高速道路の橋には鉄製、コンクリート製など場所や特性や経済性に合わせて様々に作り分けられています。
城陽ジャンクションの橋は主に鉄製が採用されています。
鉄製の橋は工場で作ってこちらの現場へ運ばれます。現場で行うのは組み立てと吊り上げ。
この橋桁は、陸上輸送できるように約10メートルの長さで工場で作られます。運ばれてきた橋桁をジョイント、二つがつながった状態で吊り上げられます。この時の重さは25トンくらい。アフリカゾウだと約3頭分です。
25トン持ち上げることができます、力持ちのクレーンです
この黄色いクレーンは25トンを持ち上げることのできるクレーン。
クレーンの吊り上げ能力は、手の部分を倒して半径を最大にすると吊れる重さは1トンになり、小さくなります。手の部分の動く半径によって吊ることのできる重さも比例して変わるのですね!
橋桁の色は緑(城陽市の場合)
この橋桁の色、深い緑色ですが実はNEXCO西日本が決めたのではなくて、大学の先生などの専門家による「景観検討委員会」で決められた色。城陽市の緑と共存・調和が図られるように「千歳緑(ちとせみどり)」という色が採用されました。深い意味があるんですね。知らんかった。
高速道路で使われる鉄筋は太っ!
D16、D19など書かれているのは鉄筋の直径。場所によって使い分けられるのですが、一般的なお家を建てるのには22mmくらいまでで、高速道路の橋台・橋脚ではD51(51mmの太さ)も使われます。1mあたり16kgくらいの重さ。
つづいて木津川橋の現場へ移動。
こちらも、先ほどの城陽ジャンクションと同じく鉄製の橋です。
木津川の左岸です。
木津川では河川内の工事ができるのは10月半ばから翌年の6月半ばまでと決められています。これは川が増水しやすいシーズンをさけるため。2012年(平成24年)から、5期に分けて工事が進行中。
川の中の橋脚は、川の流れをできるだけふさがないように流れに沿って設置します。
このため岸まで橋に対して直角だった橋脚は河川内では少し斜めに設置されていることから、この木津川橋の橋桁の形式はI型と箱型の桁を組み合わせて造られています。
I桁は一般的にはコストを低く抑えることができ、箱型の桁は強度に強いというそれぞれの良いところを組み合わせて使用した珍しいところになっています。
川の流れを替えて工事をします
木津川橋のもう一つの特徴はその作り方。瀬替え工法といって、工事をしている間は河道を変えて工事を行います。木津川橋の場合は、川が流れていないところの橋脚を先に工事をして、完成した橋脚の方に流れを人工的に変えて残る橋脚を造りました。工期をしっかり確保し、経済的にも合理的な方法。
工事のために人工的に川の流れを変える、というととても人間中心に聞こえますが、大雨が降り、川が増水すると、川の流れはきちんと自然のものに戻るのだそうです。
道路は作って終わりではないので、メンテナンスのことも考え、橋の横には人が検査など立ち入る時のための手すりがついています。
写真の奥の方、橋の幅が余っているようにも見えますが、城陽ジャンクションに向けて、新名神から京奈道路へ接続する道路(ランプという部分)が分岐するため橋の幅が広くなったためです。間違ったのではありません。
広い、走りたくなる!
今立っているのは、大津方面へつながる上り線。この「京田辺高架橋」は、建設中の城陽~八幡間で最も長い高架橋(1.6km)。こちらの橋は先ほどと違ってコンクリート製の橋です。コンクリート橋は現場でコンクリートを型枠に流し込んで造ります。
こちらでは、移動支保工(しほこう)による、橋の架設工事現場を見学できます。
「移動支保工」とは橋を工事するときに、橋脚の間のコンクリートを打設するための型枠と支保工自身が次の作業部分に移動しながら架設できる工法。つまり横に移動しながらコンクリート製の橋が作られていきます。
この工法の良い点は、型枠や支保工を場所が変わるごとに、いちいち組み立て&解体する手間を省けること、屋根がついているので雨が降っても施工可能、品質が安定するというメリットもあります。
ガーターと呼ばれる赤い部分が、移動していきます。
ただし、この赤い機械を最初に作るのに3ヶ月程度かかったり、ある程度の長い区間でないと経済性のメリットが生かせません。この区間だからこそ!の工法
あらかじめ緊張(物理的に)させておくプレストレスト・コンクリート
コンクリートは圧縮力に強く、引張力に弱いという特性があります。このため、ここ京田辺高架橋のような長い橋を作るときには、プレストレスト・コンクリートで作られています。
プレストレストコンクリート??
プレストレストコンクリートの仕組みをわかりやすく解説してもらいました。
コンクリートの下側にプレストレスがないと、車の重みで下にたわんでしまします。
このコンクリートの中にPC鋼材という鋼製のケーブルを入れて緊張すると、コンクリート部材に圧縮力がかかった状態(プレストレス)となり、荷重がかかった際にも引っ張りが発生しにくい状態になるために、ひび割れなどを防ぐことができます。
このプレストレス・コンクリートは、コストもかかるのですが、橋脚どうしの間を大きく取ることができるので、橋などの大規模構造物に適しているといわれています。
プレストレスト・コンクリートを体験!
PC鋼材をジャッキで引っ張って伸ばして、コンクリートに圧縮力を入れて、コンクリートの上に乗ってみると、
横桁がつけられる前の橋脚部分。穴が空いているところが、先ほど上から覗いたところ。横桁は移動支保工が通過した後に施工されます。
最後の現場、八幡ジャンクション。
このジャンクションでは新名神高速道路と第二京阪道路が接続します。そして「ランプ」と呼ばれる道路同士を接続する部分。この八幡ジャンクションでは10橋もの橋梁が架設されます。
こちらの橋桁は鉄製で藍色。城陽市と同じく景観検討委員会で決めたのだそう。
京都府の工事の特徴、埋蔵文化財。
京都府内での工事では、昔のものが埋蔵文化財としてたくさん出てくることがあります。この八幡ジャンクションの現場でも横穴の遺跡が出てきたのだそうです。工事に取りかかる前にしっかりと調査します。
第二京阪道路や国道1号線バイパスの上を通過するので、とても橋梁が多い現場。2023年(平成35年)までにこの八幡と高槻がつながることになります。前方に見える第二京阪道路を跨ぐ橋を架ける時には、1日4〜5万台もの交通量がある第二京阪道路にいかに影響なく工事をするか?通行止めなどの交通制限を最小限に抑える必要がありました。
工場で作り、現場で組み立てる鉄製の橋が採用。この橋の架設作業を一晩で行うことになりました。
この工事でのポイントは、巨大な橋を運搬して架設する機械と時間、という二つの制約。おっきな工事の説明にみんな興味深々です。
工事は2015年(平成27年)4月の夜間に実施。架設場所の近くで組み立てられた巨大な橋桁は9軸のタイヤのある台車で運ばれます。
曲がるのにも大変。運搬された橋桁は台車に搭載された巨大なジャッキで持ち上げられて架設されます。
こういった作業は細かい工程表に基づいて実行されます。一晩で終わらせるために5分区切りのスケジュール!
こちらは最大550トン吊り上げ可能なクレーン。カウンターウエイトという黒い重りをつけることで吊り上げ能力を調整することができます。このクレーンの重りの量だと持ち上げられるのは360トンまで。
この現場でも橋の上に登ることができます。
新名神高速道路の本線は第二京阪道路の下を横切り、枚方市の大阪工業大学と摂南大学の間を通るそうです。
向こうに見えるのは、様々な公共事業での残土を集めた山。
城陽ジャンクションの土工にも使われています。高速道路のような大型の工事では「土をどうするか?」が大切で、切土(掘り返した土)と盛土(盛り上げするのに必要な土)のバランスを路線全体で取る必要があります。計画段階で事前に調整し、土が足りなければ他の公共工事の残土がないか?などを探すのだそうです。
はじめて近寄るスケールの大きな工事!橋の種類、場所やコストで最適な工法が選ばれ使い分けられていること、作りながら進むマシンなど、今回もたくさん発見がありました。
なるほど!が数え切れない。
夏の暑い日の見学でしたが、説明はもちろん見学者のみなさんに「暑くないですか?」など気遣いしつつ、本当に丁寧にガイドしていただきました。
汗を流しながら頑張っている現場の皆さんに脱帽です。頑張ってください!
【詳細情報】
NEXCO 西日本「なるほど!高速道路発見」
西日本高速道路株式会社 関西支社
電話番号:06-6344-8888
住所:大阪府茨木市岩倉町1-13
URL:http://corp.w-nexco.co.jp/activity/tour/
(text:西村、photo:市岡 ※一部の写真はNEXCO西日本さんの提供)
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